Skip to Main Content
ユーザー事例

Simcenter STAR-CCM+とSimcenter Battery Design Studioを活用して、より安全で効率的なリチウムイオン・バッテリーを開発した研究機関

シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションにより、Samsung R&D Instituteが電気自動車の実現可能性を高めることに成功

Simcenter STAR-CCM+とSimcenter Battery Design Studioを活用して、より安全で効率的なリチウムイオン・バッテリーを開発した研究機関

Samsung R&D Institute

Samsung社は、イノベーションと研究開発 (R&D) を事業の中心に位置付けています。グローバルなイノベーションとローカルなイノベーションの両方の文化を浸透させるために、Samsung R&D Instituteは、数多くのR&Dセンターを戦略的に世界中に展開しており、これにはインドの3つのR&Dセンター (バンガロール、デリー、ノイダ) が含まれます。Samsung R&D Bangaloreは、Samsung Electronics社の海外における最大のR&Dセンターです。

http://www.samsung.com/in/aboutsamsung/samsungelectronics/india/rnd/
本社:
インド、, India
製品:
Simcenter Products, Battery Design Studio, Simcenter STAR-CCM+
業種:
自動車 / 輸送機器

共有する

より優れた熱管理システムを開発する

リチウムイオン・バッテリーの採用は電気自動車の普及を促しました。そう遠くない将来に、電動モビリティが広く受け入れられる可能性があります。しかしながら、熱管理システム (TMS) の不具合や乱暴な運転による影響で、電気自動車のリチウムイオン・バッテリーが発火する事件は少なくありません。このことは、温度を制御し、リチウムイオン・バッテリーのパフォーマンスを最適化するTMSを効果的かつ高精度に設計するための新しい方法を見つけることの重要性を明確に示しています。

これらの課題に対処するため、インドのバンガロールにあるSamsung R&D Instituteは、韓国にあるSamsung Advanced Institute of Technologyと共同で、最近、大型リチウムイオン・バッテリー用の新しい液冷タイプのTMSを発表しました。この2つの研究所は、提案するバッテリーの連結3D電気化学/熱モデルを構築しました。シミュレーションの結果から、接触抵抗がバッテリーの熱性能に最も大きな影響を与えることが分かりました。

数値流体力学 (CFD) の役割

CFDによるシミュレーション手法は、バッテリー内のセル周囲の流れの三次元的性質と熱生成に関わる空間分散を考慮できることから、熱管理の問題に対処する効果的な手段です。

電気自動車 (EV) やハイブリッド電気自動車 (HEV) で一般的に使用される高放電率で動作する大型バッテリーに対してCFDシミュレーションを実施した結果、液体冷却が空気冷却よりも効果的であり、よりコンパクトで効率的なバッテリーの設計が可能であることが分かっています。

バッテリー形状および実験セットアップ

図1に示すリチウムイオン・バッテリーには、市販の18650セルのLi-NCA/Cバッテリーを使用しました。高導電金属製の要素は、円筒セルから冷却チャネル、そして最後に冷却液 (この場合は水) に熱を伝達します。30セルのテストパックが作製され、6つのセルが直列に、5つのセルが並列に接続されました (図1参照)。

3D CFDモデル

バッテリーの3D電気化学モデルをCFDで解析し、実験結果と比較することで熱生成の完全な特性評価が得られました。この結果は、さまざまな動作条件下でのTMSのパフォーマンスをシミュレーションして評価するために使用されました。

このプロジェクトでは、次の2つのシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア製品を使用しました。Simcenter STAR-CCM+®ソフトウェア、およびSimcenter Battery Design Studio™ソフトウェアです。Simcenter STAR-CCM+を使用して流れと共役熱伝達をシミュレーションし、Simcenter Battery Design Studioを使用して電気化学入力データを取得しました。この組み合わせを使用して、バッテリーのパフォーマンスをシミュレーションしました。

3D CFD model

単一セルからの正確な温度予測

3D TMSモデルを使用して、見本バッテリーのパフォーマンスを計算しました。計算結果によると、最も高温のセルと最も低温のセルの間の平均温度差はわずか0.5ケルビン (°K) でした。研究所の所員が、温度上昇の明示的なパターンを観察した結果、温度係数が適切に定義されていれば、1つのセルだけの温度に基づいて他のセルの温度を予測できることが判明しました。

冷却材の流量が重要

電気自動車では、TMSを動作させるための電力は、バッテリーから抽出するエネルギーを用いています。TMSに関するエネルギー要件を減らすことで、バッテリーの消耗を減らし、冷却材の流量を最適化することが不可欠です。Simcenter STAR-CCM+モデルによって、液冷速度が遅い状態では、バッテリーの蓄熱が多くなることが明らかになっています。つまり、流れの速度が遅ければ遅いほど、より少ない熱しか冷却材に伝達されません。

ほとんどのバッテリーでは、最大温度変化は流れの方向に沿って3 °Kに制限されています。実験モデルは3 °Kの上限という基準を容易に満たしており、低速でもバッテリーを効果的に冷却することができました。

高価な先端材料であるグラフェンなどは、コンパクトTMSで使用されています。図2の結果は、実験TMSを用いたバッテリーにおける温度上昇が、グラフェンを潜熱蓄熱材 (PCM) ベースの熱管理システムとして使用した研究文献において報告された温度上昇と同じオーダーであることを示しています。PCMベースのTMSはコンパクトですが、今回の新しいTMSは潜熱蓄熱材のような新しい材料を使用する必要がないため、低コストで製造することができます。

まとめ

Simcenter STAR-CCM+とSimcenter Battery Design Studioで作成したCFDベースのTMS機能モデルを使用することによって、シミュレーション結果と実験測定値の相関性が高いことが明らかになりました。シミュレーション・モデルの精度は90%以上です。対称化した見本バッテリーについて、TMSとの組み合わせで適切にシミュレーションを行って、計算コストを削減できました。

このTMSは厳しい条件下でも効果的かつ安全に機能するので、電気自動車に使用される大型リチウムイオン・バッテリーの用途に適しています。