ユーザー事例

バッテリー・カソード材料を製造するフルライン工場を自動化して作業効率を向上

Tecnomatix Plant Simulationを使用して、カスタマイズされたターンキー・プラントの設計時間を50%短縮したHCM

バッテリー・カソード材料を製造するフルライン工場を自動化して作業効率を向上

HCM

HCMの材料事業部門は、リチウム電池用のリチウム・フェルム (鉄) リン酸マンガン (LMFP) カソード材料を供給しています。同社の機器事業部門は、生産プロセスが類似している材料メーカーにターンキー・ソリューションを提供しています。

https://hcmaterial.squarespace.com/

本社:
桃園市, Taiwan
製品:
Plant Simulation, Tecnomatix
業種:
バッテリー

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Plant Simulationは、ターンキー・プロジェクト・システムを統合するための最適なツールです
Jack Lee氏, 機器事業部門シニア・アシスタント・バイス・プレジデント, HCM

世界市場でチャンスをつかむ

1997年に台湾北部の桃園市に設立されたHCMは、リチウムイオン電池の二次材料であるリチウム・フェルム (鉄) リン酸マンガン (LMFP) を供給しています。グリーン・エネルギーの普及に伴い、電気自動車 (EV) は世界的なトレンドとなっています。EV開発において重要な役割を果たすバッテリー技術、そのバッテリー技術の成否を分けるのがカソード材料です。一般的なカソード材料のなかでも、LMFPは安全性、低コスト、高エネルギー密度といったユニークな特性で際立っています。HCMは、米国、欧州、日本のTier1サプライヤー (主に電気自動車業界とバッテリー業界) を主な顧客に持ち、顧客と協力して個別仕様の粉末を提供しています。

LMFPにはほかの材料と比較していくつかの利点があるものの、その反面、複雑さや生産工数の増加といった点が課題です。HCMの研究開発 (R&D) 担当シニアマネージャーであるVincent Huang氏は次のように述べています。「LMFPの生産には、間違いなく柔軟な製造システムが必要です。この急成長する市場で当社の競争力を高める唯一の方法は、エネルギー消費量が少ない効率的な製造システムで生産能力を最大限に高めて、可能な限り短期間で装置を開発することです」

他社にはないHCMの強みは、必要な製造システム機器を社内で開発できることです。そのため、同社は新しい要件に応じて生産プロセスを適応させ、速やかに量産に移行できます。

さらにHCMの機器事業部門は、積層セラミックコンデンサ (MLCC) 用のセラミックス材料など、製造プロセスが類似している材料メーカーにターンキー・ソリューションを提供しています。試運転前の実機試験ややり直しを経ることなく、顧客固有の要件を満たすには、機器の包括的なデジタルツインと有能なシミュレーション・システムが欠かせません。

Seizing a global market opportunity

生産効率の向上に向けて

そこで、ソフトウェア、ハードウェア、サービスのビジネス・プラットフォームSiemens Xceleratorのソリューションの1つであるTecnomatix®ポートフォリオのPlant Simulationが活躍します。HCMは、このシステムを2021年9月に導入しました。導入後の最初のステップは、既存の生産ラインをシミュレーションし、パラメーターを実測値に合わせて調整することにより、生産プロセスの動作とシミュレーション結果を一致させることでした。HCM材料事業部門の生産技術および品質管理担当アシスタント・バイスプレジデントであるWilliam Chen氏はこう述べます。「Tecnomatixは、生産量、消費エネルギー、人件費、生産コストを正確にシミュレーションし、ラボから産業スケールへの移行を支援しています。Tecnomatixのおかげで、製造のボトルネックを分析し、エネルギー消費とコストを改善できました。結果として、EV業界の中核的価値である炭素排出量の削減にも取り組んでいます。」

この最初の検証フェーズの後、HCMはソフトウェアを使用して、各作業ステーションをどのように展開するのが最適であるかをシミュレーションしました。というのも、一部のステーションはサイクル処理、そのほかのステーションはバッチ処理と工程が異なるため、適切に配置しなければなりません。そこを見誤ると無駄なアイドル時間が発生し、生産効率が大幅に低下します。Tecnomatixを使用することにより、装置のアイドル時間が大幅に短縮され、生産効率が向上しました。一例を紹介すると、Plant Simulationを導入した結果、製砂工場の生産効率が15%改善し、ローラーハースキルン (RHK) の稼働率が10%向上し、窒素消費量は10%、電力消費は5%削減しました。

Heading for higher efficiency

しかし、Tecnomatixの導入は最初の一歩にすぎません。HCMが目指していたのは、完全無人化された自動工場の実現でした。次のステップとして、自動製造システムをシミュレーションして生産プロセスのシーケンスを最適化しました。自動化された生産システムは柔軟性に優れており、変更の必要が生じたときにはいつでもシミュレーションを実行し、すべての設計要件が満たされているかどうかを確認できます。これにより、品質管理や調整の手間が省けます。

Plant Simulationは、HCMが「スマート・マニュファクチャリング・システム」と呼ぶ、集中統制・データ取得システム (SCADA)/製造実行システム (MES) とのインターフェースが可能です。リアルタイムに情報を表示するだけでなく、予測シミュレーションを実行して異常や問題を分析し、影響を事前に確認することもできます。

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エンジニアリング時間を50%短縮

Plant Simulationモジュールを使用して検証作業を繰り返した後、最適化された機器ユニットが完成しました。標準ユーザー・オブジェクトは、設計データベースとして使用できます。新しいプロセス要件を作成してPlant Simulationシステムでシミュレーションすると、オペレーションがどうなるかを確認できます。HCMはこのツールを使用して、ニーズに応じた設計の再割り当てや調整を行っています。その結果、これまでのような多くの変更を加える必要がなくなりました。作業工数とコストが削減され、予測可能な高精度のパフォーマンス・データを得られます。

HCM機器事業部門のシニア・アシスタント・バイス・プレジデントを務めるJack Lee氏は言います。「すべての作業ステーションの製造モジュールを製造データベースとして使用しています。これにより、設計時間が少なくとも50%短縮されました。Plant Simulationはプロセスを正確にシミュレーションし、さまざまな状況における結果を表示するため、多くの変更が不要になりました」

こうして、HCMが提供するすべての顧客固有の材料に対して、生産に必要な変更を迅速かつ安全に実行しています。Plant Simulationは、新製品の製造プロセス計画に適用でき、事前に使用して生産量、エネルギー消費、人的資源要件、生産コストをシミュレーションできます。また、研究開発 (R&D) 段階から量産に至るまで、新製品に要する時間、故障リスク、コストを削減します。

Cutting engineering times by 50 percent

類似材料の自動生産ラインをエンジニアリング

また、HCMの機器事業部門は、チタン酸リチウム (LTO) やMLCC用のセラミックス材料など製造プロセスが類似しているメーカー向けに、機器の顧客別カスタマイズや完全な生産ラインの設計を行っています。Tecnomatixは、製造データベースによる設計上の利点を提供するだけでなく、収益拡大の手段としても活用できます。Lee氏は次のように述べています。「プロジェクト計画段階では、実際の状況に近いシミュレーション結果をお客様に提供することで、誤解を減らし、当社のソリューションについて納得していただくことができます。Plant Simulationは、ターンキー・プロジェクト・システム統合に最適なツールです」

Engineering automated production lines for similar materials
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Tecnomatixの導入により、生産量、エネルギー消費量、人件費、生産コストを正確にシミュレーションし、ラボから量産へスムーズに移行できるようになりました。Tecnomatixのおかげで、製造のボトルネックを分析し、エネルギー消費とコストを改善できました。結果として、EV業界の中核的価値である炭素排出量の削減にも取り組んでいます。」
William Chen氏, 生産技術および品質管理担当アシスタント・バイスプレジデント、, HCM材料事業部門