GROBは、Siemens Xceleratorビジネス・プラットフォームを活用して、自動車業界向けの工作機械と生産工場を改善します
GROBは同族企業であり、主に自動車業界向けに、ユニバーサル・マシニング・センターから完全自動化生産およびアセンブリ・システムまで、生産機器ポートフォリオの大手サプライヤーです。これには、電気モーター、トラクション・バッテリー、燃料電池の生産設備が含まれます。従業員数は7,000人で、2020~21年度の売上高は11億ユーロでした。
自動車は過去数十年の間に大きく変化し、その製造方法も変化しました。かつては部品から完成品まで大量生産されていたものが、今では高度な個別化が進んでいます。自動車メーカーは、迅速かつ頻繁なワーク交換に十分な柔軟性を備えた、複雑な部品やアセンブリを大量に生産できる生産設備を必要としています。
革新的で高品質な工作機械製造のパイオニアであるGROB-WERKE GmbH & Co. KG (GROB) は、1933年に最初のねじ切り加工機を製造しました。それ以来、この同族企業は、主に世界有数の自動車メーカーとそのサプライヤー向けに、革新的な生産および自動化システムを提供する大手メーカーとなっています。GROBの製品ポートフォリオは、スタンドアロン5軸マシニング・センターから機械部品製造用の転送ラインまで多岐にわたります。また、電気モーターを含むハイブリッド車や電気駆動装置、バッテリー・モジュールや燃料電池の組立ラインなどの生産システムも備えています。
GROBは、Plant Simulation、NXに加えて、ERPを双方向で統合するTeamcenterを使用することで、プロジェクトの計画、設計、検証、CNCプログラムの生成を行い、世界に点在する5つのエンジニアリング/製造拠点に対応しています。(画像提供: GROB)
GROBの成功は、変化する市場要件を予測し、革新的なソリューションで対応する能力のおかげです。この戦略は、エンジニアが自動車生産装置を設計、エンジニアリング、製造する際に役立つ、未来志向のソフトウェア・ツールとシステムの早期導入にっよって支えられてきました。
GROBは、2000年頃に構想設計と詳細設計の両方に3Dモデリングを使用したコンピューター支援設計 (CAD) を導入しました。同社はNX™ソフトウェアを使用して、紙で作成することが多かった2D図面を置き換えました。「当社の設計エンジニアは、ドイツ、イタリア、中国、ブラジル、米国の生産施設全体で緊密に連携しています」と、GROBのディレクター兼加工システム責任者であるChristian Lisiecki氏は述べています。「NXを使用したCADの標準化は、全社展開を想定したグローバル・プロジェクトでした」
この初期のデジタル化プロジェクトには、製品ライフサイクル管理 (PLM) ソフトウェアも含まれていました。GROBがTeamcenter®のPLMソフトウェア・ポートフォリオを選択した理由は、NXとの緊密な統合とマルチサイト・インストールでの優れたパフォーマンスです。NXとともに、Teamcenterインストーレションがグローバルに展開されています。「Teamcenterは、世界中のすべてのGROB設計エンジニアにとって信頼できる唯一の情報源です」とLisiecki氏は述べています。GROBは、製造エンジニアリング・リソースの分類とデータ管理を提供するTeamcenterアプリケーションであるマシン・リソース・ライブラリ (MRL) を活用しています。「そのワークフロー機能により、私たちは世界中の拠点で効果的なプロジェクトチームを結成することができます」と彼は続けます。
部品表 (BOM) は当初、Teamcenterと同社のエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP) ソフトウェアの間で、非効率な別の手段でやり取りされていましたが、現在はTeamcenter Gateway for SAP Business Suite (T4S) を使用して、これらの別々のシステム間で情報がやり取りされています。「これまで別々だったデータのサイロ化をなくすことで、BOMのコンパイルに必要な時間が少なくとも80%短縮されました」とLisiecki氏は述べています。「また、悪名高い不一致エラーを95%削減しました」
GROBのエンジニアは、CNCプログラムの生成とシミュレーションにNX CAMを使用しています。(画像提供: GROB)
GROBのエンジニアは、モデリングだけでなく、多くのタスクにNXを使用して、各生産機械やラインの包括的なデジタルツインを作成します。NX NASTRANソフトウェアを使用した有限要素解析 (FEA) と、NX CFDを使用した数値流体力学 (CFD) シミュレーションを実行しています。回路図やキャビネットの設計にはサードパーティ製のソフトウェアを使用し、複雑なアセンブリの流体チューブや電気ハーネスの設計とルーティングには、NXに統合された3D配線アプリケーションを使用しています。GROBの機器の大部分はシートメタルを使用して構築されているため、複雑な板金部品の設計に適した環境であるNX Sheet Metal Designも高く評価されています。
「NXは特殊なアプリケーションが豊富で、エンジニアは慣れ親しんだ環境を離れることなく、さまざまな設計タスクに取り組むことができます」と、GROBの設計エンジニア兼NXの主要なーユーザーであるFlorian Zingerle氏は述べています。「グローバルなTeamcenterのフレームワーク内で常に作業することで、予備設計から生産までデジタル・スレッドを構築することができます」
GROBの機械や自動化装置の設計はNXに限ったことではありません。エンジニアは、Tecnomatix®ポートフォリオのPlant Simulationを使用して、販売プロセスの初期段階で概念設計を行います。Plant Simulationを使用することで、GROBはマテリアル・フローと機械稼働率をシミュレーションし、概念的な最適化を行うことができます。これにより、その後のすべての設計作業の強固な基盤が提供されます。また、同じくTecnomatixポートフォリオに含まれるProcess Simulateを使用して、設計に統合するロボットのシミュレーションを行い、サイクルタイムの検証や衝突の排除を行っています。
GROBはNXを使用して、フィーチャベースの機械加工による設計と、標準ボアタイプの95%とその他の機能の70~80%を認識するCNCプログラミング作業を自動化しました。(画像提供: GROB)
NX、Teamcenter、およびTecnomatixは、ソフトウェア、ハードウェア、およびサービスのビジネス・プラットフォーム、Siemens Xceleratorに含まれています。
GROBのエンジニアは、NXファミリーの一部であるMechatronics Concept Designer™ソフトウェアを使用して、重要なアセンブリの代替設計コンセプトを作成し、検証します。生産機械やライン作成の対極では、そのソフトウェアを使用してバーチャル・コミッショニングを行います。キネマティック定義を備えた機械のデジタルツインは、シーメンスのSimitシミュレーション・プラットフォームを介してプログラマブル倫理コントローラー (PLC) に接続され、ハードウェアインザループ (HiL) シミュレーションが可能です。バーチャル・コミッショニングにより、特に大規模なライン設計において顧客に直接納入されるサードパーティ製機械が含まれる場合、リードタイムが大幅に短縮されます。GROBはオフィスでバーチャル・コミッショニングを行うことで、建設現場での作業時間を大幅に短縮し、最適化を図っています。
GROBのエンジニアは、バーチャル・コミッショニングにMechatronics Concept Designerソフトウェアを使用しています。(画像提供: GROB)
GROBでは、主にNX CAMを使用してコンピュータ数値制御 (CNC) プログラムを作成しています。エンジニアは、Teamcenterを中核的な情報ハブとして使用して、CNCプログラムではなく3Dモデルを生産施設間で交換します。これらのモデルは、現地の機械と利用可能なツールを考慮しながら、現地でCNCプログラムに変換されます。
多くのデザインにはバリエーションがあり、例えば座ぐり穴やポケットの数やサイズが異なります。GROBは、NXのユーザー定義フィーチャ (UDF) 機能を使用して、標準ボーリングタイプ、ポケット、サーフェス定義など、加工用の金型を含めた加工ルール・ライブラリを作成しました。その結果、製品作成プロセスのさまざまな段階で大幅なコスト削減が実現しました。「NX CAMをフィーチャベースの機械加工に使用することで、設計とCNCプログラミング作業を自動化できました」とZingerle氏は述べていいます。「自動フィーチャ認識機能により、GROBの標準ボーリングタイプの95%とその他のフィーチャーの70~80%を認識できるので、CNCプログラミング時間が30%短縮され、金型の数も大幅に削減できました」
Lisiecki氏は述べています。「このような高度な自動化とデータ統合を実現するには、ある程度の時間がかかり、また3つの欠かせない要素があります。」「1つ目は長期的な安定性と普遍的な相互運用性を備えたSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォームのソフトウェア製品。2つ目は、当社の要件に精通したパートナーであるシーメンスによる信頼性の高い継続的なアプリケーション・サポート。3つ目は、アジリティを備えた継続的な改善を促進する社内の専門知識です」
Martin Wagnerは、情報技術 (IT) グループを率いて、技術ソフトウェアをサポートし、GROBデジタルツインで使用するために顧客の部品設計を変換しています。社内でプログラムされた機能の例として、関連するさまざまな種類のソフトウェアに精通したIT専門家が必要と、Wagnerは次のように説明しています。「TeamcenterとERPソフトウェア間の情報交換は、T4Sインターフェース上でBOMを移動させるだけではありません。部品の順序は、たとえば購買の要件に合わせて自動的に調整され、その後、BOMはエンジニアリングにフィードバックされ、自動的に再調整されます」
GROBの生産担当者は、紙ではなくモニター上のTeamcenter JT™データ・フォーマット・ビューアからの有効な情報を活用しています。オープンなNXアプリケーションを使用してNXモデルからフィーチャを抽出し、GROBのIT専門家がワークフロー・ルーティングの自動生成を実装しました。「溶接ナットとリベットナットを区別し、その向きを示すのに十分な詳細さがあります」と、GROBの製造サポート担当兼グループリーダーであるStefan Schur氏は述べています。「NXベースの自動生成されたワークフロー・ルーティングにより、製造現場でのエラーが事実上排除されました」
もう1つの設計自動化の例として、Teamcenterで設計図をリリースすると、ERPソフトウェアの変更プロセスが自動実行されるというものがあります。ERPソフトウェアは (他のすべての図面とともに) 変更を示す文書を作成します。
GROBがNXを使用しているのは、機器の設計と製造のためだけではありません。同社は、アルミニウム部品を迅速かつ経済的に生産するための新しいアディティブ・マニュファクチャリング (AM) 技術を開発した際、NXオールインワンAMソリューションを統合しました。これは、部品の製造に必要なすべての情報を生成する機械のスライサー・ソフトウェアとリンクしています。同社はまた、この革新的なAM技術であるNXを部品の支持構造の作成にも使用しています。「シーメンスのソフトウェアを使用することで、GROBのデジタル・トランスフォーメーションはカスタマー・エクスペリエンスにまで拡大しました」とLisiecki氏は締めくくります。
GROBの生産担当者は、紙ではなくモニター上のTeamcenter JTビューアからの有効な情報を活用しています。(画像提供: GROB)