Siemens Xceleratorを活用して、eレースのエコシステムで成功するための強固なエンジニアリング基盤を構築
InMotionは学生チームです。2012年に創立し、最初のレースカーであるイグニッションのアセンブリを開始しました。 以来、チームは、12分で充電可能な最初の急速充電レースカーであるレボリューションや、いくつかの受賞歴のあるレースカーを開発しています。
持続可能性が最重要視されるなかで、代替動力として電動化を検討するレーシングチームが増えています。
それでは、電気自動車で耐久レースに参加できたら、ル・マンはどうなるのでしょうか。
ガソリンやディーゼル燃料を補給するのと同じ時間でレースカーを充電できたらどうでしょうか。これを成し遂げたのが、オランダのアイントホーフェン工科大学に所属するInMotion学生チームです。
ヘルモントのオートモーティブ・キャンパスを拠点とするInMotionは、現在、最新車「レボリューション」の微調整を行っています。レボリューションは、革新的な12分間の急速充電技術と次世代バッテリー・パックを誇る完全電気式のル・マン・レースカーです。
「私たちはモビリティの面でイノベーションを起こそうとしています。」とInMotionのアカウント・マネージャー、Martijn Scholtus氏は言います。「現時点の急速充電は遅すぎると考えています。それが人々が電気自動車を運転しない理由かもしれません。レボリューションでは、充電時間を可能な限り高速化したいと考えています。現在12分で充電しています。これは大きな飛躍です。しかも、ル・マンのレースカーです。」
「最も権威のあるレースはル・マン24時間レースです。私たちのチーム全体が、この技術でレースに参加することを夢見ています。ル・マン24時間レースで成功すれば、どこでもうまくいくはずです。」
InMotionチームは、毎年学生を交代で起用する財団として運営されており、継続的なイノベーションを実践しています。経験豊富なかつてのメンバーは、現在のチームと毎週会い、情報を共有し、技術的な課題の解決を支援しています。
InMotionは、伝統あるバイオエタノールのイグニッション (学生eフォーミュラ3最速)、フュージョン、ビジョン (より空気力学的なeコンセプトカー)、レボリューション (eポルシェやテスラよりも速い12分の充電時間を誇る真のパイオニア) など、4台の革新的なレースカーを立て続けに構築してきました。
「学生チームに所属して10年が経ちました。」とInMotionのチーム・マネージャー、Ewout Timmermans氏は言います。「これがInMotionを特別なものにしている理由です。10年前に設立した人々は、今でも監査委員会にいます。最初の電気式レースカーであるフュージョンを開発した担当者は、今でもレボリューションに関する知識を共有してくれます。ほかではあり得ません。前進や進歩、チームの継続性を維持することが大切です。」
昨年のInMotionの主な焦点の1つは、チームを専門化することでした。学生たちは、それを次のレベルに引き上げ、本物のレーシング・チームのようなパフォーマンスを開始したいと考えていました。InMotionは、これを実現するために、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアに協力を求めました。
「シーメンスは、レースカーの設計、製造、エンジニアリングに必要なすべてのソフトウェアを提供してくれます。これを実現するための重要なパートナーです。」とTimmermans氏は言います。
「非常に優れたソフトウェアで作業する必要があります。シーメンスは、同じソフトウェア・スイートをフォーミュラ1にも提供しています。そのため、InMotionではプロチームと同じソフトウェアを使用しています。おかげで設計を限界まで推し進めることができました。その結果、ガレージには膨大なエンジニアリングの結晶である素晴らしいレースカーが眠っています。これは実に特別なことです。」
全電気式の実用的なル・マン・レースカーと、高度な専門性を備えたレーシング・チームを機能させることを目標に掲げ、学生たちは代表的なフォーミュラ1チームと同じシーメンスのソフトウェア・ツールを使っています。
チームは、詳細なコンピューター支援設計 (CAD) 作業用のNX™ソフトウェア、高度なエンジニアリング作業用のSimcenter™ STAR-CCM+™ソフトウェア、Simcenter 3DソフトウェアなどのさまざまなSimcenterソフトウェア・ツールを使用して、レボリューションとそのシステムの包括的なデジタルツインを構築しました。革新的な考え方を持つInMotionが、Teamcenter®ソフトウェアをプロセスに完全に統合し、レボリューションのデジタル・スレッドから適切なデータを活用した、初の学生チームとなったことも不思議ではありません。Teamcenter、NX、Simcenterはすべて、ソフトウェア、ハードウェア、サービスのビジネス・プラットフォームであるSiemens Xceleratorに含まれています。テラバイト単位のデータが飛び交う中、Teamcenterを使用することで、さまざまな学生エンジニアがデジタルツインの複雑な側面に同時に取り組みながら、重要なデータに集中できるようになります。Teamcenterは、高度なシミュレーション、データ管理、試験プロセスをデジタル・スレッドでシームレスに連携させることで、プロセスの合理化において重要な役割を果たします。
「InMotionは設計に着手したばかりだ、と思われているかもしれませんが、それは真実ではありません。チームとしてレボリューションを設計しましたが、このプロセスには多くの要件、嗜好、アイデア、制約が伴っています。」とInMotionのテクニカル・マネージャー、Thomas Kuijpers氏は言います。
InMotionのエンジニアは、設計のインプットと基準に基づいて、自動車業界の大半の相手先ブランド名製造 (OEM) が設計開発の反復作業を進めるために使用してきた、従来のVサイクル・アプローチを採用しました。設計と解析の段階で数か月を費やした後、チームはレボリューションの青写真を作成しました。
「レボリューションのような設計を考案するには、設計するためのしっかりとした基盤が必要です。」とKuijpers氏は言います。「私たちはこの基盤を、シーメンスのツールを使って構築しています。例えば、シーメンスNXによる3Dモデリングなどです。モデルを作成して、デジタル環境でそのモデルの試験を行っています。そのため、最終製品を実際に製造し始めたときに、想定外の問題に出くわすことはありません。」
エンジニアリング・チームが直面した主な課題の1つは、レボリューションのアセンブリの規模と、モデルのさまざまな領域で作業を行う専門エンジニアの数でした。
「エンジニアリング・チームの規模が大きいため、多様なエンジニアに作業を委任できることが重要です。」とKuijpers氏は言います。「Teamcenterを使用することで、お互いの作業を上書きしてしまったり、アセンブリを分割したりするリスクを負うことなく、同じアセンブリで同時に作業し、各自の反復作業を行って設計に貢献できます。」
デジタルツインを使用してデジタル・スレッドで作業することは、チームの一部のエンジニアにとって新しい概念でした。プロトタイプの作成やその場での問題解決といった古くからあるやり方は、InMotionの新世代のエンジニアにとっては過去のものです。
「ほとんどのエンジニアにとって、仮想世界でこれほど詳細に作業し、高度な設計とエンジニアリングのパフォーマンスをこれほど正確に表現できたことは、実に驚くべき経験だったと思います。」とKuijpers氏は説明します。
シーメンスのすべてのソリューションを全員が使いこなせるようにすることで得られるエクスペリエンスは、標準 (OOTB) ツールから得られるものとはまったく違うということに、チームはすぐに気づきました。彼らは、オランダのベストに拠点を置くシーメンスのプラチナ・スマート・エキスパート・パートナーであるEmixa Industry Solutionsから支援を受けました。
「Emixa Industry Solutionsのコンサルタントは、私たちが行き詰まったときは常に迅速に対応し、正しい方向性を示してくれました。」とKuijpers氏は説明します。「特に学生にとってのシーメンスの大きな魅力のひとつは、Siemens Xcelerator Academyです。私たちのほとんどは、大学のオンライン・コースをすでに受講していましたが、新しいチームとして働き始めた後は、特定の教材やチュートリアルにアクセスしやすくなりました。これは私たちにとって非常に役立ちました。」
「強度解析にはNXとSimcenterをよく使用しています。」とInMotionのバッテリー・パック・エンジニア、Chiel Boons氏は言います。「特に、すべてのコンポーネントを収納するチューブラー・フレーム、電動パワートレイン全体、リア・サスペンション、リアウィングなど、堅牢なものを設計する場合です。
車輪の荷重に対応するために、すべてが調和し、強固でなければなりません。これを設計するには、NXのモデルからすぐにSimcenterに移動して強度解析試験を実行します。荷重と拘束を適用してフレームが持ちこたえるかどうか、設計の補強が必要な場所や材料を失う可能性がある場所を確認できます。」
「シーメンスのツールを相互接続することで、実際に設計が自動車に適合し、期待どおりに機能することに大きな自信を持てます。」「修正しなくても機能するのですから、本当に素晴らしいです。」とも語っています。
Siemens Xceleratorビジネス・プラットフォームの最も先進的な側面を導入したことで、現在そして将来のInMotionチームは、強固なエンジニアリング基盤を頼りにして、eレースのエコシステム、さらには近い将来にル・マンで成功を収めることができるのです。