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Simcenter Amesimを活用して制御システムの検証工数を50%削減したグローバル自動車サプライヤー

Simcenterポートフォリオ・ソリューションを使用して燃料噴射システムを最適化したマニエッティ・マレリ

Simcenter Amesimを活用して制御システムの検証工数を50%削減したグローバル自動車サプライヤー

マニエッティ・マレリ

マニエッティ・マレリは、自動車業界向けのハイテク部品やシステムを開発・製造する国際的な企業グループです。世界19か国に38,000人以上の従業員を有し、89の生産ユニット、12の研究開発 (R&D) センター、26の応用施設を展開しています。ヨーロッパ、アジア、北米、南米の主要な自動車メーカーに製品を供給しています。自動車用照明、パワートレイン、電子機器システム、サスペンション・システム、排気システムの製造のほか、アフターセールス向けの部品供給や各種サービス、プラスチック部品の製造やモータースポーツ関連の事業も手がけています。

http://www.magnetimarelli.com

本社:
コルベッタ, Italy
製品:
Simcenter 3D Solutions, Simcenter Amesim
業種:
自動車 / 輸送機器

共有

Simcenter AmesimとSimulinkとの協調シミュレーションにより、制御システムの検証工数を50%削減することができました。その結果、テストベンチで実際にテストする時間も大幅に短縮しました」と、マニエッティ・マレリのメカニカル・エンジニアであるMarco Parotto氏は説明します。
Marco Parotto氏, メカニカル・エンジニア, マニエッティ・マレリ

燃料噴射システムを最適化

燃料噴射システムは、車両の燃費を向上させ、汚染物質の排出を削減するうえで重要な役割を果たします。ガソリンおよびディーゼル直噴エンジンには、非常に信頼性の高い高圧噴射システムが必要です。それにより、高度な燃焼戦略を実現し、燃料の噴霧化や空気と燃料の混合プロセスを改善します。

しかし、燃料噴射システムは、インジェクター (燃料噴射弁) の高速の開閉やポンプの流量の変化によって、燃料圧力が変動する可能性があります。この変動が、精度の低下や、シリンダー間で不均一な燃料噴射、噴霧の性能低下を招く可能性があります。このため、燃料噴射システムの設計は、正確な計算モデルによって裏付けることが重要であり、実際のインジェクターの流れや燃料噴射システム全体の動作を予測できなければなりません。

自動車のグローバルTier 1サプライヤーであるマニエッティ・マレリは、継続的なイノベーションと環境の持続可能性に取り組みながら、電子機器に関するノウハウと幅広い専門知識を活かしています。同社は、自動車のアクティブ・セーフティ (予防安全) とパッシブ・セーフティ (衝突安全) のためのインテリジェントなシステムや、車内の快適性を向上させるシステム、パワートレイン技術を開発したいと考えています。 2009年、マニエッティ・マレリは、自動車、オートバイ、小型車向けのハイテク燃料噴射システムの各コンポーネントおよびシステム全体の設計プロセスを強化するために、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenterポートフォリオの一部であるSimcenter Amesim™ソフトウェアを採用しました。

「噴射システムの複雑な設計に対処するには、モデルベース・システム・エンジニアリング・アプローチしかありません」と、マニエッティ・マレリのメカニカル・エンジニアであるDomenico Paolino氏は言います。

マニエッティ・マレリでは、Simcenter Amesimを使用して、最新の燃料噴射システムのマルチドメイン・コンポーネントを正確にモデル化しています。燃料圧力の変動を制御し、燃焼室に正確な量の燃料を噴射することで、燃費を向上させ、厳格な排出規制を満たそうとしています。Simcenter Amesimを使用して、燃料噴射システムの正しい寸法やフロー・リストリクター (燃料流量制限装置) とダンパー (調整弁) の適切な位置を検証して、燃料噴射の性能を高めています。

制御システムの設計をサポート

マニエッティ・マレリは最近、圧力調整バルブ (PRV) と燃料計量バルブ (FMV) で構成される以前の燃料噴射システムを最適化するために、制御低圧ポンプ供給 (COLPS) という新たな技術を開発しました。その結果、燃料噴射システムのレールを簡素化し、生産コストを削減することができました。電気モーターで低圧ポンプを制御するCOLPSは、より正確な制御と圧力変動の最適化を可能にします。さらに、低圧ポンプによって、目標のレール圧力を満たす正確な流量を生成できるため、エネルギーの節約と排出量の削減が可能です。

燃料噴射システムの設計は大幅に簡素化しましたが、新たな技術にはさらに高度な制御戦略が必要です。マニエッティ・マレリのシステム・エンジニアは、制御システムの複雑さに対処するために、Simcenter Amesimを使用して、油圧コンポーネントの挙動を詳細に把握し、制御チームとソフトウェア設計チームにその情報を提供しました。Simcenter AmesimとSimulink®環境の協調シミュレーションにより、実際のエンジン制御ユニット (ECU) 内の環境を再現し、制御アルゴリズムを一定の時間ステップでプラントモデルと相互作用させます。

「このアプローチにより、油圧コンポーネントとソフトウェアの挙動を並行して評価できるようになりました。テストベンチで直接テストしていたら多大な時間がかかります。検証済みのSimcenter Amesimの油圧コンポーネントを使用することにより、設計の最初からソフトウェア構造を最適化できます。さらに、起こりうる機械的な故障やソフトウェアの不具合をシミュレーションできるため、システムに及ぼす影響を把握することができ、設計の診断的側面に関して重要な情報を得ることができます」と、Paolino氏は説明します。

2つのシミュレーション環境の利点を活かす

マニエッティ・マレリは、Simcenter Amesimを使用してマルチドメインのエンジン・コンポーネントをモデル化すると同時に、Simulinkを使用して制御システムを開発するという選択をしました。2つのソルバーは相互に接続されているため、入力データと出力データは2つの環境間で相互伝達されます。完全仮想のシステム環境を築くことで、油圧コンポーネントとソフトウェアの両方のシステム挙動をシミュレーションすることができます。Simcenter AmesimとSimulinkが連携して、制御戦略の信頼性を高めます。

「この2つの環境の利点を組み合わせることで、Simcenter Amesimを使って作成したマルチドメイン・システムとSimulinkを使って作成した制御モデルを含む完全なモデルベースのソフトウェアを構築できました。これにより、製品と各コンポーネントの設計を最初の段階から最適化できるようになります」とPaolino氏は言います。

仮想テストを実施

協調シミュレーションを使用することで、実際の環境では再現できないようなシナリオを仮想環境でテストすることができます。シミュレーションの目的は、運転操作や出口圧力、燃料温度によるシステム応答を解析することと、さまざまな外部要因に対して変化するポンプ流量を測定することです。起こりうる機械的な故障やソフトウェアの不具合をシミュレーションできるため、システムに及ぼす影響を把握することができ、設計最適化に関する重要な情報を得ることができます。

「もう1つSimcenter Amesimの非常に便利な機能は、実際の環境では再現できないような困難なシナリオをシミュレーションできることです。制御システムの設計者は、このシミュレーション結果を使用することで、設計プロセスの最初からより正確に制御戦略を築くことができます。テストベンチでこれをすべて実証するには、莫大な時間とコストがかかります。Simcenter AmesimとSimulinkとの協調シミュレーションにより、制御システムの検証工数を50%削減することができました。その結果、テストベンチで実際にテストする時間も大幅に短縮しました」と、マニエッティ・マレリのメカニカル・エンジニアであるMarco Parotto氏は説明します。また、このような仮想テストは、規制当局にとってもますます重要になりつつあります。

「当社は、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのイタリアのパートナー企業であるBSim Engineeringと緊密に連携しています。BSim Engineeringのスペシャリストたちの迅速な対応のおかげで、モデル開発を効率化できています」とParotto氏。

パートナーとの連携を強化

自動車業界では、実際の製品を提供するだけでなく、製品に必要なシミュレーション・モデルを提供することも一般的になってきました。マニエッティ・マレリは、顧客としてSimcenter Amesimのシミュレーション・モデルをサプライヤーから受け取るだけでなく、サプライヤーとしてモデルを顧客に提供しています。「Simcenter Amesimは、顧客やサプライヤーとより迅速かつ容易にコミュニケーションするための標準言語になりました」とParotto氏は言います。

Simcenter Amesimは、顧客やサプライヤーとより迅速かつ容易にコミュニケーションするための標準言語になりました。
Marco Parotto氏, メカニカル・エンジニア, マニエッティ・マレリ