シーメンスのソリューションでまったく新たなビジネスモデルを築いたYouniQ Machining
YouniQ Machiningは、抜群の顧客サービスを提供し、比類のない敏捷性とスピードで3Dモデルを高品質のワークピースに変換する独自のワークフローを開発しました。
YouniQ Machiningは、主にテストと測定に使用する小型の治具や部品の加工に著しく問題があった状況を解決しようと2017年11月に設立されました。このような部品の生産は通常、外部委託されていますが、委託先の生産設備が不十分なため、顧客の要求を満たせていませんでした。従来の機械加工プロセスで製造すると、単一部品の製造に8~12週間かかります。一方、3Dプリント・プロセスで製造すると、多くの部品はリードタイムがわずか2営業日にまで短縮します。YouniQ Machiningは、機械加工業界でも同様のリードタイム短縮が可能なのではないかと考えました。
アディティブ・マニュファクチャリング/3Dプリント技術は、オンライン・プラットフォームが一般に受け入れられるようになった頃に登場しました。3Dプリント・サービスを提供する多くの企業は、当初からWebベースのプラットフォームに重点を置いたビジネスモデルを築いていました。対照的に、産業用機械加工業界は非常に保守的です。しかし、YouniQ Machiningは、機械加工業界に3Dプリント技術を導入する可能性と限界を調査した結果、リードタイムを大幅に短縮できない理由を見つけられませんでした。
唯一、リードタイムの短縮を妨げかねない要因と考えられたのが、機械加工で求められる厳格な寸法公差でした。しかし、詳しく調査した結果、この厳格な公差は必ずしも必要ではないことがわかりました。ほとんどのマシンショップでは、過度に厳格な汎用の公差グレードを指定した2D技術図面に基づいて公差が決められていたからです。ぴったり嵌め合わさるISOの嵌合公差のシステムをもとにしたものでした。これ以外にも、リードタイムを長くしている要因として、作業負荷がかかり過ぎる生産施設や、熟練人材の不足、保守的過ぎるプロセス、材料の入手難などがありました。
YouniQ Machiningの主な課題は、1個や数個の1回限りの部品を機械加工する従来のやり方をやめて、まったく新しいビジネスモデルを築くことでした。そこで、受注の受け入れから評価、生産、納品にいたるプロセス全体をゼロから見直しました。新たなアプローチを実現するには、プロセスのあらゆる面をデジタル化するしかありませんでした。
YouniQ Machiningは、注文から生産までのサイクルを合理化して加速するデジタルフローを考案しました。つまり、3Dプリント・サービスによる効率とスピードを機械加工プロセスに取り入れた、Webベースのマシンショップです。このデジタルフローは顧客側から開始します。まず、必要なコンポーネントの3Dモデルを任意のCAD (コンピューター支援設計) プログラムで作成し、そのCADファイルをWebポータルにアップロードします。ファイルを受け取ったYouniQは、モデルの製造可能性を自動で解析し、シミュレーションによって判明した加工時間と材料に基づいて見積もりを作成します。また、加工の仕上がりが分かるように、ダウンロード可能な3Dの部品モデルを顧客に提供します。顧客はそれをもとに、アセンブリへの嵌め合わせ具合などを確認できます。必要に応じて、材料や数量、納品要件、加工後の処理などを調整した後、正式に発注します。その後、コンピューター生成されたプログラムにしたがって、YouniQのスタッフが同社の最新のマシンショップで部品を製造します。完成品は顧客が指定した時間と場所に納品されるように手配します。
Webベースのマシンショップの構築で特に難しかったのが、Web環境とCAD (コンピューター支援設計) およびCAM (コンピューター支援製造) ソリューションを接続することでした。既成のソリューションがなかったため、YouniQがすべて手でプログラムしなければなりませんでした。そのため、強力なアプリケーション・プログラミング・インターフェース (API) を備えたCAD/CAMソリューションが必須でした。
YouniQ Machiningは当初、Webとの統合に優れたCAD/CAMソリューション・プロバイダーを試してみましたが、同社はAPIの要件を満たしていませんでした。その後、強力なAPI機能を備えた別のCAMソリューション・プロバイダーを見つけましたが、Webとの統合機能とCAD機能がありませんでした。最終的に、YouniQ Machiningのすべての要件を満たすソリューションを提供するシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアを見つけ、採用を決めました。
シーメンスは、NX™製品開発ソフトウェアを通じて、クラス最高のCAD/CAM統合機能とアプリケーション・プログラミング機能を提供していたため、すぐに他のサプライヤーに勝る機能を発揮し、その完全なオープン性によって無限の可能性をもたらしました。これまで直面していた溝をすべて埋めたのが、JT™データ形式によるNXのWeb統合機能と、プログラミングとカスタマイズを可能にするNXオープンAPIでした。こうした機能が組み合わさって、オープンな環境、優れたプログラミングの可能性、非常に強力なCADとの接続機能が実現し、その重要性は時間の経過とともにさらに増しています。
YouniQは、シーメンスのソリューションを使用したエンドツーエンドのデジタライゼーションを通じて、従来のプロセスを見直しました。その結果、新しいプロセスでは、顧客に対して明確で透明性のある価格設定と、製造可能性に関する直接のフィードバック、仕上げ方法の選択肢、コストとリードタイムの削減につながる設計変更案を提示できるようになりました。最も重要なことは、プロセスの合理化とデジタル化によって、納品までにかかっていた時間が、8~12週間からわずか2日に短縮できたことです。また、このプロセスでは、顧客側が詳細な2D技術図面を提供する必要もなくなりました。
この新たなプロセスを実現させたNXソリューションの重要な機能が、シンクロナス・モデリング技術です。この技術によって、ソースとなるCADシステムに関係なく、コンポーネントのジオメトリを直接編集できるようになったため、元のCAD設計を手動で変更する必要がなくなりました。YouniQ MachiningはNXを使用することで、部品を簡単に設計し直し、すべての仕様と公差を要件に一致させられるようになりました。
NX CAMのフィーチャベース加工機能も、デジタルフローには欠かせない重要な役割を果たします。フィーチャベース加工機能を使うと、コンポーネント・モデルのフィーチャに基づいてNC (数値制御) プログラムを自動で生成できます。YouniQのエンジニアは、マシン・ナレッジ・エディター (MKE) と呼ばれる機能を使って、フィーチャ加工に使用したすべてのルールとツールを記録しており、NCプログラミングの自動化に使用する知識とデータを取り込んでいます。
YouniQ Machiningは、Webベースのマシンショップ機能と自動化したワークフローにより、競合他社が通常8~12週間かかるところ、2日間で納品できるようになりました (早急オプションの場合)。これ以外にも、5営業日で納品する通常オプションと15営業日で納品する割安オプションというコスト削減オプションを用意しています。
また、ワークフローを完全にデジタル化したことで、競合他社よりも高い利益率を得ることができ、将来的なイノベーションへの投資が可能になりました。スキルの高い専門人材への依存も減らし、事務的な処理作業も軽減して、コア業務である機械加工に集中できるようになりました。NXでプロセスを定義し、プログラミングしたことで、開発プロセスと生産装置を標準化することができました。
こうした目覚ましい成果を達成するうえで重要な役割を果たしてきたのは、シーメンスのNX CAMソリューションだけではありません。Emixa Industry Solutionsの高度な専門サポートとコンサルティングも、ともにこの成果を支えてきました。シーメンスのプラチナ・パートナーであるEmixa Industry Solutionsは、シーメンスのNX CAD/CAM、自動化、およびポスト・プロセッシングに関する深い知識と、業界の豊富な知識を活かして、YouniQ Machiningのビジネスニーズを具体的な提案とソリューションに変えることができました。高度な技術ソリューションで、要求の厳しい顧客をサポートしてきた豊富な経験を持つEmixa Industry Solutionsは、ダウンタイムや混乱を最小限に抑えながら、素早く効率的な導入を実現させました。さらに、Emixa Industry Solutionsは、継続的なフィードバック・ループによって今後の課題や変化にも対応します。
将来的にYouniQ Machiningは、顧客が2D図面なしで公差を追加したり、高度なアルゴリズムを使用することで手動の製品承認を廃止したりなど、Web環境のインタラクティブ性を高めようと取り組んでいます。また、製品・製造情報 (PMI: 部品モデルの3D注釈) の処理を自動化して、モデルベース設計をサポートするほか、提供する材料の種類を増やすことも検討しています。