JK Machining、NXを使用して金型の設計 / 製造プロセス全体をデジタル・スレッドでつなぎ、効率を改善...
JK Machiningはプラスチック射出成形金型を設計・製造しています。1980年以来、自動車、医療、電子機器業界向けに製品を開発してきました。高硬度で挿入型の、きわめて精密なクラス101の金型製作を専門としており、ISO 9001:2000の認証を取得しています。
JK Machiningの社長、Henry Kalkman氏は次のように話しています。「以前は自動車向け工具の開発に18~22週間かかっていましたが、今では10~12週間に短縮しています。お客様は皆できるだけ迅速な市場投入を望んでいるからです。海外の金型メーカーはコスト面で優位にあり、品質レベルも上げていますが、そうした相手と競争しなければなりません。」
JK Machiningは、金型設計 / 製造の専門知識を持つ15名の専任チームを編成し、最新の技術を活用してこれらの課題に取り組んています。また、高速マシニングセンター、グラインダー、ミル、放電加工機 (EDM) などの高性能工作機械を取り揃えた製造工場を操業しています。
JK Machiningは数年前、コンピューター支援設計および製造 (CAD / CAM) 機能をアップグレードして効率性と競争力を向上させようと模索し、最先端のCAD / CAM機能と、金型設計専用ツールを備えたシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX™ ソフトウェアを採用しました。
それまでJK Machiningは、金型設計と製造に別々のソフトウェアシステムを使用していました。そのため設計から製造へ移行する際に、ニュートラルなファイル交換フォーマットでデータを設計システムからエクスポートし、それをCAMシステムにインポートして数値制御 (NC) プログラミングを行わなければなりませんでした。このデータ転送と変換によって余計な手順が加わり、その過程でエラーが生じて生産性は低下します。さらに、データの転送や変換を経ることで設計変更の処理は複雑になり、プロセスも分かりにくくなるので、変更を正確に追跡したり実行することも困難です。
JK Machiningが以前使用していたNCプログラミングソフトウェアは、重要な機能が不足していたため、引き受けられる仕事の種類には制限がありました。高速5軸加工機を導入したときに、従来のNCプログラミングソフトウェアでは5軸加工機特有の速度と効率の要件を満たすように対応したりカスタマイズすることが難しい、と判明しました。
そこでJK Machiningは、いくつかの重要な基準を考慮してNXを採用しました。各種機能を完全に統合したNXは、設計から製造に至る金型開発プロセス全体を自動化する機能を備えています。NXのCADツールには、顧客から提供された形状モデルを扱える強力な機能に加え、金型専用の機能も備わっているので、金型設計の手本となるような高効率のワークフローを実現できます。NCプログラミングでは、NX CAMソフトウェアが高速5軸加工機プログラミング用の先端ツールを提供するため、高度な工作機械を十分に活かすことができます。JK Machiningはこの統合システムを使って、設計と製造のプロセス全体を自動化するデジタル・スレッドを構築しました。
JK Machiningは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア・ソリューションのパートナーであるCAM Logic, Inc.から、導入のコンサルティングとサポートを受けています。「ソフトウェアの新バージョンが出たときには特に、CAM Logic, Inc.のサポートは重要です。各リリースの新機能のほか、どのように活用するのが最適かを理解できるようにサポートしてくれます。」JK Machiningの社長、Henry Kalkman氏はこのように話します。
JK Machiningの標準的な金型設計プロセスは、依頼部品のCADモデルとプロジェクトの見積り依頼が顧客から届くと同時に始まります。CADモデルは通常、ニュートラルなファイル交換フォーマットであるSTEPで届き、JK Machiningはその形状データをNXにインポートします。見積りの作成には、金型設計の豊富な経験を活かします。Kalkman氏は次のように話します。「過去の経験からモールドベースやホットランナーのコストがどの程度になるか直感で分かります。専門知識があるので、正確な見積りをすぐに作成できます。私たちのビジネスではこの点が極めて重要です。」
プロジェクトを受注すると、K Machiningは即座に金型設計を開始します。NX Mold Wizardの金型設計専用ツールを幅広く活用してモールドベースを作成し、コア、キャビティ、ランナー、冷却管その他の部位を設計します。金型設計30年の経験を持ち、NXを10年以上使用するBrian氏は、次のように語ります。「NXを使った金型設計は、2Dで金型設計していた頃とは隔世の感があります。この金型解析ツールは非常に優秀です。アンダーカットや抜き勾配が必要な場所を簡単に特定できます。薄肉や厚肉の部位を見つけて、金型の総重量と重心を自動的に決められます。」
Brian氏は、金型設計を自動化するNXの他の機能についても熱く語ります。「金型設計ライブラリを活用することで時間は大幅に短縮します。私たちは長年コンテンツを追加しながら使っています。またNX Mold Wizardを使用することで、設計変更は自動化し、シンプルになりました。変更された部品モデルを受け取ったらNX Mold Wizardに読み込んで収縮率を追加し、変更前と変更後の部品を比較して差異を確認するとすぐに更新を行えます。」
「部品表 (BOM) の作成も自動化されているため、1日かけてコンパイルする必要はありません。ジャーナリングやマクロ機能を使って多くの繰り返し作業を自動化すれば、時間をさらに節約できます。1つの作業を1度だけ実施して、それをジャーナリング機能で記録してマクロとして保存しておけば、次のプロジェクトでも使えるため、設計プロセスを大幅に短縮できます。」Brian氏は、このように説明しています。
JK Machiningは、金型製作で行うすべてのミル加工をNX CAMでプログラミングします。同社の工場には、主にドリルサイクルや荒加工に使用するMilltronicsの機械が2台、金型のキャビティ仕上げと放電加工の電極切削に使用するRödersの高速垂直マシニングセンターが2台 (1台は3軸、1台は5軸) あります。
JK MachiningのNCプログラマーは金型のCADモデルから直接作業します。NXの設計機能を幅広く使用して機械加工用のモデルを準備し、電極を設計します。CADツールを使ってギャップの押出し、結合、穴埋めを行います。JK Machiningのシニアプログラマー、Rick氏は次のように語ります。「金型モデルには過去に行われた多くの作業があり、それを活かすことができます。例えば、すべての水管やボルト穴を除去したければ、クリック1回で削除できます。NXのシンクロナス・テクノロジーは非常に使いやすく、直感的な操作が可能です。顧客から届いた部品の形状に問題がある場合、Optimize Face (フェースの最適化) 機能を使って修正すれば、多くのステップを踏む修正プロセスをたどるよりはるかに簡単です。フェースの移動、置き換え、オフセットが簡単にできるのです。」
金型設計機能と機械加工機能を完全統合したNXを使うと、ほとんどのプロジェクトで多くの時間を削減できます。JK MachiningのCNCプログラマー、Mitch氏は次のように話します。「CADでの編集も、CADとCAMを行ったり来たりすることも簡単です。以前のソフトウェアでは、金型を設計したらそれをCADシステムからエクスポートしてCAMにインポートしていました。どこかで問題が起きれば、その作業をやり直さなければなりませんでした。」
NXの高度なNCプログラミング機能を活用することで、JK Machiningの競争力は高まりました。「古いソフトウェアを使っていたときは、部品を見せられたときに対応できるか疑問に思うこともありましたが、今では機能が充実しているため悩むこともなくなりました。複雑な部品、深いポケットなど、どんな難問にも対応できます。高度なプログラミング機能があるからです。」Rick氏はこのように語っています。
高速加工は金型メーカーにとって重要な技術です。機械のスピンドル速度と送り速度が高速になれば、鏡面に近い仕上がりの研磨面をそれだけ早く達成できるからです。Rick氏は次のように説明します。「NXは高速機械加工に適しています。ツールパスの半径、アプローチ、出口の自動設定機能を持つNXは、非常に高速でスムーズなカッターパスを実現します。RPM (回転速度) と送り速度を高速に保ちながら、鋼やグラファイト上での急カーブや突然停止、休止を回避します。」
さらにRick氏は続けます。「仕上がりも抜群です。Rödersの機械を使ったどのジョブでも最高の表面仕上がりになります。金型を機械加工したら、ベンチワークは不要です。これが大幅な時間節約となり、お客様による検収率の向上にもつながります。」
JK MachiningのNCプログラマーは、5軸加工の利点を容易に活かせるNX CAMの工具傾斜角制御機能を特に評価しています。この機能で3軸ツールパスを5軸に自動変換し、深いキャビティを持つ金型を効率的に加工します。JK Machiningは工具傾斜機能を使って、より短い工具で振動を軽減し、工具のたわみを最小限に抑えて表面の仕上がりを向上させます。「工具傾斜機能がなければ、カッターをグラインダーへ持って行き、ネックを緩和させる必要があります。1.5インチ下に下がった直径.032インチのカッターで電極を切削する場合、送り速度を3分の1低下させて少しずつ切削しなければなりません。従来の機械加工では非常に時間がかかります。一方、NX CAMの5軸工具傾斜技術を使えば、金型品質を向上させながら、加工時間を最大4分の1に短縮できます。」Rick氏は、このように話します。Mitch氏もまた、NX CAMの機能を次のように評価しています。「工具軸傾斜機能は素晴らしいです。できることが大幅に増えるので、これまで引き受けられなかったプロジェクトも受けられるようになります。
高度なユーザー制御機能と豊富なオプションを備えるNXの先端5軸ミル加工は、JK Machiningのプログラマーに高い柔軟性をもたらし、送り速度を維持しながら高品質の仕上がりを実現します。Rick氏は次のように語ります。「レストミリングに用いるフローカット技術は、金型加工に最適です。「上から下」「下から上」「外側から内側」「内側から外側」など、適切なツールパスを得るオプションは多数あります。従来のソフトウェアでは同等の結果は達成できなかったでしょう。NXを使えば常に最適なカッターパスを作成することができます。」
NXには、金型の設計と製造を自動化し、カスタマイズするさまざまなツールが内蔵されています。プロセステンプレートを使えば、NCプログラマーは実証済みの切削技術と工具を確実に使用できます。Rick氏は次のように説明します。「プロセステンプレートを使用すると、切込みの深さや直径、フィード、速度などジョブごとに同じパラメーターを毎回入力する必要がなくなります。保存したテンプレートを再利用すれば、ツールパスをわずか数分で生成できます。以前は、深さや側壁、スカロップ (側壁に入る波打ったような凹凸) の寸法を考慮する必要があったため、1時間かかっていました。荒加工、中仕上げ、仕上げなど、実証済み機械加工サイクルのテンプレート・ライブラリがあるので、NCプログラミングは自動化できます。これで機械加工は大幅に加速します。」
JK Machiningはまた、個別要件に合わせてNXをカスタマイズできるオープンな自動化 / カスタマイズツールも評価しています。Rick氏は次のように述べています。「NXがさまざまなプログラミング言語に対応している点も評価しています。例えばジャーナルファイルを記述して繰り返し手順を自動化する際に、任意の言語を選択できます。」Rick氏は、機械ごとにNCプログラムを作成できる点も重要だと指摘しています。「5軸加工機を導入したとき、従来の専用ソフトウェアではポストプロセッサーを修正できませんでしたが、NX Post Builderは完全にオープンであるため、ポストプロセッサーを簡単に調整することができます。微調整したポストプロセッサーを使うことで、正しいプログラムを作成し、より高品質かつ高速の機械加工を実現できます。」
Kalkman氏は、NXがJK Machiningにもたらした影響を次のようにまとめています。「NXは申し分ありません。長年NXを使ってきましたが、その間に多くの変化を見てきました。以前は3軸加工しか使用していませんでしたが、今では5軸加工も使用しています。そしてロボットによるプロセス自動化も検討しています。NXを活用した自動化と継続的な向上によって、最高品質の金型を納期どおりに出荷するという実績を積み上げることができました。競争力を維持し、事業をさらに成長させる秘訣はNXです。」