ユーザー事例

英国のチームが欧州初の火星への探査機打ち上げ計画に向けて次世代の宇宙科学機器を開発

Use of NX and Teamcenter enables greater innovation, improved quality and significantly reduced cost

レスター大学

レスター大学の物理天文学部に所属するスぺース・リサーチ・センターには、宇宙科学/装置グループと地球観測科学グループがあり、NASA および欧州宇宙機関などの組織と共同で科学機器およびシステムの開発を行っています。

http://www2.le.ac.uk/departments/physics/research/src

本社:
Leicester, United Kingdom
製品:
NX, Simcenter 3D Solutions, Teamcenter
業種:
航空宇宙 / 防衛

共有

NX は非常に強力です。NXによって設計や製造のさまざまな段階をシームレスに移動できるツールを手に入れることができます。また、サイクル全体を統合することもできます。
Ivor McDonnell, Senior Mechanical Engineer, University of Leicester Space Research Centre

レスター大学 事例

ミッション・クリティカルなパフォーマンス

1 つのハードウェアを宇宙に運ぶには1 キログラムあたり30,000 ドル以上もかかり、一度地球を離れると問題を修復できるチャンスはほとんどありません。パフォーマンス基準を満たすため、厳しい基準に合わせた設計、シミュレーション、および製造を行う際に、レスター大学のスペース・リサーチ・センター(以下、「スペース・リサーチ・センター」または略して「同センター」と呼ぶ)の科学者やエンジニアたちが頼っているのは、 NX™やTeamcenter®です。

同センターは、これまで50 年間にわたって宇宙研究に携わり、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関などのパートナーと緊密に連携してきました。同センターでは、センサー、望遠鏡、分光計、その他の科学機器に加えて、関連する機械構造、電子部品、ならびに発電システムを開発しています。同センターのプロジェクトには、太陽系にある地球や他の惑星だけでなく、宇宙にある他の星および銀河を研究する計画も含まれています。同センターは、実験室やオンサイトの製造施設といった幅広い設備を備えているため、ライフサイエンス、偽造テクノロジー、美術史、医療などの複数の分野にまたがる研究も行っています。スタッフや学生たちは、プロジェクトのライフサイクルを支える基盤としてNX とTeamcenter(どちらもシーメンスPLM ソフトウェア製品)を使用しています。それらのプロジェクトには、2018 年に実施予定の欧州初の火星への探査機打ち上げ計画も含まれています。

スぺース・リサーチ・センターを運営するJohn Pye 博士は、次のように述べています。「装置を宇宙に送り込むには、大規模な開発プログラムが必要になります。ハードウェアは求められたパフォーマンスを実証できるだけでなく、厳密な追跡調査と品質管理が可能である必要があります。これらすべてを厳しいコストおよびスケジュール上の制約の中で行わなければなりません。」

機械設計分析チームは、15 年前に現在のNX の初期のバージョンであるNX I-deasを使用し始めました。

スぺース・リサーチ・センターのコンピューター支援設計(CAD)責任者、そして機械エンジニアでもあるPiyal Samara-Ratna 氏によれば、当時グループは主に3D モデリングツールを使用して簡単な構成を開発し、それらを使用して熱構造テストを行っていました。「詳細な設計の大部分は単に2D で行われ、サードパーティのソフトウェアまたは手動によるツールのいずれかを使用して製造を行っていました。この方法では、同じ情報を繰り返す必要があり、ミスのリスクが高く、パフォーマンスの観点からも最適ではありませんでした」と同氏は述べています。

設計から生産までのワークフローの変更

同センターは、I-deas からNX への移行およびTeamcenter の導入を完了させると、そのワークフローを変更しました。「NXモデリング・ツールにより、複雑な2 次元図面の制作に重点を置く必要がなくなりました。このセンターでは、パラメトリックモデリング技術やWAVE リンクを多用してジオメトリを作成します。寸法を変更すると、アセンブリ全体に反映されます。このため、刻々と変化する要件に迅速に対応することができるようになりました。」

同センターでは、NX CAM を使用して3 台のTryax4 軸ミリングマシンと1 台のコンピューター数値制御(CNC)旋盤を運用しています。これらの装置は、エンジニアから直接送られた、Teamcenter で 管理されているモデルを受け取ることができます。同センターでは、プロトタイプの制作やデモなどに使用される3D プリンターも所有しています。「最初、会議用のモデルを制作するときにプロトタイピング・ツールを使用していましたが、今ではそれらを設計に一層使用するようになっています。とりわけ、設計を融合させるときに、ツールのアクセスを理解する必要がある場合や画面上の表示だけでは十分でない場合に使用する機会が増えています。」

設計から生産までの完全なサイクルをTeamcenter で管理することができます。また、Teamcenter を使用して、製造プロセスで生じるツールパスなどの情報を収集することもできます。スタッフは、希望する日付および数量を指定することができます。すると、製造チームがトレーサビリティ情報などの他のデータを追加します。さらに、サインオフ・チームが検証プロセスなどを詳述した製造後点検レポート追加します。ステータス機能を使用することで、データを保護できるだけでなく、社内で作業済みの場合や外注済みの場合などのように該当するプロセスを要約することもできます。ワークフロー全体について十分と思われる監査を行うことができます。

構想から発射場まで

“「NX は非常に強力である」と、スぺース・リサーチ・センターでMIXS(Mercury Imaging X-ray Telescope: 水星画像X 線望遠鏡)装置のシニア機械エンジニアとして働くIvor McDonnell 氏は言います。MIXS は、欧州宇宙機関のベピコロンボ計画により2015 年に水星に打ち上げられることになっています。McDonnell 氏は次のように述べています。「NX によって設計や製造のさまざまな段階をシームレスに移動できるツールを手に入れることができます。また、サイクル全体を統合することもできます。私たちは、多方面にわたってMIXS プロジェクトに積極的に参加してきました。現在では、NX およびNX Nastran®を使用して、振動試験から打ち上げ負荷のシミュレーションまで、主要なすべてのテストをサポートしています。特に、NX ツールは実際の設計環境を効率良く連携させる点で効果的だと思います。」

NX とTeamcenter を使用することの恩恵を受けている別のプロジェクトとして、2018 年にハッブル宇宙望遠鏡を交換することを目指して設立されたJWST(James Webb Space Telescope:ジェーム ズウェッブ宇宙望遠鏡)プロジェクトがあります。この望遠鏡の主鏡は、ハッブルのものに比べて6 倍の面積を持ち、それを保護するためのテニスコートほどの大きさの日よけを備えています。レスター大学は、極めて困難なプロジェクトである、この国際的なコンソーシアムに主導的な機械エンジニアリング・チームとして参加し、鏡の後ろに設置される4 つの科学機器の1 つであるMIRI(Mid Infrared Instrument:中間赤外線観測装置)を開発しています。スぺース・リサーチ・センターでMIRI の主任機械エンジニアとして働くJon Sykes 氏は次のようにコメントしています。「NX は、装置のあらゆる機械的な側面やツールのアクセスなどの割り当てられたエンベロープを見たり、装置をNASA まで輸送するための地上支援装置を設計したりするのに非常に便利だと思います。NX は、一般的なシステムに比べてコストがかなり低い、革新的なソリューションです。プロタイプ・モデルをNASA に送ることで無事に試験を行うことができました。」

コラボレーションの強化によるサイクルの短縮

Samara-Ratna 氏は次のようにも述べています。「NX とTeamcenter を使用することで、さらに多くのことを行うことができます。それらを組み合わせることで、幅広い分野のエキスパートが参加および交 流し、設計の問題について話し合うことができる、密接に連携された環境を構築できます。Teamcenter により、情報と管理を一元化できます。たとえば、火星探査機用に設計した私たちの装置について言えば、Teamcenter 内で完全に管理され ています。柔軟性と保護の両方を得ることができます。ミスがシステム内に広がることはありません。このため、誰かが悪影響を与える可能性がある変更を行ってしまう危険がありません。エレクトロニクス・エンジニアは、完全な3D 電子基板をモデル内にエクスポートできます。これらの電子部品設計と機械設計の融合により、効率は上がり、設計をやり直す時間が短縮されました。その結果、構想から最終製品までの時間が大幅に短縮されました。」

Samara-Ratna 氏は、続けてコラボレーションのメリットについても次のように説明しています。「私たちは、多くの機関とコラボレートしています。それらの機関は、大きいものもあれば小さいものもあり、それぞれが独自のソフトウェアを使用しています。NX では、異なるデータ形式を処理することができます。また、シンクロナス・テクノロジーにより、モデルをまるで自分たちの設計のように操作することができます。」

研究から実現まで

Samara-Ratna 氏は、同センターのサプライヤーであるチームエンジニアリングの貢献に喜んで感謝を述べています。同氏は次のように指摘しています。「チームエンジニアリングのエキスパートは、トレーニングやソフトウェアを提供するだけではありません。彼らは、ツールから最大の益を得られるように助けてくれるパートナーです。特に、テクノロジーの移行に関しては、本当に助けになりました。その結果、現在、私たちはEnglish Heritage と共同で、14 世紀の墓に描かれた歴史的な芸術をスキャンする作業を行っています。また、業界と一緒になって、高パフォーマンスのエンジニアリング・アプリケーションへの積層造形技術の利用を推進しています。」

Samara-Ratna 氏は次のように結論しています。「NX 製品開発ソリューションは、私たちの仕事に絶対に必要不可欠ですが、仕事を効率良く行うためにも欠かせない存在になっています。私たちは、NX のツールをより多くの学生たちに利用できるようにしています。また、エンジニアリング環境のメリットをプロジェクト管理にも拡張させています。」

NX とTeamcenter を使用することで、さらに多くのことを行うことができます。それらを組み合わせることで、幅広い分野のエキスパートが参加および交流し、設計の問題について話し合うことができる、密接に連携された環境を構築できます。
Piyal Samara-Ratna, Mechanical Engineer and CAD Administrator, University of Leicester Space Research Centre