Forsee Power、Simcenter STAR-CCM+を使用して熱放散を最適化し、初期段階の試作を排除
リチウム・バッテリー・システムの大手メーカーであるForsee Powerは、電気自動車や各種デバイス向けに安全性と持続性に優れた高性能なスマート・バッテリー・システム製品を提供しています。
Simcenter STAR-CCM+を使用すると、設計の初期段階で熱設計の性能を正確に把握できます。
2011年に設立されたForsee Powerは、スマート・リチウム・バッテリー・システムの設計と製造を手掛けるパイオニア企業です。グローバル・リーダーとして自動車や各種製品に対応するバッテリー・システムを提供しています。継続的なイノベーションを使命に掲げる同社は、標準化された製品設計アプローチを採用し、安全性と持続性に優れた高性能なバッテリー・システムを提供してきました。この設計アプローチは、お客様固有の要件に柔軟に対応することを可能にします。
Forsee Powerのイノベーションへの取り組みは、リチウム・バッテリー・システムの重要課題である熱放散の最適化にまで及びます。同社は1Dシミュレーションやスプレッドシートを使用したデータ調査から脱却する必要があると判断しました。そのため、Forsee Powerはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと連携し、ソリューションとして総合的なSimcenter™ STAR-CCM+™を導入しました。このソフトウェアは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスから構成されるSiemens Xceleratorビジネスプラットフォームの一部です。
バッテリー・システムの設計にあたっては、熱設計、熱暴走の管理など、いくつもの課題があります。熱的要素は、バッテリー・パックの安全性能評価においても重要な役割を果たします。そのため、コア設計チームが初期段階で提供するシングルコアの熱パラメーターに基づき、バッテリー・パック全体の熱設計の性能を正確に把握しなければなりません。また、設計終盤で実施される実験や後続の設計段階で問題が見つかることを回避することも重要です。
以前のプロセスでは、バッテリーの熱分布を詳細に把握できないことが少なくありませんでした。バッテリーの局所的なホットスポットを十分に把握できない場合、バッテリー・パック全体の冷却システムに熱障害を発生させる可能性があります。
さらに従来のプロセスでは、物理的なプロトタイプがないと設計の初期段階に熱測定を行うことができませんでした。設計プロセスの終盤になって問題が発生することが多いため、すでに完成している設計案を修正する必要が生じ、実験にかかるコストや時間が増加しました。
これらの課題を克服するためForsee Powerは、設計プロセスの初期段階で熱問題を特定できるシミュレーション・ソリューションを導入することを決めました。
Forsee Powerは、インテリジェント・バッテリー・システムの設計と製造を手掛けるエキスパート企業です。同社は持続可能エネルギーへの転換を成功させ、世界各国のスマート・モビリティ製品やスマート・デバイスのライフサイクルを最適化するためには、革新的なバッテリー・ソリューションが極めて重要になると考えています。
バッテリー・パックの熱管理を行うため、バッテリー・メーカーはシミュレーション・ソフトウェアを幅広く活用しています。初回のシミュレーションでパラメーターを解析してから、シミュレーションを拡張して製品性能を検証することにより、実験の回数を減らすことができます。
「Simcenter STAR-CCM+を使用すると、設計の初期段階で熱設計の性能を正確に把握できます」とForsee Powerでメカニカル・エンジニアを務めるKinny Ruan氏は述べています。
Forsee Powerのエンジニアは、Simcenter STAR-CCM+のコンピューター支援設計 (CAD) インターフェースを使用して設計案をバッテリー・パック・モデルに直接インポートすることができます。そのため、設計チームが提供するコアの熱データを使用し、冷却チャネル、ファンなど、コンポーネントの熱放散効率をシミュレートして検証することができます。このプロセスにより、従来の物理実験のほとんどが不要になるため、設計段階全体を合理化できます。
特筆すべきは、シミュレーションを通じてサイクル条件を適用し、バッテリー・パックの詳細な3D温度分布データを取得できることです。Simcenter STAR-CCM+を活用すると、研究開発 (R&D) エンジニアは顧客のニーズに基づいて設計を調整/選択し、バッテリー・パックの熱放散性能を素早く把握することができます。このプロセスにより、同社は研究開発サイクルを短縮し、関連コストを削減することができました。
Forsee Powerのシミュレーション・エンジニアを務めるKen Yan氏は次のように述べています。「Simcenterソフトウェアに計算処理を任せられるため、エンジニアは設計アイデアの構築や境界条件の定義に専念し、製品性能を確実に向上できるようになりました」
Forsee Powerのスマート・バッテリー・システムはモビリティの向上にも大きく貢献しています。標準化された製品をカスタマイズすることで、同社は多様な応用シナリオに基づいて要求仕様を満たすことができます。画一的なソリューションではなく、顧客の仕様に応じて汎用性と信頼性に優れたソリューションを提供しています。
Simcenter STAR-CCM+を使用すると、エンジニアは熱設計の性能を正確に評価し、バッテリーの局所的なホットスポットを特定できます。これにより、バッテリー・パックの冷却システムを最適化し、優れた性能を引き出すことができます。
製品が適切に開発されているかどうかを判断するには、製品開発の具体的な詳細データを常に把握できる必要があります。製品は設計/開発プロセスを通じて何度も修正されるからです。同社はこの課題を解決するソリューションを必要としていましたが、数値流体力学 (CFD) シミュレーションを適用するにあたり、主要な懸念事項が2つありました。1つはシミュレーションの精度、もう1つはシミュレーションの効率性です。
同社が開発している小型モジュール式空冷バッテリーPULSE 0.5にCFDツールを適用したところ、摂氏40°の極限環境でもシミュレーションの精度が落ちないことが確認されました。実験結果とシミュレーション結果を比較したところ、両者の値は高い相関性があり、温度の誤差は5%以内に収まっていました。このソフトウェアは測定した製品の高温位置と低温位置を正確に表示し、実験結果を忠実にシミュレートしていることを証明しました。
Simcenter STAR-CCM+により、Forsee Powerのエンジニアは設計変更の影響をより直感的に把握できるようになりました。この3D流体熱シミュレーション・ツールを使用すると、エンジニアはさまざまな細部に焦点を合わせて製品性能を検証できます。
このソリューションにより、Forsee Powerは実験の頻度を減らし、ライフサイクル・シミュレーション向けに正確な温度データを取得できるようになりました。
Forsee Powerはシミュレーション結果を検証し、データが正確で実験結果と整合していることを確認しました。グラフは熱シミュレーションのデータを示しています。実験データとほぼ一致しており、誤差は5%以内です。
Simcenter STAR-CCM+をForsee Powerのエンジニアリング・ワークフローに統合したことは、設計プロセスを加速し、合理性とコスト効率を高めるうえで極めて重要な役割を果たしました。Simcenter STAR-CCM+を活用することで、同社はバッテリー・パック設計に伴う熱関連の課題に対処し、安全性と性能を高めることができました。
Forsee Powerの成功事例は、シーメンスのエンジニアリング・ソフトウェアがリチウム・バッテリー・システム開発を取り巻く複雑な課題を解決し、変革をもたらすことを証明しています。同社は製品の設計/性能の最適化を続けると同時に、スマート・バッテリー・システム業界のイノベーションと信頼性の向上を目指して継続的な取り組みを行っています。
Forsee Powerは2022年、オフハイウェイ市場向けに設計された高出力のPULSE 0.5バッテリーを発表しました。このバッテリーは、農業、工業、林業、鉱業、フォークリフト、掘削機などに用いられます。
Simcenterソフトウェアに計算処理を任せられるため、エンジニアは設計アイデアの構築や境界条件の定義に専念し、製品性能を確実に向上できるようになりました。