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ユーザー事例

Simcenter STAR-CCM+を使用して航空機の認証コストを削減した航空宇宙エンジニアリング・サービス会社

TLG Aerospace、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションを導入し、解析による認証をコスト効率よく迅速に実現

Simcenter STAR-CCM+を使用して航空機の認証コストを削減した航空宇宙エンジニアリング・サービス会社

TLG Aerospace

TLG Aerospace, LLC (TLG) は、新規および改良・変更を加えた航空機と、その関連製品の設計、解析、認証サービスを確実かつ効率的に顧客に提供する航空宇宙エンジニアリング・サービス会社です。

http://www.tlgaerospace.com
本社:
ワシントン州シアトル, United States
製品:
Simcenter Products, Simcenter STAR-CCM+
業種:
航空宇宙 / 防衛

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Simcenter STAR-CCM+を使うと、従来の手法や風洞試験に比べてずっと少ないコストと時間で、大規模なデータベースを解析できます。ほんの10年前には不可能なことでした。
Andrew McComas氏, エンジニアリング・マネージャー兼空力学者
TLG Aerospace

より低コストで認証取得

ボーイングのチーフ・エンジニア、Wayne Tygert氏は、ある787-10ドリームライナーの認証のためのテスト飛行プログラムについて、次のように説明しています。「私たちの目標は、これまでで最も退屈な飛行テストプログラムにすることでした。」

3機のテスト飛行機、数千の規制、4,000件以上の文書に900時間と数百万ドルを費やしたものに対して、「退屈」という言葉は通常まず思い浮かびません。そもそも「787-10」とは何を指しているのでしょうか。すでに認証済みのドリームライナー「787-9」の中央部を単純に拡張し、さらに40人の乗客を収容できるようにした機体です。最初の787ドリームライナーは、新しいデザインの申請から認証まで8年かかり、4,645時間の飛行テスト、200,000時間以上の米連邦航空局 (FAA) の専門家の時間、非常に高額な認証コストを費やしました。

新しい航空機であろうと改良版の航空機であろうと、航空機の認証取得は、長い時間と高額の費用、官僚的なプロセスを伴います。しかし、こうしたプロセスを経るからこそ最も安全な輸送手段であり続けられたのです。史上最大の航空機から、鋼と布で作られた2人乗り小型機まで、すべての航空機は、運航前に耐空性とコンプライアンスを証明し、規制当局の認証を受ける必要があります。

Certifiably cheaper

認証取得までにかかる莫大な費用

認証取得には、カテゴリーⅠの航空機 (3席以下) で100万ドル、一般航空機で2,500万ドル、民間航空機で1億ドル以上かかると言われています。認証取得のコストや遅延による出費は数百万ドルに達することがあり、航空機開発にかかる費用と同額のコストになることもあります。このプロセスが、損益を左右するとも言えます。

設計が認証要件を満たしていないために、プログラムの遅延や納期の遅れ、コスト超過、安全性の問題を招き、再設計と飛行テストに多大なコストがかかるケースは珍しくありません。どうすれば認証取得にかかるコストと時間を削減できるでしょうか。耐空性を証明すると同時に、テストにかかる多大な費用を減らすことは可能でしょうか。

TLG AerospaceのRobert Lind氏とAndrew McComas氏は、航空機の設計、開発、認証において通算45年もの経験があり、これらの分野に精通しています。シアトルのユニオン湖畔に立つ6階建ての控えめなビルの1フロアを占める質素なオフィスとは裏腹に、同社は航空業界の名だたる企業を顧客リストに持つ、豊富な経験と専門知識を有しています。TLG Aerospaceは、これまで多くの企業が米国でFAA認証を低コストかつ短期間で取得できるよう支援しており、その効率の高さには目を見張るものがあります。

解析による認証

FAAの航空機認証には、設計認証、製造認証 (PC)、耐空性認証 (AC) の3つの段階があります。設計認証段階では、設計の安全性、操作性、耐久性が承認され、新規設計には型式証明 (TC)、設計の改良・変更には追加型式証明 (STC) が発行されます。PC段階では、部品、コンポーネント、システムの製造が承認され、AC段階では航空機の操作性が承認されます。

このプロセスは、世界中の他の規制機関でも同様です。FAAは、テストによる証明またはテストで実証した解析による証明を要求しています。業界では、この解析をベースにした証明を「解析による認証」(CbA: Certification by Analysis) と呼んでいます。これらの解析は、機体全体のモデル (フルビークル・モデル) を使用して行われます。この解析の妥当性は、認証機関によって事前承認された指定の飛行エンベロープ内での飛行テストによって実証します。フルビークル・モデルには以下の要素が含まれます。

  • 空気力学: 数値流体力学 (CFD)、低次化手法、風洞解析、ハンドブック解析を組み合わせて空力特性を解析し、その解析結果の妥当性を、飛行テストでの圧力とひずみの測定結果によって実証。

  • 構造: 有限要素解析 (FEA) とハンドブック計算によって機体の構造を解析し、その解析結果の妥当性を地上振動試験 (GVT) と地上試験で測定した静荷重によって実証。

  • 質量特性: コンピューター支援設計 (CAD) と重量計算によって質量特性を解析し、実際の機体の重量測定によって実証。

  • 飛行制御: 飛行制御則をシミュレーションと飛行テストを組み合わせて実証。

統合フルビークル・モデルは、最終的に飛行テストによってその妥当性を実証し、モデルが正確であり、十分に堅実であることを証明できなければなりません。認証機関は、解析によって安全な結果が得られることを確認する必要があります。一方、OEM (相手先ブランド供給) は、堅実路線に走りすぎて必要以上に重量を増加し、パフォーマンスを低下させないように気をつけています。

Certification by analysis

CFDを活用したTLG Aerospaceの認証アプローチ

「実施可能な解析に対して、実際に認証プロセスに使用できる解析の割合が増えてきたことを実感しています。これは私が業界に携わってきた30年で体験した偉大な進歩です。CFDコードとコンピューターの性能が向上したことで、より速く、より低コストで認証できるようになりました。」こう説明するのはTLG Aerospaceのエンジニアリング・ディレクターであるLind氏 (FAA Flight Analyst DER、FAA Flutter DER資格保持者) です。

Lind氏の業務の大半は、顧客が解析を活用して型式認証を取得する支援をすることです。TLG Aerospaceの4人の常駐DERのうちの1人であるLind氏は、FAAに代わって認証取得を承認することができます。TLG Aerospaceは、CFD解析にはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter STAR-CCM+™を、FEA (有限要素解析) にはMSC Nastran®を使用して、飛行エンベロープの全範囲で適切にモデル化したフルビークル認証モデルを開発し、航空機の荷重、フラッター、ハンドリング品質を評価しています。

TLG Aerospaceのエンジニアリング・マネージャー兼空力学者であるAndrew McComas氏は、次のように話します。「当社はSimcenter STAR-CCM+を認証プロセスで使用しています。設計プロセスで使用するのとは少し違います。認証プロセスでCFDが果たす役割は重要です。FAAに承認してもらえる結果を得るためにCFDを使用するのではなく、実物大の空力/構造/制御モデルを作成するために使用しています。このモデルを使って、機体の応答をシミュレーションし、荷重や操作性に関する情報を取得するのです。」

新しい航空機を認証するには、空力データベースが必要です。全体的な解析データベースを構築するには、数十万もの条件下でのデータを短時間で取得できなければなりません。機体の空力特性は、CFDを使用して設計段階で計算するとともに、飛行エンベロープの極限状態でも計算します。CFD解析の結果は、空力弾性解析プロセスの一環として空力低次元化モデルにマッピングします。TLG Aerospaceは、空力弾性モデルを較正することで、剛体CFDデータに裏付けられた機体全体の空力弾性特性を把握することができます。最終的な空力弾性モデルは、機体全体の統合および分散した空力特性を剛体モードで再現し、わずか数秒で最適解に収束して信頼できる空力弾性特性を示します。

その結果、特定の条件下で規制を満たせるという予測が立てられるようになります。その後、飛行テストで解析モデルの妥当性を実証します。このテストは、飛行中テストのリスクを軽減するために、飛行条件の範囲を限定して行います。実証が済んだら、その他の飛行条件下でも規制を満たしていることを示すために、この解析モデルを使用することができます。高忠実度の飛行前テストモデルを使用することで、飛行後のテストモデルの調整や較正を大幅に削減できます。

Simcenter STAR-CCM+で認証コストを削減

McComas氏は、認証コスト削減の突破口になったとしてSimcenter STAR-CCM+とアマゾン ウェブ サービス (AWS) を評価しています。

「Simcenter STAR-CCM+は、ベストプラクティスを用いた簡単なプロセスで、強力かつ正確に、繰り返し実行できます。Simcenter STAR-CCM+を使うことで、自信をもって空力データベースを生成できるようになりました。必要な分だけ使用できるシーメンスのPower-On-Demand (POD) ライセンス・モデルとAWSのエラスティック・コンピューティング・リソースのおかげで、クラウド上の複数のコンピューティング・クラスターで数多くのシミュレーションを安全に同時実行することができます。PODライセンス・モデルがなかったら、AWSのエラスティック・コンピューティングのリソースを最大限に活用できず、年間ライセンスに多額の費用がかかっていたでしょう。」と、McComas氏は言います。

結果として、コスト効率のよいライセンス・モデルにより、空力データベース全体を短時間で構築できるようになりました。さらに、風洞テストを減らせるという追加のメリットもあります。

ところで、CFD解析と風洞テストのどちらを実施すべきでしょうか?答えは両方です。低速および高速での風洞テストを100回以上実施した経験のあるTLG Aerospaceは、テスト分野にも十分精通しています。風洞テストは今でも重要な役割を担っています。

王室に例えていうなら、風洞テストは今でも王様です。王としての地位を維持しながら、王室公務のますます多くの割合を信頼できるCFD諮問委員会に委任しています。風洞テストは今でも、新しい航空機形態の空力データベースの作成に用いられています。しかし、ある条件下ではCFD解析がテストを補完し、また別の条件下ではCFD解析がテストに取って代わることで、大幅なコスト削減につながっています。図4は、TLG Aerospaceが、従来のCFD解析ソフトウェアとSimcenter STAR-CCM+、風洞テストを比較した結果です。Simcenter STAR-CCM+は、最小限の投資でテストの必要性を減らすことができます。風洞テストの使用頻度やモデル作成にかかるコストを考えると、時間とコストの大幅な削減につながります。

風洞テストは今でも、境界層剥離が置き始める状況下での高迎角や横滑りに対する航空機の動作解析に適しています。一方、CFDが得意とするのは、中程度の迎え角や詳細な流れ場の解析です。

「Simcenter STAR-CCM+を使うと、従来の手法や風洞テストに比べてずっと少ないコストと時間で、大規模なデータベースを実行できます。ほんの10年前には不可能なことでした。」(McComas氏)

エラスティック・コンピューティングとクラウド・ライセンスによって、技術的な制限なしに多数のCFDケースを同時に実行することができます。TLG Aerospaceはまた、大規模な詳細シミュレーションを定期的に実行することができ、サイズに関係なく、どのモデルも通常1時間未満で実行できます。以前は不可能でした。

TLG Aerospaceは、AWSのエラスティック・コンピューティングを使用することで、CFDシミュレーションあたりの総コストを75%削減しています。これを可能にしている技術がAmazon EC2 Spot Instancesです。これは、AWSクラウドで未使用のコンピューティング性能を大幅な割引価格で利用できるサービスです。

Reducing certification cost with Simcenter STAR-CCM+

認証プロセスにおけるCFDの活用法は1つだけではない

型式認証を受けた既存の航空機を改良したり、機能を追加したりすると、規制への準拠にも影響を及ぼします。改良を加えた古い機体を飛行エンベロープの限界で飛行させることは危険であり、費用と時間もかかります。改良を加えても、もともとの航空機が変わらず規制を遵守していることを証明する手段として、FAAはCFDの使用を許可しています。TLG Aerospaceのような企業は、規制を遵守していることを示すために、CFDを全面的に活用して、その裏付けとなるデータや根拠を生成しています。

「これまでエンジニアは、どの変更に対しても否応なしにテストを実施しなければなりませんでしたが、CFDのおかげで今では、実施するテストの数を減らすことができるようになりました。」とMcComas氏は言います。

認証におけるその他のCFDの活用法として、二次構造、フェアリング、アンテナ、レドームへの圧力荷重、着氷、エアデータ・システムの位置、内部流れ、ウィングレットなどの解析もあります。

例えば、新しいレドームを航空機に取り付けたとします。航空機メーカーが規制に準拠するには、レドームが万が一航空機から外れるようなことがあった場合、航空機を傷つけることなくレドームが安全に分離することを証明できなければなりません。とはいえ、物理的な飛行テストでレドームが外れるケースを危険を犯さずに再現できるでしょうか。幸運を祈るしかありません。同様の問題は、新たな機体構造への着氷が規制に準拠し、航空機の安全な運航を脅かさないことを証明する際も発生します。

「この場合、レドームが安全に分離する基準を満たしていることを証明する現実的な方法として、解析を実施したあとテストで実証するしかありません。TLG Aerospaceのこの課題を克服できたのがSimcenter STAR-CCM+です。Simcenter STAR-CCM+は、他社製ソフトウェアを使わずにこうした解析ができるあらゆるツールを備えています。」とMcComas氏は説明します。

さらに、ドローンやエアタクシー、軍用機、新生超音速機など、次々と登場する新たな革新的な航空機も、解析による認証のメリットを受けるでしょう。

CFDの「C」は認証 (Certification) の「C」でもある

「Simcenter STAR-CCM+のおかげで、当社は数々の認定をFAAから受けています。TLG Aerospaceのすべての認証プログラムにおいて、Simcenter STAR-CCM+は重要な役割を果たしています。」とMcComas氏。

コンピューターや、ソフトウェア・コード、ライセンスが絶えず進化するなか、CFDが完全に風洞テストに取って代わることはないはずです。しかし、認証プロセスにおけるCFDの役割は、飛行テストを補完する手段としてますます大きくなるでしょう。

現在、TLG Aerospaceのような企業は、CFDが認証プロセスに非常に有益であることに気付いています。CFDによって、極端な飛行条件におけるコンプライアンスの証明といった難題への対応や、テストすべき飛行条件数の削減、飛行テストの実施をより低い負荷下に限定すること、テスト中に起こり得る危険性の予測、などが可能になります。柔軟なライセンスとエラスティック・コンピューティングにより、解析による認証の有益性はさらに高まります。

「今では、より大規模なプロジェクトに入札できるようになり、競争力も高まり、節約できた分を顧客に還元し、同じ資金でより多くのことができるようになりました。」とMcComas氏は話します。

Simcenter STAR-CCM+は、ベストプラクティスを用いた簡単なプロセスで、強力かつ正確に、繰り返し実行できます。
Andrew McComas氏, エンジニアリング・マネージャー兼空力学者
TLG Aerospace