Taco Comfort Solutions、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションによって物理試験前の設計に確信...
ISO 9001認証企業でもあるTaco Comfort Solutionsは、空調機器、周辺機器、関連システムを開発するほか、一般住宅と商業施設向けの高効率ポンプとバルブを製造しています。また、持続可能性の実現を目指して責任ある取り組みを続けており、エネルギー効率に優れた製品の開発に力を注いでいます。
ポンプは、人々の生活をあらゆる面で支える縁の下の力持ちです。水道や下水道システム、換気システム、エネルギー工場の冷却など、多岐にわたる用途で適切な機能を提供しています。
より良い新製品を生み出そうと奮闘しているポンプ設計エンジニアは日々、多くの課題に直面しています。例えば、ポンプは、多様な条件下で適切に動作するだけではなく、政府の求める効率規制を遵守し、修理時間を最小化して、長い寿命期間にわたり信頼性を確保しなければなりません。
従来の設計手法は、物理試作を使用した試験に重きが置かれていました。これでは設計と再設計を繰り返さなければならないため、時間とコストがかかります。一方、仮想プロトタイプを作成することで、いくつもの動作条件に基づいて複数のポンプ設計案を素早く調査できるため、設計プロセスの加速だけでなく、物理試験に伴うコストの削減にもつながります。Taco Comfort Solutions (Taco) は、仮想プロトタイプのアプローチを採用して、より良いポンプをより早く市場に投入することに成功しました。
Tacoは、Simcenter STAR-CCM+®ソフトウェアを仮想ラボとして物理試作の前に使用しています。 製品エンジニアのPeter Vandal氏が率いる数値流体力学 (CFD) 設計オペレーションチームは、SolidWorksソフトウェアからジオメトリをSimcenter STAR-CCM+にインポートして、すべてのメッシュ処理、シミュレーション、解析を行っています (図2)。CFDシミュレーションは、ひとつひとつのポンプ設計案の流れと圧力を完全な3次元モデルとして表現します。
Vandal氏はこう説明します。「これはまさに仮想プローブのようなものです。モデルのどのポイントの数値でも読み取ることができます。例えば、ラボでの試験で使用するプローブと同じようにポイントを選択し、そこの定常圧力や合計圧力を調べることが可能なため、Simcenter STAR-CCM+の結果と実環境の測定結果を直接比較できます。
CFDモデルの検証結果を見て、CFD結果に高い確信が得られました。それと同時に傘部の性能特性、効率性、BEP (最高効率点) 流量などの予測もしています。Vandal氏のチームは、3~4とおりの設計案を作成し、性能が許容値に収まっていることをSimcenter STAR-CCM+で確認してから、物理試作による試験に移行しています。3Dプリントを使って試作品を高速に作成できるといっても、STL (ステレオリソグラフィ) のインペラーは1つ作成して試験するだけで最大$2,500のコストがかかります。Simcenter STAR-CCM+でさまざまなデジタルプロトタイプの性能を探索することで、コストと時間の大幅な削減につながるとともに、試作試験の成功率が上がり、短時間での開発が可能になりました。
Figure 1: Example of a Taco Comfort Solutions circulator pump.
Vandal氏のチームは、各設計案に対して定常シミュレーションを実行し、複数の流れのポイントを試験してBEP流量を調べました。常時BEPに近い流量を維持するポンプが理想ですが、常にそうとは限りません。出荷後の問題を回避し、顧客のニーズを満たすためには、動作曲線のすべてのポイントで、ポンプが設計外の流量に耐えられることを確認することが重要です。Vandal氏は明確に分かれている3部分について説明してくれました。「左側のポンプ曲線には過度の降下が見られ、これは許容範囲を超えています。BEPは中央と右側に位置しており、流量の多いときの動作条件を調べる必要があります。」
Tacoは、全体のポンプ曲線を見る目的で、Simcenter STAR-CCM+で非定常シミュレーションを実行しました。
Vandal氏はこう述べています。「流量をBEPに維持した状態でCFDモデルを初期化してから、境界条件を変更して、極端に流量を変化させました。」
Vandal氏が紹介したサンプルケースの性能曲線を図3に示します。左側の性能が低くなっています。Vandal氏は続けます。「設計外の流量では、ポンプの流れが非常に不安です (図4)。ポンプ曲線の左側に圧力の大きな降下が見られると、平行ポンプの動作に問題が起こることがあります。1分あたりの流用 (単位: ガロン) をBEP流量の10%から50%に設定して、Simcenter STAR-CCM+で非定常シミュレーションを実施し、最大 (50%) と最小 (10%) の間の値を調べました。ラボ試験用のSLAインペラーを作成する前に、同様の方法で代替案をシミュレーションします。試験した設計案は、BEPと低流量の両方で良好の結果を示しました。性能曲線の左側の圧力低下が小さくなっています。
Tacoは、設計外で動作したときの効率性と信頼性を追求することで、このポンプをより堅牢に設計できると自信を持っています。
Figure 3: Example of a performance curve for two test cases. Dotted lines show Simcenter STAR-CCM+ results, solid lines show lab testing results. Case A showed a large drop in pressure (ΔA) between 50 percent BEP (max head) and 10 percent BEP. Redesigning the impeller (case B) decreased this pressure drop (ΔB).
Figure 2: A pump model is designed in CAD software and imported into Simcenter STAR-CCM+ (first), where it is meshed (second) and simulated (third).
Simcenter STAR-CCM+で仮想試験に実行すると、 Tacoの設計ワークフローが高速化し、物理試験に伴うコストを削減できました。
Vandal氏はこう言います。「数年前に初めてのポンプを開発していた当時であれば、試験用の部品をいくつも発注していたでしょう。試作品がうまくいかず、設計全体をやり直し、部品の発注と試験を繰り返していました。今では、 Simcenter STAR-CCM+のおかげでプロセスのやり直しがなくなり、設計サイクル全体を加速させています。
最初にSimcenter STAR-CCM+でシミュレーションしたときには、CFDの結果とラボ結果がどれほど相関性があるのかが分かっておらず、最適なモデル設定 (粗さや漏れ流れなど) も不明でした。今ではラボの試験データが十分にそろっており、Simcenter STAR-CCM+の結果を検証して最良のモデル設定で正確な結果を得られます。」
しかし、Tacoは設計プロセスのさらなる合理化を進めています。Vandal氏はこう続けます。「われわれは常にソフトウェアを高速化する方法を模索しています。ひとつの作業に数時間かかったとしたら、この作業を50分で終わらせる方法はないか、と考えます。やみくもに頑張るのではなく、ソフトウェアを使って、スマートに作業を進めたいからです。」
Vandal氏とそのチームは、シーメンスの専任サポートエンジニア (DSE) の協力のもとでシミュレーションを合理化しています。
Vandal氏はこう述べます。「シーメンスに専属の窓口があることは非常に助かります。当社のプロセスと業務を知り尽くし、解決策を提示してくれました。」TacoとDSEは緊密に連携し、Simcenter STAR-CCM+部品交換機能を使用して複数の設計案を迅速に試験するプロセスを確立させました。Simcenter STAR-CCM+でモデルをセットアップして実行すると、部品交換機能によってインペラーとボルートが代替設計案のものと置換されます。このとき、CFDモデルの設定と境界条件は変更されません (図5)。Simcenter STAR-CCM+は、メッシュを素早く生成し、新しい解を算出します。
Vandal氏はこう付け加えます。「SolidWorksの標準命名規則を使用しているので、 Simcenter STAR-CCM+のモデルである部品を変更するときには、置換ボタンを押すだけで新しいシミュレーションを開始できます。この方法を気に入っています。同じメッシュとシミュレーション設定を複数のケースに適用して、順番にシミュレーションを実行できるからです。複数のシミュレーションを素早く実行するだけでなく、結果に一貫性があり、再現性があることを確信させてくれます。」
TacoはまたJavaのマクロを使用してメッシュ生成とシミュレーションの実行プロセスを自動化し、ポンプ曲線を自動的に生成しています。プロセスの自動化機能は、現在の設計プロセス時間を半減させたいと考えているTacoを支援するものです。
同社はまた将来を見据え、過去2年間の知識を蓄積しています。CTOのGreg Case氏はこう述べています。「当社では、競争に打ち勝つためにCFDシミュレーションを多用しており、性能の高いポンプを提供することで、市場シェアを増やしています。」
Vandal氏はこう語ります。「激しい競争を戦っているわれわれがSimcenter STAR-CCM+から得られた大きなメリットは、反復プロセスを短縮できたことです。ラボの試験や金型作成などにコストをかけるのであれば、成功の確率が高いことを願います。Simcenter STAR-CCM+のおかげでその確信を持つことができました。最終的には、ラボ試験と設計段階との行き来するフィードバックループを無くし、ラボ試験の回数をできるだけ少なくしたいと考えています。」
「デジタルで探索して、物理試験で確認する方法を目指しています。SLAと金属部品の両方を使用している現在は、SLAのラボ試験データを多く収集できており、Simcenter STAR-CCM+のデータにも自信を持っています。将来的にはSLA試験を省き、Simcenter STAR-CCM+のみを使用してインペラーを試験する考えです。この方法には少々リスクがありますが、さらに時間とコストの削減できる余地があります。この結果、効率的で信頼性の高いポンプをいち早く市場に投入していきます。」
Figure 5: Part swapping allows quick changes to the impeller, keeping the rest of the geometry the same. Results are easily comparable as all mesh and physics settings are identical.
Figure 5: Part swapping allows quick changes to the impeller, keeping the rest of the geometry the same. Results are easily comparable as all mesh and physics settings are identical.
Figure 4: When the pump is operated at flow rates far off-design (first), the flow in the pump clearly becomes highly unsteady with significantly more recirculation visible compared to the flow at the BEP (second).