Simcenter Amesimを使用して、次世代eDriveテクノロジーを最適化したGKN Automotive
GKN Automotiveは、eDriveテクノロジーのグローバル・リーダーです。電気自動車向けの先進的な高効率システムの大量生産をけん引しています。GKN Automotiveの広範なポートフォリオは、価値と技術的な専門知識を融合したものです。20年の経験を持つ電動パワートレイン部門は、あらゆる電動車両向けのソリューションを提供している、頼れるテクノロジー・パートナーです。
https://www.gknautomotive.com/
GKN Automotiveは、eDriveテクノロジーのグローバル・リーダーです。専門知識、イノベーションへの取り組み、グローバルな事業展開により、最先端の持続可能なテクノロジー・ソリューションを、強い競争力で大規模に提供しています。
GKN Automotiveは、電気自動車向けの先進的な高効率システムの大量生産をけん引しています。世界中の新車の約50%に、GKN Automotiveのシステムとソリューションが供給されています。つまり、同社のテクノロジーを搭載した何億台もの車が日々運転されていることになります。
自動車産業の電動化は、車両開発のプロセスとアプローチに多大な影響を与えました。開発チームは、電気自動車 (EV) の性能と規模のあらゆる面で、新たな課題と競争の激化に直面しています。
さまざまな長さのケーブルを使用したEMC動作解析。
GKNは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスのビジネス・プラットフォーム、Siemens Xceleratorの一部であるSimcenter™ Amesim™ソフトウェアを使用して、電気自動車の3-in-1システム用のトラクション・インバーターを開発、最適化しています。3-in-1システムは、ギアボックス、電気機械、トラクション・インバーターで構成されています。GKNのギアボックスは、パーキング・ロックまたはディスコネクト・システムや、基本的なギアセットなどの追加機能を備えています。インバーターは、電気機械を制御する働きをします。
自動車メーカーはほとんどの場合、3-in-1システムは単一の完全なソリューションとして提供されるブラック・ボックスであると捉えています。
したがって、GKNなどのサプライヤーは、顧客が定める設計・性能仕様を満たしたコンポーネントを完成できなければなりません。
このように、3-in-1の最適化とは、システムを特定のハウジングに収容できるようにするだけでは終わりません。最適化において、特に注目すべきコンポーネントはインバーターです。
インバーターに課せられている働きは、直流 (DC) 電力と交流 (AC) 電力間を変換する一方で、同時に通信と制御を実行し、最高レベルのサイバー・セキュリティと安全性を保証することです。
「私たちは機械設計からメカトロニクス設計に移行するというエンジニアリング上の課題に直面しました。」GKN電動パワートレイン部門でパワー・エレクトロニクスのシステム・エンジニアを努めるBjörn Nemitz氏はこのように述べています。
こうした要件から、インバーターは3-in-1システムで最も複雑でコストのかかるコンポーネントになっています。
インバーターのモデルをマッピングした動的シミュレーション・モデル。
インバーターは非常に複雑なコンポーネントであるため、理想的でない境界条件や不適切な設計判断が、コストや性能に大きな悪影響を与えかねません。しかし、その逆もまた真なりです。インターフェースと内部設計に関する決定が、十分な検討のうえ、慎重に実行されれば、大幅な性能向上とコスト効率化につながる可能性があります。
インバーター開発の焦点は、顧客が設定した重要なビジネス要件を満たすことです。
まず、インバーターは顧客が求める駆動力を供給しなければなりません。駆動力の基準は通常、「あらゆる条件で実現可能な動作能力」として設定されます。例えば、バッテリーがほぼ消耗した状態で気温が-40°Cのなか、積荷満載で急な坂道を走行するトレーラー付き車両などです。
設計者は性能要件を満たすために、パラメーターを調整し、それぞれのコンポーネント間の最適な荷重分散を見つける必要があります。これには、性能を制限する可能性のある要因と、それらを克服する方法を詳細に理解することが求められます。
制御されたシステム・シミュレーション・モデル。
次に取り組むのは、インバーターの全体的な効率です。効率の向上により、特定のバッテリー容量で航続距離を伸ばしたり、特定の航続距離でバッテリーのサイズを縮小したりすることが可能です。これらは両方とも顧客にとって非常に魅力的なセールス・ポイントになるため、自動車メーカーが注目しているところです。
コスト、これは決して無視できない問題です。コストと費用対効果は、市場に受け入れられ、市場シェアを獲得するために、きわめて重要な要素です。
EMC動作の解析結果。
Worldwide Harmonized Light Vehicles Test Procedures (WLTP: 乗用車等の国際調和燃費・排ガス試験法) でさまざまなゲート抵抗を使用して、パワー・モジュールの損失を解析。
さらに、電磁両立性など、技術面も考慮しなければなりません。コンポーネント・レベルで放射性/伝導性エミッションまたは耐性を最適化することは重要な課題であり、GKNの今後のシステム開発における主要な焦点でもあります。
また、熱安全性、耐用年数と耐久性、パッケージ設計、重量、騒音・振動 (NVH)、保守性などの目標もあり、これらはすべて全体的な設計と性能に影響を与える可能性があります。
同社が目指しているのは、時には矛盾することもありながら、常に関連し合っている、こうした目標の最適なバランスを達成して、特定の自動車ブランドまたはアプリケーションにとって最適な、全体性能を実現することです。
耐用期間の計算のために解析したシステムの設定。
Simcenter Amesimを使用することで、GKNのチームは多次元シミュレーションを実行し、複数のコンポーネントの動作を熱、電気、機械のレベルで同時に解析できます。
Simcenter Amesimを使って、各電気コンポーネントの設計およびサイズ設定を行い、それぞれのコンポーネントが他の部品にどのように影響するのかを解析して、クライアントの要件を満たす最適な製品ソリューションを提供します。
GKNでは、半導体から完全な3-in-1システムまで、さまざまな側面のシミュレーションと解析を実行します。例としては、静的または動的荷重サイクル、特定の電磁両立性 (EMC) シナリオ、安全性、関連する荷重シナリオ、制御性、故障解析、複雑な耐用期間サイクルなどがあります。
実際のシステムを正確に表現しつつ、長いドライブ・サイクルのシミュレーションを実行できるモデルを作成することは、大きな課題です。しかし、Simcenter Amesimのモデリング速度と、実験設計、モデル縮退の機能を使うことで、これらの複雑な要件を満たすことができます。モデルは電気的および熱的条件を考慮するだけでなく、シミュレーション時間を短縮します。
GKNのチームはこうしたシミュレーション機能を使用して、テストへの依存を最小限に抑え、開発プログラムで必要なハードウェアインザループ (HiL) テストと試作ループの回数を大幅に削減できました。
Nemitz氏は次のように語っています。「Simcenter Amesimのおかげで、個々のコンポーネントとシステム全体に関する技術的な専門知識が増えました。コンポーネントの物理的な動作と、それが相互に与える影響について、はるかに深く理解できるようになりました。」
Simcenter Amesimが提供する、複雑な解析と詳細な情報は信頼性が高く、過剰設計のリスクを最小限に抑え、開発時間とコストを大幅に削減します。
また、Nemitz氏は次のようにも述べています。「GKNは、製品開発サイクルで使用する、標準化されたモデルとプロセスを開発しました。これにより、各プロジェクトの最初からシミュレーションを使用して、設計と開発のための検証済みのベースを取得できます。」
GKN Automotiveのトラクション・インバーター。
Simcenter Amesimは、統合された多様な構築済みソリューションによって、あらゆるアプリケーションに対応する直感的なマルチレベル設計を提供します。
GKNのチームは、開発プロセスの最初からSimcenter Amesimを使用することで、システム内およびシステム全体の各要素を仮想的に評価、最適化できます。そのため、コストのかかる試作ループの必要回数が減って、市場投入期間を短縮できるのです。
内燃機関から電気自動車への移行によって、自動車メーカーに機会をもたらす新時代が到来するとともに、機械設計からメカトロニクス設計への切り替えというエンジニアリング課題に対する革新的なソリューションを緊急に見つける必要性が生じました。
シミュレーションを活用した包括的なデジタルツインの開発は、GKNが実世界で製品性能を解析および予測するうえで大きな役割を果たし、同社は低コストで性能の優れた製品を迅速に開発できています。
音響と振動からインバーター・テクノロジーとその先に至るまで、シミュレーションの可能性と包括的なデジタルツインは、新世代の電気自動車の開発におけるあらゆる分野に情報を提供し始めています。
バッテリー、DCリンク・コンデンサー、パワー・モジュールを使用した縮退インバーター・シミュレーション・モデル。