日産、Simcenter SCADASとSimcenter Testlabを使用して、最先端の耐久性エンジニアリング・プロセスを導入
日産テクニカルセンター・ヨーロッパ (NTCE-S) は、パワートレイン開発、小型商用車のエンジニアリング、テストなどの3つの主要な活動に重点を置いた、日産の欧州生産工場で製造される車両の設計・開発の中核的研究拠点 (Center of Excellence) です。NTCEは、最高レベルの顧客満足度を維持するユニークで革新的なエンジニアリング・ソリューションを提供する次世代車両の開発により、市場での日産の地位を新たなレベルに引き上げる支援をしています
2017年、日産は世界で582万台の自動車を販売し、記録的な年となりました。この年、ルノー・日産アライアンスはフォルクスワーゲンを抜いて乗用車の販売台数で世界一となりました。
日産のブランド認知度は絶頂期にあります。実際、欧州の数千のブランドの一般認知度を調査しているYouGov BrandIndexによると、日産は英国の消費者にとって5位 (38社中) の自動車サプライヤーです。
さらにブランド認知度を高めて品質ランキングを向上させるために、日産は高いエンジニアリング品質/信頼性基準を設定していますが、そのためには、現地の顧客のニーズと要件を理解して対応することが不可欠です。日産テクニカルセンター・ヨーロッパ (NTCE) の役割は、日産の評判を支え、新しい車両設計/コンセプトの性能属性が欧州の消費者の期待に応えられるようにすることです。日産テクニカルセンター・スペイン (NTCE-S) は、パワートレイン開発、小型商用車のエンジニアリング、テストなどの主要な活動に重点を置いた、日産の欧州生産工場で製造される車両の設計・開発の中核的研究拠点 (Center of Excellence) です。
日産は、欧州の顧客に最高水準の品質と信頼性を提供することに尽力しています。NTCE-SがシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter ™ソフトウェア・ソリューションに投資して、テストベースの耐久性エンジニアリングを行い、エンジニアリング能力を次のレベルに引き上げた理由はここにあります。
NTCE-Sの機能・耐久性部門の主な役割は、車両のライフサイクル全体を通してエンジン・コンポーネントの機能、性能を検証することです。性能を評価するために、チームはコンポーネントをNTCEのエンジン・ダイナモメーター (ダイナモ) に取り付けて、広範なテストを実施します。また、完全な車両をシャーシ・ダイナモ上に配置する、完全なアセンブリ構成の中でのコンポーネントの性能も評価します。最後に、乗用車/小型商用車 (ピックアップ・トラックなど) の疲労試験をテストベンチまたはテストトラックで実施します。
機能・耐久性チームが実施するテストの多くは、耐久性試験です。耐久性は、乗用車/小型商用車の重要な性能属性です。小型商用車の市場セグメントでは、消費者は「日々のニーズを満たしてくれる」ブランドを選択する傾向があります。
「耐久性は非常に重要です。」NTCE-Sの機能・耐久性部門でパワートレイン耐久性試験エンジニアを務めるArturo Barreu氏はこのように述べています。「欧州では、この属性 (耐久性) は品質の認知度と密接に関連しています。品質への要求が高まっているので、車両の耐久性を確実にする必要があります。消費者は、1年先ではなく、20年先まで故障しない自動車を求めているのです。」
車両の設計では、乗り心地や車内の快適性、エンジン出力、燃費など、その他の属性も重要です。耐久性エンジニアリング・チームは、次世代自動車のコンポーネント、サブシステム、および完全なシステムを構想、テストする際に、より多くのパラメーターを考慮する必要があるため、耐久性エンジニアの役割はさらに複雑になっています。
耐久性エンジニアリングを改善するためにチームが取ったステップの1つは、Simcenterポートフォリオのソリューションに投資することでした。 シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアは、テストベースの耐久性エンジニアリングのためのエンドツーエンドのソリューションを提供することで、エンジニアリング・プロセスの合理化に貢献します。
完全な耐久性試験では、テストチームはエンジン・ダイナモでの測定、続いてシャーシ・ダイナモでの測定を行い、その後、テストトラックへと移動します。エンジニアは、テスト機器を1つの場所から次の場所へと移動させて、テスト項目を新たに計測する必要があるため、Simcenter™ SCADASハードウェアの携帯性と柔軟性を高く評価しています。
「すべてのデータ収集作業にSimcenter SCADASを使用しています。」とBarreu氏は言います。「非常にコンパクトなポータブル・システムです。用途も広く、ニーズに合わせて調整できます。同じ装置を使って加速度やひずみなど、さまざまな種類のデータを取得できます。私たちが使っているSimcenter SCADASデータ収集システムのチャネルは合計で100を超えますが、エンジン・ダイナモからシャーシ・ダイナモ、テストトラックへ、またはその逆へも容易に持ち運べます。」
チームは、データ取得だけでなく、荷重/疲労解析にSimcenter Testlab™ソフトウェアを使用することで、耐久性エンジニアリング・プロセスを合理化しました。このソフトウェアは、データ収集から荷重分類、疲労寿命予測まで、テストのすべてのステップを効果的にサポートします。さらにこのソフトウェアは、マルチフィジックス・テストベースの性能エンジニアリングに特化したプラットフォームの一部を形成しているため、音響、快適性、耐久性および軽量、燃費などのさまざまな性能特性の組み合わせが、全体の品質と信頼性にどのように寄与するのか、そのバランスを正しく調整する支援をします。
機能・耐久性部門の主な責任は、エンジン関連コンポーネントの機能、性能をテスト、検証することです。一方エンジニアは、多数のコンポーネントとエンジン・サブシステムのテストデータを取得して解析し、比較します。Time at Levelデータ、レインフロー/レンジペア・カウント、レベルクロス、疲労寿命予測などの耐久性解析の結果と、ピーク・ホールド・スペクトル、次数成分、カラーマップなどを含む一般的な騒音、振動 (NVH) 解析結果を組み合わせます。耐久性データとNVHデータをすべて同じSimcenter SCADASハードウェアを使用して取得し、解析も単一のソフトウェア環境で実行できるため、エンジニアリング・チームにとっては非常に効率的なプロセスとなっています。
「私たちが直面している最大の課題は、知識の統合です。」とBarreu氏は言います。「私たちは今、かつてないほど多くのコンポーネントをテストする必要があります。 そのうえ、これらのコンポーネントの性質は変わっています。電子部品のテストが増えて、機械部品のテストは減っています。シーメンスとのコラボレーションは、この変化に適応し、こうした新しいコンポーネントを検証するために不可欠です。」
テストリグでコンポーネントを検証するために、チームはSimcenter Testlabを使用して等価損傷プロファイルを合成し、その後リグのテストトラックで測定中に発生する損傷イベントをエミュレーションします。この非常に効率的なプロセスで、車両の運用寿命中にコンポーネントが受ける損傷を現実的にシミュレーションすることで、テストは大幅に加速します。
NTCEのエンジニアは、「チャネル数に関係なく安定性が高く、オンラインで解析を簡単に構成できる」Simcenter Testlabの実力を実感しています。また、このソリューションを使うと、Process Designer機能により、高速でエラーのないデータ後処理と、明確なレポートの即時作成が可能です。
「Simcenter Testlabは、私たちが行う耐久性検証に最適なツールです。」とBarreu氏は言います。「構成が簡単で、処理も自動化できます。また、迅速なレポート作成や、同僚とのデータ共有にも優れたソフトウェアです。
テスト結果として、信頼性の高いデータを生成します。このデータをいくらでも操作して、コンポーネントの疲労挙動に関する深いエンジニアリング知見を得ることができます。このデータを使って、さらなるテストを定義したり、信頼できる検証済み情報をシミュレーション・モデルに供給することも可能です。
「Simcenter Testlabは、荷重データの取得と処理のためのエンドツーエンドの統合型ソリューションを提供してくれます。」NTCEの機能・耐久性担当シニア・エンジニア、Guillermo Gonzalez氏はこのように語っています。「このソリューションは、リグ試験や信頼性シミュレーションの準備に、耐久性に関する重要な知見をすばやく提供してくれます。非常に速く、使いやすく、堅牢です。