シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアとMicrosoftのテクノロジーによって、ECOとコラボレーションの自動プロセスを一元化した試験装置メーカー
2,900人の従業員を擁するTeradyneは、消費財、自動車、コンピューティング、通信、航空宇宙、防衛製品に使用される複雑な電子機器向け自動試験装置を提供している世界的サプライヤーです。
Teradyne (売上12億ドルの米国の自動試験装置メーカー) は、他の多くの製造企業と同様、景気後退によって難しい課題に直面しました。それは、コストの削減と顧客サービスの向上を両立させると同時に、厳しい状況に対応しながら、今後の回復期の成長に備えるという課題です。同社はこれらの課題に対処するため、製品開発プロジェクトの要件の管理を合理化するとともに、ドキュメントと変更指示を管理するコラボレーション用の新しいプロセスを導入するという多面的なアプローチを取ることにしました。このアプローチは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのTeamcenter®ソフトウェアとMicrosoft Office SharePoint Serverによって実現しています。
結果としてTeradyneは大きなメリットが得られました。具体的には、社員が正確なデータにすばやく簡単にアクセスできるようになり、製造やり直しの減少、廃棄コストの低減、変更指示サイクルの高速化、プロジェクト遅延率の低下、顧客満足度の向上を達成しました。
Teradyneは、半導体チップ、携帯電話の部品、自動車、航空宇宙システムなど、さまざまな製品向けの自動試験装置を製造しています。景気後退時に、同社はさまざまな対策を講じました。たとえば、製造作業をアウトソーシングしたり、新しいサプライチェーン・システムを導入したり、新しい市場に参入したりしました。
また、社内にも目を向け、エンジニアリング・プロセスと製造プロセス (特に、エンジニアリング要件管理プロセスと変更管理プロセス) におけるコストの削減に取り組みました。Teradyneは各部署の自主独立性を重んる社風のために、事業部署ごとにプロセスが異なっていました。以前はそれぞれの部署が独立した事業単位として編成されていたため、プロセスが標準化されていなくても問題ありませんでした。エンジニアリング・スタッフと製造スタッフが同じ場所にいて頻繁に連絡を取り合うことが可能であったため、設計変更指示にも協力して迅速に対応することができたからです。
しかし、企業の規模が大きくなるにつれ複数の事業部が統合されるようになると、エンジニアリング・スタッフの拠点が分散したり、製造業務がアウトソーシングしたりするようになったことで、標準化された正式なプロセスがないことが非常に大きな問題となりました。エンジニアリングや製造のための作業データはスプレッドシートやワープロ形式でファイル・サーバーやパソコンのハード・ディスク上のわかりにくい場所に格納されており、見つけるのも一苦労でした。部品表データは運用担当者が主に使用していたOracle®データベースで管理していましたが、エンジニアリング用ドキュメントとしてのニーズを満たせるものではありませんでした。
プロジェクトにWebサイトの設計に詳しいメンバーがいればドキュメントはイントラネットに掲載され、IBM Lotus Notes®ソフトウェアに詳しいメンバーがいるチームであればNotes®データベースで管理するといった具合です。そのほかはファイル・サーバー上にデータを格納していました。このようにシステムと保管場所が統一されていなかったため、エンジニアリング用ドキュメントとプロジェクト情報は検索しにくく、メンバーが複数のプロジェクトに関わっている場合は特に困難でした。
また、バージョン管理機能がなくおらず、必要なタイミングで履歴情報を確認することができませんでした。ECOプロセスは自動化されておらず、ほとんどが紙ベースであったため、ドキュメント・フローの管理、変更の確認、変更の承認を行うためだけに15名のプロジェクト・メンバーを割り当てていました。
Teradyneのエンジニアリング・マネージャーを務めるBill Duggan氏は、「当社の以前のプロセスとシステムは非効率的なものでした」と言います。
かつては設計変更指示を製造プロセスに反映させるまでに90日以上かかることすらありました。これは、業界平均の4倍に相当します。この長さが製造ベンチマークに悪影響を与えていました。プロジェクトの要件が変更された後でエンジニアが部品を発注したり、サプライチェーンの変更に応じて部品の調達先を変えたりすると、変更が現場の部品表に反映されるまでにタイムラグが発生するため、廃棄とやり直しに高いコストがかかっていました。
要件管理と変更管理もまた、ECOプロセスと同様にその大部分を手作業に依存しており、場当たり的なやり方になっていました。要件がタイムリーに変更されないと、製造プロセスをやり直しせざるを得ず、そのために、プロジェクトのスケジュールが1か月以上遅れることもありました。
もう1つの大きな懸念事項は、製品がすべての要件を満たしているかどうかということでした。すべての要件を満たしていなければ遅延が発生し、大量生産システムに移行する前に多くのECOを処理しなければなりません。実際に、Teradyneの納入スケジュールの遅延率は約10パーセントでした。プロジェクトの遅延により、コストがさらに増加し、顧客満足度が低下しました。景気後退を乗り切るためにTeradyneが求めていた結果とは正反対です。
Duggan氏は言います。「システム・レベルとサブシステム・レベルで適切な要件を定義し、テストケースの派生要件を追跡し、要件変更プロセスを効率的に管理して製品を正確に組み立てなければ、納期に遅れてしまいます。そのため、要件管理プロセスの改善、ECO管理プロセスの標準化、プロジェクト・チーム間のコラボレーションの強化に取り組む必要がありました。製品ライフサイクル管理のあらゆる側面を見直さなければなりませんでした。」
煩雑な手作業と場当たり的なプロセスのために、エンジニアリング業務と製造業務の生産性の上がらなかったTeradyneは、新たなテクノロジー・ソリューションを求めていました。新しいソリューションに求める条件をできるだけ多く特定し、それを満たすため、エンジニアリング担当者とオペレーション担当者、大規模な2か所の設計センター (マサチューセッツ州ノース・レディングとカリフォルニア州アゴウラヒルズ) のメンバーから構成される評価チームを立ち上げました。評価チームは、ダッソーシステムズのMatrixOneソフトウェア、OracleのAgileソフトウェア、PTC (パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション) のWindchill®ソフトウェア、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのTeamcenterなど、さまざまなソリューションを検討しました。
Duggan氏らの一番の目的は、柔軟性が高く、最新のテクノロジーが組み込まれた、ハイテク産業のニーズに最適なソリューションを選択することでした。また、複数のソリューションの最善の組み合わせを求める代わりに、プロセスとアプリケーションの問題を解決できる単一プラットフォームを採用するというアプローチを模索していました。
評価チームは、候補となるソリューションの信頼性、要件管理、部品管理、部品表管理、ECO管理の機能を比較検討しました。また、大規模なグローバル企業との取引実績を持ち、現在の環境に合わせて最適化とインストールを行う専門サービス・グループのサポートを受けることができるソリューションを探しました。
同社はこのような基準に基づいて、Windows Serverオペレーティング・システム上で稼働するシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのTeamcenterソリューションと、Microsoft Office SharePoint Server、Microsoft SQL Serverデータ管理ソフトウェア、Oracleを選択しました。このソリューション環境は、エンドツーエンドの製品ライフサイクル管理をサポートするTeamcenterと、コンテンツ管理、コラボレーション、SNS機能を提供するOffice SharePoint Serverを統合したものです。
「シーメンスとMicrosoftのソリューションは、エンジニアリングの要件と変更管理を処理する構造化プロセスのニーズだけでなく、プロジェクト・チームの場当たり的なコラボレーションを、簡単にアクセスできる一元化されたコラボレーションに変えるというニーズを満たすものでした。
Teradyneは、Teamcenterの製品ライフサイクル管理機能をすべて一度に導入するのではなく、段階的に導入するというアプローチを選択しました。その目的は、役職も勤務地も異なるさまざまな担当者によるサポート基盤を構築するための時間と、次の段階に進む前に導入プロセスの各側面を微調整するための時間を確保することでした。
最初に、主要なテーマである要件管理と、製品の製造に使用されるエンジニアリング・ドキュメント (図式、図面、仕様書) の管理 (「ボールティング」とも呼ばれます) に不可欠なTeamcenter機能から導入しました。次に、部品管理の自動化と標準化を進め、その後、ECOと部品表管理用のプロセスを追加しました。
その結果、東海岸と西海岸の設計センターの6つのアプリケーションとプロセスが、1つの標準プロセスと標準ツールに統合されました。Teamcenterにより、部品の作成プロセスと管理プロセスが標準化されています。また、英字、数字、英数字の組み合わせで構成される6つの部品改訂スキーマが1つの英字スキーマに簡素化されました。さらに、約300の部品番号プレフィックスが、簡略化された番号方式に置き換えられました。
部品モデルと商用部品仕様を管理するための既存のワークフローも統合されました。また、ばらばらだった複数のワークフローとデータベースが単一のワークフローとデータベースに統合され、部品情報の一貫性とアクセス性が向上しました。プロジェクト要件、部品、仕様、ECO、部品表、エンジニアリング・ドキュメントに関するすべての情報がTeamcenterで一元管理されており、現在は社内のすべてのユーザーが必要な情報にアクセスできます。
Teradyneは次に、Teamcenterのコミュニティ・コラボレーション機能を、Office SharePoint Serverのワークフロー、コンテンツ管理機能、コラボレーション・ツールと共に導入し、製品開発チームのさまざまな要件や課題 (メンバーが地理的に分散しているなどの課題) に対処しました。以前は、大量の電子メールがやり取りされ、さまざまな場所にドキュメントが保管されていましたが、現在では、中央のリポジトリにドキュメントを保管し、このリポジトリ経由でレビューや改訂を行っています。
すべての製品情報とプロジェクト情報がTeamcenterとOffice SharePoint Serverで一元管理されるようになったため、複数のプロジェクト・チームによるコラボレーションが効率化されました。プロジェクトの開始時に、SharePointにプログラム管理オフィス (PMO) 用のチームサイトを作成することが通常業務になり、SharePoint Serverの機能 (wikiやブログを含む) によってコラボレーションが強化されました。エンジニアリングPMOには必要な機能がいち早く導入されます。PMOが世界中の製品開発チームの管理業務を担当しています。ナレッジやノウハウを適切に共有できるようにSNSツールも追加されました。
Teradyneは段階的なアプローチに従い、最初に、新しいTeamcenter ECO管理プロセスの導入と使用に直接関係する担当者用のチームサイトを作成しました。ユーザーがチームサイトにアクセスすると、トレーニングの受講、ドキュメントの確認、ユーザーID取得用のアンケートの回答などが可能です。
以前は、プログラム・ドキュメントの検索は簡単ではありませんでした。チームごとに検索方法がばらばらであったシステムを見直し、現在は、Teamcenter内の一連のフォルダを検索するという方法に統一されました。このフォルダには今後も引き続きコンテンツが追加されます。最近、新しいコンテンツ・タイプとして画像が追加されました。これにより、東海岸と西海岸の設計チームのコミュニケーションが改善され、プログラムのレビューがしやすくなりました。画像は顧客とも共有できるため、顧客が進捗状況を確認したり、進捗の証拠として画像を提示したりできます。製造グループは、組み立てプロセスに関する打ち合わせの際、画像を使用して試作の状況を説明できます。
Duggan氏は、コラボレーション・ツールが拡張され、サポート担当者やマーケティング担当者だけでなく、サプライヤーや社外のユーザーもツールを使用できるようになり、エンジニアリング担当者や製造担当者が日常業務で使用している情報にアクセスできるようになることを期待しています。
Teradyneは、TeamcenterソリューションとOffice SharePoint Serverソリューションへの移行により、さまざまなメリットを得ています。正確なデータにすばやく簡単にアクセスできるようになったため、製造プロセスにおける手戻り作業の減少、廃棄率の低下、変更指示サイクルの期間短縮、スケジューリング遅延率の低下、変更指示に伴うコストの低減、顧客満足度の向上が実現しました。
シーメンスとMicrosoftのソリューションを導入したことにより、Teradyneのエンジニアリング担当者とオペレーション担当者は、正確なデータにすばやく簡単にアクセスできるようになりました。冗長的なデータと潜在的な不整合データが一元的なデータソースに置き換えられたため、データの精度が上がり、プロセスと意思決定に関するコストが低減しました。その結果、組織全体で情報を共有してコラボレーションを行う能力が強化されました。
Teradyneの最高情報責任者を務めるChuck Ciali氏はこう述べています。「以前は、エンジニアリング・ドキュメントを検索する際に、どのファイル共有システムのどのフォルダに目的のドキュメントが保管されているのかを把握している必要がありました。現在では、エンジニアリング・データとその他の非構造化データ (通常は、エンジニアリング・データの10倍のサイズ) の両方を1か所で管理できるようになりました」
Duggan氏は、次のように言います。「常に最新の正しいドキュメントを使用して作業を行い、効率的にプロセスを処理できるようになりました。オペレーション担当者がプロジェクトの最新の仕様書にアクセスする必要がある場合、最新のデータに確実にアクセスできるようになりました。エンジニアがプロジェクト設計を変更すると、その変更内容がタイムリーにオペレーション担当者に通知されるため、自信を持って作業を進めることができます」
Teradyneは、新しいソリューションを導入したことにより、質の高いデータにアクセスできるようになっただけでなく、ソフトウェアベースのワークフロー経由でデータを自動的にプッシュすることもできるようになりました。また、情報の検索とアクセスに時間をかけることなく、必要な情報をタイムリーに入手できるようになりました。自動ワークフローを導入した結果、以前の15名体制のときよりも、すばやく正確に低コストでECO管理プロセスの情報を処理できるようになりました。
また、新しいソリューションで生成される情報を使用して、プロセスの効率性の追跡と測定を行うことも可能です。以前はアクセスできなかった製造統計情報にもアクセスできるため、エンジニアリング業務と製造業務がさらに簡素化されました。
Teradyneは、新しいソリューションを使用して手作業による業務を自動化し、変更管理プロセスの合理化を行い、正確な情報にアクセスできるようにしたことにより、ECOサイクル期間が90日から14日に短縮され、84パーセントという大幅な短縮が実現しました。
ECOについては時間短縮だけでなく、精度も向上しました。変更指示の棄却率も、70パーセントから26パーセントに低下しました。また、変更指示プロセスの速度と精度が向上したことにより、変更指示の実施コストが60パーセント減少しました。精度と費用対効果が高い迅速な設計変更指示プロセスにより、Teradyneが追跡しているさまざまな測定値にプラスの影響が現れています。これは、廃棄や手戻り作業に関するコストの低減だけでなく、プロジェクトの遅延率 (プロジェクトの完了を含めた実際の日数に対する規定のプロジェクト・マイルストーン日数の比率) の低下にも寄与しています。プロジェクトを完了するには、部品、部品表、エンジニアリング・ドキュメントをリリースする必要があります。プロジェクトによっては、成果物が数百件にものぼります。Teradyneでは、迅速で正確な変更管理プロセスが実現したことにより、プロジェクト遅延率が7.5パーセントから-4パーセントに低下しました。
Duggan氏は次のように言います。「当社のプロジェクト遅延率はマイナスになりました。ECO管理プロセスが改善されたこともあり、約束の納期を守るだけでなく、前倒しで納品することもできるようになりました。その結果、製品の市場投入期間を短縮できたことは大きな成果です。」
新しいECOソリューションのもう1つのメリットは、コストの削減です。TeamcenterソリューションとOffice SharePoint Serverソリューションによって実現した高い生産性、プロセスの自動化、データ精度の向上により、変更管理プロセスにおいて200万ドルのコストが削減されました。少ないECO回数で同じレベルのエンジニアリング業務と製造業務を継続できるため、余剰の人員を別の重要業務に割り当てることができます。
Teradyneは、シーメンスとMicrosoftのソリューションの機能を拡張して広範囲に展開することにより、生産性をさらに向上させたいと考えています。生産性が向上すれば、人員を増やすことなく、エンジニアリング業務と製造業務の処理量を増加させることができます。新しいソリューションを全社規模で展開すると、さらに数100万ドルのコストを削減できる可能性があります。たとえば、TeradyneではOracleソフトウェアの使用率が低下していますが、それに伴い、Oracleソフトウェアの保守にかかるコストが40パーセント以上削減され、金額にして500,000ドルのコスト削減が見込まれます。
Duggan氏は、次のように述べています。「製造業務の効率性の大幅な向上と、それに伴うコスト削減は、当社と当社のお客様の双方にメリットがあります。こうした変革が、景気後退局面を乗り切る原動力となり、景気回復時に大きく発展するためのベースになっています」