FKFSの提供する効率的な空力音響風洞試験 / シミュレーションサービスにより、顧客は車両を迅速に改善
FKFSは、高度に専門化されたテストベンチ、風洞、および独自に開発した測定、試験、シミュレーション手法を使用して、自動車業界向けに試験、シミュレーション、コンサルティングのサービスを提供する調査機関です。
The Research Institute of Automotive Engineering and Vehicle Engines Stuttgart (FKFS) は、自動車業界向けに試験、シミュレーション、コンサルティングのサービスを提供する大手調査機関です。FKFSのサービスは、自動車エンジニアリング、パワートレイン、メカトロニクスの3つの領域を対象としています。90年の歴史を誇るFKFSは、物理試験とシミュレーションの豊富な経験を持ち、さまざまな開発段階にある車両部品のほぼすべてに対応する広範なシミュレーション / 試験機能を確立しています。今日ではISO認証済みの標準手順に従って、とりわけ4つの風洞のサービス (フルスケール空力音響、モデルスケール、熱およびデジタル風洞) を提供しています。2Dスレッジとヘキサポッドを備えたメカトロニクス・ドライビングシミュレーターなど、一部の試験施設は欧州で最大です。
空力音響風洞試験の目的は、車両の設計によって、車室内で風切り音がどのように感知されるかを理解することです。必要なエンジニアリングの知見を得るために、フルスケールの空力音響風洞にさまざまな流速およびヨー角で車両を配置して、車両表面から放射される外部音圧を測定します。車室内の音響測定とともにこの試験を行って、音響漏れや改善点を特定して、ドライバーの快適性を高めます。
自動車メーカーは、車両の騒音、振動、ハーシュネス (NVH) の性能が、顧客の購入判断に直接的な影響を及ぼすことを理解しています。このため、車両開発予算の大部分は最終的なNVH性能を達成するための音響試験に割り当てられています。
過去数年の間に空力音響風洞の数が増加し、世界で競争が激化するなか、FKFSは空力音響試験機能をアップグレードして拡張し、ユニークな最新技術に投資することを決めました。「競争に遅れずについていく必要がありますが、その鍵は継続的なイノベーションです。お客様の強い要望に後押しされてこの決断に至りました。」FKFSの車両音響振動部門の責任者であるラインハルト・ブルムリッチ博士はこのように述べています。
2019年、FKFSは従来のアレイベースの音響ミラーから最新の空力音響試験技術へと移行しました。ブルムリッチ博士は言います。「空力音響をシミュレーションのみでテストするのは未だ困難です。空力音響のシミュレーションは非常に複雑なので、多大な時間を費やす必要があります。」
シーメンスSimcenter™の専門家によって導入された新しい空力音響風洞試験システムは、トップ / サイドのマイクロホンアレイ (300を超える外部音圧測定用マイクロホンと内部マイクロホンアレイを含む) で構成されています。このハードウェアは、Simcenter™Testlab™ソフトウェアとシームレスに接続されています。「これで外部騒音と内部騒音を一度に測定し、結果を相関させてコヒーレンスを確認できるようになりました。もちろん、以前と比較して速度も格段に上がっています。」とブルムリッチ博士は述べています。
車両の音圧をローカルでマッピングする旧世代の試験装置とは異なり、新しいトップ / サイド・マイクロホンアレイは、1回の測定で車両全体の音場の3D表現を提供します。ブルムリッチ博士は次のように説明します。「99%のケースで最終的な内部騒音を調査します。騒音の発生する外部の騒音レベルを測定する一方で、内部アレイ、人工頭部、およびマイクロホンを使用して内部騒音を測定し、外部で発生した騒音が内部でどのように知覚されるかを関連付けます。この機能はシーメンスSimcenterソリューションの大きな特徴であり、非常に高度な手法で外部測定と内部測定を関連付けることができます。」
つまり、Aピラー、サイドミラー、サイドウィンドウ、ワイパー、ドアハンドルなど、個々の設計の細かな調整が最終的な車両の音響性能に大きな影響を及ぼすことになるため、車両設計は綿密に検討して詳細に試験する必要があります。
ブルムリッチ博士はこう続けます「FKFSの主なお客様は、自動車メーカーと、サンルーフ、窓などのサプライヤーです。通常、シーリングシステム、Aピラー、サイドミラー、フロントガラスの設計最適化には多くの調査が必要です。」
風洞に適用した新技術は、「音源-伝達-受信」の回路図を使用して車両の音響性能を向上させるための新しいオプションを提供します。この手法では、内部騒音への伝達から外部音源を分離します。これにより、音響問題への最善の対処方法を、情報に基づいて決定することができます。最終的に騒音を回避、ブロックできるように、例えばドアシーリングの設計を調整するのではなく、騒音源を調整 (サイドビューミラーやワイパーの設計を変更するなど) して騒音の発生を防止する方法を特定します。この手法によりFKFSとその顧客は、最終的な音響性能を最適化するさまざまな方法を手に入れました。
最新のSimcenter風洞試験技術を使用すると、通常1週間の数値流体力学 (CFD) 計算で得られる結果にわずか数分の風洞試験で到達します。この技術の目標は、高度な音響アレイを使って、車両内外の空力音響圧力をリアルタイムで特定することです。
試験エンジニアは通常、最初にさまざまな風速とヨー角 (流れと車両の間の角度) で比較してから、車両の設計変更を行います。コンポーネントの多様なバリエーションを試しながら、音響効果を即座に比較できます。車両全体のシーリングやフロントドアのシーリングシステムなど、内装部品も同様です。
FKFSのエンジニアは、Simcenterの風洞ソリューションによる測定を通じて、より多くの質の高い情報を顧客に提供できます。この結果、顧客はリアルタイムの結果を直ちに評価して、連携することができます。以前の手法では、これを短時間で行うことは不可能でした。性能が限定的だったため、すぐに車両を調整できなかったのです。この新しいシーメンスの技術により、開発チームは風洞試験中に正しい決定を下せるようになりました。ブルムリッチ博士はこう述べています。「試験セッション中、お客様は通常、エンジニアと一緒に制御室にいます。当社のエンジニアが試験を行うと、お客様はすぐにポスト処理コンピューターでデータにアクセスできます。お客様は、事前定義された試験スケジュールに従って後でデータを解析するか、その場ですぐに車両の調整 (アンテナの変更など) を始めます。このようにエンジニアとお客様は、非常に緊密に連携しています。」
FKFSは、シーメンスの新しいSimcenter空力音響風洞システムを使って、試験効率を約2~10倍 (試験プロジェクトとその規模による) に向上させました。「新しい風洞システムを導入したところ、試験のたびに、予想よりもはるかに多くの詳細を取得できるようになりました。」とブルムリッチ博士は説明します。音場が3Dで表現されるため、顧客とのコラボレーションも加速します。「これでお客様は車両内外の音場をより詳細に調査できるようになりました。」
自動車OEMにとっては、同じ試験時間でより多くの車両バリエーションを試験できるという利点もあります。今回のアップグレードにより、FKFSは新しい顧客を獲得できました。また、新しい試験装置は人気が高く、予約は数か月待ちとなっています。「需要に追いつくために、隔週で夜勤さえ行っています。」とブルムリッチ博士は声を弾ませます。
空力音響風洞をアップグレードするという決断は、現在の車両電動化の傾向を反映しています。ハイブリッド車や電気自動車では、タイヤによるロードノイズ以外に大きな音を出す燃焼エンジンがないため、空力騒音源がはるかに聞こえやすくなっています。ブルムリッチ博士は言います。「パワートレインの騒音が小さいと、相対的にタイヤによるロードノイズと空力音響騒音の影響が大きくなるため、 空力音響測定の重要性が高まります。燃焼パワートレインやサイドミラーなどの騒音源がなくなると、人間の聴覚はそれ以外の騒音源を意識するようになるため集中し始めるため、そこを調査して最適化することが重要です。」
一般に、既存のシステムに対する拡張には、新たな投資が必要になります。さらに、拡張のためにプロジェクトが中断することからも経済的損失が発生します。1時間も無駄にできない試験機関では、この点がサプライヤーを選定するときの重要な判断基準となります。ブルムリッチ博士は、今回のシーメンスとのプロジェクトを振り返り、その遂行と連携を高く評価しています。「感動的ですらあります。短納期の依頼であったにもかかわらず、シーメンスは期限内にすべて導入してくれました。さらにシーメンスは、実装後にシステムをさらに強化するための追加の連携プロジェクトも提供してくれました。私たちには、この分野で共同研究プロジェクトを始めるという共通の目標があります。これが、シーメンスをパートナーとして選んだもう1つの理由です。」とブルムリッチ博士は述べています。
FKFSは、自動運転車の今後の傾向に沿った適切なアンダーボディフローを得るために、非定常空力音響、ホイール回転、地上シミュレーションに焦点を当てた、内部騒音を最適化するためのツールボックスをさらに開発しました。