シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューション、社員、顧客、委託先のすべてがアクセスできる単一デジタル・エコシステムの構築に取り組むRoyal IHCをサポート
Royal IHCは、オフショア、浚渫、湿式採掘の市場向けに革新的かつ効率的な装置、船舶、サービスを提供している大手サプライヤーです。深い知識と専門性を保有するRoyal IHCは、高度に統合された船舶や装置を設計、製造し、持続可能なサービスを提供しています。
運河や古代の風車が立ち並ぶオランダのキンデルダイク周辺は、国連教育科学文化機関 (ユネスコ) の世界遺産に指定されており、造船のルーツは1600年代のオランダ黄金時代にまで遡ります。現在は、浚渫、オフショア、湿式採掘の市場向けに高度に統合された船舶や装置を設計、製造するRoyal IHCの本拠地となっています。同社の優れた専門知識は、海事産業で高い評価を得ています。
Royal IHCはこれまで、巨大な浚渫船、過酷な環境に対応する統合されたパイプ敷設船、潜水支援船、風力発電所設置向けの重量物運搬船など、2,500隻以上の特注船舶を建造してきました。中東で新しい島々を浚渫する船舶から、バングラデシュで300以上の河川航行を整備する20隻のIHC Beaver®や作業船に至るまで、Royal IHCは世界的な海洋産業に大きな影響力を持っています。
Royal IHCが建造する船舶の多くは、特注であるだけでなく、サッカー場の面積や階数と比較されるほど巨大です。また、ほとんどの船舶や統合装置は、技術的に複雑でもあります。1隻の船舶を建造するには、造船の専門家チームや高度なスキルを持つ熟練者チームが数年をかけて取り組なければなりません。しかも、起工式 (船舶の「誕生」を示す儀式) が行われるまでに、プロジェクトの入札をめぐって数か月間にわたる厳しい攻防が水面下で繰り広げられます。
Royal IHCの造船担当エグゼクティブ・ディレクターであるUbald Nienhuis氏は説明します。「プロセスの調整には長期間かかることもしばしばです。顧客と連携して特注船舶を設計するためには、複雑なプロセスを踏む必要があります。また、顧客だけでなく、船舶の各種部品を専門とするあらゆる関係者と協業しなければなりません」
プロジェクトを遂行するには、複雑なプロセスに対応し、顧客、Royal IHC、そして世界各国の専門サプライヤーとシームレスに連携する必要があります。
Nienhuis氏は次のように述べています。「プロジェクトの実行段階になるとさまざまな問題が発生します。当社はプロジェクト主導の会社です。われわれはあらゆる船舶を個別のプロジェクトとして扱います。複雑なプロジェクトを管理するには、当然ながらすべての関係者、請負業者、管理手順を考慮する必要があります」
これらすべてを組織化することは想像以上に困難です。オペレーショナル・エクセレンスを維持するためには、3,000人以上の社員と、世界各国に所在する40近くの請負業者が、国境を超えて連携しなければなりません。Royal IHCの経営陣はこの点を把握しています。
Nienhuis氏は続けます。「今日鍵となるのは情報管理です。数百人もの専門家が連携して設計を行い、最終的に船舶自体を建造します。これらのすべての専門家がパズルのピースを組み立てる一方、経営陣の課題はパズルを正しく完成させることにあります」
2012年頃、経営陣は業績自体は順調である一方、Royal IHCのシステムとプロセスが有機的に増大していることに気付きました。組織にはさまざまなシステム、慣例、手順、習慣がありました。
Nienhuis氏は次のように述べています。「当社は最先端の製品を提供しています。われわれが他社と一線を画しているもう1つの特徴は、統合された製品を提供する点です。当社は単なる造船業者でも、浚渫装置、パイプライン敷設設備、船舶を提供するサプライヤーでもありません。あらゆるものを調整して1つに統合します」
「IHCがお客様に提供しているのは統合された製品であり、製品はプロジェクト主導で統合・建造されます。当社が最も重視するものは統合です。これほど異なる慣例、手順、ITシステムが存在する当社が、ビジネスモデルを維持できるのはなぜかと考えたとき、これらをすべて統合して効率化すれば、より優れた成果を上げることができると気付きました」
そこでRoyal IHCの経営陣は、新たなプロセスの検討を開始しました。これには時間がかかりました。1年余り経過した後、Royal IHCのチームは、設計、開発、調達、プロジェクト管理の青写真を完成させました。経営陣は、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアを含め、さまざまなサプライヤーに向けてプロジェクトの入札を募集しました。
Nienhuis氏は次のように述べています。「多数の基準や多面的な問題を検討する必要があるため、評価プロセスは極めて複雑でした。当社がシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアを選んだ理由は2つあります。1つ目は、製品データ管理との統合レベルが高く、CAD処理が非常に優れていることです。2つ目は、開発期間中を含め、シーメンスが長期的なサポートを提供してくれると感じたことです。シーメンスはIHCを次のレベルに引き上げるロードマップを用意していました。当社の成長軌道をサポートするパートナーはシーメンスだと思いました」
「ONE IHC」と呼ばれるこのプロジェクトは、1つのデジタル環境ごとに1つの作業方法を推進することを目的としています。このプロジェクトには、シーメンスに加えてIFSがパートナーとして参加し、同社はエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP) プラットフォームを提供しました。シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアとIFSは、両社の専用ソリューションをRoyal IHCの単一デジタル・エコシステムに統合しました。
導入段階では、Royal IHCが造船プロセスに関する深い知識を提供し、シーメンスがデジタル化や製品ライフサイクル管理 (PLM) に関する専門知識を共有しました。2つのチームが連携し、Royal IHC固有の要件に合わせた独自のソリューションを構築しました。
Nienhuis氏は次のように述べています。「ときには複雑な問題にぶつかることがあります。当初はこのような問題を思いつかないかもしれません。シーメンスはプロセスを妨げる障害が見つかった場合に相談できる優秀な担当者を任命してくれたため、大変助かりました」
シーメンスのデジタル化ソリューションで重視したのは、Teamcenter®ソフトウェアの全社的な導入と、NX™ソフトウェアのエンジニアリングと設計パッケージの標準化でした。これにより、社内のあらゆる専門家やエンジニアは、設計から製品管理、調達、加工、製造に至るまで、1つの作業環境、データバンク、信頼できるデジタル情報源からメリットを享受できます。
Nienhuis氏は次のように述べています。「Teamcenterを使用しなければ、販売、購入、製造、組み立てを行えません。あらゆる製品情報を管理された方法でTeamcenterに保存することで、あらゆる処理に対応できます。Teamcenterは、当社のデジタル環境に欠かせない2つのコア要素の1つです。もう1つはERPシステムです」
「当社はTeamcenterを使用して製品データのステータスやバージョン管理を行うことで、現在製品開発のどの段階にあるか、いつ新しいバージョンを市場に投入すべきかなどを把握できるようにしています」
データ管理バックボーンが整備され、組織がより効率化された同社は、ONE IHCプロジェクトを組織規模で立ち上げました。新しいTeamcenterとNX CADを最初に本稼働したチームには、浚渫ポンプ部門が含まれていました。非常に強力でミッションクリティカルな装置を担当するエンジニアであるWim de Ronde氏は、新しいソリューションのメリットを容易に理解しました。
Royal IHCで浚渫ポンプ担当製品マネージャーを務めるde Ronde氏は次のように述べています。「NX CAD/Teamcenter環境とERP環境との間でデータ交換が可能になったため、すべての部門が同じ図面や仕様を使用できるようになりました。疑問がある場合は、誰でもシステムを開いて、業務を適切に遂行するために必要なあらゆるデータを見つけることができます」
TeamcenterとNXを使用することで、浚渫ポンプ部門のエンジニアリング・チームは、NX環境内から直接シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのポートフォリオにアクセスし、Solid Edge®ソフトウェア、Femap™ソフトウェアなど、高度なエンジニアリング・ソフトウェア・ツールを簡単かつシームレスに統合できます。
Nienhuis氏は次のように述べています。「NXは当社の未来の青写真を形成する柱となっています。シーメンスでは、専門分野にも対応する汎用パッケージとしてNXを開発する取り組みが進んでいます。この取り組みを後押しすべく、今後もシーメンスと連携することを楽しみにしています」