パラメトリック・アプローチとボトムアップ・アプローチを組み合わせて、コスト計算の時間を95%短縮

バリュー・チェーンの課題に対処

ZF Friedrichshafen AG (以下ZF) は乗用車、商用車、産業技術向けの高度なモビリティ製品とシステムをメーカーやモビリティ・プロバイダーに提供している、グローバルなテクノロジー企業です。ZFは、幅広い車両タイプを電動化し、排出ガスの削減、環境保護、安全なモビリティの向上に貢献しています。また、建設機械や農業機械、風力発電、船舶推進システム、鉄道駆動装置、テストシステムなどの分野でもサービスを展開しています。

他の多くの企業と同様に、ZFもバリュー・チェーンの課題に直面してきました。利用可能なリソースが減少し、新しい技術や材料が急速な変化をもたらしているのです。「ZFはグローバル企業として、製品だけでなく、プロセスや金型の面でもリーダーでなければなりません。」とZFでコスト・エンジニアリングを担当するSimon Roth氏は言います。

ZFはこの基準を満たすために、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソフトウェア、ハードウェア、サービスで構成されるSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォームの一部であるTeamcenter® Product Cost Managementソリューションを導入しました。ZFのコスト・エンジニアリング担当者は、シーメンスのソリューションを活用して、製品および金型のコストを、製品カーボン・フットプリントを含めて計算しています。

専門知識とイノベーション

ZFのコスト・エンジニアリングは、製造技術を専門とするテクノロジー・コスト・エンジニアと、製品グループとアセンブリ全体を統括する製品エキスパートによって支えられています。しかし、これらの分野の経験豊富な専門家を見つけることは非常に困難を極め、高いコストもかかります。Roth氏は、研修主任兼デジタライゼーション・スペシャリストとして、Teamcenter Product Cost Managementの全ユーザーと緊密に連絡を取り合いながら、中心的な役割を果たしています。

効率的な戦略を実現

ZFは、Teamcenter Product Cost Managementを使用することで、生産プロセスの外部に関わる設定時間を含め、材料と生産方法の詳細な分析を行うことができました。ZFは月に何千回ものコスト計算を行っています。そのため、計算プロセスが繰り返し発生します。繰り返されるコスト計算プロセスを自動化するため、ZFはTeamcenter Product Cost Managementの一部としてParametric Models Framework for Excelモジュールを採用しました。このモジュールには、Excelベースのテクノロジー・コスト・モデルから専門知識をインポートする機能があります。ZFは2年間で貴重な知的財産 (IP) を取り込んで、40のテクノロジー・コスト・モデルを開発してきました。このイノベーションによって、標準コンポーネントが迅速かつ容易に自動計算され、専門知識が豊富でないユーザーでも正確な結果を生成できます。

コスト計算を加速させる

ユーザーは、Teamcenter Product Cost Managementに事前定義されたパラメーター (部品のサイズ、材料、数量、製造技術など) を数個入力するだけです。必要な情報がすべて入力されると、Teamcenter Product Cost Managementは、Parametric Models Framework for ExcelのAPIを介して、テクノロジー・コスト・モデルとデータをやり取りします。その結果、Teamcenter Product Cost Managementは排出値を考慮した詳細なボトムアップコスト計算を実施します。ZFユーザーはボトムアップ計算に基づいて、Teamcenter Product Cost Managementでシミュレーションとシナリオを実行します。バリアントを計算し、製造拠点間の切り替えをシミュレーションします。

ZFはテクノロジー主導型コスト計算 (TDC) ツールによって、一般的な内蔵パラメトリック・ソリューションと比較して大幅なコスト削減を実現しました。

「ダイカスト部品、鋳鉄、鍛造部品など、コンポーネント・グループや個々のコンポーネントの計算にTeamcenter Product Cost Managementを使用する場合、新しいコストモデルの開発に制約や制限はありません。

Teamcenter Product Cost Managementによって、パラメトリック・アプローチと正確で詳細なボトムアップのコスト計算を組み合わせて計算時間を大幅に短縮し、社内でナレッジと専門知識を保持することができました。」とRoth氏は述べています。この合理化されたプロセスに基づいて、ボトムアップのコスト計算がわずか2〜3分で生成され、95%を超える時間を節約できます。この２年の間、ZFはTDCフレームワークで2,400以上の計算を実施しました。

柔軟性と正確性

TDCを実行した後、すべての計算をユーザーの要件に合わせて手動で調整できます。

ZFのテクノロジー・コスト・モデルとParametric Models Framework for Excelをシームレスに接続することで、最小限の工数でコスト結果を効率的に生成できます。

知識とアクセシビリティの維持

経験豊富なエキスパートの専門知識をパラメーターとしてモデルに取り込んでいるため、ユーザーが徹底的なトレーニングを受けなくても、シームレスに知識が伝達されます。これらのモデルにより、コスト・エンジニアは、広範なトレーニングを受けたり、技術的な専門知識を習得したりする必要なく、信頼性の高いコスト計算技術を利用できます。つまり、ZFの製品担当者は、Teamcenter Product Cost Managementを使用して、計算結果にすばやくアクセスできるのです。

排出量が二次通貨に

ZFは、Teamcenter Product Cost Managementを拡張するTeamcenter Carbon Footprint Calculatorソフトウェアを導入し、業界において重要性が高まっている排出量に対応しました。ZFは、排出量計算をパラメトリック・モデルに統合することで、コスト評価にカーボン・フットプリントの透明性を加えました。この2つに焦点を当てることによって、生産技術とエネルギーの使用方法に関して、より環境に優しい代替手段を追求しています。

「Teamcenter Carbon Footprint Calculatorは非常に役に立ちました。顧客に部品原価が10ユーロであることを伝えられるので、高いか安いか、お買い得かそうでないかをわかってもらえます。ある部品の排出量が18キログラムだと顧客に伝えても、それが多いのか少ないのか理解しづらい人もいるでしょう。Teamcenter Product Cost Managementを使用すると、誰もが排出量と最初の数値について理解し、排出量に対する感覚をつかむことができます。」とRoth氏は述べています。

コストと排出量のバランスを取る

ZFは、計算がベストプラクティスに沿っているかを確認するために、計算を継続的にチェックしています。材料の無駄と電力使用量を削減する新しい製造技術をできる限り取り入れ、排出量を減少させています。ZFは、Teamcenter Product Cost Managementのデータに基づいた知見を活用することで、コストと排出量のトレードオフに対処しています。グリーン・エネルギーや効率的なテクノロジーは往々にしてコストを上昇させますが、ZFは事実に基づいた意思決定と顧客やサプライヤーとの協調的な話し合いにより、こうした課題を軽減しています。

「Teamcenter Product Cost Managementのおかげで、コストとCO2排出量を透明化できました。Teamcenterから得られた事実や数字を使って、最適化について話し合い、現実に近いデータで顧客やサプライヤーに納得してもらうことができます。Teamcenter Product Cost Managementを使用することで、コスト・エンジニアリング部門と管理部門がシームレスに連携し、データのセキュリティ、透明性、品質、意思決定のスピードが高まります。」とRoth氏は語りました。

コスト・エンジニアリング担当バイスプレジデントのClaus Ammon氏は次のように述べています。「Teamcenter Product Cost Managementは、当社が業界トップクラスのコスト・エンジニアリング企業としての地位を確固たるものにするために選択したツールであり、当社の可能性をさらに広げてくれるでしょう。」

卓越性を高く評価される

ZFのコスト・エンジニアリング部門は、デジタライゼーションとプロセス自動化の部門で社内優秀賞も受賞しました。2〜3分間のボトムアップ計算のライブデモでは、Teamcenter Product Cost Managementがもたらす変革の可能性を紹介し、その効率性と有効性が高く評価されました。

利用の拡大

ZFは、Teamcenter Product Cost Managementのパラメトリック計算ツールを管理部門にも導入し、そのメリットをグローバルに展開する予定です。パラメトリック・モデル作成の投資回収期間は通常1年足らずであり、ZFにとってのパラメトリック・モデルの価値を明確に示しています。

ZFとシーメンスのパートナーシップは、高度なテクノロジーをコスト・エンジニアリングと環境管理に統合した実例です。ZFは、Teamcenter Product Cost Managementのような革新的なツールを使用して、プロセスを加速し、専門知識を維持しただけでなく、持続可能性をビジネスの中心的価値に組み込みました。