Ecurie Aix、Simcenter AmesimとSimcenter STAR-CCM+を使用して、冷却システムのエネルギー消費を削減
Ecurie Aixは、2002年にドイツで初めて学生フォーミュラに参戦したチームの1つです。チームは、アーヘン工科大学から産業パートナーまで、多くの機関から支援を受けています。毎年さらに軽量で高効率、高速の車両を開発することが目標です。学生フォーミュラの大会では、チームの技術に加えて、経済効率、組織、プレゼンテーションも審査されます。
https://www.ecurie-aix.de/en/ecurie-aix-e
Ecurie Aixは、ドイツ、アーヘンにあるアーヘン工科大学の学生が、学生フォーミュラ・チームを立ち上げたいと考えて1999年に設立した組織です。学生フォーミュラは、500を超える学生チームが、SAE (Society of Automotive Engineers)、FSG (Formula Student Germany) のルールに基づいて自ら設計した車両で競う世界的なレースです。この大会では、学生たちが1年でレーシングカーを設計、製造、テストして競います。Ecurie Aixチームは、1999年にシリンダー・エンジン (ICE) 駆動車の構築を開始し、2022年の夏には、10台目となる完全電気自動車でレースに参戦しました。
学生フォーミュラの大会は、静的審査と動的審査で構成されています。静的審査では、エンジニアリング設計、コスト、ビジネスプランのプレゼンテーションを審査します。動的審査では、耐久力、効率、オートクロス、加速性能、スキッドパッド、トラック・ドライブを審査します。大会で最も重要な審査は、22km (11km X 2コース) を走行する耐久レースです。
Ecurie Aixは、バッテリー・パックの熱特性と電気特性を効率的にキャラクタライズできる、信頼性の高いアプローチを探していましたが、問題が複雑なので複数の領域を統合できるものが必要だと考えていました。そこで、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと提携してBatterye Aixプロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、実験、システム・シミュレーション (SYS)、数値流体力学 (CFD) を効率的に組み合わせてバッテリーの熱管理を最適化し、拡張性、再利用性、将来の機能強化も考慮しました。
電気モビリティは、自動車業界の最優先課題です。その最も重要な要素の1つはバッテリーの熱管理ですが、これは複数のシステム (冷却、バッテリーなど) を統合して行う必要があります。これで、レーシングカーや乗用車に不可欠なバッテリー・パックを最適かつ安全に使用できるようになります。自動車OEMは、バッテリー・パックをテストしてキャラクタライズし、自動車冷却システムへ安全に統合する必要があります。バッテリーパックは信頼性が高くなければなりません。シミュレーション実験は、寿命や経年劣化など、多様な運転条件を網羅するうえで重要な役割を果たします。
Batterye Aixプロジェクトでは、バッテリーセルをキャラクタライズして、性能と航続距離の要件を満たすように最適な形で車両にバッテリーを統合し、冷却システムを正しい寸法で正しく設計する方法を決める必要がありました。このプロジェクトの基本的な方針は、実験を使用してSYSとCFDのコ・シミュレーションを行うことです。Ecurie Aixの学生エンジニア、Thomas Nyhues氏は次のように語っています。「バッテリーと熱のシミュレーションにはシーメンスのソリューションが必要でした。バッテリーとその挙動のモデリングは、私たちにとっては初めての領域でした。」
Ecurie Aixチームは、複雑なバッテリー・モデルを使用してデータを生成するのではなく、アーヘン工科大学のパワーエレクトロニクス・電力駆動系研究所 (ISEA) で物理的な実験を行いました。バッテリー・パックの電気および熱シミュレーションで、複数領域をまたぐアプローチを使用して実験、SYS、CFDを組み合わせ、バッテリーの使用に関する貴重な知見を取得しました。最初に、Simcenter™ Amesim™ソフトウェアを使って生成したさまざまな電流プロファイルで、バッテリーのテストベンチを実行しました。このテスト結果をバッテリー識別ツールボックスの入力として使用して、Simcenter Amesimで等価回路モデルのすべてのパラメーターを完全に識別できました。また、この完全にパラメーター化されたモデルを使用して、プロジェクトで更なるステップと機能強化を行うことができます。Simcenterは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスを統合した包括的なポートフォリオ、Siemens Xceleratorに含まれています。
次に、ファンクショナル・モックアップ・インターフェース (FMI) 段階で、完全にキャラクタライズされたバッテリー・パックをFMI標準のファンクショナル・モックアップ・ユニット (FMU) としてエクスポートしました。このステップにより、ソフトウェア間の熱フローと温度の交換が可能になりました。最後に、CFDシミュレーションを実行し、そこでFMUとパックの特性評価をインポートしました。 ここからSimcenter STAR-CCM+™ソフトウェアで、耐久レース中に記録された電流プロファイルを使用して、時間依存共役熱伝達シミュレーションを実行しました。FMI標準とFMU標準は両方のリューションでサポートされているため、ソフトウェアは問題なく相互に通信できます。この機能はプロジェクト中にソフトウェアに実装されたため、Ecurie Aixチームは、この機能を使用した最初の組織となりました。
さらに、シーメンスの提供した技術サポートが、このプロジェクトの大きな成功要因となりました。シーメンスの学術事業開発者、Claudio Santarelliと、システム・シミュレーションのプリセールス・ソリューション・コンサルタント、Christopher Helbigは、プロジェクト全体を通してEcurie Aixをサポートしています。シーメンスは、世界中の学生チームを支援していますが、その一貫としてEcurie Aixチームも、オンラインの学習教材やドキュメントの提供を受けています。Thomas Nyhues氏は次のように述べています。「ソフトウェアを連成してそれを初めて使用するときに問題が発生しましたが、毎回シーメンスのサポートチームがソリューションを提示してくれました。」Ecurie Aixチームは、シーメンスのサポートセンターにもアクセスできました。プロジェクト中にいつでもアクセスして質問 (FAQ) したり、チュートリアルを視聴することができました。また、シーメンスの学習プラットフォーム、Siemens Xcelerator Academyも使えました。
このシミュレーションの設定を設計変更によって強化し、バッテリーの熱管理を最適化することが可能です。シーメンスのソリューションを使用すれば、より現実的で信頼性の高いシミュレーション・モデルを取得して、トラックテストに費やす時間とリソースを減らし、コストを削減することができます。Thomas Nyhues氏は言います。「シーメンスのSimcenter STAR-CCM+は、特に空力シミュレーションに適した最先端のCFDシミュレーション・ツールです。」さらに、シミュレーションなら、トラックテストでは入手できないデータや情報にもアクセスできます。これにより、自動車の開発プロセスの新たな扉が開きます。「完全にキャラクタライズされた優良なテスト・プロトコルを設計することは簡単ではありません。シーメンスのソフトウェアを使うことで、この作業は完全に自動化されました。ドキュメントを取得してすぐにできました。」Ecurie Aixの学生エンジニア、Fabian Böhm氏はこのように述べています。
一度バッテリー冷却システムを正しくシミュレーションすれば、それを車両の開発プロセスで活用できました。例えば冷却システムのサイズと重量を減らすことで、Ecurie Aixは他チームよりも優位に立てました。Thomas Nyhues氏は次のように語っています。「Simcenter Amesimのバッテリー識別ツールを使うことで、時間を大幅に短縮できました。」データをツールボックスに入れるだけで、正確なバッテリーモデルが得られます。
「成功の鍵は、シーメンス・チームとのコラボレーションでした。」とThomas Nyhues氏は言います。「ソフトウェアを使用して、プロジェクト中に発生した問題を解決するサポートをしてくれました。シーメンス・チームのモチベーションの高さには圧倒されました。シーメンス・チームは、完全に私たちのチームの一員となって、同じ目標を追求してくれました。」Ecurie Aixの学生エンジニア、Luca Leogrande氏は言います。「チームとして効果的に作業を進めるには、新しいメンバーをすばやく立ち上げることが不可欠です。シーメンスと一緒に開発したドキュメントのおかげで、それが可能になりました。」Fabian Böhm氏は言います。「シーメンスのサポートチームとのコラボレーションが、プロジェクトの原動力でした。」
Ecurie Aixチームは、ドキュメント作成と変更管理を含む複数の用途でTeamcenter®ソフトウェアを使えると期待しています。Luca Leogrande氏は言います。「私たちにとっては、この2点がTeamcenterの最大の魅力です。」さらにEcurie Aixチームは、ハードウェア・イン・ザ・ループ (HiL) にソフトウェア・イン・ザ・ループ (SiL) を組み合わせるなど、リアルにテストするアプローチにバッテリー・モデルを導入する予定です。今後の作業では、バッテリーモデルをラップタイム・シミュレーションやリアルタイム・コントローラーに使用する予定です。