Simcenter Engineering and ConsultingサービスとSimcenter Amesimを使用してディーゼル・エンジンの騒音を軽減させたHyundai
Hyundai Motor Companyは、自動車、鋼鉄、建設を中心にバリュー・チェーンを構築しているグローバル企業です。世界各国におよそ25万人の社員を擁している同社は、物流、金融、情報技術 (IT) などのサービスを提供しています。Hyundai、Kia、Genesisといった自動車ブランドを展開しています。
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エンジニアは長年にわたり、ディーゼル・エンジン車両の騒音の理解と低減に努めてきました。騒音、振動、およびハーシュネス (NVH) の原因は多岐にわたるため、相手先ブランド名製造 (OEM) やそのサプライヤーが特定することは困難です。
静かな車両に対する消費者の期待は高い水準を保っています。自動車メーカーが競争力を維持するためには、革新的なアプローチを採用して開発期間を短縮し、より静かな車両を提供する必要があります。
ディーゼル・エンジンの騒音はかなり改善されていますが、課題はいくつか残っています。Hyundai Motor Company社は最近、先進的なアプローチを導入し、ディーゼル・エンジンのNVH問題を低減しています。
目標は第3世代ディーゼル・エンジンの騒音源を特定することでした。Hyundai社は一連の試験を行った結果、燃焼サイクルの過程でシリンダー間に不均衡が生じることを明らかにしました。2つのシリンダーが他のシリンダーと比べて常に圧力が高くなっていました。この差異はエンジン動力計 (ダイナモ)、パワートレイン・ダイナモ、実車両で試験を繰り返すうちにさらに大きくなっていきました。
Hyundai社の上級研究員であるKi Hwa Lee氏は次のように述べています。「シリンダー間で圧力が異なる原因を突き止める必要がありました。シリンダーのピーク圧力に差異が生じる原因を特定しないと、騒音問題を解決できないからです」
Hyundai社はシリンダー間のピーク圧力に差異が生じる原因を特定するため、Simcenter™ Engineering and Consultingサービスと提携しました。まず不均衡の原因を特定するため、Simcenterエンジニアリング・チームは解析を実行しました。試験データを解析した結果、シリンダー間の圧力の差異は燃料噴射後から生じ始め、シリンダーの不均衡を招き、騒音が悪化することがわかりました。
物理試験で得た放熱データを数式を使用して解析した結果、シリンダー間で燃料噴射量に差異があることが不均衡の原因であることがわかりました。
チームは騒音源が燃料噴射の差異に起因するシリンダーの不均衡にあることがわかると、モデルベースの制御戦略を策定することが効果的な解決策につながると判断しました。シミュレーションにより、物理的なプロトタイプを使用する場合に生じるコストや繰り返し作業を回避し、試験プロセスを合理化しました。
ディーゼル・エンジンの仮想モデルは、Simcenter™ Amesim™ソフトウェアを使用して構築されました。このソフトウェアは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが提供するソフトウェアとサービスの包括的な統合ポートフォリオであるXcelerator™ポートフォリオに含まれています。このモデルはコントローラに接続されたため、チームは燃料噴射の不整合を確認して修正することができました。さらにチームは、Simcenter Amesimを使用して、燃料噴射の差異を検出/解決する方法を見い出せないかと考えました。
Simcenterエンジニアリング・チームはシミュレーションを実行するにあたり、シミュレーションによって実際の環境と同じ動作を再現できることを確認する必要がありました。いくつかの試験を実行し、エンジンのシミュレーションがエンジンの試験結果と相関していることを確認しました。
燃料噴射以外にシリンダーの不均衡を生じさせる原因がないか調査する必要もありました。不均衡は排気再循環 (EGR) やシリンダー間の空気充填循環の不足が原因で生じる場合もあります。いくつかの感度解析を行った結果、燃料噴射が不均衡の原因であるという結論に達しました。
燃料噴射の異常は簡単に修正できたものの、どのシリンダーを補正すればよいか、燃料の容量を変える必要があるかを見極める必要がありました。チームはSimulinkでコントローラ・モデルを作成し、革新的なシリンダを設計する戦略を策定しました。
コントローラ・モデルをSimcenter Amesimのエンジンモデルに適用すると、チームはコントローラの性能を解析して調整しました。最後に燃料噴射の調整を行い、ピーク圧力に差異が生じないようにしました。
チームはモデルを使用してシリンダーの空気と燃料の流量を変化させることで、シリンダーの不均衡を再現しました。「この問題を解決するにあたり、シミュレーションは特に役立ちました。さまざまな動作条件下で変動するシリンダー圧力のあらゆる変化を物理試験に頼らず確認できたからです」と、Lee氏は述べています。新しい制御戦略の効果は、コントローラを有効にした場合とそうでない場合のシミュレーションを連続して実行することで検証されました。
「この新しい制御ロジックを使用することで、シリンダー間のピーク圧力の差異を大幅に低減できました。その結果、エンジンによって生じる音の周波数は2dBA低減し、車両全体の騒音は5パーセント改善されました」
この解析により、車両の燃費も改善されました。Lee氏は次のように述べています。「シミュレーションの結果、私たちの制御戦略は、音質の最適化、NVH性能の向上、燃料消費の低減に効果的な方法であることがわかりました。今後もSimcenterのソフトウェアとサービスをHyundai Motor Company社で活用したいと考えています」