ユーザー事例

アジア太平洋地域へのビジネス拡大を支えるプロセス・プランニング・ツール

Automotive OEM uses Tecnomatix and Teamcenter to capture and communicate best-practice production methodologies, and support its unique flexible manufacturing concept

Process planning tools support Volvo Cars’ expansion to Asia Pacific region

Volvo Cars

ボルボ・カー・コーポレーションは大手高級車メーカーです。カーラインナップは、セダン、多目的エステート(ワゴン)、SUV/クロスカントリー、カブリオレ/クーペを揃えています。同社の戦略は、成熟市場における同社のプレゼンスを引き続き強化しながら、新興市場の将来性に一気に資本投下することです。

http://www.volvocars.com

本社:
Gothenburg, Sweden
製品:
Teamcenter, Tecnomatix
業種:
自動車 / 輸送機器

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Volvo Cars 事例

激しい変化に対処する高級車メーカー

スウェーデンを本拠とするボルボ・カー・コーポレーション(以下、ボルボ・カーズ)は大手高級車メーカーです。同社は2000年~2010年までフォード・モーターの傘下でしたが、2010年に中国の浙江吉利控股集団に買収されました。ボルボ・カーズのビジョンは、「世界で最も先進的で、誰もが切望するラグジュアリーカー・ブランドであり続けること」です。

ボルボ・カーズは、ブランド力で言えば比較的小さなメーカーであり、主要市場におけるシェアは1~2%に過ぎません(2011年現在)。カーラインナップは、セダン(S)、エステート(V)、SUV/クロスカントリー(XC)、カブリオレ/クーペ(C)を揃えています。ボルボ・カーズは、2011年から2015年までに総額100億ドルを投資するという果敢な製品開発計画を進めています。2020年までに年間販売台数を80万台に伸ばす計画です。

ボルボ・カーズはフォードとの合弁企業も含め、10年以上もの間フォードの傘下にあったため、業務プロセスもフォードと共有していました。しかし、フォードから分離してからは、独立企業としての経営を推し進め、業務プロセスの見直しを進めています。

ボルボ・カーズのブランドはラグジュアリーカーに属します。この市場セグメントで成功するには、人に注目されるクルマ、つまり、お客様の夢と要望を叶えるクルマをデザインできるかどうかにかかっています。その中核となる戦略は、成熟市場における同社のプレゼンスを引き続き強化しながら、新興市場の将来性に一気に資本投下することです。その成長戦略は、同社にとって中国を米国に続く第二の主要市場に育て上げることです。そのために、ボルボ・カーズは中国に新工場を建設し、大規模な投資を行って、新型のグローバルカーの開発につなげる計画です。しかし、同社の明確な戦略は、自動車がどこで生産されようと、統一したグローバルな製造システムと品質管理システムを適用することです。

シーメンスPLMソフトウェアのツールの長年にわたる活用

ますます増大するエンジニアリングと製造上の課題に対処するため、ボルボ・カーズはシーメンスPLMソフトウェアのさまざまなツールを活用しています。ボルボ・カーズは製品開発プロセスにおけるさまざまな用途に、エンジニアリング・プロセス管理、ライフサイクル・ビジュアライゼーション、要件管理などの多くのTeamcenter®ソフトウェアを活用しています。また、製造プロセスの管理、プランニング、シミュレーションにTeamcenterの製造プロセス管理機能と、Process Designer、Process Simulate、Robcad™などのTecnomatix®ソフトウェアの各種ツールを活用しています。

ボルボ・カーズがシーメンスPLMソフトウェアのツールを活用し始めたのは、ロボットによる製造ラインをシミュレートするために、1990年代初頭に導入したRobcadからです。今では、このRobcadとProcess Simulateを使って、ホワイトボディ(BiW)製造ライン、最終組立製造ライン、塗装ラインをプランニングしてシミュレートし、このプロセス全体をTeamcenterとProcess Designerで管理しています。これらのソリューションのユーザ・インターフェースはどれもユーザ・フレンドリーであるため、その活用が促進されています。加えて、ボルボ・カーズの生産ライン建設プロジェクトを請け負っているライン・ビルダーやデザイン・ハウスも、これらのソリューションとのインタラクションに長い実績を有して良好なコラボレーション関係を維持しています。

ひとつのホワイトボディ製造ラインで多車種の製造に対応

高級車市場を相手にする自動車メーカーとして、ボルボ・カーズは、量産車に重点を置く他社メーカーと比べると、その生産量は多くありません。したがって、同社の戦略としては、多車種の製造に対応できるモジュール型の柔軟な製造ラインを構築するということになります。ボルボ・カーズ・ヨーテボリ・トースランダ工場のホワイトボディ製造メインラインでは、V60、V70、S80の車種の製造に対応可能であると、ボルボ・カーズ情報技術部門のシニアBiWビジネス・アナリストは述べています。このような製造ラインを構築するには、多種多様な溶接ステーションの複雑なモデリングと厳しいテストが要求されます。ボルボ・カーズでは、各ステーションにおけるロボット動作のシナリオを正確にシミュレートして、最終的にはそのロボット・プログラムを実際のロボットにダウンロードできる各種機能を備えたProcess Simulateを活用しなければ、この複雑性に対処できませんでした。例えば、さまざまなパネルを溶接して、シャーシ作りの最初のステップとなるフレーミング・ステーションひとつを取ってみても、その複雑性はかなりのものですが、同じステーションで多車種を扱うとなると、その複雑性のレベルはさらに高まります。このような複雑性に対処するには、シーメンスPLMソフトウェアのProcess Simulateソフトウェアを使うのが一番であると、ボルボ・カーズは見ています。

しばらくして、ボルボ・カーズはシミュレーション・データの管理にシーメンスPLMソフトウェアのデータ管理基盤を導入し、このソリューションによって、ボルボ・カーズでは、最新の製品データを使ってシミュレートするまでの時間を大幅に削減しています。さらに、自動車開発プログラムには大量のプロセス・ドキュメントがつきものですが、ボルボ・カーズでは、Tecnomatixを使ってエンジニアリング・ドキュメントの作成を自動化しています。これにより、ドキュメント作成に要する時間は以前の10%にまで短縮しています。

製造エンジニアリングのナレッジを全世界に展開

ボルボ・カーズは、成長戦略に沿って中国に生産拠点を建設する計画です。そのためには、大量の製造エンジニアリング・ナレッジを中国の生産拠点にも展開する必要があります。限られた期間内に新しい製造工場を建設して、しかも製品品質を高レベルに維持する必要に迫られたボルボ・カーズは、ナレッジを展開するための高度な手法を取ることにしました。すなわち、Tecnomatixツールを単に中国でも活用するというだけでなく、同社がヨーロッパ中の工場で長年にわたって蓄積してきた製造エンジニアリング手法のベストプラクティスと組み合わせて活用することに決めました。

最終組立の多様なバリエーションに対応

ボルボ・カーズのアドバンスト・エンジニアリング/ITメソッド・グループのシニア・マネージャーによると、Teamcenterの製造プロセス管理機能をさまざまなFA(最終組み立て)ラインのプランニングに使用しています。一般的なFAラインの構築プロジェクトには、多種多様な製品バリエーション、部品、ユーザ、製品変更が相互に関係し合い、その結果、度重なるプロセス変更が発生します。ボルボ・カーズでは、こうした幾重もの複雑性に対処するために、部品をツールや組立プロセスに直接関係付けるTeamcenterの製造プロセス管理機能を活用しています。Teamcenterが提供する統合エンジニアリング環境内で製品開発者と製造エンジニアがコラボレートしているのです。さらに、製造エンジニアは最新の製品データを扱うことができ、同社ではこれを大きなメリットのひとつに上げています。データ管理と度重なる変更への対応におけるTeamcenter独自の強力な機能によって、ボルボ・カーズでは、さまざまな製品バリエーションにわたる影響をテストして特定できるだけでなく、製品変更に伴い必要となるプロセス変更までも評価しています。

既設の製造ラインに別のモデルの製造を移管

ボルボ・カーズは、2008年にXC60 SUVを市場投入しました。この新型車は同社のベストセラーモデルとなっており、このモデルへの需要の高まりに応えるため、ボルボ・カーズでは、S60モデルの生産をベルギー・ヘント工場からヨーテボリ・トースランダ工場に移管して、ベルギー・ヘント工場でのXC60モデルの生産能力をできるだけ短期間で増大させる計画です。これを実現するには、S60モデルの生産を既設の製造ラインに移管することになります。ボルボ・カーズ製造エンジニアリング部門のロボットシミュレーション・マネージャーは、この生産移管はかなりハードルの高いシナリオであることを認めています。ヨーテボリ・トースランダ工場のホワイトボディ製造ラインの変更に許される時間は、週末に工場が停止する間の22~24時間しかありません。そのため、オフラインでプログラミングしてシミュレートした非常に精度の高いロボット・プログラムを組むことから作業を始めなければ、これを実現することはできません。しかし、ボルボ・カーズは、エンジニアの高度な専門知識、Process Simulateツールが提供するオフライン・プログラミング機能とリアルなロボット・シミュレーション機能を活用することで、この高いハードルを乗り越えることができます。非常に精度の高いロボット・プログラムを作成して、製造現場での変更を極力抑えることによって、これを実現しようとしています。

Tecnomatixツールの強力な機能とユーザ・フレンドリーな操作性のおかげで、ボルボ・カーズのシミュレーション部門は現在、より多くのアウトプットを生成し、より多くの製造シナリオをシミュレートし、しかも、これらの作業を以前よりも少人数でこなしていると、ボルボ・カーズのロボットシミュレーション・マネージャーは指摘しています。例えば、ホワイトボディの製造について言えば、スポット溶接、レーザー溶接、接着の各プロセスのロボット・プログラミングを98%オフラインで行っていますが、これを限りなく100%に近づける努力が今なおされています。これが可能になっているのも、さまざまなロボット・モデルにも対応するTecnomatixツールのオープン性とシーメンスPLMソフトウェアの優れた協力があってこそであると、ロボットシミュレーション・マネージャーは付け加えています。

設計にコスト要素を入れる

新しい製造ラインのコンセプト開発にTecnomatixを使用すると、製造ラインをプランニングして、ビジュアル化し、シミュレートできるだけでなく、コンセプト開発の早期にコスト評価を行うことができます。つまり、要件の変更やツールの変更に伴うコストへの影響を明確に把握することができます。従来の手法ではできなかったことです。Tecnomatixを使用すると、プログラム・マネージャーは、品質、生産能力、コスト目標を満たす最適な工程設計コンセプトを容易に見極めることができるようになります。

将来の展望:電気自動車、そしてその先を目指して

ボルボ・カーズは現在、完全電気自動車とハイブリッド自動車を投入して、電気自動車分野にも進出しています。完全電気自動車はすでに2011年に販売を開始しています。このボルボC30エレクトリックは完全バッテリー駆動の電気モーターを特徴とし、ゼロ・エミッションを実現しています。ボルボ・カーズのアドバンスト・エンジニアリング・グループのシニア・マネージャーは、この電気自動車は、C30シリーズの他のモデルと大きく異なるにもかかわらず、現状では同じ製造ラインで生産する必要があるため、その製造において数多くの課題があると言います。例えば、バッテリーの装填はFAラインにおいてまったく新しいプロセスとなり、また、まったく新しい電気系統を搭載するために、ホワイトボディ製造ラインにおいても数多くの変更を伴います。ボルボ・カーズのシニア製造エンジニアリング・マネージャーは、Tecnomatixなどの専用ツールがあるからこそ、この複雑性にも対処できると強調しています。

Teamcenterの製造プロセス管理機能、そして完全統合されているProcess Simulateを活用することのメリットを享受しているボルボ・カーズは、より多くの製造エンジニアリング業務にシーメンスPLMソフトウェアのソリューションの活用を拡げる計画です。さらに現在、ロボットのシミュレーションだけでなく、製造ライン内でプログラマブル・ロジック・コントローラのシミュレーションも行えるプログラミング機能やバーチャル・コミッショニング・シミュレーション機能などのシーメンスPLMソフトウェアが新たに提供する有望なテクノロジについても、導入のための評価を行っています。さらに、シーメンスPLMソフトウェアのエンタープライズBOP(Bill-of-Process: 生産工程情報)テクノロジにも注目しています。このテクノロジを使えば、複数の工場間で同様の製品を製造するときの生産に関するナレッジを管理できると期待しています。

以前、ボルボ・カーズでは、Tecnomatixツールの活用によるROI(投資効果)を測定していました。Tecnomatixツールを使って製造ラインをプランニングしてシミュレートすると、エンジニアリング・コストが50%削減したという結果が出ています。しかし、現在ではこのような計算はしていません。Tecnomatixツールはボルボ・カーズのエンジニアリング・プロセスにしっかり組み込まれた必要不可欠な存在になっているからです。

Premium car manufacturer addresses significant change