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ユーザー事例

デジタル・スレッドを活用した作物保護剤の生産の合理化

Opcenterの使用によりバッチ生産時間を5~10パーセント短縮

デジタル・スレッドを活用した作物保護剤の生産の合理化

BASF社

BASF社は世界各国におよそ111,000人の従業員を擁している世界最大クラスの化学会社です。同社のポートフォリオには化学薬品、素材、工業溶液、表面技術、栄養とケア、農業用液などがあります。BASF社は2021年に786億ユーロの売上を達成しています。

https://www.basf.com/global/en.html
本社:
ルートヴィッヒスハーフェン, Germany
製品:
Opcenter, Opcenter Execution Process

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この共同プロジェクトに参加したシーメンスのエキスパートは、優れた能力を駆使してプロジェクトを完成させ、私たちの期待に応えてくれました。
Maximilian Hierold氏, プロジェクト・オペレーション・マネージャー
BASF社

多くのメリットをもたらす優れた性能

予測不能な天候、病害虫や雑草の管理、市場価格の変動、天然資源の不足など、農業には常に複雑な課題が伴います。今日の世界各国の生産者は、安全性と信頼性に優れたツールを活用して病害を防いでいます。真菌病害を持続的に管理しながら品質と収量を確保するには、高効率で革新的な殺菌剤が必要です。

作物保護業界をリードするBASF社は、信頼できるパートナーとして100年以上にわたり農家を支えてきた実績があります。BASF社のポートフォリオは、種子 (特に厳選された植物形質)、化学的および生物学的作物保護、土壌管理用溶液、植物衛生、害虫駆除、デジタル農業で構成されています。

ドイツのルートヴィッヒスハーフェンに本社を置くBASF社は、世界各国に200以上の生産拠点を保有しています。多様な用途に応じて数千種類の商用製品を生産してきました。その1つが高効力で環境に優しいゼミウム®です。幅広い真菌に対して高い内活性があり、植物全体に浸達する特殊な流動性を備えています。作物を確実に保護して高い収量をもたらすため、生産者は収益性と環境保護を両立させることができます。

ゼミウムの生産は24時間365日行われます。生産プロセスには連続処理とバッチ処理の両方、ラボ解析に基づく品質管理、最終パッケージングが含まれます。

ゼミウムの生産は24時間365日行われます。生産プロセスには連続処理とバッチ処理の両方、ラボ解析に基づく品質管理、最終パッケージングが含まれます。

システム間の情報の分離

BASF社は24時間365日稼働している生産工場でゼミウムやその他の関連製品の処理とパッケージングを行っています。これにはバッチ生産サイクルに数日間を要する連続処理とバッチ処理が含まれます。製品は最後に大きな袋に充填され、別の生産施設に輸送されて処理が続行されます。

2010年に工場の稼働を始めて以来、BASF社のチームは完全に自律的なプロセスを通じてゼミウムを生産していました。上流工程向けの工場を含め、工場のすべてのシステムはSIMATIC®スイートを使用して制御されます。これにはSIMATIC PCS 7プロセス制御システムと、バッチ処理を効率的に自動化するSIMATIC BATCHソフトウェア・パッケージのインストールが含まれます。

工程内品質管理の活動には、サンプルの採取や現場のラボでの解析があります。チームは品質管理プロセスを合理化するため、SIMATIC WinCC V7 SCADA (Supervisory Control And Data Acquisition) ソフトウェアを導入しました。

BASF社はERPソフトウェアを使用して、作物保護剤生産工場の処理命令と実行処方を作成しています。つい最近まで、これらのシステム間は連携されていませんでした。ラボのSCADAシステムも同様に、周辺のソフトウェア環境から分離されていました。

そのため、チームは制御システムのヒューマン・マシン・インターフェース (HMI) を使用して、処理命令や実行処方を印刷または手入力しなければなりませんでした。このプロセスでは、表計算ソフトウェア、小型計算機など、汎用的な補助ツールを使用して換算計算を行うことが頻繁にありました。管理者は完成したバッチや品質レポートの情報をERPシステムに手入力しなければなりませんでした。パッケージング・チェックリストと同様、これらのレポートには紙が多用されます。

Opcenter Execution Processは、ERPソフトウェアとプロセス自動化システムとをつなぐ情報ハブとして機能します。ラボ情報管理システムと連携するほか、サンプル採取、材料追跡、パッケージング向けの無線携帯端末とも連携します。

Opcenter Execution Processは、ERPソフトウェアとプロセス自動化システムとをつなぐ情報ハブとして機能します。ラボ情報管理システムと連携するほか、サンプル採取、材料追跡、パッケージング向けの無線携帯端末とも連携します。

デジタル・ギャップの解消

BASF社のプロジェクト・オペレーション・マネージャーであるMaximilian Hierold氏は次のように述べています。「手作業による『生物力学データの伝送』は時間がかかるだけでなく、高度な技能を持つ従業員が余分な事務処理に対処する必要性を生じさせます。当然ミスも発生します。これは個々のオペレータのワークフローが原因でプロセスが逸脱する可能性が高いことを意味します」

品質レポートの入力が遅れると、プロセスが逸脱した場合に工場が対応する能力が妨げられます。工場の管理能力に関しては、すべての原材料が標準バッチを使用して生産されていました。この場合、バッチ処理で消費される原材料のトレーサビリティを確保できないという課題も生じます。「パッケージ化された製品は通常営業日の日勤時間中にのみ収集されるため、かなり以前から正確な生産計画を策定し、出荷倉庫が溢れないようにする必要がありました」と、BASF社のオートメーション・エンジニアであるMoritz Hofherr博士は述べています。

BASF社のプロセス自動化の専門家はこれをきっかけにあるアイデアを思い付きました。企業規模で取り組んでいるデジタル・トランスフォーメーションの一環として、これまで分離されていたソフトウェア・システムを垂直統合し、生産効率を向上させるというものです。予備調査では、SIMATIC BATCHとERPソフトウェアを連携させる手段として、製造実行システム (MES) ソフトウェアを中心に複数のソリューション・コンセプトを比較検討しました。これらのコンセプトに基づき、新たなソリューションを提案する入札を募りました。

入札を勝ち取ったのはOpcenter™ソフトウェアを使用する提案でした。このソフトウェアは製造オペレーション管理 (MOM) 機能群を提供する統一性に優れた総合ポートフォリオです。高度な計画とスケジューリング (APS)、製造実行、品質管理、製造のインテリジェンスとパフォーマンス、定式化、仕様、ラボ管理に対応します。OpcenterとSIMATICは、Xceleratorポートフォリオを構成する製品です。Xceleratorは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが提供するソフトウェアとサービスの包括的な統合ポートフォリオです。チームはOpcenter Execution Processを使用してミドルウェア層を構築し、既存のシステム間のデジタル・ギャップを解消しました。

カスタム・グラフィカル・ユーザー・インターフェースを搭載したハンドヘルド・スキャナーは、サンプルの採取、消耗品消費量の記録など、手作業でデータを取得する必要があるプロセスを補強します。

カスタム・グラフィカル・ユーザー・インターフェースを搭載したハンドヘルド・スキャナーは、サンプルの採取、消耗品消費量の記録など、手作業でデータを取得する必要があるプロセスを補強します。

エンド・ツー・エンドのデジタル化

かつてSIMATIC IT Unified Architecture Process Industriesと呼ばれていたOpcenter Execution Processは、シーメンスが提供するMESです。パッケージ化された消費財や、食品・飲料、化学工業に対応します。Opcenterを使用すると、企業は最先端のプラットフォームやアプリの手法に基づいて製造効率と柔軟性を高め、優れた品質を提供できます。

シーメンスはBASF社のプロジェクト・チームを調整し、技術やプロセスに関する知識を提供して、ユーザーに最善の形で受け入れられるようにサポートしました。シーメンスは包括的な統合ソリューションを開発し、チームが運用技術 (OT) と情報技術 (IT) を連携させて生産工場の包括的なデジタルツインを構築できるようにしました。

生産デジタル化ソリューションの中核にはOpcenter Execution Processを使用し、チームが情報ハブを構築できるようにしました。この情報ハブはERPソフトウェアから受信した処理命令を実行処方に変換し、プロセス自動化システムに転送します。さらにこのソフトウェアを活用し、材料やステータスの確認メッセージをERPソフトウェアに送信できるようにしました。

チームはOpcenterを使用することで、サンプル採取のリクエストを自律的に作成してラボ情報管理システム (LIMS) に送信し、LIMSの解析結果をバッチ処理システムにフィードバックするMESを構築することができました。サンプルの採取、消耗品消費量の記録など、手作業でデータを取得する必要があるプロセスは、カスタム・グラフィカル・ユーザー・インターフェース (GUI) を搭載したハンドヘルド・スキャナーを使用して補強されます。

チームはOpcenter Execution Processを使用することで、最終パッケージングを含め、生産プロセス全体をデジタル化できました。ここで働く従業員はハンドヘルド・スキャナーを使用してチェックリストへの入力を行います。これらの入力データに基づき、MESはERPシステムの配送プロセス (コンテナ向けのラベル印刷を含む) も実行します。

「垂直統合によって技術とビジネス向けのソフトウェア・システム間のデジタル・ギャップを解消することができました」と、Hofherr氏は述べています。「Opcenter Execution Processのおかげで、持続可能で高収量農業を推進するこの殺菌剤の生産プロセス全体のデジタル・スレッドを作成できました」

Opcenterを使用し、実行処方の定義変更といった手法を組み合わせることで、このソリューションは生産効率を向上させただけでなく、多くのメリットをもたらしました。手作業によるデータ入力が一切なくなり、エラーや遅延を排除できました。データの一貫性が確保されるため、生産が完全に透明化され、工場の制御反応が速やかになり、プロセスの安定性と製品品質が向上しました。Hierold氏は次のように述べています。「エンド・ツー・エンドのデジタル化によってバッチ生産時間を5~10%短縮できました。また、生産管理者は1月あたり5日間分に相当する事務処理から解放されました」

新型コロナウイルスの最中においても、システム導入を成功させる鍵はデジタル化にありました。ソフトウェアのインストール、試験、トレーニング、試運転のすべてを遠隔操作で行う必要がありました。Hierold氏は次のように述べています。「この共同プロジェクトに参加したシーメンスのエキスパートは、優れた能力を駆使してプロジェクトを完成させ、私たちの期待に応えてくれました。この成功により、BASF社ではOpcenterで垂直統合を実行する類似のプロジェクトを進めています」

製品は最後に大きな袋に充填され、別の生産施設に輸送されて処理が続行されます。このプロセスは入力デバイスとしてハンドヘルド・スキャナーを使用し、チェックリストに入力することで補強されます。

製品は最後に大きな袋に充填され、別の生産施設に輸送されて処理が続行されます。このプロセスは入力デバイスとしてハンドヘルド・スキャナーを使用し、チェックリストに入力することで補強されます。

Opcenter Execution Processのおかげで、持続可能で高収量農業を推進するこの殺菌剤の生産プロセス全体のデジタル・スレッドを作成できました。
Moritz Hofherr博士, オートメーション・エンジニア
BASF社