ユーザー事例

Audi、電気自動車用バッテリーのシミュレーションの精度と速度を向上

AudiがSimcenterエンジニアリング・サービスと提携し、試験とシミュレーションの相関を改善

Audi、電気自動車用バッテリーのシミュレーションの精度と速度を向上

Audi

AUDI AGは、ドイツのバイエルン州インゴルシュタットに本社を置くドイツの高級車メーカーです。フォルクスワーゲン グループ傘下の子会社であるAUDI AGは、 世界9か所の生産施設で車両を生産しています。

https://www.audi.co.jp/jp/web/ja.html

本社:
インゴルシュタット, Germany
製品:
Simcenter Amesim, Simcenter STAR-CCM+
業種:
自動車 / 輸送機器

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Simcenterエンジニアリング・サービスチームが提供してくれたサポートと、困難な問題の解決を支援する意欲と能力に感謝しています。
Joohwa Sarah Lee氏, コンセプト開発エンジニア, Audi

より安全で信頼性の高いEVバッテリーの開発

EVバッテリーの熱性能を正確に予測することは、自動車OEM (相手先ブランド製造企業) が直面している最も重要な課題と言えます。バッテリーには、故障を避けて動作するための温度範囲があります。バッテリーがこの範囲から外れると、バッテリーの寿命が短くなったり、乗員の安全が脅かされたりする可能性があります。

このため、優秀な高級車ブランドとして世界的に知られるAudiが、高電圧バッテリー・システムのコンセプト開発に特化した、高度に専門化されたチームを結成したのは当然のことと言えます。ドイツに拠点を置くこのチームの貢献は、明日のモビリティを設計し、デジタル、電気、持続可能性の面で卓越したドライブ体験を保証するというAudiのビジョンにとって極めて重要です。

熱モデル精度の向上

コンセプト開発エンジニアのJoohwa Sarah Lee氏は、このチームの一員であり、バッテリーの熱性能を専門としています。

Lee氏は次のように述べています。「正確な熱シミュレーション・モデルを構築することは、私のチームの仕事にとって決定的に重要な側面です。モデル自体が非常に重要です。なぜなら、バッテリーの熱性能を最適化するという私たちの目標に直接貢献するからです」

2021年、Lee氏と彼女のチームは、特定のケースと条件で、シミュレーション出力がテスト測定値と一致しないことを発見しました。その結果、Lee氏はこれらのシミュレーション・モデルの品質向上に着手しました。Lee氏と彼女のチームは、開発パートナーとしてシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter™エンジニアリングおよびコンサルティング・サービスを選択しました。

Lee氏は次のように説明しています。「Simcenterを選んだのは、1Dモデルと3Dモデル間のシームレスな接続だけでなく、サードパーティ・ツールとの接続も可能だからです。Simcenterエンジニアリング・サービスは、これらの統合を設定し、最高の精度を確保するための技術知識とサポートを提供してくれました」

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1Dと3Dシミュレーションの組み合わせ

従来、バッテリーのモジュールとパックの形状は、3D数値流体力学 (CFD) による熱シミュレーションを使用してモデル化されていました。この方法には多大な計算コストがかかり、完了するまでに数日から数週間かかることもあります。さらに、正確な3Dモデルを作成するには、パラメーターに関する広範な知識と3Dシミュレーションの経験が必要です。1Dシステム・
シミュレーションを実行する方がはるかに高速ですが、精度を損なうことなく3Dモデルから1Dモデルを生成するには、多くの困難が予想されます。

Simcenterエンジニアリング・サービスは、初期の戦略策定から車両の他のサブシステムでの検証まで、Audiのバッテリー管理システムをサポートするための、より高速で正確なバッテリー・スタックの熱モデルの作成に着手しました。これらのモデルでは、電流、冷却水温度の変化、1D電気モデルとの接続性、MATLAB/Simulinkとの統合など、いくつかのパラメーターを考慮する必要がありました。Lee氏のチームは、さまざまなシナリオのテストケースと境界条件をSimcenterチームに提供しました。

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カスタマイズされたワークフロー

Simcenterエンジニアリング・サービスのエキスパートは、Simcenter STAR-CCM+™ソフトウェアおよびSimcenter Amesim™ソフトウェア (両製品ともにSiemens Xceleratorのソフトウェア、ハードウェア、サービスのビジネス・プラットフォームの一部) を組み合わせることで、3D Simcenter STAR-CCM+モデルから、Simcenter Amesim内で1Dシステムレベルのモデルを生成する半自動ワークフローを開発しました。このワークフローの目的は、Audiの1Dシミュレーションのユーザーが、1Dシミュレーションのスピードを維持しながら、3Dモデルが提供する高レベルの詳細からメリットを獲得できるようにすることでした。

指定された入力を使用して、Simcenter STAR-CCM+は、選択した設計空間をカバーするいくつかの定常状態条件 (クーラント入口温度、流量、電流など) を計算しました。次にこのデータを使用して1D電熱モデルを導き出し、スタック全体の過渡シナリオを調査できます。

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時間の短縮と精度の向上

Simcenterエンジニアリング・サービスのエキスパートが開発したワークフローは、バッテリーの熱シミュレーションの計算時間をわずか数分に短縮しました。顕著な効果を挙げた例として、EVバッテリーの容量10%から80%までの充電シナリオのシミュレーションがあります。

Lee氏は次のように証言しています。「Simcenterエンジニアリング・サービスとのプロジェクトにより、ほぼ丸一日かかっていた充電シナリオのシミュレーション時間を、1分未満に短縮することができました。これは計算時間上、大きな違いです。また、特に熱挙動の研究において、シミュレーション結果を大幅に改善しました」

「この問題に対して他のソリューションも検討しましたが、シーメンスのようなツール間の接続性を提供する企業はありませんでした。Simcenter STAR-CCM+の詳細な3Dモデルと、Simcenter Amesimのスピードと効率性、そしてSimcenterエンジニアリング・サービスチームがサポートするサードパーティ・ツールを組み合わせることで、非常に大きなメリットが得られました。また、Simcenter Battery Design Studioなど、Simcenterポートフォリオの他の側面を探求することも楽しみにしています」

Lee氏のチームは、Simcenterエンジニアリング・サービスとのパートナーシップの将来について楽観的な見通しを持っています。

「私たちは、新しいツールと方法論を将来の課題に引き続き適用していくつもりです。Simcenterエンジニアリング・サービスチームが提供してくれたサポートと、困難な問題の解決を支援する意欲と能力に感謝しています」とリー氏。

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Simcenter STAR-CCM+の詳細な3Dモデルと、Simcenter Amesimのスピードと効率性、そしてSimcenterエンジニアリング・サービスチームがサポートするサードパーティ・ツールを組み合わせることで、非常に大きなメリットが得られました。
Joohwa Sarah Lee氏, コンセプト開発エンジニア, Audi