Festoは、シーメンスPLMソフトウェ アのソリューションを使用して、目標 コスト計算プロセスにおける全て の計算を行います
Festoは、工場やプロセスの自動 化のための空気圧および電気制 御/ドライブテクノロジーに関連 する製品、システム、サービスを 販売しています。
工場の日常作業では、個々の部品、アセ ンブリ、および完成製品の保持、移動、 配置といった一般的な作業を自動化技 術により実行しています。Festoは自動 化分野の最先端のイノベーターの1つ であり、長年にわたって工場やプロセ スの自動化の新しい基準を打ち立ててきました。製品とサービスのポートフォリ オは、個別コンポーネントからお客様に 合わせた複雑なソリューションやシステ ムまで多岐にわたります。同社の標準製 品としては、空気圧、サーボ空気圧、電気 駆動、バルブおよびバルブターミナル、セ ンサー、高性能小型カメラ、制御チェー ンの効果的な通信を制御するコントロ ーラーなどがあります。Festoは、長年に わたって、将来における製造が自然から 学べることは何かを考えてきました。ス マートグリッパーから革新的な駆動方式 や人間と機械の間の新しい相互作用に 至るまで、Festoはバイオニクスの新しい基準を打ち立てます。同社は毎年、売上 高の10%弱を、革新的ソリューションの 研究開発に投資しています。それによっ て、年間100種類の特許取得可能な新 製品、全世界で2,600件にのぼる有効 な特許、および2010年のGerman Future Prizeの受賞といった成果を挙 げています。
Festoは、市場と顧客への適応を強化す るために目標コスト計算に力を入れて おり、その手法は開発プロセスに緊密 に統合されています。目標コスト計算に よって、市場価格から導かれる製品コス トの決定にとって重要な情報が得ら れ、新製品の設計や現行製品の見直し を高いコスト効率で行うことができま す。「目標コスト計算の手法によって、市 場とお客様の要件をコスト管理に組み 込むことができるため、新製品の導入 や既存製品の再設計に役立ちます」と 語るのは、Festoのグローバル新製品 導入責任者であるJörn Kleinschmidt 氏です。この手法では、コスト最適化へ の道筋を早い段階で定めることができ ます。
これまでFestoでは、スプレッドシート を利用して製品や金型のコストを計算 する内製ソリューションを使用していま した。その結果は柔軟性に乏しく、比較が困難でした。製品開発や顧客仕様に 頻繁に変更が発生するため、計算を何 度も繰り返す必要がありました。2013年 に、計算プロセスの標準化とプロセス の信頼性改善のためのプロジェクトを 立ち上げました。
新製品の開発やバリエーションの比較 の際には、有用なジオメトリデータを早 い段階で入手できることがほとんどな いため、完全なパラメーターベースの 計算ソリューションはFestoには適しま せんでした。「当社にとっては、早期開発 段階で図面に基づいて、迅速に信頼で きる判断を下すことができるコストを算 出することが重要でした」と語るの は、Festoのコストエンジニアリング部 門で働くMario Massa氏です。
エンタープライズ・リソース・プランニン グ(ERP)システムを使用すれば、生産開 始後に、実際の製造データとサプライヤ ー価格に基づいて、製品コストを計算 できます。しかし、ERPシステムでは将来 の製品のコストシミュレーションは不可 能です。「極めて早い段階で信頼できる 詳細情報と正確なコストの透明性が必 要なので、ボトムアップ型のコスト計算 ソリューションだけが検討の対象となり ました」とMassa氏は語ります。
新しいソリューションは、標準化をサポ ートし、高レベルの機能とERPおよびコ ンピューター支援設計(CAD)システムと の統合に関する高い柔軟性を備え、グローバルなプロセス環境をサポートす る必要がありました。このような基準に 基づいてFestoが選択し、実装したのは シーメンスPLMソフトウェアの Teamcenter®製品コスト管理ソフトウ ェアです。
新しいソリューションにより、Festoは信 頼できるコスト比較を詳細レベルで作 成し、議論や意思決定の根拠として利 用できます。「議論したいのは、ツール やデータの正しさではなく、製品とその 製造ステップについてです」とMassa氏 は語ります。データベースでサポートさ れるソリューションの利点は、製品開発 のきわめて早い段階でも、アセンブリ やコンポーネントに対して信頼できる 製品計算と目標コスト導出が可能なこ とです。
このプロセスは、社内と社外のベンチ マークにも対応していま す。Teamcenter製品コスト管理は、企 業のすべてのコスト情報を1つの中央 データベースに統合するので、全ての 従業員が同じデータを利用できま す。ERP、製品ライフサイクル管理(PLM) 、製品データ管理(PDM)、CADシステ ム、Excel®スプレッドシートからの情報 に加えて、社外のベンチマークデータも コスト情報に含まれます。コスト情報 は、ソフトウェアに正しく取り込まれ、ユ ーザーはいつでも利用可能です。社内 コストデータと社外ベンチマークデー タはいずれも、定期的に更新されます。Teamcenter製品コスト管理を利用 した見積原価計算は、コストエンジニ アリング、購買、製造工場など、Festoの 全ての関連部門に導入されました。こ れにより、データの透明性、利用性、即 時性に関する一様な標準が実現されま した。
目標価格作成のこの最初のステップで は、市場の競合状況を考慮しながら、そ の製品を位置付ける価格帯について分 析します。この分析に基づき、製品管理 によって最大製品コストが導かれます。 新製品の収益性にとって決定的に重要 なのは、価格と数量および製造コスト 予測のバランスが取れていることです。
このために、Festoのコストエンジニア リング部門は、主要な競合他社のコア 製品を定期的に分析し、自社のソリュー ションのコスト優位性の比率を市場の 他の自動化製品と比較しています。競 合製品を分解(ティアダウン)し、その製 造コストをTeamcenter製品コスト管理 によって計算することで、Festo製品と の詳細な比較が可能になります。結果 はドキュメント化され、開発、購買、製造 工場の各部門に展開されます。
次のステップでは、ベストプラクティス 手法に基づき、Teamcenterを利用し て、市場指向の最適なフレームワーク の条件に基づいて製品コストを計算し ます。その結果、最も適した製造技術およびプロセスを利用した最適な条件で 製品を製造できるサプライヤー価格が シミュレーションから得られます。ベス トプラクティスに基づく手法は、全ての 重要なプロジェクトやコストエンジニア リングに適用されます。ベストプラクテ ィスは特に、製造プロセス、数量、生産 地が関係しています。「Teamcenterで 利用できるベンチマークデータのおか げで、信頼性の高いベストプラクティス 計算を実行できます」とMassa氏は語っ ています。
製造拠点では、定義された製造上の前 提(生産地、材料、製造プロセス、数量、 ロットサイズなど)に基づ き、Teamcenterでボトムアップ手法を 利用して、製造と組み立ての予想コスト を計算します。同時に、購買部門からは 購入部品のサプライヤー提示価格が提 供されます。ベストプラクティス計算の 適用結果は、製造コスト、選定サプライ ヤー、計画する製造拠点を考慮して、並 列に評価され、製造拠点側での計算結 果と比較されます。
Teamcenterは、購入価格、製造コスト、 間接コスト、金型コストなどのコスト要 素を詳細に表示することで、コスト交渉 をサポートします。「Teamcenterの購 入価格分析機能を使えば、多くの場合、サプライヤーに対するコストを想定通 りに削減できます」とKleinschmidt氏 は語っています。購買部門からのデー タは、各製造拠点の社内コスト計算に 直接連携されます。各製造拠点 は、Teamcenterの機能を利用して、デ ータプールからコスト計算を再利用 し、ERPデータにアクセスしながら、独 自のナレッジ・ドメインを構築します。 これにより、製造拠点は、各製造ライン の能力を最善の方法で表現できます。「 各チームの製造能力を大幅に増やすこ とができます」とKleinschmidt氏は語り ます。
Festoでは、目標コストに関して得られ た情報について、コミットメントワーク ショップで話し合います。ワークショッ プには、製造管理、開発、コストエンジ ニアリング、購買、製造拠点内のサプラ イチェーン責任者など、関連する全て の部門が参加します。目標コストが定 義された後、製品開発段階の間に発生 したコストの変更は、継続的にドキュメ ント化されます。ドキュメントには、関 連する材料価格の変更の理由と原因に 関する詳細な概要が記されます。コミッ トメントワークショップの後で該当製 品に発生したコストに関連する変更と 拘束力のある目標コストに関する合意 事項は、Teamcenter製品コスト管理で透過的にドキュメント化されます。ドキ ュメントに記載される変更内容は、目標 コストが変更されない限り、製造コスト の計画と実績に関連しています。コスト に関連する全ての変更は追跡され、包 括的に表示されます。
計算プロセスの重要な側面は、製造コ ストの量産コスト計算結果と目標コス ト計算の比較です。Teamcenter製品コ スト管理は、SAP®ソフトウェアとのイン ターフェースを通じて関連データのイ ンポートと正確なコスト比較を行いま す。このインターフェースによ り、Teamcenterの計算方法を極めて柔 軟に調整できます。この目的のために、 最大1,000項目までの部品表(BOM)が Teamcenter製品コスト管理にインポー トされます。インポート中に、部品表 (BOM)は材料マスターと照合され、既 存の部品はマスターデータによって自 動的に補足されます。バックグラウンド では、材料およびプラント・マスターデ ータを利用して、インポート時に製造コ ストとその他間接費が紐付けられます。
プロジェクトで、合意された目標製造コ ストを満たせないリスクが存在する場 合、コストエンジニアがポテンシャル・ ワークショップを開催します。ワークショ ップでは、部門横断型チームが代替改 善案を検討します。各代替改善案のコス トは、ワークショップ中にTeamcenterを利用して容易に計算できます。その 後、目標製造コストを達成するための実 施策について合意します。
Teamcenterを利用する前には、これほ どの詳細化と標準化は不可能でした。 四半期ごとに継続してコストをモニタ ーすることで、持続的な透明性が得られ ます。オペレーションレビューでは、製 造開始後3年が経過するまで、目標の達 成が追跡されます。全てのプロジェクト について目標製造コストを達成するた め、Festoは新製品のリリース後に定期 的なレポート作成とレビューを実施して います。「以前の製品との直接比較で、 私たちは、目標コスト計算において十 数%のコスト削減を達成し、コストの傾 向と採用した方策に関する透明性を大 幅に改善することができました」と Kleinschmidt氏は語っています。
総コストの原則によれば、コストの最適 化には、コンポーネントと金型のコスト を考慮する必要があります。このために Festoは、信頼性の高い評価と透明性の あるコスト明細を作成しています。ま た、同社は経験値とパラメトリック・アル ゴリズムに基づくTeamcenter製品コス ト管理の効果的なコスト計算機能を利 用して、金型コスト計算の包括的な結果 を素早く計算しています。Teamcenter は、パラメトリック・モデルを利用して、広範囲の予測可能な金型タイプを考慮 します。金型コストをFestoの対応する 製造ステップに直接リンクすることで、 計算の前提条件(1サイクルあたりの部 品数など)を検証できます。3Dモデルな どの計算関連データの一元管理によ り、冗長なデータの保持や計算の不整 合を防ぐことができます。
シーメンスPLMソフトウェアのソリュー ションのもう1つの利点は、自動車業界 で広く用いられており、広範な顧客の 見積基準を有していることです。Festo のサプライヤーや顧客の間で も、Teamcenter製品管理は広く用いら れています。Teamcenterでコスト明細 を詳細化することで、同社はコストの透 明性の要件を満たせるようになりまし た。「コスト低減圧力は全世界的に強ま っています」とMassa氏は語ります。「社 内外で、顧客は価格に対してますます 敏感になっています。このために、当社 ではTeamcenterの標準エクスポート機能およびレポート作成機能を利用し ています。こららの機能により、顧客提 案の根拠を保証します。」
Kleinschmidt氏はこう語っています。 「Teamcenterを利用する前には、目標 コスト計算プロセスを適用するプロジェ クトの割合は30%でした。現在では、従 業員1人あたりの対応プロジェクト数は 大幅に増えています。目標コスト計算プ ロセスを利用するプロジェクトの割合は 2倍以上に上昇しました」
Festoでは、統合されたコスト計算ソリ ューションと機能横断的なコスト管理の 組み合わせの利点を明確に実感してい ます。Teamcenter製品コスト管理は、今 後もFestoの開発プロジェクトのコスト 削減をサポートし続け、競争力のある製 品コストの維持と、革新的な製品の市場 化に貢献していくでしょう。