電動自転車のモーター音響の診断と改善にSimcenterのテスト・ソリューションを使用したTrek Bicycle
Trek Bicycle (Trek) は、ウィスコンシン州ウォータールーに本社を持ち、1976年に設立されました。Trek Bicycleは、電動マウンテン・バイク、ロードバイク、シティバイクなど、さまざまなタイプの自転車や各種アクセサリーを設計し、製造しています。
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Simcenter SCADAS XSとSimcenter Testlab Neoソフトウェアを使用することで、正しい答えを得る方法よりも、 その答えが教えてくれることに集中できるようになりました。
Trek Bicycle (Trek) は、ウィスコンシン州ウォータールーに本社を持ち、1976年に設立されました。Trek Bicycleは、電動マウンテン・バイク、ロードバイク、シティバイクなど、さまざまなタイプの自転車や各種アクセサリーを設計し、製造しています。Trek Bicycleは、全製品を通じて継続的なイノベーションとハイテク性能の実現を目指しています。
Trek Bicycleは、
2022年7月に発売された先駆的な製品ラインFuel EXeバイクで革新を続けています。Fuel EXeは、利用者に静かな走行体験を提供するために設計されたハイパワーの電動マウンテン・バイクです。Fuel EXeは高品質のTrekデザイン、高水準のコンポーネント、軽量かつ強靭なフレームを備えており、利用者の音響体験を向上させるために設計された包括的な電動モーターを搭載しています。Trek Bicycleは、電動自転車の音響特性に着目したメーカーであり、経験豊富なマウンテン・バイク (MTB) エンジニアや、同じように自転車に熱意を注ぐ専門の解析担当者を含む革新的な自転車エンジニアリング・グループで知られており、音響のような新しいパフォーマンス指標を測定して定量的な洞察をもたらしています。
Trek Bicycleは、電動マウンテン・バイクの指標として音質に着目する先進的なコンセプトのパイオニアであり、業界では引き続き大きな話題となっています。
Trek
パフォーマンス研究グループで主任研究開発 (R&D) エンジニアを務めるPaul Harder氏は次のように説明しています。「Trekの音響試験および解析の専門家として、これは私にとって新しい役割であるだけでなく、自転車業界にとっても新しいタイプの役割でした。私たちは、Trekの音響性能を次のレベルに引き上げるとともに、新しいテストおよび解析方法をFuel EXe開発サイクルに適用することを目指しました。
それは、前例のないことがいくつも同時に起こった、かなり困難な事業でした」
Trek Bicycleのパフォーマンス研究グループの研究開発エンジニアは、実験とシミュレーションに専念し続け、新しいプロトタイプのアイデアを試したり、バイクの物理特性や人間のパフォーマンスに関する新しい知識を求めて実験を行ったりする傾向があります。この新しい知識の探求が、チームを音質の領域に導きました。
Harder氏は次のように述べています。「長年にわたり、業界は電動自転車のモーターとバッテリー・システムの小型化、軽量化、統合化、そしてペダル操作の『自然さ』を実現するために多くの進歩を遂げてきました。しかし、電動モーターやギアボックス・システムに固有のノイズは多くの場合、共通の欠点として残っていました。Fuel EXeでは、パズルの最後のピースを改善し、欠点のない電動自転車を作る
ユニークな機会を得ました」
この電動自転車を製造するために、Trek Bicycleはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと提携し、設計プロセスの一部としてSimcenter™ソフトウェアを使用してFuel EXeに命を吹き込みました。Simcenterは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスで構成されるビジネス・プラットフォーム、Siemens Xceleratorの一部です。
同社チームは、電気自動車 (EV) 業界にインスピレーションを求めました。自動車業界のEV黎明期と同様に、電動自転車の音響の世界にもチャンスがあることに気づいたのです。Trekチームは、Fuel EXeの音響体験と不快な音に関してどんな選択肢があるかを調べるために、あらゆる音響特性を調査しました。これには、調性や明瞭度指数など、電動自転車分野における業界初の音響指標の調査が含まれていました。
Harder氏は次のように補足しています。「私はほとんどの場合、ほかの人と一緒に自転車に乗るので、会話を妨げる騒音が気になります。これは明瞭度指数に関連しています。不快さの主要な指標として調性を使用するのは、電動モーターに一般的に適用される多くの音質指標について、かなり多くの調査と研究を行った結果です」
Harder氏とTrek BicycleのMTBエンジニアリング・チームは、Fuel EXeの音響体験が電動モーターに大きく依存していることを知っていました。チームはTQのHPR120モーターを使用していましたが、これは強力とは言え、かなり大きな音のモーターです。チームは、小型で静かな別のモーターを探していました。TQのハーモニック・ピンリング技術は可動部品を最小限に抑え、独自のギア噛み合わせを採用しているため、より静かな新型モーターを製造する上で役立つ可能性があることを発見しました。
Harder氏は次のように説明しています。「私たちは、電動モーターのOEMであるTQと独占的なパートナーシップを結んでおり、仕様の策定や電動モーターのテストにおいて効果的な協力関係を築くことができます。このコラボレーションにより、Fuel EXeとDomane+にHPR50電動モーターが搭載されました」
Trek BicycleのチームはSimcenter Testlabを活用し、音響テストとエンジニアリングの観点から「本当に良い音」
の意味を定義しました。
Trek BicycleとTQの間でいつものようにやり取りが行われた後、HPR50を搭載したプロトタイプがテストコースに出る準備が整いました。Trekのテストライダーたちは、HPR50
電動モーターのプロトタイプが本当に良い音だと思いました。これは素晴らしいニュースでしたが、Harder氏はまだやるべきことがあると知っていました。
「私たちのチームは、確かな音響テストと解析機能を開発していましたが、電動自転車の文脈で『本当に良い音』が何を意味するかを定量化する方法を見つけ出す必要がありました。新しいTQモーターの主要な目標として、音響を掲げていました。開発プロセス全体を通じて、多くのプロトタイプの反復間で意思決定を行う際に、解析を使用してそれを定量化し、理解し、追跡しました」とHarder氏。
チームはラウドネスの測定から始め、Fuel EXeは他の電動自転車の約2倍静かだということを発見しましたが、テストライダーは、主観的にどれだけ良い音を出すかについて、あまり重要視していませんでした。
Harder氏は次のように解説します。「この時点で、電動自転車の体験にとって音質がいかに重要であるか、また、電動モーターの騒音の快適さを定量化するための重要な指標として、調性がいかに重要であるかを実感しました。これらの音の描写を定量化する方法について、もう少しスマートなアプローチが必要だと思っていました。そこで私たちは音質の側面に移りましたが、これにはたくさんの
オプションがあります。EVの音響空間を詳しく調べ、調性がベストプラクティスであることが分かりました」
最初のテストライドの後、チームはより具体的な音響データを必要としていました。同チームは、Trekのマウンテン・バイク専用トレイルがあるウィスコンシン州ウォータールーのTrek Bicycle工場本社にある音響スタジオに向かい、より実験的な音響解析を行いました。これには
、ポータブルなSimcenter SCADAS™ XSハードウェアや、複数領域にわたるテストベースのパフォーマンス・エンジニアリングのための次世代ソフトウェア・プラットフォームであるSimcenter Testlab™ NeoソフトウェアなどのSimcenterテスト・ソリューションを使用し、ラウドネス、調性、明瞭度指数などの音響強度と音質の指標が含まれていました。
「Simcenter SCADAS XSを使用してフィールド・テストを実施するのは非常に簡単です。なぜなら、サイクル・ジャージのポケットに収まり、バイノーラル・ヘッドセットとシームレスに統合され、屋外のタブレットでSimcenter Testlab Scopeアプリを使ってワイヤレスで制御できるからです。トレイルテストでは、GPSとアクション・カメラも使用して、Simcenter Testlab Neoでデータを視覚化しました」とHarder氏。
ラボテストのセットアップには、Simcenter SCADAS XS、プロ仕様のマイク、総抵抗を300Wに設定した音響分離された固定トレーナー、そしてもちろん、最大アシストモードに調整されたTrek Fuel EXeが含まれていました。Trekチームは、ECMA-74:2019規格に準拠したSimcenter Testlab Neoを使用して調性を計算しました。
Harder氏は次のように語っています。「さまざまな音質指標を調査した結果、利用者が聴いている音を最もよく表しているのは調性であることが明らかになりました。Simcenter Testlabを使用したおかげで、プロミネンス比や明瞭度指数など、他の関連指標を簡単に調べることができました。数日間、手作業でアルゴリズムをコーディングしたのに、それがこのテストに役立つ指標ではないと気付くほど最悪なことはありません」
Harder氏とチームは、プロトタイピングのプロセス全体を通じてフィードバックを提供し、最終的に電動自転車のモーター音響を診断して改善するための先進的な手法を作り上げました。最終段階として、最終生産モーターを使用して、フィールドとラボの結果を無響室で2日間、検証しました。最終的な結果は、Simcenterを使用することで、他の一般的な電動マウンテン・バイクに比べて5倍も快適で、2倍近くも静かなFuel EXeの設計に役立ったことが証明されました。
Fuel EXeとHPR50の生産が開始されると、Trekパフォーマンス研究グループは、最先端の電動自転車の音響設計に取り組んでいたことに気づきました。
Harder氏は次のように振り返っています。「人間の音の知覚を定量化する作業は非常に複雑です。Simcenter SCADAS XSとSimcenter Testlab Neoソフトウェアを使用することで、正しい答えを得る方法よりも、その答えが教えてくれることに集中できるようになりました。さまざまな指標を迅速にテストし、データをインタラクティブに視覚化、フィルター、再生できるため、他の方法よりもはるかに迅速で信頼性の高い洞察が得られました。本当にエキサイティングなのは、私たちが現在、これらのツールと音響知識を、将来の電動モーターや電動自転車の研究開発プロジェクトのさらに初期段階で活用できるようになったことです」
Simcenter SCADAS XSはフィールド・テストだけでなく、ラボテストのセットアップでも使用されました。
Simcenter SCADAS XSを使用してフィールド・テストを実施するのは非常に簡単です。なぜなら、サイクル・ジャージのポケットに収まり、バイノーラル・ヘッドセットとシームレスに統合され、 屋外のタブレットでSimcenter Testlab Scopeアプリを使ってワイヤレスで制御できるからです。