Emotors、Simcenter NVHテストツールを活用して自動車eドライブの設計で卓越した成果を達成
2018年に設立され、フランスに本社を置くEmotorsは、StellantisとNidec Leroy-Somerの合弁会社であり、300人以上の社員を擁しています。社員はその専門知識、先駆的な精神、そして持続可能な製造への情熱を結集して、一流の自動車ブランド向けにeドライブを製造しています。
当社のNVHテスト・エンジニアが市場にあるすべてのツールをベンチマークで比較検討したところ、 シーメンスのツールが最良であることがすぐに明らかになりました。
電気自動車 (EV) や電動ドライブ (eドライブ) システムの製造には、原材料の調達、航続距離、性能、寿命、安全性の問題など、多様で複雑な課題があります。多くの場合、充電や運転習慣の変化に対する一般市民の受け入れにも課題があります。
フランスに本社を置くEmotorsは、2018年にStellantisとNidec Leroy-Somerの合弁会社として設立されました。独立した革新的なeドライブ・メーカーで、上記のような課題の克服を目指しています。
「当社が有する知見で重要なのは、EV顧客向けの次世代eドライブを設計して試作するという、単に優れた開発能力にとどまりません。次世代eドライブを大量生産できる能力が鍵です。」と、Emotorsの最高技術責任者 (CTO) であるCédric Plasse氏は述べています。「自動車業界ではよく知られた戦略であるプラットフォーム開発が、当社の競争力強化に役立っています。」
これらの課題を克服して目標を達成するために、Emotorsはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの協力を得て、ソフトウェア、ハードウェア、サービスからなるSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォームの一部、Simcenter™ソフトウェアを導入しました。
Emotorsのエンジニアが直面している多くの課題の1つは、特に騒音、振動 (NVH) の音響性能について、絶えず更新される厳格な仕様を満たすことです。車両は以前よりもデジタル化が進んでいるため、NVHテストやEV音響はそれほど重要ではないように思われるかもしれません。
しかし、かつては大半のドライバーが内燃機関 (ICE) の騒音に慣れていた時代がありました。当時、NVHエンジンの技術は進歩しており、音響エンジニアは相手先ブランド名製造 (OEM) ブランドのシグネチャー・サウンドの作成と微調整に膨大な時間を費やしていました。
より静かなEVが市場に登場したとき、消費者は衝撃を受け、音響の専門家たちは、ロードノイズやデジタル化された渦巻き音、うなりといった車両音の変化を懸念しました。また、EVの音が聞こえにくくなったため、道路を歩く歩行者の安全性も懸念されました。
20年近くを経て、専門家たちはEVのサウンドスケープをより制御できるようになりました。それにより、内外装のサウンドスケープのカスタマイズ、より静かな運転体験、歩行者警告音システム (PWS) や車両接近通報装置 (AVAS) など、EV、電気ドライブトレイン、eドライブ向けのさまざまな音を作り出しています。
すべてのEmotorsのシステムは、eドライブの音と、車両内への統合の仕様を満たす必要があります。EmotorsのNVHテスト・マネージャーであるBonaventure Ndong Gumedzoe氏とNVHテストラボの彼のチームは、この課題の達成に貢献しています。
EmotorsのNVHエンジニアであるDaouda Teuw氏が、テストの実行を支援しています。これには、72チャネルのSimcenter SCADAS™ハードウェアデータ収集ユニットでの各テストランの設定が含まれます。ラボでの設定には、加速度計の接着と配線、Emotorsシステム専用のSimcenter Qsources™ハードウェアのインストール、無響チャンバー内でのテスト、テストランの監視、Simcenter Testlab™ソフトウェアとSimcenter Testlab Neoソフトウェアでの騒音または構造応答の解析があります。
EmotorsのNVH設計エンジニアであるFatma Abid氏は、このプロセスについて次のように詳しく説明しています。「私は電磁エンジニア、設計チーム、テストチームなどのさまざまな技術チームと緊密に連携して、最小の音響騒音を保証するeドライブ・システムのモデリングとシミュレーションに取り組んでいます。
「テストチームに初期シミュレーションを提供してテストメッシュを最適化します。その後、提供されたテスト結果によって、より予測性の高いモデルに最適化することができます。電磁騒音などのさまざまな騒音源と構造挙動のバランスを取る必要があるため、プロジェクトの初期段階に、最も予測性の高いモデルを用意することが重要です。」
Daouda Teuw氏は、NVH設計チームにより最適化されたシミュレーションを使用して、Emotorsシステムの特定の領域を対象とし、従来のNVH手法を使用して構造共鳴を特定します。次にDaouda Teuw氏は、それらを特定の属性 (デジタルツインの磁力高調波など) と一致させて、NVH挙動を予測します。
「顧客のNVH要件を満たすために、Simcenter Testlabで従来の実験モーダル解析を実施しています。」とBonaventure Ndong Gumedzoe氏は話します。「周波数、モーダル形状、減衰などのモーダル・パラメーターを抽出し、この情報をシミュレーション・チームに提供して、Emotors製品のNVH挙動を自信を持って予測します。
「Simcenterのテスト・ソリューションを使用すると、チャネルの設定から最終的な測定解析まで、主要な作業をステップ・バイ・ステップで簡単に実施できます。」
他の業界と同様にEmotorsは、NVHサイロの外に出て作業することの重要性を理解しています。
「電気エンジニア、制御法則エンジニア、電磁の専門家と連携して、電動ドライブの音源を理解し、許容可能な騒音レベルに関して妥協点を見つける必要があります。」とBonaventure Ndong Gumedzoe氏は言います。
正確なデータをデジタルツインに入力することで、企業は設計プロセスの早い段階でトレードオフを行うことができます。NVHチームは、Simcenter Testlabを使用して、周波数と高調波がテストとデジタルツインの側面から正しいことをカラーマップで確認します。
「当社の主要な課題は、製品のNVH挙動を改善するために必要なすべての側面を徹底的にテストすることです。」とBonaventure Ndong Gumedzoe氏は述べています。「私たちはシミュレーション・チームと緊密に連携して、NVH要件や、電磁気学、電動ドライブ制御などの他の分野と一致する適切なソリューションを見つけます。次に、実装する前にソリューションをループに戻し、シミュレーションと同様に実験条件下でも機能するかどうかを確認します。」
NVHチームは新しいチームですが、プロセスが確実に機能的、効率的であるように、あらゆる角度から検討しています。これを達成するために、Emotorsはシーメンスのテクニカル・サポートを活用しています。
「シーメンスのテクニカル・サポートに非常に満足しています」とDaouda Teuw氏は述べます。「新しい測定方法を導入する時や、次のテスト作業でSimcenter Qsourcesのような新しい機器を使い始める、といいう時に、よく相談しています。
「Simcenterのテスト・ハードウェアは非常にユーザー・フレンドリーです。72チャネルすべてを使っても、非常に迅速にテストを実行することができます。」
「Simcenter SCADASハードウェアを活用することで、各チャネルからのサンプリング周波数が非常に高くなります。」とBonaventure Ndong Gumedzoe氏は話します。「私たちの作業における精度のレベルは理想的です。Simcenter Testlabは、各手順が論理的で分かりやすいです。チャネル設定に近い形状を持てるのは素晴らしいことです。これによって、Daouda Teuw氏はすべてが正常に進んでいることを確認し、間違いがあればすばやく修正できます。準備やテストランの時間を大幅に短縮できます。」
Cédric Plasse氏の経験のおかげで、Emotorsのチームは、初期の製品開発のための研究開発 (R&D) と高度なエンジニアリングの重要性を理解していました。この知識とシーメンスのソリューションにより、Emotorsは5年間で25kWから250kWまでの次世代eドライブのシリーズを開発し、これらはPeugeot、Opel、DSオートモビルズ、ジープなどのStellantisのブランドで使用されています。これは、eドライブをEVに統合し、
製造のモジュール化を実現したことで可能になりました。
「当社の工場では大量生産が必要であり、多様性はそれほどでもありません。そのため、小型モーター用と大型モーター用の2つのプラットフォームを採用しています。」とCédric Plasse氏は言います。「この2つのプラットフォームは、同じ生産プロセス内で25kWから250kWまで対応することができます。顧客のニーズに迅速に適応できる標準製品を開発しています。当社は、継続的な開発プロセスとプラットフォーム製造戦略に基づいて、迅速に市場投入を行っています。」
モーダル解析にSimcenterのテスト・ソリューションを使用した後、チームは、音響心理学を研究して運転中のEVドライバーや乗客の知覚を理解するツールをシーメンスが提供していることに気づきました。
「人間は、無響室で行う高調波の測定のように客観的ではありません。」とCédric Plasse氏は言います。「シーメンスのソリューションは、ドライバーの感覚と、チャンバー内で取得した測定値を正しく相関させることができる唯一のツールでした。エンジニアとして、私たちは測定したものだけを改善することができます。
「私たちは多くのものをデジタルで設計しますが、デジタルモデルだけではすべてを実現できません。市場投入期間を短縮し、精度を上げるためには、テスト測定データを使用してモデルをキャリブレーションする必要があります。当社のNVHテスト・エンジニアが市場にあるすべてのツールをベンチマークで比較検討したところ、シーメンスのツールが最良であることがすぐに明らかになりました。
「音響の場合、当社が使用しているシーメンスのツールで、騒音を測定してモデルをキャリブレーションします。それにより、顧客にとって最適な騒音、性能、コストのバランスを目指すことができます。」
もう一つの利点は、合理的な要素と非合理的な人間の要素を一致させることができる点です。
「私たちは車両内テストを実施しています。なぜなら、テストベンチで良い結果が得られていても、車両内では異なる結果が出ることがあるからです。」とBonaventure Ndong Gumedzoe氏は言います。「私たちはすでに、シーメンスの優れたツールに複数出会いました。例えば、Simcenter SCADAS XSやSimcenter SCADAS 3Dバイノーラル・ヘッドセットです。タブレットで動作し、非常に小さな機器なので、車両に持ち込んで簡単にテストを実施できます。」
チームは、NVHエンジニアリングの卓越性を高めるための新しい方法を常に模索し、プロセスに追加する革新的なツールを求めています。
「NVHチームと話すと、シーメンスのサポートは非常に専門的で、コミュニケーションも良好だと言っています。」とCédric Plasse氏は話します。「当社では、すべての領域でシーメンスのツールを使用しようとしています。ツールに期待しています。シミュレーション側とテスト側の両方の、より多くの人々が話し合うことで、さらなる利益につながるからです。これは、コミュニケーションを改善する優れたドライバーです。シーメンスとEmotorsの成功は、
今後さらに多くのモーターを市場投入する際に活かされるでしょう。」
シーメンスのソリューションは、 ドライバーの感覚とチャンバー内で取得した測定値を正しく相関させることができる唯一のツールでした。