コンピューター支援エンジニアリング (CAE) を活用することにより、医療機器設計の信頼性を確保し、設計品質を向上しながら、工数を大幅に削減できます。エンジニアリング・シミュレーションは現在、世界中の規制当局、メーカー、サプライヤーで広く採用されています。その一例として、米国食品医薬品局 (FDA) が主催するワークショップがあります。このワークショップは、血液ポンプのモデリングを使用した血液損傷の研究に関するものであり、ベストプラクティスを定義し、機器設計におけるシミュレーションの活用を促進することを目的としています。現在はCAEの認知度が高まり、医療機器設計の最前線でCAEが活用されています。
このホワイトペーパーは、数値流体力学 (CFD) と最適化技術を活用した血液ポンプの設計について、テルモ株式会社湘南センターの事例を紹介しながら説明しています。 詳細情報
補助人工心臓 (VAD) は、心臓の心室の機能不全を補うために血流量を増加させ、機能不全に陥った心臓の機能を代行するための機械式ポンプです。VADの開発プロセスでは、試作品を製作する前に、血液ポンプの最適な設計を検証する必要がありますが、そのための効果的なツールが数値モデリング機能です。数値流体力学 (CFD) を応用することにより、ポンプを流れる血流の解析と最適化を簡単に行い、溶血、再循環、血液障害などを定量的に予測できます。
テルモでは約15年前からCFDを導入しています。研究開発部門調査チームの主要メンバーである森武久氏が、社内で初めてCFDを採用しました。同社は心臓血管外科用機器の分野で、CFDを活用して血液ポンプを開発しています。CFDベースの設計探索ツールを導入した目的は、血液ポンプの開発効率を高め、製品をより早く市場に投入することでした。
テルモがどのようにしてCFDを日々の業務に取り入れたのか、詳細はホワイトペーパーをご一読ください。
これまでの血液ポンプの設計手法は、数値流体力学 (CFD) を使用して、数十種類の初期モデルを解析した後、数種類のモデル候補に絞り込むというものでした。その後、ポンプの評価や血液に関する実験を行っていました。最終的な試作品に落ち着くまでこのプロセスを繰り返していましたが、1つの製品が完成するまでに数年間かかることもありました。
Simcenter STAR-CCM+とアドオンのIntelligent Design Explorationソリューションを導入したところ、高品質な設計を実現しながら、血液ポンプの開発期間を大幅に短縮することに成功しました。一連のプロセスは、Simcenter STAR-CCM+で基本設計をシミュレーションし、それを実験データで実証して最適化するというものです。最適化に到達するまでに実施した解析は102件、計算に要した日数は約6日間でした。わずか1週間で最適な設計案を特定できました。
テルモは、Simcenter STAR-CCM+を使用して適切な設計案を迅速に特定し、「医療による社会貢献」に向かって前進しています。