シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションで開発時間を最大30%削減したFesto...
Festoは、ドイツのエスリンゲンを拠点とする家族経営の会社で、プラントおよびプロセス自動化のグローバルリーダーです。電気および空気圧系統の自動化ソリューションを世界中の30万を超える顧客に提供しています。18,700人の従業員を擁し、年間収益26.4億ユーロを達成する同社のミッションは、顧客の生産性と競争力を最大限向上させることです。
http://www.festo.com/group/en/cms/index.htm
化粧品メーカーのDr. Kurt Wolffが、ホリデーシーズンのちょっとした特典としてAlpecinの20%増量キャンペーンを展開する際も、これまでのように生産ラインを停止して設備を入れ替える必要はなくなりました。Festoとシーメンスが共同開発したMulti-Carrier-System (MCS®) のおかげで、ボタン1つで操作が完了するためです。同社はまた、Mechatronics Concept Designer™ のソフトウェアモジュールを使うことで、顧客の要件に基づく柔軟な搬送ソリューションをわずか数分で設計しています。
シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアがNX™ ソフトウェアのCAD (コンピューター支援設計) システムをベースに開発したMechatronics Concept Designerは、運動学的および物理的なモーションシーケンスの設計およびシミュレーション、モーターやアクチュエーター、センサーなどを含む機械や装置のバーチャル・コミッショニング (仮想運転) に対応したソリューションです。機械、電気、ソフトウェアエンジニアリングから自動化までの複数領域を網羅したシステム・エンジニアリング・アプリケーションであるため、プロジェクト全体を通じて共通のシステム環境を使用し、顧客の要件を満たした複数の機械コンセプト案を素早く検討できます。領域の異なるエンジニアたちはMechatronics Concept Designerを使うことで、複数プロジェクトで同時に作業できるため、開発時間を最大30%削減できます。
Mechatronics Concept Designerを使うことで、CADシステムの製品モデルを活用しながら、メカトロニクスのコンセプトや詳細を迅速に設計および検証できます。このソフトウェアは、3Dモデリングにコンセプトのシミュレーション、そして多体物理学と正確な自動化を組み合わせています。高価なプロトタイプを作成する必要はありません。機械やシステムを実際の制御ソフトウェアを使ってシミュレーションし、仮想的にコミッショニングします。
Festoはこのソフトウェアを使って、機械やシステムのデジタル・ツインを作成し、それを仮想的に運転できるようになりました。機械のモデルは、実際の機械制御に接続することでアプリケーション全体の機能をテストできます。これらの機能によって、メカトロニクスエンジニアは実際の機械のコミッショニング (試運転) を大幅に加速させます。
Mechatronics Concept DesignerはNXの拡張機能として、物理的な力と可動オブジェクトを表示させてシミュレーションする環境を提供します。Mechatronics Concept Designerの物理演算エンジンは、剛体と非弾性体の物理特性をシミュレーションするオープンソースのソフトウェアBulletをベースにしています。モーションシーケンスは仮想カム輪郭を使って定義し、ガントチャートで視覚化して最適化できます。
Multi-Carrier-Systemのプロジェクトマネージャー、Stefan Blaschke氏は、「NXのコンポーネントを使って、それに息を吹き込みます。」と語ります。彼は、Festoと世界各地のFestoの顧客が搬送ソリューションを導入する支援をしています。Mechatronics Concept Designerを使うと、製造プロセスのどの段階であっても個々の搬送機器の動きをシミュレーションできます。
MCS®は、化粧品業界向けに最も柔軟な包装用機械を提供することを目指してFestoとシーメンスが共同開発したシステムです。化粧品業界向けの機械に必要とされる要件には、1つの生産ラインでさまざまな製品や型の容器の充填と包装に対応することが挙げられますが、MCSを使うことで、充填、ラベル貼付、包装の各ステーションへ容器を搬送する小型のリニアモーター駆動搬送機器を高い柔軟性で実現できます。
この搬送システムは、柔軟性とインテリジェンスが求められる製造プロセスに適しています。製造ラインのMCSを使ったセクションは、搬送機器の復路を含め、コスト効率の良い、標準的な搬送システムでつながっています。
インダストリー4.0とデジタル工場の出現とともに、この柔軟な搬送ソリューションは組立ラインなど他の領域や用途にも使用されるようになりました。FestoとシーメンスがMCSをより広範な顧客へと提供することを決めたのもそのためです。MCSであれば、搬送ソリューションを毎回初めから作り直さなくても、より効率的に設計できます。
Blaschke氏は次のように話します。「Mechatronics Concept Designerを使用する主要目的は2つありました。1つは、サイクル速度や生産高、その他の顧客要件を満たしているかをテストし、その結果を顧客に示す仕組みが必要だったからです。Mechatronics Concept Designerは、個別または複数の搬送機器のモーションシーケンスを分かりやすく示します。もう1つは、Multi-Carrier-Systemを正確に設計できて、そこに加わる物理的な力も正確に考慮する、信頼できるシミュレーションツールが必要だったことです。」
Mechatronics Concept Designerを使うと、コンポーネントやアセンブリをNXや他のCADシステムからインポートして、物理特性や運動特性を追加し、制約を定義することができます。モデルはその後ライブラリに保存して、設定した特性とともに再利用できます。たとえば、FestoはMCSのすべての基本コンポーネントをMechatronics Concept Designerで再現し、新しいシステムの設計を著しく加速させました。
MCS®は、生産の各セクションを自在に、同時に生産ラインの各ステーションへ搬送することで最大限の生産柔軟性を発揮します。Festoは、リニアモーター、搬送機器、センサー、接続および組立コンポーネントといったMCSのメカトロニクス部品を開発しています。一方、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアは搬送ソリューションの制御や運転のための電子システムおよびソフトウェアを提供しています。この柔軟な搬送システムをFestoとシーメンスが共同で販売しています。構成変更が自在で、現在のイントラロジスティクスとの統合も容易なうえ、既存の搬送ソリューションともモジュール式で組み合わせが可能です。
「最適化は後で当然必要になりますが、顧客要件を入力してしまえば、わずか数分で最初の結果を生成できます。NXモデルに運動特性を追加してあるため、設計に要する時間は大幅に削減しました。」Blaschke氏は、このように説明します。
顧客パラメーター (サイクル時間や加速化など) は、顧客のAPIを介してMechatronics Concept Designerのテンプレートに転送されます。そのパラメーターから、搬送ソリューションの設計に必要なフレームワークが物理特性を考慮して決められます。このフレームワークは、パラメーター制御の動的特性を持つ一般的な運動モデルと考えることができます。システムの構成は、顧客の用途や生産ラインのレイアウトなどに基づいてプロジェクトエンジニアが定義します。
顧客仕様の搬送ソリューションの動作を指定のパラメーターに基づいて3Dでシミュレーションし、それを動画として記録して顧客に提示することができます。
「これは業界でも唯一の機能です。顧客のアプリケーションが確実に機能することを見積り段階の早期から示せるのです。」Blaschke氏は、このように話します。
しかも、Mechatronics Concept Designerが提供するのは動画だけではありません。シミュレーションデータも即座にエクスポートできるので、個々のモーター部位の荷重をチェックしたりもできます。
「Mechatronics Concept Designerは機械やシステムの設計時間がを著しく短縮します。」Blaschke氏は強調します。
ただし、時間短縮のメリットを享受する前に、ユーザーはある程度の時間を費やさなければなりません。Blaschke氏は、個々のコンポーネントは比較的迅速に準備できたとしても、すべての物理特性をライブラリに保管し、システム全体をモデル化するには、より多くの準備時間が必要だと説明します。
将来的には、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのシミュレーションアプリケーションのユーザーは、Festoの駆動コンポーネントをさらに容易に設計できるでしょう。FestoはCADENASの3D部品カタログと連携して、すぐに使える運動リニアモーターおよびその他コンポーネントをダウンロードできるように顧客に提供する予定です。これでFestoのコンポーネントを選ぶ理由がまた1つ増えます。というのもコンポーネントを購入予定の企業は、それが自社のアプリケーションにとって有用なものかどうかを購入前にテストできるからです。