ユーザー事例

生産フローのシミュレーションにかかる時間を数日からわずか1回のクリックにまで短縮

Plant SimulationとMendixを使用して、ダイナミックな製造シミュレーションを工業生産ラインに導入したミシュラン

Plant SimulationとMendixを使用して、ダイナミックな製造シミュレーションを工業生産ラインに導入したミシュラン

ミシュラン

ミシュランは、飛行機、自動車、自転車、オートバイ、土木機械、農機具、トラックなど、あらゆるタイプの車両用タイヤ製造、販売し、関連サービスを提供することにより、持続的な輸送の向上に取り組んでいます。

https://www.michelin.com/

本社:
クレルモンフェラン, France
製品:
Mendix, Plant Simulation, Tecnomatix
業種:
自動車 / 輸送機器

共有

Plant Simulationは、イノベーションと技術革新のための高精度かつ高精細の基盤を提供してくれます。 Plant Simulationは、シミュレーション技術へのアクセスが必要な製造部門に付加価値をもたらすものです。
Thierry Chenevier氏, サプライチェーン担当デジタル・トランスフォーメーション エキスパート, ミシュラン

デジタルツインを民主化する

130年以上にわたるミシュランの歴史は、モビリティやイノベーションと切っても切れない関係にあります。フランスのクレルモンフェランに本社を置くミシュランは、これまで世界中のモビリティの発展に寄与してきました。これまでの経験を活かして、今日ではわれわれの生活を一変させる新しい技術の開発と持続可能性を追求する分野に挑んでいます。

デジタルツインによる効率化

世界的な競争と短納期化の流れを受けて、初期の構想段階から量産までの効率化がますます重視されるようになってきました。そこでミシュランは、Plant Simulationを使用して、製造施設のデジタルツインを作成し、変更を事前にシミュレーションして、プロセスを最適化したり、変更要求や製造現場に潜む危険の除去に迅速に対応したりしています。Plant Simulationは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのTecnomatix ®ポートフォリオの1つです。

この取り組みを通じて、必要なリソースを全社規模で大幅に削減しました。リソースの削減は当然、持続可能性にも効果があります。持続可能性は同社の今後の主要課題の1つであり、そのことは2030年に向けた「All-Sustainable (すべてを持続可能にする)」戦略のスローガン「We manufacture the future (われわれは未来を製造する)」として掲げられています。「Michelin in Motion」として知られるこの戦略は、生態学的、社会的、経済的な側面のバランスをとることで、企業が持続的に成長することを目指したものです。

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デジタルツインに対応

Plant Simulationのデジタルツインは、ミシュランの社内外に広範な影響を与えています。にもかかわらず、多くの従業員にとってデジタルツインはブラックボックスのままであり、アクセスできる従業員は限られていました。

この課題に取り組んでいるのがThierry Chenevier氏とAude Nursimiloo氏の二人です。Chenevier氏は、ミシュランにおけるサプライチェーン担当のデジタル・トランスフォーメーション専門家です。デジタルツイン製造のプロジェクトマネージャーを務めるNursimiloo氏とChenevier氏は、デジタルツインに対する社内の否定的な意見をしばしば耳にしてきました。エンドユーザーがデジタルツインに触れたことがなかったため、多くがデジタルツインの導入に後ろ向きだったのです。

Chenevier氏は言います。「それが2022年の状況でした。われわれには優れた製造シミュレーション・モデルがありましたが、残念ながら多くのユーザーがアクセスできるものでなかったため、何とかしたいと考えていました。ミシュランは世界中で130,000人以上の従業員を雇用し、約80,000人が製造に従事しています。86の生産拠点があり、その約半数で最終製品を生産します。当社のシミュレーション・モデルは、最終製品を生産するこれらの製造現場に特化したものです。」

「当時、例えばこのパラメーターを変更したら生産能力がどう変わるのか、という疑問に対しワンクリックで答えが得られないか、というシミュレーション構想を持っていました。現場の担当責任者にこうした質問を投げかけてもらいたいと思っていました。現場の責任者は、工業エンジニアや工業プランナー、あるいは製造管理者といった人々です。しかし、当時の現実は、新しいシミュレーションのために65のテーブルを調整しなければならず、データ入力の準備に少なくとも3週間かかっていました。
しかも、シミュレーションには誰もがアクセスできるわけではありませんでした。いずれもデータアナリストのPCでなければ実行できないものでした。さらには、専門家でないユーザーにとって使いやすいインターフェースもありませんでした。」

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デジタルツインを開発

2018年、ミシュランはPlant Simulationのデジタルツインを製造に導入しました。第一段階として、イタリアの拠点で最初のシミュレーション・モデルが生成されました。ミシュランは、シーメンスのパートナーであるInoprodの支援を受け、技術の信頼性とさらなる可能性を評価しました。2021年には、この取り組みを4つの生産施設に広げ、シミュレーションを加速し、どのような場面に適用できるかを検討しました。2023年から始まった第3段階では、デジタルツインの専門性を高め、自動化の障壁を取り除き、エンドユーザーにとってより良いエクスペリエンスを提供しようと取り組んでいます。2024年以降、Plant Simulationのデジタルツインの導入拠点を毎年5つずつ増やす予定です。最終段階は、トレーニング、自動化、シミュレーション・モデルの高速化、簡素化、大規模な拡張に焦点を当てます。

真の革新を求めて

Chenevier氏はこう述べています。「Plant Simulationは、イノベーションと技術革新のための高精度かつ高精細の基盤を提供してくれます。Plant Simulationは、シミュレーション技術へのアクセスが必要な製造部門に付加価値をもたらすものです。Mendix Optimize My Plantアプリを使用した第3段階でメリットが得られるようになると確信しています。Optimize My Plantは、Plant Simulation周りのローコード開発環境であり、これによりユーザー・エクスペリエンスを大きく改善できました。」

Plant SimulationとMendix™ローコード開発プラットフォームは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスを統合した包括的なポートフォリオであるSiemens Xceleratorに含まれています。

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Optimize My Plantの導入の広がり

ユーザー中心のOptimize My Plantが広く受け入れられるようになってきた例をいくつか紹介します。硬化工場は、プレスの種類が多岐にわたるうえ、ワークフローが相互に連携しあうため、生産計画をスケジュールに落とし込むのは至難の業です。手動で作業すると4時間から2日、場合によっては1週間かかりました。今日、これは概要画面をワンクリックするだけです。複雑なデータ入力を自動化し、高速化しました。

以前は、Plant Simulationでシミュレーションのシナリオを新規作成するのに数週間かかることもありましたが、現在はOptimize My Plantで事前定義されたシナリオがあるため、担当者がすぐに実行できます。Optimize My Plantアプリは、シナリオ内のパラメーターを変更したときの影響を主要業績評価指標 (KPI) で表示します。KPI分析をより深く掘り下げたい場合は、それぞれのシナリオの詳細を取得できます。ここには、生産量、在庫量、在庫不足の可能性などの動向が示されます。

データセットの構築作業はまだ複雑ですが、データ生成の最適化、データ準備の自動化、役割の分離といった機能のおかげで、それほど厄介ではありません。完全な新しいデータセットを定期的に校正するという複雑な作業は主要ユーザーに任せ、エンドユーザーはシナリオを比較してフローを理解する作業に専念できます。

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複数の工場への成功の広がり

Plant Simulationを導入する工場が増えているという事実は、このソフトウェアが会社の成功にとっていかに重要であるかを浮き彫りにしています。Plant Simulation導入の成功事例はミシュラン社内でも広く共有され、デジタルツインの普及を後押しし、会社全体でシミュレーションの民主化を進める流れを加速させています。Nurisimiloo氏は、いくつかのユースケースを挙げています。

「中国では、北部と南部で異なる自動保管システムと検索システムを使っていることが問題でした。一方が満庫になっても、もう一方には十分な空きスペースがあるということもあります。Plant Simulationを使用することで、倉庫のバランスが取れました。」

「イタリアでは、新しい機械を実装するプロジェクトの開始時にPlant Simulationを使用しました。既存の機械を1台も撤去できないか、1台か2台でも撤去できるのか、そしてこれらのシナリオが部材フローにどのような影響を与えるのか、を知る必要がありましたが、それを可能にしたのがPlant Simulationです。」

「ポーランドのある工場では、消費エネルギー削減のために、生産計画をより適切に遵守し、プレス機の不要な開放を避ける方法を検討していました。Plant Simulationを使用して、プレス機の稼働率を最適化し、省エネルギーに努めたいと考えています。」

「イタリアの工場の保守マネージャーは、最適な作業分担に頭を悩ませていました。特定の曜日に集中的に保守作業をするのと、いくつもの時間帯に分散させるのでは、どちらが生産能力への影響を最小化できるでしょうか。ここでもPlant Simulationを使用したところ、信頼性の高い答えが得られました。」

「ポーランドの別の工場では、工場生産能力を高める時間配分を検討するためにPlant Simulationを使用しています。現在、プレス機の硬化時間に基づいて、硬化生産計画を割り当てています。」

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シミュレーション技術の拡張

こうしたすべての成功例を見てきたChenevier氏は、ミシュランの野心的な目標達成にも自信を持っています。「Plant SimulationとOptimize My Plantをエンドユーザーが使いやすいフロントエンド・ツールとして導入した結果、夢のアーキテクチャが実現しました。これまで5つのパイロット・プロジェクトでテストしましたが、そのすべてが私たちの自信を強めました。今後の展開にも期待が膨らみます。さらに、ダイナミックな製造シミュレーションは工業生産のすべての領域に価値があるのだということを、従業員に納得させることに成功しました。

短期的には、現行プロジェクトと最適化関連のプロジェクトにメリットがあると考えています。一方、長期的には、リアルタイムのデータ検索を可能にし、製造シミュレーションをすべての領域に大規模に展開する予定です。Plant Simulationを使用して、シームレスなユーザー・エクスペリエンスの提供というビジョンを達成していきます。われわれは、この新しい生産性向上ツールを中心に、あらゆるレベルでコラボレーションを強化していくつもりです。同時に、この成功事例をてことして、Plant Simulationの全面導入も本格化させていきます。」

「2027年までに、Plant Simulationを15の工場に新規導入する予定です。その間により多くのユースケースを収集して公開し、製造シミュレーションのメリットを組織内のすべての関係者に周知することで、全社的にその理解が深まっていくことを期待しています。」

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Plant SimulationとOptimize My Plantをエンドユーザーが使いやすいフロントエンド・ツールとして導入した結果、夢のアーキテクチャが実現しました。
Thierry Chenevier氏, サプライチェーン担当デジタル・トランスフォーメーション エキスパート, ミシュラン