イタリアの大手産業装置メーカーがSimcenter Amesimを選択してパフォーマンスを加速

包装・充填業務に携わる企業向けにカスタマイズしたソリューション

包装・充填業務に携わる企業の成功は、消費者の嗜好や市場ニーズに左右されます。さまざまな業界の市場ニーズに応えるためには、競合他社とは一線を画した独自の容器を製造しなければなりません。その結果、カスタマイズした高品質の包装・充填装置を設計・開発する必要性に迫られます。同時に、厳しい競争を勝ち抜き、生産性と生産速度の目標をも達成しなければなりません。

RONCHI MARIOは、包装・充填業務に携わる企業の課題を解決するソリューションを研究し、化学、化粧品、食品業界向けに高信頼性の包装装置をカスタマイズして提供する大手産業装置メーカーです。イタリアに拠点を置く同社は、年間約85台の産業装置を製造し、世界中の包装・充填業務に携わる企業に供給しています。中核事業は、シャンプーや食洗機用洗剤といった液体と高粘性液のボトル充填と蓋閉めの装置です。

RONCHI MARIOの戦略の心臓部にあたるのが研究開発 (R&D) 部門です。顧客の個別の要件を踏まえてカスタマイズすることで、常に顧客にとって最良のソリューションを提供しています。RONCHI MARIOの装置は高い生産高 (1分あたりの充填容器数) を誇り、充填速度が速いだけでなく、充填される液体重量も非常に正確です。

「充填圧力に外乱を起こさないように注意を払っています。一定の充填圧力を保ち、適切に充填されるようにしています。」RONCHI MARIOのR&DエンジニアであるGabriele Pastrello氏はこう説明します。

実験的なプロセスから数値アプローチに移行して、圧力を一定に保つ

「ボトル充填回路は過剰圧力、つまり外気圧よりも高い圧力がかかっています。」とPastrello氏は述べています。RONCHI MARIOが最良の産業装置を顧客に提供するうえで、この圧力をできる限り一定に保つことが何よりも重要です。「以前は、特に方向性を定めず、やみくもに実験しながら問題を解決しようとしていました。多くの選択肢を無作為に試してみなければ、良い案にたどり着くことができませんでした。」こうした試行錯誤のやり方は、効率的とはいえず、結果の精度も劣るため、長い時間とコストがかかります。また納品先で技術的な問題が発生すると、これまでは担当者が直接、顧客の拠点に出向いて修理していました。

R&D部門は、圧力を一定にするために油圧システム全体をシミュレーションする必要がありました。油圧システムは、タンク、ポンプ、液体を流す何メートルものパイプ、容器に液体を注入するための充填バルブで構成されています。充填バルブに一定量の液体が注入されるように、パイプを流れる液体の圧力と流量を一定に保つ解決策が求められます。RONCHI MARIOはさまざまなソフトウェアを徹底的に検討した結果、Simcenter Amesim™を採用することにしました。

Pastrello氏はこう述べています。「当社はあらゆる製品に対応しなければなりません。開発する装置は毎回変わるため、各充填装置の振る舞いを正確にシミュレーションする必要があります。システム全体のパラメーターを検討する場合、スピード、信頼性、使いやすさに優れたSimcenter Amesimのような1Dシミュレーションが最適です。Simcenter Amesimを使用したシミュレーションは、装置のレイアウトが要件を満たしているかを検証します。これにより、完成した装置に出荷直前で調整を加える事態を回避し、追加のコストや遅れが発生しないようにします。初回から正しく開発できれば、数週間単位での時間の削減につながります。」

Simcenter Amesimは、油圧ネットワークの設計だけでなく、制御戦略の決定にも活用できます。できるだけ圧力を一定に保つため、RONCHI MARIOのエンジニアは、必要な流量が正確にノズルに供給されるようポンプの速度を調整する必要があります。Simcenter Amesimを採用することで、PID制御 (Proportional-Integral-Differential Controller) が吐き出し圧力に与える影響をデジタルでテストできます。実際の装置で較正する必要がないため、多大な時間とコストの削減につながります。

RONCHI MARIOのR&D部門はシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのパートナーであるBsimと協力しながらSimcenter Amesimの導入と展開を進めてきました。Pastrello氏はこう語ります。「Bsimはこちらの疑問に非常に素早く的確に答えてくれます。彼らの貢献にとても感謝しています。」

時間の短縮と高精度のシミュレーション

Simcenter Amesimの非常に高精度なシミュレーションのおかげで、RONCHI MARIOはこれまでプロジェクトのたびに作成していた試作機の数を大幅に削減できました。1つ1つの機械の振る舞いを予測するシミュレーションによって、試作の前に最良の設計案を決定できます。Pastrello氏はその価値を高く評価しています。「試作の数は20%も減りました。」

もうひとつの成果は、ソフトウェアで圧力を一定に保てるようになったことで、RONCHI MARIOの装置の処理速度が向上したことです。結果として、RONCHI MARIOの顧客企業が生産性、パフォーマンス、安定性、生産速度の目標を達成できるようになりました。

さらに上を目指して、イノベーションを追求

RONCHI MARIOがさらに競争優位性を高めるには、顧客にとって最良の装置を提供しなければなりません。つまり、プロセスと製品の両方のイノベーションが求められます。Pastrello氏はこう説明します。「シミュレーション・ツールは、勝敗を分ける大きな決め手になり得ます。これほど高度なツールを活用している競合他社は多くありません。われわれはシミュレーションを活用する真のパイオニアとして、装置の設計プロセスを合理化しており、それが大きな競争の差を生み出しています。」

Pastrello氏はさらに続けます。「次の目標は、Simcenter Amesimのシミュレーション結果を3D CFD (数値流体力学) ツールで活用できるようにすることです。3D CFD計算は、バルブ内部の挙動と流れの解析に役立ちます。」Simcenter Amesimで境界条件を評価し、3D CFDでバルブ内部の挙動を把握する、この優秀な組み合わせにより、最適な解析が可能になります。

Pastrello氏は、Simcenter Amesimの正確で使いやすいシステム・シミュレーションのおかげで、産業機械メーカーは性能に優れた機械を開発できるようになったと結論付けています。適応性の高い、カスタマイズ仕様の機械を開発できるようになれば、顧客企業に高い付加価値をもたらせる点も強調しています。