Simcenterソフトウェアソリューションによって、家具業界向けの高速ミル加工機を製造したグローバルメーカー
グローバル企業であるHomagは、生産拠点に加えて、販売とサービスを手掛ける企業も世界各地に展開しています。6,000名ほどの従業員を抱え、100か国以上に拠点を持つ同社は、世界市場で30%近いマーケットシェアを誇ります。多くの顧客企業がHomag Groupのハイテク加工機とシステムを使って、ホーム / オフィス用家具、キッチン、寄木張りフロア、ラミネートフロア、窓、扉、階段、完全プレハブ構造の木造骨組み建築などを製造しています。
Homag AG (Homag) は、木工機械を家具業界に提供するグローバルなサプライヤーです。木工関連の事業が約89%を占め、最も知名度の高い最大級の家具メーカーから認定サプライヤーとして認められている同社は、加工機械の品質を何よりも重視しています。
Homagのような産業機械メーカーにとって、事業の成否は、他社とは差別化された高品質の最終製品をどれだけ短時間で市場に投入できるかにかかっています。世界中を流通している木製パネルはいずれ安全性、快適性、見た目に優れたオフィス / 家庭用家具として生まれ変わります。こうした木製パネルを扱うHomagは、正しいスポットを削るミル加工機を開発する必要があります。目指しているのは、最終地点でのスムーズな組み立てを可能にし、高い顧客満足を達成することです。
家具の需要は堅調であり、品質、見た目、質感に対する期待も高いものです。Homagの製品アーキテクトであるPeter Dettling氏はこう述べています。「顧客が求めているのは、優れたデザイン性と快適さ、多機能性を組み合わせたものです。オフィスや自宅の家具には、高級感のある見た目と質感の表面仕上げが人気です。」
こうした点から、企業はこの課題に正面から向き合うしか選択肢はないでしょう。したがって、高速の加工機を導入して、プログラミングする必要があります。一方、高速化が進むとそれだけ加振力が加わり、特定の機械部品が同時に共振するリスクが高くなります。この結果、ミル加工の精度が低下し、最終的には品質に影響しかねません。Homagとしてはこのようなリスクは到底、受け入れられません。
加工精度を維持しつつ、加工速度を高めるため、同社はシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアに助言を求めました。モデル解析にどのような利点があるかを目の当たりにし、不良部品をピンポイントで特定できることを試した後、Homagは問題の原因を探るためにシーメンスのソリューションを採用することを決めました。
品質、加工速度、エネルギー効率の両立が非常に重要であり、これは、騒音振動と耐久性の属性をサポートする統合型エンジニアリングプラットフォームでなければ達成できません。
「作業速度を上げるという目標を設定したとき、何らかの問題が生じたり、品質が押し下げられるかもしれないことは分かっていました。われわれのゴールは、比類ない能力を提供する加工機械を提供することで、顧客の作業を容易化することであり、これにより、顧客は迅速かつ信頼性の高い方法で家具を製造できるようになります。また、振動特性の理解は加工にとって欠かせません。
加工機の構造は複雑であるため、高速化は動的特性、ひいては部品の機能性に影響を及ぼします。しかしながら、加工機のどの部分が問題なのかを正確に特定することは困難です。当て推量を排除して騒音振動の問題に対処するためのアプローチの1つが発生-伝達経路-受信モデルです。これは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが騒音振動性能を捉えるために開発したものです。
モーダル解析は、あるコンポーネントで発生した振動騒音がどような経路で伝達されるかを特定するものです。取得フェーズと解析フェーズがあり、衝撃ハンマーや加振器などの外力によって構造を共振させます。シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter™ポートフォリオの1つであるSimcenter Testlab™ソフトウェアを使用して衝撃試験を行うと、周波数応答関数を効率的に高速測定できるため、産業機械業界にとっては最も実用的な方法です。
Homagがシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと協力しながらこのプロセスを進めたところ、木製パネルを切断して、構造を支える重要なコンポーネントを加工する際、加工機の速度が上がるにつれて共振が発生していることが分かりました。
そこで、データ収集と衝撃試験のため、Simcenter SCADAS™ Mobileハードウェアを使用したモーダル解析と試験を実施したところ、衝撃ハンマーで打たれた後の各コンポーネントの振る舞いが明らかになりました。モーダル解析は、衝撃の加わる構造の複数の地点に加速度計を取り付け、被試験機械の支持構造を必要以上に加振させたときの正確な周波数を求めます。
騒音振動試験に発生-伝達経路-受信モデルを使用することで、問題を発生させるさまざまな現象を定量化してランク付けし、可能な解決策を速やかに発見します。このメソドロジは、問題の発生源であるコンポーネントとそれを増幅させているコンポーネントを切り分け、騒音と振動の問題をさかのぼって追跡し、2つのポイント (共振源はどこか、その共振に対してコンポーネントがどれくらい脆弱か) を細かく調査します。
モーダル試験と解析は、物理試作による試験に欠かせません。Homagは、試作機を使って潜在的な弱点を慎重に試験しました。そこでは、振動を発生させ、その原因を探り、コンポーネント全体の機能性を解析して、完璧な条件下で機能することを確認します。同社は、このプロセスによって木工機械を市場に投入するまでの総生産時間を短縮させ、動的で柔軟なミル加工、切断、フィッティングを可能にしました。
シーメンスがサポートするモーダル試験 / 解析アプリケーションはまた設計プロセスでも有用性が高く、設計エンジニアがこのアプリケーションを使って問題の根本原因を早期に特定することで製品品質を向上させています。この結果、次世代製品を設計するアプローチとして信頼性と持続可能性の高い方法を確立し、現在の設計アプローチの弱点を見極めやすくなりました。構造力学シミュレーションにデータをシームレスに統合するモーダル試験 / 解析には高い価値があります。Simcenterの試験ソリューションが提供する高い専門性によってHomagは、試験とシミュレーションの間のループを短縮しただけでなく、これまで早期の試作と試作機での試験に費やしてきたコストを削減し、最終製品を迅速に市場投入できるようになりました。
使いやすく、幅広い機能と性能を持つこの包括的な試験ソリューションをHomagのエンジニアは歓迎しています。Simcenter SCADAS Mobileハードウェアと、詳細なモーダル試験および解析機能を統合したSimcenter Testlabソフトウェアを組み合わせることで、同じ手順を繰り返す測定作業をテンプレート化して再利用できます。
HomagでBasic R&D Calculation and Simulation部門の計算エンジニアを務めるRolf Hofbauer氏はこう述べています。「われわれは、木工のパイオニアです。
インダストリー4.0への準備を進めるなか、大量生産から用途別にカスタマイズしたソリューションへと移行しつつある当社は、潜在的なエラーを発生地点に検知し、修正できるように努力を重ねてきました。目標の達成には良いパートナーと良いソリューションが必要であることは承知していましたが、シーメンスPLMソフトウェアはまさにそれを提供してくれます。シーメンスから提供を受けたこのモーダル試験 / 解析手法は、当社と当社の顧客に大きな利点があります。このことはわれわれの業界にとって、効率的、経済的、高精度の木工を意味するからです。」
Homagは、測定、シミュレーション、製品開発の相互作用が今後ますます重要になると考えています。この点からも、コストと時間の削減と生産性の向上をもたらすSimcenter試験ソリューションが今後も多くのメリットを与えてくれることをうれしく思っています。