シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションが、最適な製品とアプリケーションを選択できる柔軟性をMarquardtに提供
Marquardtグループは、電気機械 / 電子スイッチ、およびスイッチング システムの大手メーカーです。創業90余年の同族経営企業です。Marquardtの製品は、大手自動車メーカー各社で採用されています。さらに同社のシステムは、家庭用電化製品や産業用アプリケーションでも使用されています。
企業では、コンピューター支援設計 (CAD) システムの重要性が増してきています。商用エンタープライズリソースプランニング (ERP) システムと同様に、デジタル製品エンジニアリングプロセスチェーン全体の情報源となっています。このため、変更を検討している場合は特に、システムをテストすることが有効です。新しいシステムへの切り替えは、設計部門のニーズを超えた戦略的意思決定です。古いシステムに固執した方が一見安価に見えますが、Marquardtグループの包括的な分析が示すように、全体的な状況を考慮すると、まったく異なる結果が見えてきます。
Marquardtは、インタラクティブ メカトロニクスのリーディングカンパニーです。自動車 / トラックの運転手は皆、どこかの時点でMarquardtの製品に直接触れています。さらに、Marquardtの革新的なスイッチ、センサー、制御ユニットは、家庭、職場、工場でも目にします。ドイツ、リートハイム・ヴァイルハイムで製作所として創業したMarquardtは、以来90年、11,000人以上を雇用するグローバルリーダーへと変貌を遂げました。
独立系の家族経営企業であるMarquardtは、今日まで最高品質の製品を提供し続けています。このため、短期 / 四半期の利益に基づいて意思決定を下すことはありません。顧客、従業員、サプライヤーは、長期的な成功を重視するMarquardtの慎重な意思決定を尊重しています。
Friedrich Bruns氏は、MarquardtでCADシステムを担当しています。Marquardtは、2015年に自動車開発部門と非自動車開発部門を統合した後、単一のCADシステムに標準化するという決定を下しました。以前自動車部門は、ダッソー・システムズのCATIA®ソフトウェアを使用していました。CATIA®ソフトウェアは、MarquardtのCADステーションの約3分の1で使用されていました。一方、非自動車部門は、1998年以来、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX™ソフトウェアを使用してきました。
Bruns氏は次のように述べています。「当時、非自動車部門で、どちらのCADシステムが当社のプロセス チェーンに適しているか調査しました。すると、NXの方が良い結果を得られました。今回の合併の際、私たちは、拠点全体での相乗効果を最大限に高めるために、プロセス全体を見直す必要があるのでは、と考えました。将来の開発リソースを確保するために、「世界中に単一のCADシステムを導入する」という目標を立てました。加えて、取引先の主要メーカー3社がNXファイルのデータを必要としていたため、自動車部門はCATIA V5からNXへと移行しました。」
Bruns氏にとって、課題は「Marquardtに最も適しているのはどの選択肢か」を見極めることでした。エンジニアとしてBruns氏は、ユーザーの分布、トレーニングの必要性、ライセンスのコスト、ツールとプロセス、顧客の要件、投資保護という5つの基準を考慮して分析しました。NXの経験があるユーザーと経験のないユーザーを比較し、18%のユーザーがNXソフトウェアの使用に熟達していることが分かりました。自動車部門では、23%がNXをある程度使用していました。多くの従業員は既にNXを使用した経験がありましたが、大半のユーザーはさらに広範なトレーニングが必要な状態でした。労働時間の損失による内部コストと、トレーナー料金などの外部コストを考慮すると、当初は、設計者の専門知識を増やすには、多額の投資が必要だと思われました。
必要なライセンスは? Bruns氏は、さまざまなライセンスモデルを検討しました。「Marquardtは、各国でCATIA V5のフローティングライセンスモデルを持っていました。シーメンスNXにも、タイムゾーンに基づくフローティングライセンスモデルがありますが、グローバルライセンス契約が遥かにシンプルです。古いシステムからNXへ移行するには、単純にライセンス要件が増加するため、当初はコストがかかります。」
Bruns氏は続けます。「キネマティクス、板金設計、ラピッド プロトタイピング、FEMなどの追加機能は、NX Advanced Simulation、NX Sheet Metal、NX Rapid Prototyping、NX Design Simulationを使用してシームレスに実装できます。MCADとECADの間のデータ交換には、シーメンス製品ファミリーに含まれるPCB.xchangeを使用したいと考えています。CATIAとは異なりNXの基本ライセンスには、Marquardtで使用しているニュートラルなSTEPフォーマットが含まれています。将来的な開発を考えずに、トレーニング、基本ライセンスコスト、ツール / プロセスのコストだけを考えれば、NXへの投資は約5倍高価です。」
しかし、この数字は間違った判断を生む可能性があります。Bruns氏は分析を続けました。
次に、Bruns氏は顧客の視点から状況を観察しました。最新の数値を得るために、2016年初頭以降に発行された顧客要件のCAD文書の数を比較しました。Bruns氏の言葉です。「PLMシステムを分析すると、私たちが処理していた文書の50%は、非自動車の顧客またはNXの自動車の顧客に関係するものでした。CATIAの顧客に関係するデータは、僅か4分の1でした。別の四半期の社内データも分析しました。また、自動車部門では、顧客の要望を受けて、多数の部品設計文書が最終的にNXファイルへと変換されていました。最初から顧客向けの文書をNXで作成していたら、NXの価値は10~15%程高まったでしょう。」
最終的にBruns氏は意思決定プロセスに開発者を関与させました。CADシステムを使用するのは開発者だからです。「現在CATIA V5を段階的に廃止しています。その後は3DEXPERIENCEです。CAD機能は、メーカーのPLMに接続されます。Marquardtは、大規模なフォローアップ投資を行う予定です。このソフトウェアアーキテクチャには、リリースごとに別個のデータベースインスタンスが必要です。独立したユニットとして、データを複数のバージョンで使用することはできません。つまり、リリースごとにサーバーインフラストラクチャが必要になります。過去にはこうしたリリース変更で、多額のコストがかかったことがありました。NXなら、その心配はありません。」
ダッソーが、CADと製品ライフサイクル管理 (PLM) を抱き合わせ販売 (CADが必要なら、PLMも導入する必要がある) していたことに加え、リリースが変わるたびにライセンスを購入する必要があったことから、MarquardtはCATIA V5の段階的廃止を決めました。Bruns氏はその理由を次のように説明しています。「どの製品やアプリケーションが適しているかは、自分たちで判断したいと思いました。シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアはその選択肢を示してくれます。ダッソーは、Oracle Agile PLMと同様にPLMが突如リスク要素となりました。データ品質という観点から見ると、移行にはかなりの不確実性が伴います。このソフトウェアで当社のプロセスをマッピングできるかどうかも分かりません。どこまでをプロジェクトの範囲とすべきなのか誰も教えてはくれません。そのうえ、顧客はネイティブのCADデータが欲しいわけではありません。
逆に、ニュートラルなJTフォーマットが交換フォーマットとして受け入れられつつあります。NXはJTデータを既に統合していますが、CATIA V5や3DEXPERIENCEはJTデータを統合していません。これには、別途サードパーティ プロバイダーのツールを使用した作業が必要になります。ダッソーを選択することで直面する不確実性を考慮した結果、開発をNXに移行することが合理的であると判断しました。」
この分析結果が明らかになった後、Marquardtの取締役会は、グローバル研究開発 (R&D) 用CADシステムとして、CATIAに替えてNXを採用すると発表しました。同時に、JT™データフォーマットを標準の交換フォーマットとしました。この変更は、Marquardtが保有する200超のライセンスに影響を及ぼします。
Bruns氏は述べています。「NXを選択することで、必要としていた柔軟性が得られました。」と「分析結果には驚きましたが、その事実からこうした結論にたどり着きました。シーメンスは、コンサルティングを提供し、常に現場で寄り添い、全力で支援してくれました。このため今後のコラボレーションへの確信が持てました。」
さらにBruns氏は続けます。「JTフォーマットが社内標準となり、これがPLMシステム内でのプロジェクト表示の基盤となっています。デジタルプロセスチェーン全体で確固たる地位を築いているサプライヤー、シーメンスと連携することで、将来的な実行可能性と、最適なソリューションを選ぶ自由が得られました。」