Simcenter SCADAS RSとSimcenter Testlabを使用して荷重データを取得し、耐久性設計を最適化したHyundai Motor Company (現代自動車)
現代自動車は、韓国のソウルに本社を置く多国籍企業です。世界中に約25万人の従業員を抱え、現代 (Hyundai)、起亜 (Kia)、ジェネシス (Genesis) といったブランドを展開しています
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最高の車両を製造するために重要なのは性能だけではありません。グローバル市場で競うためには、強い衝撃や振動、幅広い温度に耐えられる耐久性と、乗員の安全性および快適性を確保した車両を開発する必要があります。消費者は、故障せずに何年間も乗れる車を求めています。しかし、開発チームは耐久性を確かめるために何年間も車両をテストするわけにはいきません。効率よくこれをテストするために、現代自動車 (ヒョンデ) は、ライフサイクル全体で車両サブシステムにかかる荷重条件を見きわめる必要があります。そのためには、こうしたあらゆる荷重条件に耐えられる頑丈なデータ収集システムが必要です。しかも、このシステムを簡単に車両に取り付けて、必要なセンサーもすべてつなげなければなりません。
そこでヒョンデは、Simcenter™ハードウェアとソフトウェアを採用しました。Simcenterは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスを包括したSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォームの一部です。
ヒョンデの耐久性技術チームの目標は、車両サブシステムの耐久性を正確に測定するテストベンチ・スケジュールを作成することです。このテスト・スケジュールは、テストコースでの路面荷重データ収集 (RLDA) 中に測定した振動信号に基づいて作成します。このテスト結果は、さらなる処理・解析を経て、電気自動車 (EV) のバッテリー・システムなどの各サブシステムの耐久性ライフサイクルの予測に役立てます。
技術部品マネージャーのJongwoo Kim氏は、RLDAを実施すべき理由はいくつもあると説明します。「加速度を測定してテストベンチで再現させるだけでなく、ホイールにかかる力、シャーシ各部の伝達力、ボディの変形を測定して、車両全体のテストを可能にするためです。この荷重データは、今後の開発で各サブシステムと車両全体の設計をさらに最適化する際のシミュレーション用入力データとしても必要です」とKim氏。
通常、Kim氏のチームは15~20の加速チャネルを測定しますが、フルビークル・テストとなれば、測定する加速チャネルは100を優に超える可能性があります。このとき、ひずみゲージ、加速度計、変位センサー、ロードセル、ホイール力トランスデューサー (ホイール6分力計) など、さまざまなタイプのセンサーをテスト・セットアップに追加する必要があります。
「各テストは約2~3週間かかります。かなりの時間になるため、一度のテストで正確な結果が得られるよう、また、テスト時間が不必要に長くならないようにしなければなりません。特に、耐久性テストのように過酷な環境条件でテストを実施する場合はなおさらです。私たちが必要としているのは、エンジニアの作業がしやすくなるような最適なツールです」と、Kim氏は言います。
Simcenter SCADAS™ RSハードウェアは、ヒョンデにとって必要な要件を満たす理想的なツールでした。過酷な環境で使用できるように設計されており、さまざまなタイプのセンサーを正確に調整して同期します。ツール組み込みのWebアプリにより、エンジニアはその場ですぐにデータを検証し、適切なデータのみ取得できるため、効率が高まります。
最大1,000以上の同期チャネルまで拡張できます。また、柔軟なワイヤレス接続により、エンジニアはどこからでも、どのデバイスからでも、測定システムに安全にアクセスできます。Simcenter Testlab™ソフトウェアと組み合わせれば、エンジニアが必要とする機能すべてが揃います。高忠実度のテストデータを取得して結果データを解析し、設計の効率的なトラブルシューティングや根本原因解析が可能になります。
Simcenterソリューションの導入を決めたとたんに、成果が表れ始めたとKim氏は言います。「Simcenter SCADAS RSはサイズがコンパクトなので、他のソリューションに比べて車両への取り付けや、あらゆるセンサー・ケーブルの接続がはるかに簡単でした。非常に頑丈なため、耐久性テストで通常体験する強い衝撃や振動、広い範囲の動作温度に耐えられます。無停電電源装置は、不要なシャットダウンやコストのかかるテストやり直しを防ぐのに非常に役立ちます。Simcenter Testlabは、インストールや使用法も非常に簡単でした」と、Kim氏は説明します。
「Simcenter SCADAS RSは、非常に正確で信頼性の高い測定ソリューションであることがわかりました。さまざまなセンサーとの接続も他のソリューションよりはるかに容易です。また、CAN-FDなどの通信プロトコルで車両のバスデータを読み取ることもできます。市販されている類似のソリューションはこの機能をサポートしていません。ハードウェア組み込みWebアプリケーションを制御するためのワイヤレス接続も非常に便利です。さらに、モジュール式のシステム・アーキテクチャにより、小規模、大規模を問わず、各テストに合わせて容易にセットアップを最適化できます。」
Kim氏は、アフター・サポートにも感謝しています。「シーメンスのテクニカル・サポートは、初日から素晴らしかったです。チーム全体にトレーニングをしてくれたので、ソフトウェアとハードウェアの生産性がすぐに上がりました。また、シーメンスのエンジニアが定期的に訪問して、システムについて詳しく説明し、最大限に活用できるようにサポートしてくれました」と、Kim氏。
Simcenter SCADAS RSに切り替えてから、効率が大幅に向上したとKim氏は話します。「準備段階で測定チャネルの設定に費やす時間は、テンプレートを使用するだけで大幅に短縮しました。毎回ゼロから設定する必要がなくなったのです。また、Webアプリケーションを使って、測定の進捗をリアルタイムで監視できるため、実際の測定中に、取得したデータをより簡単かつ迅速に確認できるようになりました。Simcenter SCADAS RSのこうしたすべての機能により、2~3週間のテスト・プログラム全体を通じて推定1~2日間短縮できています (約12%の時間節約)。」
Kim氏は、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが、今後も同社の製品開発において重要な役割を果たし続けるだろうと確信しています。「シーメンスの耐久性およびシステム解析ツールや振動騒音解析ツールは優れており、ヒョンデでは今後、電気自動車やPurpose-built Vehicles (PBV: 目的に合わせて製造される車両)、アーバン・エア・モビリティ、ロボティクスなどの開発でこうしたツールが重要になるはずです。」
また、最新のAI (人工知能) 技術もすぐにでも活用しようと考えています。Kim氏は次のように述べています。「シーメンスのエンジニアリングおよびコンサルティング・サービス・チームと協力して、簡略化した1Dフルビークル・モデルを使用して、特定の路面プロファイルのホイール力を予測し、そのデータを後の詳細な3Dコンポーネント疲労解析に活かせないか、その可能性を探っています。機械学習を使って、実測データと1Dフルビークル・モデルをもとにホイール力を修正するアプローチの活用を検討しています。これは、将来、当社が競争優位に立つための重要な鍵になるでしょう。」