Picanol、Simcenterエンジニアリングのサービスとソリューションを使用して、次世代レピア織機の騒音と振動を低減

Picanolはハイテク織機の開発、製造、および販売を手掛ける企業です。Picanolの織機は、半世紀以上にわたる技術的なノウハウと経験の蓄積から生み出されています。今日、世界中の約2,600の織布工場で約13万台に上るPicanol製の織機が使用されています。
Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション技術は、耐久性、騒音、振動の面で大幅な改善を実現するための基盤を提供してくれます。おかげで試作回数が1回以上少なくなり、その結果、開発工期もコストも削減できました。
大手織機メーカーのPicanolは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの協力を得て、次世代のレピア織機の生産性向上と騒音振動基準の強化を実現しました。さらにはSimcenterエンジニアリング・サービスとSimcenterポートフォリオを使用して、近日発売予定のレピア織機用の新しい駆動装置を最適化しています。
Simcenterエンジニアリング・チームは、Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション・ソリューションに含まれる動的評価機能を使って、内部ピーク力の低減、ベアリングの摩耗防止、振動部品の軽量化、主要部品の長寿命化を目指すPicanolの取り組みを成功させました。Picanolは、タテ糸の間をくぐるレピアの動作を大幅に高速化することで、織機の生産性を15%向上させています。
Picanolの何百台もの織機は、世界中の工業用織機工場で24時間稼働しており、織布の重要な部分を日々担っています。大手織機メーカーであるPicanolは現在、世界中で約2,600社の顧客を持ち、11万台以上の織機を稼働させています。中断が少なく、切り替えが容易なPicanolの織機は、大小を問わず、世界中の織物メーカーに採用されており、高品質の織物を効率的に製造し、高い生産性を維持するのを支援しています。
ファッションの流行や消費者の嗜好は頻繁に変化するため、生地メーカーには最大限の柔軟性が求められます。Picanolのレピア織機は、変化の速い製織要件を効果的に満たすため、小ロット、幅広いスタイル、色とりどりのデザイン、多種多様な生地 (綿、ボイル、クレープ、毛、ガラス、デュポン™のパラ系アラミド繊維ケブラー®など) に対応できる柔軟性が特長です。
Picanolでラピア織機開発ディレクターを務めるKristof Roelstraete氏はこう語ります。「結局のところ、すべてはコストの問題です。1名の織工が操作できる機械が多ければ多いほど、生地メーカーとしての総所有コストは少なくなります。当社の戦略は、優れた製織品質と高い操作信頼性を兼ね備えた高品質の織機を開発し、高級生地や珍しい織法を手掛ける織物工場に提供することです。
さらに、レピア織機のモジュール型設計と電子制御により、製織セットアップの切り替えも容易にしています。レピア織機市場でトップクラスの生産性と柔軟性を維持するため、当社は多くの画期的な技術的進歩を開発し、導入してきました。電子制御の可能なSumo直接駆動エンジンもその一例です。このエンジンは即座に停止または減速できるので、総消費電力を10%削減します。

Picanolはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと提携し、レピア織機の騒音について調査しました。PicanolとSimcenterエンジニアリング・チームは、実稼働モーダル解析、実稼働機構/たわみ解析、音響/騒音測定を通じて、個々の動作の騒音源を突き止めることに成功しました。
測定したところ、1,200ヘルツ付近で騒音放射が最大になり、織機周辺での会話に支障をきたす周波数に達することが分かりました。この周波数の騒音が非常に大きくなる要因が純粋に機構部分にあること、つまり、ギアホイールの接触によって発する騒音であることが判明しました。織機の動作中のベアリングのずれと予圧が影響しているという試験結果も示されました。
Roelstraete氏はこのように述べています。「GamMaxの後継機の開発にあたり、Picanolはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアとパートナーシップを結ぶ決定をしました。開発の早い段階から共同でエンジニアリングを進めることで、騒音と振動を許容範囲内に抑えながら、織機の生産性を向上できました。その鍵となるのが、最先端のレピア駆動装置です。動作速度を大幅に早めた結果、騒音放射が非常に大きくなってしまいました。駆動装置の円運動がレピアの往復直線運動を駆動します。レピアは、ヨコ糸をつかんで、織っている布地のタテ糸の間を通す専用コンポーネントです。
「Simcenterエンジニアリング・チームは、レピア駆動装置の機構設計を微調整し、騒音放射を大幅に低減することに成功しました。今日の工業用レピア織機は、1時間に最大25,000回もの速さでレピアを往復させるため、騒音がエンジニアリング上の大きな課題でした。製織工程でのレピアの驚異的な速度は、F1レーシングカーのエンジンのピストン速度さえも上回っています。

レピアの高速動作がラジアル荷重を大きくし、駆動装置全体に大きな応力がかかっていました。Simcenterエンジニアリング・チームは、レピアの駆動装置をモデリングすると同時に、サブシステムの性能特性を最適化して、アセンブリの軽量化、コンポーネントの摩耗防止、疲労寿命への影響の排除、音響放射の低減に取り組みました。
Picanolの新しい小型レピア織機は、駆動輪とフォーク部分の接続部が円運動します。フォーク部分でクロスメンバーを固定することで、固定面の旋回運動に一定の制限をかけました。フォーク部分が振動すると、クロスメンバー (およびホイール) が時計回りまたは反時計回りに旋回し、最終的にレピアがヨコ糸を高速で往復させます。
大きな振動を減らすため、剛体モデリングを実装して、可動部品の重心を調整しました。このとき、部品の位置、サイズ、形状、重量を変更しました。
レピアの駆動装置は動作中にわずかに変形するため、全体の動的マルチボディをモデリングしました。有限要素解析 (FEA) を使用して主要コンポーネントを弾性体としてモデリングすることで、アセンブリの動的荷重をシミュレーションする際に、たわみと共振の影響を自動的に考慮できました。
動作中には部品のたわみによりベアリングの位置と向きがわずかに変化し、軸方向に若干のずれとベアリング力が発生しました。Picanolは、Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション・ソリューションを使用してシミュレーションを実行し、ベアリング性能を最適化しました。
Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション技術は、耐久性、騒音、振動の面で大幅な改善を実現するための基盤を提供してくれます。これは、ベアリングとハウジングの剛性を高め、ベアリングのはめあいを改善し、ベアリングの予圧を適切にすることで達成されました。動的機構シミュレーションは、ベアリングのラジアル荷重をさらに少なくするための部品のさらなる軽量化にも役立ちました。

Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション・ソリューションによって可動部品と振動部品をさらに軽量化したところ、ベアリングのラジアル荷重を抑えることができました。
PicanolはSimcenterポートフォリオの機構シミュレーション・ソリューションを使用して、レピア駆動部品の疲労寿命を評価しました。内部の動的荷重をシミュレーションしたところ、FEAでモデリングした各コンポーネントの局所的な最大応力値を取得できました。応力のばらつきを踏まえ、材料固有の耐久性の限界に限りなく近い、あるいは超えている箇所を耐久性ホットスポット解析によって特定しました。主要コンポーネントの寿命を延ばすために、これらの部品の機能穴の位置または径を変更する必要がありました。疲労寿命が短いために故障してしまう部品をなくし、織機が7年から10年間の期間を通してほぼノンストップで稼働できるように、高い耐久性基準を満たすことが重要です。
もう1つの重要な性能特性は、織機が発する騒音です。主な騒音源は、レピア駆動装置の一部であるラック・ピニオン・ギアのトランスミッションです。旋回ホイールと歯付きラックがレピアを線形方向に動かします。レピアが旋回するたびに、ラックとギア歯の公差により、高周波帯特有の衝撃加振が生じます。規則的な振動がベアリングに伝わり、ハウジング構造を振動させて、騒音を発します。
この問題を解決するためPicanolは、Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション・ソリューションで専用のマルチボディ・モデルを作成しました。このモデルは、ギアとラック/ピニオンの公差、歯面強度など、さまざまな接触剛性を考慮しています。Picanolはマルチボディ・シミュレーションでベアリングの動的荷重を導き出し、ハウジングの有限要素モデルに適用しました。次に、発生した表面振動の平均値を放射騒音の測定値として取得しました。シミュレーションの結果が示すように、Picanolはハウジング構造の減衰力を高めるとともに、公差が小さく、歯の仕上げ技術の優れた高価なギアを使用することで、騒音放射を低減しました。

応力のばらつきを踏まえ、材料固有の耐久性の限界に限りなく近い、あるいは超えている箇所を耐久性ホットスポット解析によって特定しました。
Roelstraete氏は言います。「現実的な仮想シミュレーションと綿密な試験ノウハウを組み合わせることで、織機の設計に大きな違いが生まれ、より良い製品を開発できます。現在開発を進めている次世代のレピア織機は、卓越した技術のおかげで生産性が15%向上しました。これは織機の高速化とダウンタイムの短縮、より多様な繊維を織る能力、切り替えの柔軟性の向上、製織コストの削減によって実現されました。」
「シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのご協力に心から感謝しています。高度なテストにより、織機の性能をさらに向上させる方法が正確に示され、初期のプロセス・シミュレーションにより、新しいレピア駆動装置の実際の動作が最適化されました。」
「Simcenterポートフォリオの機構シミュレーション・ソリューションは、耐久性、騒音、振動の大幅な改善を実現するための基盤を提供してくれました。おかげで試作回数が1回以上少なくなり、その結果、開発工期もコストも削減できました。」
現実的な仮想シミュレーションと綿密な試験ノウハウを組み合わせることで、より良い織機の設計に大きな違いが生まれます。現在開発を手掛けている次世代のレピア織機は、卓越した技術によって生産性が15%向上しました。
高度なテストにより、織機の性能をさらに向上させる方法が正確に示され、初期のプロセス・シミュレーションにより、新しいレピア駆動装置の実際の動作が最適化されました。