Polarionを活用して聴覚ケア用医療機器の開発を合理化
Sonova AGは、革新的な聴覚ケア・ソリューションを提供するリーディング・カンパニーです。同グループは、中核ブランド (Phonak、Unitron、Hansaton、Advanced Bionics and AudioNova) を通じて事業を展開し、補聴器、人工内耳、ワイヤレス通信製品、eソリューション、本格的な聴覚ケアなど、幅広いソリューションのなかから、個々のニーズに適した製品を複数のチャネルを通じて消費者に提供しています。
スイスのシュタファに本社を置くSonovaは、革新的な聴覚ケア・ソリューションを提供するリーディング・カンパニーです。同グループは、Phonak、Unitron、Hansaton、Advanced Bionics、AudioNovaを中核ブランドとして事業を展開しています。補聴器、人工内耳、ワイヤレス通信製品、eソリューション、本格的な聴覚ケアなど、幅広いソリューションを複数のチャネルを通じて消費者に提供しています。1947年に設立されSonovaは、現在、世界100か国以上で事業を展開し、14,000人以上の献身的な従業員が、誰もが制限なく人生を楽しめる世界をビジョンとして掲げながら日々尽力しています。
20世紀半ば以降、Sonovaはトランジスター、小型化、デジタル信号処理、ワイヤレス接続、ほかの電子機器との互換性など、絶えず進化する技術に支えられながら聴覚ケア・ソリューションの開発を続け、その過程で3,000件以上の特許を取得しました。
今日、Sonova製品にとってソフトウェアは重要なコンポーネントです。同社では、約400人の従業員が世界各地でソフトウェア開発に携わっています。Sonovaが開発したソフトウェアには、補聴器に使用するARMプロセッサー用ファームウェア、聴覚ケアの専門家が個々のユーザーに合わせて聴覚デバイスを調整する際のPCベースのフィッティング・ソフトウェア、AndroidやiOSのモバイル・アプリケーションなどがあります。
聴覚デバイスのコネクテッド化により、モバイルアプリの機能は向上しました。音量調節やプログラム調整といったリモコン機能に加えて、ユーザーは個々の聴覚ニーズに合わせて音をカスタマイズし、個別仕様に合わせられるようになりました。また、バッテリーの充電状況や装着時間などのステータス情報を表示したり、補聴ケアの専門家とリモート接続でその場でフィッティングや調整、最適化してもらったりできるようになりました。合計するとSonovaは約100万行ものコードを開発・管理してきたことになります。
10年以上前まで、Sonovaはソフトウェア開発にWordやExcelなどのオフィス自動化ツールを使用していました。しかし、製品やソフトウェアが複雑化し、医療機器の規制が厳しくなるにつれ、オフィス自動化ツールではトレーサビリティに対応できなくなりました。
Sonovaの継続的インテグレーション・エンジニアのLutz Dornbusch氏は次のように述べています。「社内でALMへの移行を始めたのは、検証チームが最初でした。医療ソフトウェアの報告書作成で重要な役割を担うのが検証です。アプリケーション全体またはデバイス全体を徹底的に検証したことを証明する必要があるからです。すべての要件が最終製品でテストされたことを実証できなければなりません。これはワープロ文書では実証できません。それほど高度ではないソフトウェアの要件をいくつか検証する程度ならよいのですが、何百もの要件を検証するとなると、オフィスツールでは対応しきれません。」
Polarion ALM™は、ソフトウェア、ハードウェア、サービスを包括したSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォームを構成するソリューションです。Sonovaの検証チームは、Polarionの初期バージョンを使用して、欠陥やテストケースの追跡、管理、レポート機能を実装しました。Polarionのカスタマイズ機能を幅広く使用して、ニーズに合わせてシステムを構築し直し、文書化しました。新機能の設定など、システムの展開にはPolarionのコンサルタントが支援に入りました。
ソフトウェアの欠陥がPolarionで管理され始めると、開発者はバグの特定や修正をする際、一元的に中央プラットフォームに向かうようになりました。その後、ソフトウェア要件や仕様もPolarionで管理されるようになり、何をどのように修正すればよいかが可視化されました。
ただし、マーケティング部門やリスク管理部門では、依然として文書作成ツールやオフィス向けデータベース・ツールを使用し続けていました。マーケティング部門がすべての要件エンジニアリングをWordからPolarionに移行したのは2014年頃でした。その数年後、急速に変化する医療機器ソフトウェアの規制に即座に対応できるように、リスク管理部門もAccessからPolarionに移行し、トレーサビリティと再利用性を向上させました。
Sonovaは事業をグローバル展開しているため、ここ10年間のうちに国内外でさらに厳しくなった各種の医療機器規制に準拠しなければなりません。これらの規制には地域的な差異はありますが、実施すべきことには共通する点があります。「基本的に、マーケティング・チームの指示に基づいて要件文書を作成します。続いて研究開発チームが、その要件を満たすためにどのようにして製品を開発するかを詳細な仕様書にまとめます。その仕様をテストおよび検証します。検証チームは、要件、仕様、テストケースを関連付けたトレーサビリティ・テーブルを作成して、結果を文書として残す必要があります。」とDornbusch氏は説明します。
Sonova製品には通常、600から800の要件があります。これは、仕様にすると数千、テストケースになると2,000~4,000にもなります。製品要件、仕様書、アーキテクチャ文書、テスト実行とリスク解析を含む検証レポートなどのドキュメントは、各製品につき1,000~1,500ページにも達します。このようなファイル (クリック可能なリンク付きのPDFファイル) は、製品を包括した一連のドキュメントとして、テクニカル・ファイルの一部になります。当局が求めているのはこうしたドキュメントであり、それをもとに承認プロセスを進めます。「Sonovaは医療メーカーであるため、こうしたドキュメントの提出は必須です。ドキュメントなくして、製品は成り立ちません。」とDornbusch氏。
規制機関による監査期間中は、Sonovaの従業員は数日間にわたって監査担当者と面談します。現在取り掛かっている業務は何か、業務プロセスがどこに文書化されているかなどを尋ねられます。監査では製品の細部まですべて調べるというよりは、製品技術に関するPDFファイルを閲覧し、テストや、バグ、修正、その他の詳細についてサンプリング調査して、一貫したトレーサビリティが保たれているかを確認します。
「すべての情報がPolarionに揃っているので、必要なデータを文書化するのは簡単です。監査の担当者は、私たちがPolarionを活用していることを知ると、安心した様子でした。Polarionを使っている企業では、監査の質問に対して答えがスムーズに得られることを分かっていたからです。」このようにDornbusch氏は説明します。
Polarionを使用したことで、Sonovaは規制当局の承認を得るために必要な文書の作成、レビュー、編成にかかる時間を大幅に短縮できました。「ドキュメントをゼロから作成、またはほかの文書からコピーして作成し、すべての関係者に転送してフィードバックをもらっていると大変な作業になります。Polarionを使用すれば、文書作成ソフトを使用した場合の20%の時間で済みます。」とDornbusch氏は言います。
旧世代の機器をグローバル市場向けに新たに製品化し直す際や、医療機器の規制に変更が加わった際は、Polarionによる作業時間短縮のメリットは特に大きくなります。Dornbusch氏は次のように説明します。「当社は、規制要件が変更された複数の国に、サードパーティのサプライヤーが製造した機器をリリースしたいと考えていました。従来のExcelファイルによるリスク管理では、新しい規制要件に対応できませんでした。そこで、既存のリスクファイルをベースに、Polarionでドキュメントを作成し直す小さなプロジェクトを立ち上げました。わずか2週間で12製品向けのドキュメントを新たに作成し、新市場で数万台の機器を販売できるようになりました。」