エレクトロラックス、TecnomatixとTeamcenterを使用して、効率的な統一製造プロセス / システムを構築...
スウェーデン、ストックホルムに拠点を置くエレクトロラックスは、家庭用 / 業務用調理器具などの製品を提供する企業グループです。
スウェーデンのストックホルムに拠点を置くエレクトロラックスABは、世界150か国で家庭用 / 業務用調理器具などの製品を販売しています。約58,000人の従業員と46の生産拠点を抱える同社は、多数のブランド製品を開発、製造しています。エレクトロラックスに加えて、トップブランドのGrand Cuisine、AEG、Zanussi、Frigidaire、Westinghouseは特に高い評価を得ています。
1996年には、ドイツのブランドAEGを、同グループの複数の部門、拠点とともにダイムラー・ベンツから買収しました。エレクトロラックスが取得した、1964年設立のローテンブルク・オプ・デア・タウバー工場は、現在ヨーロッパ市場向けに年間600,000台のコンロと1,400,000台の調理レンジを生産しています。「開発と生産では、各ブランドの最も重要な特性を細部まで実装することを重視しています。」エレクトロラックス、グローバル製造エンジニアリング、調理部門ディレクター、ベルント・ エベルト氏は上記のように述べています。ローテンブルクに拠点を置くエベルト氏によると、エレクトロラックスのすべての調理器具工場には統一のプロセス / システムが実装されています。
スウェーデンのグローバル企業、エレクトロラックスは、全領域を網羅する包括的なデジタライゼーション戦略の一環として、11のデジタル製造プロジェクトを進めています。エベルト氏は、最も優先度の高い2件のグローバルプロジェクトの責任者です。エレクトロラックスはすべての製造拠点の「デジタル・ツイン」を作成することを目指しています。仮想製造プロジェクトでは、高度な計画ツールを採用し、初期段階に設計検証を行って、生産やアセンブリのし易い製品を開発しています。例えば、アセンブリの順序と動きを3Dで計画、最適化して衝突を回避しています。この前提条件として、3D工場レイアウトを作成しなければなりませんが、これは2つめのプロジェクトの焦点となっています。レイアウトは、容量と効率を最適化するために、2Dデータに基づいてプラントと材料フローの両方をシミュレーションできる、標準の工場計画ツールを使用して作成します。
2010年にソフトウェアの選定を始めましたが、当時は3D工場計画のための強力なソフトウェアはありませんでした。エベルト氏の率いる小さな専門家チームは、ストックホルムのIT部門と緊密に連携しました。そして2012年に、戦略的に重要な製品ライフサイクル管理 (PLM) の製品開発プラットフォームとして、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのTeamcenterを導入します。将来の戦略を話し合うなか、シーメンスが、早期導入プログラムで3Dレイアウトソフトウェア、Line Designerのプレリリースバージョンのテストを提供することになりました。
シーメンスにとってこれは、現物のデータを使用して、現実の問題を扱った時のソフトウェアの性能を証明する良い機会となりました。その結果を受けてエレクトロラックスは、2016年にLine Designerを採用し、Tecnomatix®ポートフォリオ・ソリューション (Process Simulateソリューションを含む) と繋ぎました。Line Designerを採用した一番の理由は、これらのソリューションをTeamcenterに統合すれば大きな利点が得られる点にありました。「Line Designerで作成したすべてのリソースをライブラリとしてTeamcenterに保存して管理し、世界中のユーザーが利用できるようになっています。」とエベルト氏は言います。「こうして、トレーニング材料を含むソフトウェアとハードウェアのインフラストラクチャ全体を維持することで、既存ユーザーにとってのTeamcenterの利便性はさらに高まります。」期待されていたのは、製品開発のための緊密な提携と、工場計画 / 材料フロー最適化のためのグローバルな共通プラットフォームでした。
2016年にローテンブルクで実施したパイロットプロジェクトでは、担当者はシーメンスからトレーニングを受けた後、Line Designerを使用して新しいアセンブリラインとハウジングの自動アセンブリを構築しました。
Process Simulateでエルゴノミクス調査を行い、シミュレーションを使用してサイクルタイムを最適化しました。「Tecnomatix / Teamcenterソリューションの有効性が、最高の形で実証されました。」エベルト氏はプロジェクトマネージャーとしてこのように述べています。「これは、世界規模の展開に向けての貴重な経験となりました。」
コアチームは、3つの各ソフトウェアソリューションのスペシャリストを育成し、このスペシャリストたちが、現場に分散する担当者にアドバイスやサポートを提供するようになりました。Line Designerで作成したシステム領域 (コンベアーやリフトなど) や、材料輸送トロリー、その他デバイスのモデルはパラメータ化が可能です。「3Dモデルとシナリオを世界中で使えるようにすることで、多くの作業が軽減します。」とエベルト氏は言います。「調整された後、パラメーターは他の場所で再利用されます。このため、製品ライン全体 (調理、洗浄、食器洗浄、乾燥、冷却、冷凍) のプロセス / システムだけでなく、米国、南アメリカ、アジア、太平洋、欧州の各セクターのプロセス / システムも、自然に理想的な形へと標準化していきます。」
「パイロットプロジェクトの経験に基づいて、世界規模の展開を段階的に進めています。それぞれの段階で、担当者は1か所で集中的なトレーニングを受け、プロセスに慣れていきます。」とエベルト氏は説明します。「まず私たちは、大型プロジェクトとして多額の投資を行う4つの場所を選定しました。」
サウスカロライナ州アンダーソンには、新しい冷蔵庫工場が完成します。2019年半ばまでに冷蔵庫の生産は、すべてアメリカ大陸に移管される予定です。この工場では、高度な自動化によって人間の労働が約30%削減されます。新しい自動化コンセプトを開発し、工場を一発で正しく計画して高額の投資を確保できるように、Tecnomatixで多数のプロセスを計画しました。
時間のかかる生産領域は、冷蔵庫の壁の発砲・硬化のプラントです。そこでの処理時間が、その前後の領域に影響を及ぼします。このボトルネック領域を一発で正しく設計するために、プロセスを単一のフローとしてマッピングし、シミュレーションしました。「さまざまな材料やモデルなど、多くの詳細を考慮に入れる必要がありました。」とエベルト氏は言います。「これらすべてを記述するには相当な時間がかかりましたが、それだけの価値がありました。」Plant Simulationの結果は非常に正確なので、大きなバッファーは不要になります。1台のコンベヤーと1つのハイベイ倉庫で5,000台の冷蔵庫を製造し、約200万ドル節約できます。
発泡後、アセンブリプロセスは4ラインに分岐します。ここでは、材料フローの輸送ルートを、トラックからアセンブリラインまでの製品設計モジュールの30のモデルに合わせて、部品リストにあるすべての購入部品を使用して計画、シミュレーション、最適化しました。「シーメンスの担当者が、輸送ルートの基盤を構築してくれました。しかし、材料フローは当社の担当者が毎日改善を続けており、既に有効性の目標を達成しています。」とエベルト氏は述べています。
さらに、担当者はProcess Simulateを使用して、以前は手動で行っていたプロセスの一部を引き継ぐロボットセルも計画しています。「セルの詳細はまだ完全には決定していませんが、ロボットが1台必要か、それとも3台必要なのか、確信をもって決められると思います。」とエベルト氏は言います。こうした信頼性の高い計画が、3Dシナリオと動画でマネジメントに伝達されます。
「多額の投資を得るには説得力のある説明が必要です。」とエベルト氏は断言します。「Tecnomatixの優れた視覚化機能を使用すると、プロセスの妥当性を確信できるような初期計画をマネジメントに示すことができます。この3D技術の導入で、アセンブリコンセプトの検証や自動化ソリューションのサプライヤー選定が容易になり、以前には取得できなかった知見も得られるようになります。」
Tecnomatix / Teamcenterツールを使用すれば、タスクを解決して目標を達成できることが、最初のプロジェクトで証明されました。従業員はこの強力なツールを日常的に使用します。「グローバルチームのなかで新しい役割を担うスペシャリストが必要です。」とエベルト氏は言います。「標準化を成功させるには、すべてを一元的に記述しなければなりません。」欧州でも大型プロジェクトを開始する予定です。
エバート氏は、ドイツのFraunhofer Gesellschaftの元社長でもある著名な科学者、ハンスユルゲン・ワルネッケ博士の言葉を引用して次のように話します。「工場は高価すぎて実験台に使うことはできません。」「新しいコンセプトをテストする際に、生産のダウンタイムを発生させない効率的なシミュレーションツールがあります。」