Siemens Xceleratorを活用し、自動車の初回アセスメントのサイクル時間を50%短縮したNEVS
2012年に設立されたNEVSは、モビリティに関する社会の考え方を変えるべく取り組んでいます。同社はMaaS (Mobility-as-a-Service) の持続可能なビジネスモデルを作成しました。これには、電動の自動運転コネクテッド・カーと、使いやすいアプリケーション、および自治体や事業者のための統合型フリート管理機能を組み合わせた完全なライドシェア・ソリューションが含まれています。
世界には13億台の自動車が存在していますが、道路を走行している時間は、平均すると寿命のわずか5%に過ぎません。これがNEVSと同社のMaaS (Mobility-as-a-Service) プラットフォームが生まれるきっかけでした。
トロルヘッタン (スウェーデン) のSAAB自動車工場跡地に2012年に設立されたNEVSは、モビリティに関する社会の考え方を変えようとしてきました。PONSという名のMaaS (Mobility-as-a-Service) プラットフォームは、将来的なモビリティの選択肢を実現することを目指しています。NEVSのモビリティ・エコシステムには、電動の自動運転コネクテッド・カーと、使いやすいアプリケーション、事業者や自治体のための統合型フリート管理機能を組み合わせた完全なライドシェア・ソリューションが含まれています。
PONSは、電気自動運転車Sangoと、顧客との通信用アプリケーションOkulo、フリート管理システムであるKoroで構成されています。地点Aから地点Bへの移動のあり方を変える完全パッケージです。
NEVSのモビリティ・ソリューション担当バイス・プレジデント、Felix Andlauer氏は、「われわれの生活の質を向上させながらも、資源の使用とは切り離す必要があります。
自動運転車は、自動車をシェアするという意味で資源を有効活用する選択肢です。」と語ります。
NEVSは包括的なソフトウェア/ハードウェア/サービス統合ポートフォリオであるSiemens Xceleratorポートフォリオを使用し、新規および継続中の自動車プロジェクトに関するデジタル・スレッドと包括的なデジタルツインを作成しています。NEVSのチームは安全性と機能性に優れた自動運転モビリティ・ソリューションを開発するにあたり、高度なシミュレーション技術とデジタルツインの考え方を製品ライフサイクル全体に導入する重要性を認識していました。
NEVSがこれらの目標を達成するために使用しているSiemens Xceleratorソリューションは、Simcenter™ソフトウェア、Teamcenter®ポートフォリオ、Polarion™ポートフォリオ、NX™ソフトウェア、およびHEEDS™ソフトウェアです。SangoとPONSのエコシステムを具現化するために、一連のツールが重要な役割を果たしました。
NEVSはTeamcenter、NX、Polarionに加え、試験用のソフトウェアおよびハードウェアであるSimcenter Testlabや、システム・シミュレーション用のSimcenter Amesim、最適化を行うHEEDS、およびCFD作業用のSimcenter STAR-CCM+など、Siemens Xceleratorポートフォリオのツールも使用しています。
NEVSの働き方およびサポート部門リーダー、Jessica Svensson氏は次のように述べています。「シーメンスはとても忍耐強く接してくれました。エンジニアリング・プロセスを変えることは簡単ではなく、私たちは実践しながら学んでいます。この点でシーメンスは素晴らしいパートナーです。次に何をすべきか、私たち自身も迷う場面がありましたが、常にシーメンスと一緒に進むべき道を探し出していきました。」
NEVSのチームは、MaaS (Mobility-as-a-Service) のアイデアを成功させるには、自家用車以上の何かを作らなければならないと分かっていました。だからこそ、多くの時間とエネルギーを注いでSangoを開発しました。Sangoは高級シャトルバスのようなライドシェア向け電気 (EV) 自動運転車 (AV) です。6人用の可動式シートと間仕切りのあるSangoは、快適性、利便性、機能性に優れた移動空間を提供しています。個人のワークステーション的なエリアに区切ったり、友人や家族と交流できる配置にしたりといったカスタマイズが可能です。
しかし、NEVSはそこにとどまりませんでした。Sangoだけでは持続可能なモビリティとして、成功したとはいえません。ソフトウェアが入っていないコンピューターを所有しているようなものです。Sangoは独自のモビリティ・エコシステムであるPONSとともに提供されます。PONSは、自動運転車であるSangoと接続するユーザー・インターフェース (UI) のほか、顧客との通信用アプリケーションのOkuro、自治体や公共交通機関などの事業者用のフリート管理システムであるKoroで構成されています。
コンピューター支援エンジニアリング (CAE) を長年使用してきたSvensson氏とそのチームは、エンジニアが複数のソフトウェア間を行き来して時間を無駄にし、それがミスにつながっていることに気づきました。そこで、現状を変えることを決断し、CAEのリードタイムを短縮し、コンピューター支援設計 (CAD) の世界をCAEの世界に近づけられるソリューション候補を検討しました。
NEVSのCAEチームはこれまで、CAEのデータをシステムから取り出し、対応ソフトウェア・ツールで微調整をしていました。CADで加えたすべての変更がCAEチームに通知されるとは限りません。そのため、制御チェックの段階になってはじめてCAEチームがその変更に気づくこともあります。不完全なデータで作業することになり、誤解や判断ミスも多々ありました。新しいプロセスによって、これが変わりました。NXのCAD設計機能とSimcenterのCAEシミュレーション機能が、Teamcenter Simulation経由の正確なデジタル・スレッドでつながります。
Teamcenter Simulationを使用することで、CADとCAEのデータが管理され、全員が常に最新情報で作業できます。統合されたソフトウェアは、共通ルールに従って用途別のCAEアセンブリを作成し、その結果をCAD設計者に直接送信するなど、プロセス内の入り組んだ作業を自動化します。
NEVSのCAE担当プロダクト・オーナーであるShengnan Zhuang氏は次のように話します。「シーメンスとの緊密な共同作業を通じて、デジタル・スレッドを使うこのプロセスを開発しました。現在では、どのシミュレーションモデルがどのCADモデルと関連付けられているのかをそれぞれの段階で特定できます。こうしたトレーサビリティが設計からシミュレーションまで設計バージョンごとに確保されていることが、きわめて重要です。シミュレーション結果が最新の設計に反映されていることを明確にする必要があるからです。」
Svensson氏の説明によると、「信頼性の高いデジタル・スレッドを使用する大きな利点は、時間短縮と品質保証の2つです。以前は反復する手作業が大量にありました。しかし、メッシュ生成と接続が自動化されて変わりました。自動車を開発しているエンジニアに、CAEの結果を返した後の対応が迅速になりました。
製品を短期間で市場に投入することは、きわめて重要であり、最適な開発ツールが必要です。新規アセスメントを実施する段階で多くの手順を削減できます。正しいデータを使用していることに確信が持てます。すべてが可視化され、組織全体で共有されています。」とのことです。
2024年に向けてパイロット・プロジェクトが動き出しており、SangoとPONSは近い将来、街で見られるはずです。
TeamcenterバックボーンとTeamcenter Simulationを使用してCAEプロセスとCADプロセスを統合したとしても、デジタル強化とプロセス改善の余地はまだあります。
例えば、CAEのビークル・ダイナミクス・チームは、サスペンションとドライブトレインを最適化するため、設計早期や概念段階で広範囲にHEEDSを使用しています。HEEDSはオープンなプラットフォームであり、社内ツールのデータやモデルを直接扱えます。
NEVSでビークル・ダイナミクスCAEエンジニアを務めるDarshan Vachhani氏は、「元々は従来の最適化手法を使用していましたが、うまくいかず、期間内に結果が得られませんでした。初期プロセスで余計な工数が発生し、早くから遅延が発生していました。通常のサスペンションの場合、変数 (ハードポイント) が10~12存在し、それぞれに30~35のオプションがあります。すべてのオプションを人的に検討するとなると1週間以上かかりますが、
HEEDSと社内ツールのおかげで、2000の設計バージョンを1時間以内に実行できます。1日作業すれば、最初の結果が出ます。」
その結果、早期段階に設計オプションを絞り込む時間が80%短縮しました。これによって、アセスメントや、ポスト処理、最適な設計オプションの検索、早期の設計成熟化に十分な時間が取れます。
Vachhani氏はまた、「今ではわずか3~4回の繰り返し作業で最終設計案に到達できるようになりました。これはとても効率がよく、設計プロセスへのHEEDSの統合をさらに進める計画です。」と語りました。
NEVSは統合アプリケーション・ライフサイクル管理 (ALM) ソフトウェアのPolarionを使用し、異なるソフトウェア環境内でのシームレスな連携をサポートすると同時に、複合的な環境で働く全員に最新情報を届けています。PolarionはNEVSが実現したトレーサビリティの重要な要素であり、すべての製品開発とプロジェクト管理の情報を一元管理することで、複数のチームやプロジェクトをつなげ、アプリケーション開発プロセスを向上させています。
NEVSが生産を考慮したプロセスに転換している現在、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソフトウェア、サービス、パートナーがNEVSのデジタル・エコシステムの強固な基盤を提供していることをチーム全体が知っています。
NEVSの機械ハードウェア・エンジニアリング部門リーダーを務めるChristian Bromander氏は、次のように述べています。「開発や生産部門のレガシー・システムが障害となることは許されません。われわれは、さらに大きな変化を実行する可能性があり、そのためにはソフトウェアとツールを最大限に活用する必要があります。
Teamcenter、NX、Simcenter、Polarionによるデジタル・スレッドのおかげで、CAEチームはメッシュ生成やポスト処理などの反復的作業よりも、価値の高いエンジニアリングや問題解決のために時間を使えます。設計チームは専門家からの正確なエンジニアリング・データに基づいて、チームとしての意思決定を容易に下せます。CAEの専門家は、HEEDSなどの専門性の高いソリューションによって、早い段階から設計の成熟度を高めています。Teamcenterを使用することで、NEVSのデジタル・ワークフローがすべてひとつにまとまり、さまざまな側面が大幅に改善しました。これがすべてNEVS全体の目標である、持続可能なMaaS (Mobility-as-a-Service) ソリューションに寄与します。
Svensson氏は、次のように語りました。「費用対効果がただちに見られ、自動車のアセスメント・プロセスが改善しました。最初に、サイクルタイムが半分に短縮し、6週間から3週間になりました。当社の目標は、必要なときにいつでも自動車の状況がリアルタイムで分かるようにすることです。私たちはそこに向かっています。
これはエンジニアにとって、素晴らしいことだと思います。自動車プロジェクトの進行状況がスナップ写真のように一目で分かるからです。必要なときにいつでも写真を撮ればよいのです。
「当社が成功した理由の1つは、シーメンスが同じビジョンを信じていることです。われわれはデジタライゼーションをどう活用して、世界をより良く変えていくか、というビジョンを共有しています。」
NEVSとシーメンスは現在、デジタライゼーション・ロードマップを拡張し、よりスマートで、持続可能なモビリティ・ソリューションを作り上げています。
Svensson氏によると、「今後も継続して、シミュレーションとデジタライゼーションを、完全で正確なデジタル・エコシステムに統合していく考えです。Sangoが市の中心部を走行するためには100%の正確性とトレーサビリティが必要です。デジタルツインが正しいと、分かっていなければなりません。
大量生産環境に移行するなかで、シーメンスとの緊密な協力によって、新しいデジタルツールをさらに開発、実装することを楽しみにしています。」とのことです。