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ユーザー事例

モデルベース・システム・エンジニアリング (MBSE) を使用して、ADAS機能の包括的なデジタルツインを開発

MobileDrive社、Simcenterエンジニアリングとのパートナーシップを通じて、ADAS製品の開発スケジュールを短縮

モデルベース・システム・エンジニアリング (MBSE) を使用して、ADAS機能の包括的なデジタルツインを開発

MobileDrive社

Mobile Drive Technology Co., Ltd. (以下、MobileDrive) は、FIH Mobile (鴻海 <フォックスコン> の子会社) の自動車部門を起源とし、車載ソリューションとコネクテッド・カーのサービスの研究開発に注力しています。FIH Mobile社、ステランティス社とのジョイント・ベンチャーであり、インフォテイメント、テレマティクス、クラウド・サービス・プラットフォームを開発しています。

https://www.mobiledrivetech.com/
本社:
アムステルダム, Netherlands
製品:
Polarion, Simcenter Products, Simcenter Amesim, Simcenter Prescan
業種:
自動車 / 輸送機器

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Simcenterエンジニアリングとのパートナーシップのおかげで、ADAS ECUをさらに合理的かつ効率的に市場投入できると期待しています。
最高技術責任者, Winston Hsu氏 ,
MobileDrive

MBSEアプローチ

世界の自動運転車 (AV) 市場が急成長しています。Statista社によると、2025年までに4,000億ドル近い市場規模になると予測されています。鴻海 (フォックスコン) の子会社であるFIH Mobile社は、過去数十年に渡って、携帯電話、モバイル / ワイヤレス通信機器、家電製品の設計、開発、製造サービスを垂直統合的にエンド・ツー・エンドで行ってきたことで知られています。新たな技術への需要が高まるなかFIH Mobileは、その専門知識 /技術を先進運転支援システム (ADAS) 市場やAV市場へと広げてきました。

2021年にFIH Mobileは、世界有数の自動車メーカーでありモビリティ・プロバイダーであるステランティス社とパートナーシップを結び、Mobile Drive Technology Co., Ltd. (以下、MobileDrive) と共同事業を展開しています。MobileDrive社は、インフォテイメント、テレマティクス、クラウド・サービス・プラットフォームを、付帯するハードウェア、ソフトウェアとともに開発しています。市場の需要に応えるため、最高品質のソフトウェアを迅速に提供することを目指すMobileDriveは、高いADASの目標を達成するために、モデルベース・システム・エンジニアリング (MBSE) 手法の開発サポーターとして、Simcenter™エンジニアリングおよびコンサルティング・サービスを選びました。

MobileDriveは、「Simcenterエンジニアリングなら、堅牢なデジタル・スレッドを活用してあらゆる領域でデータを取得し、システムを最適化する支援をしてくれる」と考えました。

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戦略的ADASパートナー

ADASの開発には、アプリケーションと機能安全に関する幅広い知識と経験が必要です。Simcenterエンジニアリングは、これらの分野で実証済みの専門知識 / 技術を有しており、MobileDriveに最適でした。

MobileDriveは、レーン・キープ・アシスト (LKA)、車線維持、緊急時操舵支援 (ESA) といった一般的なADASアプリケーションのアルゴリズムやソフトウェア制御を、モデルベースのフレームワークを使って開発する方法を習得したいと考えていました。こうした機能を開発するための技術パートナーとして、MobileDriveはSimcenterエンジニアリングを選び、必要なソフトウェアの専門知識/技術をエンジニアリング・スタッフに提供しました。

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2つの目標、1つのADASビジョン

MobileDriveの当面の目標は、中国や台湾の相手先ブランド供給 (OEM) がADASアプリケーション・ソフトウェアを開発する際に、彼らの信頼できるパートナーとなることです。将来的には、車載電子機器のリーディング・サプライヤーになることを目標としています。

Simcenterエンジニアリングは、MobileDriveがこの目標を達成できるようにサポートしました。MBSEアプローチへの移行を支援するロードマップを作成し、サプライヤー要件とOEM要件から初めて、それらをソフトウェア要件へと落とし込みました。

両チームは、MobileDriveの野心的な市場投入期間目標の達成に向けて、最初のラテラル・コントローラーの一部として、LKA、緊急時車線維持 (ELK)、車線追従制御 (LFC)、自動車線変更 (ALC)、ESA、自律緊急ステアリング (AES) の6つの機能を開発することで合意しました。

MobileDriveの最高技術責任者 (CTO)、Winston Hsu氏は次のように述べています。「Simcenterエンジニアリング・チームからは、要件の実現方法や初期アーキテクチャーの構築方法など、基本的なことを教えてもらいました。また、ソフトウェア開発のガイドとなる、ユースケース、テストケースの記述、管理のベスト・プラクティスも学びました。」

Simcenterエンジニアリングは、MobileDriveのADASビジョンの実現をサポートする、完全な手法とロードマップを提供しました。これには、機能・技術安全要件の作成、機能安全テストの実行、テストケースの生成、SimcenterAmesim™ソフトウェア (主要システム・シミュレーション・プラットフォーム) とSimcenterPrescan™ソフトウェア (シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの仮想ADAS検証パッケージ) を用いたシミュレーション・モデルによるシステム開発・テストなどが含まれます。 加えて、Polarion™ポートフォリオ (シーメンスのクラウドベース・アプリケーション・ライフサイクル管理 <ALM> ツール) を使用した、完全な要件トレーサビリティも提供しました。さらにSimcenterエンジニアリング・チームは、MobileDriveが社内で技術を再現できるように、Polarionを使って完全な技術移転を行いました。Simcenterエンジニアリングおよびこれらのツールは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスを統合した包括的なポートフォリオであるSiemens Xceleratorに含まれています。

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シミュレーションモデルを構築

このプロジェクトでSimcenterエンジニアリング・チームは、詳細なビークル・ダイナミクス・モデルを構築して、ラテラル・コントローラーを検証する必要がありました。このため、Simcenterエンジニアリングの専門家は市場調査を行い、フルビークルの要件に基づいてシステムの要件を定義しました。

Simcenterエンジニアリングは、この知識とADASの豊富な経験を活かし、あらゆるビークル・ダイナミクスをモデル化して仮想テスト環境を提供し、コントローラーを検証しました。Simcenter AmesimとSimcenter Prescanを連携させることで、機能安全に関するものを含め、さまざまな運転シナリオの環境を定義することができました。さらに仮想環境を使用し、ADAS制御機能の一部として、センサー・フュージョンに使用するカメラや短距離・長距離レーダーなどの各種ADASセンサーをシステムに組み込みました。その後、コントローラーを仮想テスト環境に統合して、そこで複数の機能を、異なるソフトウェア・プラットフォームをまたぐクローズド・ループ・フレームワークでテストしました。

このフレームワークを使用することで、各チームは製品を包括的なデジタルツインとして観察できました。これは非常に重要なことでした。この情報のおかげで、システムとソフトウェアの性能に関する問題を両方ともすばやく特定して、開発サイクルの初期段階に解決できたからです。

要件を追跡

このプロジェクトでは、Polarionが重要な役割を果たしました。Simcenterエンジニアリング・チームは、Polarionを使用して、ユースケース、顧客のニーズ、OEMのニーズ、システム、ソフトウェア、機能安全、故障モード要件など、さまざまなソースからのあらゆるレベルの要件を保存しました。これらの要件をカスケードして分解し、ソフトウェア・アーキテクチャーとソフトウェア機能の要件仕様を作成した後、Simulinkを使用して実装し、モデルインザループ (MiL) のクローズド・ループ・テストを実行しました。また、Simcenterエンジニアリングは、Polarionの機能を活用して要件、テストケース、技術安全要件の間の完全なトレーサビリティを確立することで、制御ソフトウェアの検証に使用する多くの検証テストを取得、維持しました。これは、Automotive SPICE (ASPICE) および国際標準化機構 (ISO) 26262の規制を遵守したいというMobileDriveの要望をサポートするものでした。

Simcenterエンジニアリングは、Polarionですべての要件のテストケースを作成して、テストケースと要件の間のトレーサビリティを示し、Simcenterベースの車両/交通モデルとSimulinkコントローラーを使用して、クローズド・ループのシミュレーションで実行しました。結果は自動的にPolarionに取り込まれ、MobileDriveとSimcenterエンジニアリング・チームには、合否基準やKPIパラメーターのリアルタイムのメトリクスを示すダッシュボードが提供されました。プロジェクト・マネジメント・チームなどは、このダッシュボードを使用して、検証テストに合格した要件や不合格となった要件の数をリアルタイムで積極的に評価できます。

次に、Simcenterエンジニアリング・チームは、Polarionサーバーをクラウド上でホスティングすることで、シーメンスとMobileDriveの間の通信が同期されるようにしました。これにより、チーム間のコミュニケーションが効率的になり、質問やデータ交換、ダッシュボードの閲覧が一箇所でできるようになりました。

また、クラウド・ソリューションなので、両チームは遠隔地から個別に、あるいは共同で、要件のレビュー、コメント、承認を行うことができました。

シミュレーションの段階が終わると、MobileDriveはその結果を電子制御ユニット (ECU) でテストしました。MobileDriveのプロジェクト・マネージャー、Burt Chen氏は次のように述べています。「Simcenterエンジニアリングの提供してくれたMBSEアプローチが非常に有効であることがわかり、満足しています。すべての機能が計画どおりに動作したので、OEMに高品質のソフトウェアを提供できる、との自信が持てました。」

単なる開発者を超えて

プロジェクト終了後、Simcenterエンジニアリングは、MobileDriveへの導入と技術移転を行いました。 これは、トレーニング・セッションの形で行われました。このトレーニング・セッションでは、Simcenterチームが実践的なワークショップ・フォーラムを複数回に渡って行い、MBSEフレームワークの使用についてMobileDriveチームをサポートしました。さらにSimcenterチームは、Polarionのプロジェクトもすべて移管し、MobileDriveが要件を完全に可視化して、将来の開発で容易に再現できるようにしました。

この技術移転セッションでSimcenterエンジニアリング・チームが最も重視したのは、業界のベスト・プラクティス、仮想テスト・フレームワークを使った効率的な問題解決方法、ソフトウェアを自社の開発・生産環境へと変換する方法をMobileDriveに示すことでした。すべてのモデル、ダッシュボード、テクニックは、MobileDriveの生産で直接使用できるように設計されており、顧客要件に応じて簡単にアップデートでき、さらにスケールアップすることも可能です。

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とデジタル ツインの使用

Chen氏は言います。「Simcenterエンジニアリングは、V字モデル全体を通してMBSEを開発、使用する、業界のベスト・プラクティスを提供してくれました。私たちは、製品開発のアルゴリズムや検証作業を加速させる方法を十分に理解することができました。Polarionを使用することで、コンプライアンスと構造化を図り、ISO 26262などの機能安全規格を遵守できることもわかりました。」

MobileDriveとSimcenterエンジニアリング・チームは、合計で1年半かけて機能開発、トレーニング、技術交換を行いました。

Polarionを使用することで、MobileDriveはサプライヤーを介することなく、コントローラー・ソフトウェアの要件をその場で変更できるようになりました。さらにMobileDriveは、Polarionで自社の要件に常にアクセスできるため、サプライヤーから再購入するのではなく、それを基に変更を加えて、資産として使用できるようになっています。

最終的にMobileDriveは、物理プロトタイプを作成する前に、ADAS製品のタイムラインを短縮することができました。ADASソフトウェア機能をHardware-in-the-Loop (HiL) テストベンチやテストトラックで検証するのではなく、Simcenter AmesimとSimcenter Prescanを使って包括的なデジタルツイン環境で初期段階に検証できるようになったからです。

Hsu氏は次のように述べています。「MobileDriveの最終目標は、ADAS ECUのリーディング・プロバイダーになることです。Simcenterエンジニアリングとのパートナーシップのおかげで、ADAS ECUをさらに合理的かつ効率的に市場投入できると期待しています。」

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Polarionを使用することで、コンプライアンスと構造化を図り、ISO 26262などの機能安全規格を遵守できることもわかりました。
最高技術責任者, Winston Hsu氏 ,
MobileDrive