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ユーザー事例

フランスの自動車メーカーがSimcenter Amesimを使用して、バッテリーパックの最適化とコスト削減を実現

シーメンスのソリューションを活用して、PSA Peugeot Citroën社が製品開発期間を数か月から数週間に短縮

シーメンスのソリューションを活用して、PSA Peugeot Citroën社が製品開発期間を数か月から数週間に短縮

PSA Peugeot Citroën社

PSA Peugeot Citroën社は、32の製造施設、6つの研究開発センター、全世界で211,100人の従業員を擁し、技術革新を活用して、環境に配慮したコミュニティ中心のモビリティソリューションの開発に取り組んでいます。PSA Peugeot Citroën社の今後5年間の3つの重点分野は、クリーンテクノロジー、安全性、オンボード・インテリジェンスです。

http://www.groupe-psa.com/en
本社:
フランス、, France
製品:
Simcenter Products, Simcenter Amesim
業種:
自動車 / 輸送機器

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マルチフィジックス・モデルの汎用性は、設計変更がパフォーマンスに与える影響を現実的に評価する鍵と言えます。それがマルチフィジックス解析にSimcenter Amesimを使用することを決めた理由の1つです。
PSA Peugeot Citroën社, バッテリー・システム・モデリングおよび設計、チームリーダー
Angelo Greco氏

電動化への道のりをナビゲート

2020年は自動車業界にとって重要な年でした。自動車に関する新たな規制や二酸化炭素 (CO2) 排出基準は、電動化を回避する方法がないことを意味します。政府の助成金政策、規制の厳格化、バッテリー価格の下落など、すべての外部要因もこの結論に収束つつあります。ボストン・コンサルティング・グループ (BCG) の最新の世界自動車パワートレイン予測によると、電動車両 (xEV) の売上は予想を上回る速度で増加しています。BCGはまた、これらの自動車の市場シェアが2025年までに3分の1を獲得すると見ています。一方、自動車メーカーであるPSA Peugeot CitroënはSimcenter Amesimを使用して、バッテリーパックを最適化し、2030年までにコストを51%削減し、完全に内燃機関 (ICE) を動力とする車両の売上高を上回ることを予測しています。

自動車OEMは、自動車の電動化計画を加速させており、PSA Groupe社も例外ではありません。PSA Groupe社は長年、クリーンで持続可能な自動車の開発に取り組んでおり、新エネルギーに移行するための準備がすでに整っています。PSA Peugeot Citroën社の目標は、2025年までに車両製品を完全に電動化することです。

Navigating the road to electrification

車両電動化の最も重要な要素であるバッテリー

バッテリーは、電動車両によって顧客の期待に応えるための重要な要素です。一方、航続距離についての不安は依然として大きな障壁です。ほとんどの電動車両のバッテリーには、8年間の保証、または160,000キロメートル (100,000マイル) の駆動限界があります。したがって、OEMはバッテリーの経年劣化を遅くする戦略を考えなければなりません。バッテリーの経年劣化に最も影響を与える基準の1つは、温度変化に対する耐性です。バッテリー容量が大きいと高温になり、バッテリー寿命を大幅に短縮します。バッテリーの熱管理は、あらゆる駆動条件に最適な温度を達成するために不可欠です。熱管理を通じて、バッテリー容量とバッテリー寿命の間の完全なトレードオフを決定します。

バッテリー冷却システムは、他の車両パフォーマンス属性のバランスを取り、バッテリー容量と寿命を最適化する方法で設計することが重要です。一方、バッテリー冷却システムが過度に大きいと車両全体のパフォーマンスに影響します。例えば、車両の重量が大きくなる、より複雑なシステムの構築に追加の資金が必要なこと、車両の空力特性を低下させるといったことです。他方、車両、運転者、乗客の安全性を損なうリスクがあるため、バッテリー冷却システムを過度に小型化することもできません。さらに、快適性、運転の楽しさ、高性能、耐久性といった相反する属性の最適なバランスも求められます。

こうした難易度の高い設計要件に対応するには、OEMは新しい開発の優先順位に適応し、主要な領域に対応したエンジニアリング組織を構築する必要があります。PSA Peugeot Citroen社は、その方向に舵をきる戦略的な判断を下しました。バッテリー・システムのモデリングおよび設計チームリーダーであるAngelo Greco氏は、機能設計解析とマルチフィジックス・モデリングに注力しています。バッテリーの設計と統合はイノベーションの重大な岐路に直面しています。バッテリーの設計と統合によって、マーケティング要件だけでなく、乗客の安全と快適性に従って車両に適したコンポーネントを定義するための困難な要求を満たす必要があるのです。

The battery is at the heart of electrification

特定の目標に対する適切なバッテリーを定義する

Greco氏は次のように述べています。「主な課題は、完全な車両アーキテクチャに統合していない状態では、適切なバッテリー設計の解析と評価ができないということです。同じモデル内の電気、熱、冷却、制御部品など、マルチフィジックス特性を考慮する必要があるため、非常に複雑です。簡単な作業ではありません。このことから、当社ではSimcenter Amesimを選んでエンジニアリングの課題に取り組んだのです」

コスト、航続距離、熱的快適性、および耐久性のバランスを取りつつ、バッテリーの最適な熱管理システム設計とアーキテクチャのエンジニアリングを行うことは難題です。意思決定の際には、熱的安全性と、それが耐久性に及ぼす影響だけでなく、航続距離、パフォーマンス、キャビンの快適性、バッテリー温度に及ぼす影響を考慮する必要があります。マルチレベル・モデリングとマルチフィジックス・シミュレーションは、アーキテクチャ設計が主要なパフォーマンス属性に与える影響を評価し、制御方式の妥当性を予測するために、中心的な役割を果たすようになりました。

Greco氏は続けます。「これらのエンジニアリング上の制約に加えて、当社では、競争力のある市場投入期間を維持するために、厳しい開発期間の要件があります。俊敏性が欠かせません。1週間または1日以内にコンポーネントまたはモデルを変更し、サプライヤーからの新しい要件やデータに適応しなければならない場合もあります。マルチフィジックス・モデルの汎用性は、設計変更がパフォーマンスに与える影響を現実的に評価する鍵と言えます。これが、マルチフィジックス解析にSimcenter Amesimを使用することを決めた理由の1つであり、当社の俊敏性に役立っています」

Defining the right battery for specific objectives

3D設計からバッテリー・システム・モデルを開発する

バッテリーの熱管理を解析するためには、サプライヤーから提供されるバッテリーがどのように設計されているかを理解する必要があります。Tierサプライヤーは通常、最悪の使用条件を考慮に入れてバッテリーのサイズを決定しており、あらゆる条件下で電動車両が稼動すること、バッテリー寿命範囲が保証期間の8年間以上であること、規制要件を満たしていることを保証しなければなりません。

このため、バッテリーや冷却システムは過剰設計に陥りがちです。その結果、バッテリー開発はより長い開発期間が費やすだけでなく、全体的な車両パフォーマンスも低下させます。Greco氏によると、「バッテリーを大きめに設計しようとするのは無難な判断ですが、コストの増加につながります。サイズは確実に最適化の余地があるでしょう。今では、シミュレーション技術によって、バッテリーの性能と熱特性を迅速に解析できるようになりました。さらに、シミュレーションの活用により、PSA Peugeot Citroën社は、バッテリー設計の代替案を調査し、仮想的に検証し、安全性を損なうことなく、要求される性能を満たしていることを確認できます。また、バッテリーのサプライヤーに改善の提案をできるまでになりました」最適な設計案に到達する唯一の方法は、3Dの精度と1Dの柔軟性を兼ね備えたマルチフィジックス・モデルと動的モデルを使用することです。

Greco氏はこう語ります。「当社は以前、静的評価とセル熱フローモデリングの両方に3Dバッテリーモデリングを使用して、バッテリーの熱管理を評価していました。評価のタイミングが遅すぎるため、バッテリー設計の変更を予測できませんでした。そのため、開発サイクルにおける早い段階で信頼性の高い方法でバッテリーの熱管理を評価するために、電気部品を追加して3D熱モデルおよび3D油圧モデルを1Dモデルに変換する方法を見つけることが不可欠でした」

そこでGreco氏は、ノードネットワークを使用して、3D熱モデルからバッテリーの1Dモデルを開発する手法を考案しました。この手法を使うと、3D熱-油圧モデリングと同じ精度の結果をより短い時間で得ることができます。「Simcenter Amesimのおかげでこの手法を開発できました。この手法では、シミュレーションの実行時間を短縮するだけでなく、バッテリーの動的熱管理と、通常は3D CFD (冷却プレート) モデルに組み合わされたバッテリーの3D熱モデルを使用して実現する静的評価とを比較して評価することができます」

より良いセル設計開発のためにサプライヤーに改善提案を行う

Greco氏は主にマイルドハイブリッド車両と電動車両のバッテリー設計に取り組みました。「Simcenter Amesimで構築したモデルを使用することで、マルチフィジックス・モデルの開発と検証にかかる時間がこれまでの約半分に短縮されました。実際、3Dから1Dのシミュレーション手法を通じて、サプライヤーが提供するバッテリーモデルの熱抵抗が、サプライヤーの提示する1.8K/Wではなく、0.9K/W (ワーストケース) であることを突き止めました。新しい設計案 (0.9K/W) であれば、同じ条件で2倍の冷却効果を実現し、期待される技術仕様を達成できます。」

Greco氏は、新しい電動車両の開発サイクルの早い段階からこの手法を取り入れることで、「攻めた」設計案を選択することができました。「マルチフィジックス・シミュレーションとその結果は、性能の予測だけでなく、バッテリー・サプライヤーへのより良い設計案の提案にも役立っています」とGreco氏は説明します。

シミュレーション・エンジニアリング手法の改善により時間を短縮

「バッテリーの熱管理をモデリングするノードネットワーク手法を開発したことによって、非常に詳細で具体的なバッテリー設計要件を提案し、サプライヤーに改善依頼する大きな前進となりました」とGreco氏は説明します。

この結果、バッテリーモデリングを担当するチームは、開発サイクルの早い段階に意思決定を下し、信頼性と安全性の基準を満たすバッテリー・アーキテクチャを定義して、車両全体のパフォーマンスを最適化することができます。「Simcenter Amesimを活用したプロジェクトでは、マルチフィジックス・モデリングを使用して製品開発期間を数か月から数週間に短縮できました。仕組みは単純明快であり、作業には半日あれば充分です。これは、Simcenter Amesimのフレームワークと哲学が、当社のマルチフィジカル・アプローチと親和性が高く、組み立てが非常に簡単であるためです」

Simcenter Amesimで構築したモデルを使用することで、マルチフィジックス・モデルの開発と検証にかかる時間がこれまでの約半分に短縮されました。
PSA Peugeot Citroën社, バッテリー・システム・モデリングおよび設計、チームリーダー
Angelo Greco氏