Teamcenterは、受注してからERPシステムに完全なBOMを提供するまで、製品開発管理の包括的なシステムのバックボーンを形成します
Johnson Electricグループ傘下のGateは、自動車向けの電気モーター、電気機械部品および電子部品の大手メーカーです。
http://www.johnsonelectric.com
Johnson Electricは、電動工具やPC用の小型モーターから、家電製品や自動車向けの大型モデルまで、さまざまな用途の電気モーター製造を中核事業とする中国のグループです。Johnson ElectricグループはGate s.r.l. (Gate) を含む複数の企業で構成されており、フォード、BMW、ジャガー、ルノー、PSA、GM、フォルクスワーゲン、フィアット、メルセデス、フェラーリなどの大手自動車OEMメーカーと直接、またはモーターを搭載するラジエーターのメーカーを通じて協業しています。Gateは1978年にイタリアの企業として設立され、1985年にアメリカの企業になりました。2000年に同社はJohnson Electricに買収されました。
この間、Gateの事業が変わることはありませんでしたが、実は異なるアプローチを採用していました。「現在、モーターはGateの設計に基づいて中国の親会社で製造されています。」と説明するのは、同社のメソッドおよびソフトウェア開発部門で製品開発エンジニアリングおよびプロセス組織を管理するMarco Davino氏です。「受注後はGateがすべてのエンジニアリング活動、新しいモーターの製造可能性チェック、変更管理と品質管理、価格改正に関する顧客との接点となります。その後、中国から出荷されたモーターを、サプライヤーから納入されたファンや自社成形のファンにアスティ工場で組み立てます。適切な性能と効率を保証するためには、組み立て段階がきわめて重要です。」
Gateは毎年十数個の新製品を開発し、熱応力、動的応力、および吸湿耐性と塩水噴霧に対する耐性などの厳しい試験に合格しなければならない部品を、何百万個も製造しています。「製品開発サイクルは2~3年かかる場合があります。」とDavino氏は言います。「換気、配線、配管ルートのソリューションをカスタマイズし、各顧客の冷却要件を満たさなければなりません。当社は電磁気、流体力学、構造レベルで性能を最適化すると同時に、コストが重視される市場に適した価格目標を満たすことを目指しています。」とDavino氏は述べています。
Gateで最も重要な段階は、製品開発サイクルの初期段階です。ほとんどのガイドライン、タイミング、コストをこの段階で定義し、その後に満たす必要があります。Davino氏の説明によると、「顧客は仕様書をほとんど提供せずに、フィージビリティ・スタディと提案を短期間で要求します。われわれは経験と以前の設計との類似性に基づいて最初のスタディを実施するので、かなり正確なフィージビリティ・スタディと見積もりをお客様に提供できます。発注を受けてから実際の供給契約が締結され、供給の範囲、数量、スケジュール、その他の側面が定義されます。」ということです。
その後、最も重要な第2段階に移り、オブジェクトの定義、部品の描画、金型や形状の開発、高精度な部品の試験などの設計検証タスクが行われます。Davino氏はさらに、「このプロセスは、電子部品、プラスチック材料、複雑な形状のオブジェクト、電磁部品に適用されます。われわれは漸進的に改良していくために、試験と設計を反復するプロセスを使用しています。製品が顧客の要件に合致したら、それを実際の車両に搭載して、いくつかのサンプルを検証することもします。最後に、製造文書が公開され、サプライヤー、生産ライン、工業化のシーケンスが開始され、実物が生産され、最終納品までが行われます。」と述べました。
上記のプロセスには、効率的な変更管理 (変更が実行されるライフサイクルの段階に応じてコストが異なる) と、各部品の完全なトレーサビリティ (車両内で問題が発生した場合に特定の生産バッチまでさかのぼる機能を含む) が必要です。したがって、Gateにとってコンピューター支援設計 (CAD) と製品ライフサイクル管理 (PLM) はなくてはならない存在です。
同社は、最初に2D CADを使用した後、3D CADに移行し、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX™ソフトウェアを導入しました。当時Gateと同じ産業グループに属していたPratt & Whitneyとマクドネル・ダグラスの経験を踏まえ、シーメンスのCADソリューションを選択しました。Gateのスタッフは改めて3D CADの研修を受け、その後、従来の2Dデータベースを3Dデータに変換しました。また 情報技術 (IT)を機械工場に拡張し、イタリアで最初のコンピューター支援製造 (CAM) 設備の1つを導入し、現在もそのモジュールが1つ使用されています。「何よりも、変更の管理と追跡、および認証システムに準拠したファイルの認証、管理、検証、承認のプロセスを作成するために、3つの署名レベルを持つ基本的なワークフロー構造を構築しました。」とDavino氏は当時を振り返りました。
新たなフェーズが始まったのは2001年です。Gateはすべての文書を電子版でのみ公開することを決定し、世界中のすべてのグループ企業が簡単にアクセスできるようにしました。Davino氏の言葉です。「多くの自動車OEMの要件を満たすためのさまざまなCADパッケージや、CAMソフトウェア、ワークフロー、電子形式で送信されるファイルなどを使用する、広範で多様なシステムがあり、PLM主導のデータ管理品質を飛躍的に高める必要がありました。Teamcenterが利用可能になるまで待ったのは、Teamcenterは当社のすべてのニーズに対応するソリューションだからです。われわれが必要としていたのは、さまざまなCADパッケージとの互換性 (ファイル交換機能付き)、優れたワークフロー、製品をエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP) にリンクするための国際コードとローカルコード、PDF形式での製品写真の公開などです。」
NXと同じくシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのTeamcenter®ソフトウェアは、Gate社内に広く導入されています。このソリューションは、変更管理に加えて、製図にも拡張され、ファイルを承認するための通知や、自動公開機能を通じてファイルの情報にアクセスできる機能などが利用されています。同時に、設計変更指示 (ECO) の手順が標準化され、データベース構造全体が再編成されました。
Davino氏はまた、「部品表 (BOM) もシステムにリンクすると、エンジニアリングBOMを取得でき、これがERPシステムの最初のタイルとなって、プロセスBOMが生成されます。また、データシートと標準化されたコンポーネントの管理機能も実装し、機械コンポーネントと標準コンポーネントに分類と標準化のルールを適用しています。最後に、完全なデータ構造を活用して材料を管理できるため、各材料が実際にBOMのアイテムであり、完全なBOMが完成します。」とも語りました。
Gateは、エンジニアリング・ファイルだけでなく、すべての技術文書をシステムに収集できるように、Teamcenterのフォルダー管理をカスタマイズしました。認証、テストレポート、設計改版は、単一のリポジトリであるTeamcenterに集約され、プロジェクト開発と製品開発の2つの目的で使用されます。「もうひとつの利点は、それぞれのドキュメントを何度も公開する必要がなく、1つまたは複数のプロジェクトに関連付けることができる点です。」
数年前、要件管理の分野で新しいニーズが発生しました。これは、エレクトロニクス業界、特にSpiceコンソーシアムが主導し、後援するプロジェクトがきっかけでした。「要件管理はプロジェクト管理に不可欠であるため、Teamcenterの要件管理機能を導入し、同時に電子設計の最初のステップをシステムに統合しました。NX PCB Exchangeを使用して、電子設計チームとCADチームの間でデータをやり取りしたり、電子部品や、PCB (プリント基板) の仕様、部品実装のクリアランス領域など、メカトロニクス設計者にとって有用な情報をすべてインポートしたりしています。」
同社によるTeamcenterの導入のもう一つの側面は、サンプル管理に関連するものです。これは、設計検証段階でもフローを制御できるように、生産後だけでなく開発段階で変更を管理したいという顧客からの要求に基づいています。「BOMへの通知と変更は、設計の最後に開始されるのではなく、設計開始時にコード構造を生成する内部指示の直後から開始されます。このようにして、プロセスBOMをTeamcenterに取り込むためのデータベースの整理も始めています。当社の工業化、物流、管理の各部門は、Teamcenterの機能をフルに使用するユーザーになりつつあり、生産サイクルで利用されるBOMを生成してチェックすることができます。」とDavino氏は説明します。
Gateはサンプル管理に関して、エンジニアリング領域以外にもTeamcenterの使用を拡大しました。現在、イタリアの従業員250人のうち、約180人がTeamcenterユーザーであり、世界全体では250人近くに上ります。次に、Gateはパッケージングに関してBOM管理を完了し、クリーンでインポート可能な状態の最終的なBOMがERPシステムに供給されます。その時点で、Teamcenter内でコードが生成され、Teamcenterによって完全に管理され、情報がERPに送られるまで、プロセス全体がIT主導になります。
「今後さらに多くのプロジェクトを予定しています。すべてのOrCADドキュメントをTeamcenterに転送します。OrCADは、電気回路図の入力や、電子基板の機能シミュレーションと定義に使用しているソフトウェアです。このようにして、レイアウトやBOMだけでなく、すべての電子文書も、メカトロニクスと完全に統合されます。また、要件管理を設計タスクに拡張する予定で、Teamcenterを電子ソフトウェアのためだけに使用することはなくなります。現在、それぞれの設計者が個別の方法で仕様を管理していますが、システム全体の要件を管理するには、適切に規定された方法が必要です。」とDavino氏は付け加えました。
将来的にはTeamcenterをプロジェクト管理にも使用することを検討しています。「一方にシステム要件管理、もう一方にサンプル管理を導入し終えれば、これら2つの世界を統合して、Teamcenterにリンクされた、1つのワークフロー・シーケンスを作成できます。時間は重要な要素であるにもかかわらず、時間パラメーターをまだ実装していませんでしたが、Teamcenterのプロジェクト管理機能にはこれが含まれています。この新しいプロジェクトのタイム・スケジュールを定義する予定です。確かに言えることは、Teamcenterは優れたソフトウェアであり、非常に満足しています。特に自動車業界では、他のCADソリューションと効率的に統合して管理できるため、Teamcenterはとても人気があります。」とDavino氏は述べています。