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ユーザー事例

未来のハイブリッド車および電気自動車の開発を、Simcenter Amesimを使って合理化したルノー

あらゆるハイブリッド構成のエネルギー統合評価が可能な、ルノーのコラボレーション型プラットフォームを実現したシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューション...

ルノー (GREEN)

1899年に創業したルノーは、フランスの多国籍自動車メーカーであり、多彩な自動車やバンを生産しています。ルノーグループの従業員は117,000名を超え、125か国に拠点を持ち、2014年の自動車販売台数は2,712,432台を記録しました。

http://www.renault.com
本社:
ブローニュ・ビヤンクール, France
製品:
Simcenter Products, Simcenter Amesim
業種:
自動車 / 輸送機器

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Simcenter Amesimを搭載したGREENプラットフォームは、さまざまな専門領域やシステムエンジニアを統合し、これまでコラボレーションしたことがなかったチームが協力して、エンジニアリングの問題について話し合い、共通の解決策を見出すためのものとして作られました。
Eric Chauvelier氏, アライアンスエンジニアリング、テストおよびデジタル部門、ハイブリッド / 電気システム向けメソッドおよびシミュレーションマネージャー
ルノー

複雑なハイブリッド車開発

CO2排出量削減は、継続的な課題です。2026年までに課される規制により、すべての国が共通のレベルに合わせることが重要になってきました。将来のCO2排出基準に適合させるには、自動車の電動化が肝要であり、ハイブリッド車の開発はすべての自動車メーカーにとって、「あったらいいもの」から「なくてはならないもの」へと変わりました。

従来の車や電気自動車のエネルギー源は単一ですが、ハイブリッドパワートレインは可能なアーキテクチャの組み合わせが多数存在していることもあり、それよりかなり複雑です。例えば、パラレル・ハイブリッド車では、複数の推進源を組み合わせることも、それぞれ単独で使用することもできます。シリーズ方式のハイブリッド車は、電気モーターで走行しますが、電気エネルギーは内燃機関など、車内の別の装置から供給されます。

ハイブリッド・パワートレインは分野横断的な性質を持っているため、エンジニアはそれぞれのエネルギー源に必要な動力を調整し、それ以外のシステム (トランスミッションや冷却システムなど) が車両のエネルギー性能にどのような影響を与えるかを調査し、最適な選択肢の有効性を証明することが求められます。多数の組み合わせを調査しなければならず、適切な制御戦略を細部まで検討しなければなりません。

そのため、さまざまなハイブリッドパワートレインのアーキテクチャを迅速に評価し、最も効率のよいものを選択し、コンポーネントの特性を比較し、いろいろな走行パターンでの性能を評価することが、強く必要とされています。ハイブリッドパワートレイン設計には、その設計サイクルの各段階において、複数の物理学領域を管理し、システムアーキテクトや、プロジェクトマネージャー、アプリケーションスペシャリストなど、さまざまなエキスパートがコラボレーションすることが要求されます。このエキスパートたちが複雑性を克服し、リスクを管理できなければ、イノベーションは生まれません。製品の複雑性には、製品を作るためのプロセスから発生する複雑性と、製品の開発と供給に関わる、すべての人のやり取りの複雑性がありますが、これらを管理するとなると、次のようなシンプルな疑問が発生します。「この複雑性を緩和して、高品質な製品を時間通りに妥当なコストで提供するには、どうすればよいのか?」

設計の初期段階で技術的な判断を下す

世界第4位の自動車メーカーであるルノー日産は、イノベーションと差別化によって前進しています。現在の差別化要因の一つは、手ごろな価格で環境にやさしい車を提供できる能力です。ルノー日産アライアンスグループは、企業活動および製品の環境への影響を、製品の設計からリサイクルに至るライフサイクル全体で削減することを目標に掲げています。世界の電気自動車市場においてルノー日産は、フルEVのルノー「ZOE」や日産リーフなどで、すでに約70%を占めていますが、先進的なハイブリッド・アーキテクチャ開発によってラインアップの拡大を目指しています。

コンセプトカー「EOLAB」は、その第一歩です。新しいプラグイン・ハイブリッドであるEOLABはコンパクトで高くなく、時速最高120キロで60キロ以内の距離をゼロエミッションで走行可能であり、超低燃費を実現しています。「ゼロエミッション」ハイブリッド技術は、数年以内にルノーの電気自動車に採用される予定です。

この未来への技術を開発するため、ルノー日産アライアンスは現在、専用のツールと手法を実装しているところです。ルノー日産は、テストおよびデジタル・エンジニアリング部門を設置し、今後のプロジェクトでイノベーションを推進できるよう、適切なコンピューター支援エンジニアリング (CAE) 手法と数値モデルを揃えました。この部門には12名からなるチームがあり、メカトロニクス・システム・エンジニアの仕事の簡素化に注力しています。エンジニアが必要としているものは、はっきりしていました。あらゆるハイブリッド構成のエネルギー合成を評価できるコラボレーション型プラットフォームです。これにより、妥当性確認ループを用いて設計初期段階での意思決定を促進したいと考えていました。

エンジニアは、迅速に燃費目標を確認し、プロジェクトのロードマップを計画し、さまざまなサブシステムのサイズを決定しなければなりません。選択したハイブリッド環境を簡単に最適化できる、使いやすいマルチフィジックス・シミュレーション環境が必要でした。プラットフォーム上で、エキスパートはカスタマイズができ、エキスパートでなくてもパラメーターを組み合わせて素早くテストを行える機能も望まれていました。このようなニーズに応えるため、ルノーはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの製品ライフサイクル管理 (PLM) ツールやスペシャリストの力を活用して、エネルギー合成シミュレーション・プラットフォームを開発し、GREEN (Global and Rational Energy EfficieNcy) と名付けました。

Making technological decisions in early design stages

コラボレーション型仮想設計プラットフォーム

テストおよびデジタル・エンジニアリング部門が開発したGREENプラットフォームは、アプリケーション固有のグラフィカル・ユーザー・インターフェース (GUI) であり、Simcenter Amesimソフトウェアや、MATLAB®環境、Simulink®環境、Excel®表計算ソフトウェアのファイル・リポジトリとリンクしています。エンジニアはこのプラットフォームで、モデルのパラメーター化や、シミュレーションの実行、結果のポスト処理を素早く行えます。包括的なハイブリッド車のコンフィギュレーターがあらかじめ組み込まれているので、ユーザーはいくつものハイブリッド・アーキテクチャから選択することができます。この部門はさらに、「パラメーター化可能な」サブシステムで構成された汎用プラントモデル・アーキテクチャも開発し、サブシステムを個別に有効/無効に設定できるようにしました。

この汎用プラントモデルは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter Amesimを使って作成しました。エネルギー管理と高度な制御方式は、Simulinkを使ってサポートしました。開発するハイブリッド車は、マニュアル、オートマチック、ロボタイズド、またはデュアルクラッチのトランスミッションから選べ、電気機械の配置オプションもフロントアクスルまたはリアアクスル、あるいはクラッチの前または後ろなどから選べます。アーキテクチャの設定が完了したら、すべてのサブシステムのサイズを定義します。例えば、電気機械は30kWか50kWか、ディーゼル・エンジンは1.6Lか2Lかなど、あらゆる組み合わせで構成できます。

エンジニアは次に、エネルギー制御方式の定義と最適化を行い、内燃機関をいつ、どのトルクレベルで起動させ、いつ、どのようにして熱機関から電気機械に切り替えるかを指定します。アーキテクチャの定義とサブシステムの選択が終わると、選択したメカトロニクス・アーキテクチャとコンポーネントのパラメーターに基づいて、GREENプラットフォームのポスト処理機能がエネルギー管理方式を自動的に最適化します。

このように多機能で使いやすい統合ワークフローの中で、エンジニアはアーキテクチャを選択し、各種パラメーターやさまざまな運転シナリオの管理と可視化を行うことができます。エネルギー管理方式を作成する必要はありません。スキルの高いユーザーは、必要に応じて新しいエネルギー管理および制御方式を、特定の調査のために簡単にテストできます。

柔軟でパワフルなGREENプラットフォームによって、エンジニアはアーキテクチャ、選択したサブシステム、およびエネルギー管理制御ルールをわずか数時間で定義して妥当性確認することができます。このプラットフォームは共通言語によってコミュニケーションと意思決定を促進し、さまざまな領域の専門知識と、同じプロジェクトに参加しているアプリケーション・エンジニアを結集させます。「Simcenter Amesimを搭載したGREENプラットフォームは、さまざまな専門領域やシステム・エンジニアを統合し、これまでコラボレーションしたことがなかったチームが協力して、エンジニアリングの問題について話し合い、共通の解決策を見出すためのものとして作られました。」と述べたのは、テストおよびデジタル部門で、ハイブリッド/電気システム向けメソッドおよびシミュレーション・マネージャーを務めるEric Chauvelier氏です。このプラットフォームは、燃料およびエネルギーの消費量、性能、パワートレインの動作点のほか、ドライブライン全体のエネルギー・フローなど、貴重な結果を提供します。さらに、ツールを使えば物理特性や制御パラメーターに関する感度解析の管理も容易です。

A collaborative, virtual design platform

Simcenter Amesimの力

GREENソリューションの新しいGUIは、Simcenter Amesimをベースに開発されました。Chauvelier氏はさらに、次のように語っています。「シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが提供するメカトロニクス・システムのシミュレーション・プラットフォームには、すぐに使えて、しかもカスタマイズ可能な実証済みのコンポーネントが揃っているため、サブシステムからシステム統合まで、車両全体のアーキテクチャを構築できます。Simcenter Amesimは柔軟性とロバスト性を兼ね備えたバックボーンです。マルチレベルのアプローチによって、初期のアーキテクチャ定義のためのマップベース・モデルから、高度なエンジニアリングのためのより詳細なモデルや作動メカニズムまで、各設計段階に適したコンポーネントを提供し、サブシステムやコンポーネントの最適化を支援します。マルチドメインなソフトウェアであるため、電気モーターや、内燃機関、トランスミッション・システムなどのドライブトレインの各コンポーネントのモデリングができるだけでなく、燃費や、排出量、性能、運転しやすさといった車両要件のバランスを最適化することもできます。」

ルノーはGREENツールの開発にあたって、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのエンジニアの力を大いに活用しました。シーメンスのエンジニア・チームのサポートと専門知識は、ルノーにとって貴重なものであり、プラットフォーム開発中に直面する重要な問題を解決する助けとなりました。Simcenterのエンジニアは、顧客のエンジニアリング課題を完全に理解しているだけでなく、数値シミュレーションの達人でもありました。

潜在能力の高さもSimcenter Amesimが選ばれた理由の一つでした。今後もSimcenter Amesimは、新しい車両の設計要件を管理できるように、GREENプラットフォームのさらなる進化を後押しします。Simcenter Amesimのオープン性は、モデルの進化プロセスの合理化、組み込み制御システムとのやり取り、ほかのプラットフォームやモデルとの連携を可能にしています。

非常に柔軟なプラットフォームとして定評のあるSimcenter Amesimは、MATLABやSimulinkとの協調シミュレーションによって、制御システムのより詳細な理解と、組み込みコードとの相互作用を可能にします。オープンソース・プログラミング言語であるPythonや高度なプログラミング言語であるMATLABを使ってスクリプトを生成できるSimcenter Amesimの機能を使って、エンジニアはエネルギー合成調査 (データ、計算、シミュレーション開始、ユースケース、解析、合成など) のワークフローを管理でき、複雑なモデルを完璧に実行できます。

今後はSimcenter Amesimの柔軟性を活かし、GREENプラットフォームを進化させることで、従来型パワートレインにも解析を適用できるようになります。また、燃費や性能のほか、熱的快適性、ボード・ネットワークのエネルギー管理、運転しやすさ、排気などの重要な属性のトレードオフ解析が可能になるでしょう。

The power of Simcenter Amesim