製品の複雑化が増すなか、ドゥカティはNXとTeamcenterを使用して開発サイクルを1年短縮
ドゥカティ・モーター・ホールディング S.p.A (ドゥカティ) は、ハイエンドバイクの設計製造を手掛ける大手メーカーです。
ドゥカティ・モーター・ホールディング S.p.A. (ドゥカティ) は、新興のラジオ業界向け部品メーカーとして1926年に設立されました。第二次世界大戦後にエンジンと小型バイクの製造を開始したドゥカティは、現在、オンロード / レース用バイクの最も優れた人気ブランドとなっています。ドゥカティは年間およそ4万台のバイクを製造しています。ドゥカティの製品ラインは、ミディアム / ハイエンド市場向けの6つの製品ファミリー、17のモデルで構成されています。
ドゥカティで働く1,000人の従業員のうち、200人近くが研究開発 (R&D) に携わっています。同社は毎年、研究開発に多額の投資を行っています。エンジニアリングスタッフは約90人で、その内の60人は設計専任です。また、ドゥカティは事業をグローバルに展開しており、幅広いパートナーとサプライヤーのネットワークで生産の92%に対応しています。情報を転送するたびに遅延やミスが発生すると、サイクルタイムが長引いてコストが増加します。このためドゥカティは、製品開発チームのすべてのメンバーを緊密に統合するプロセスを積極的に進めてきました。
このプロセスでドゥカティが採用したテクノロジーのなかには、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの2つのソリューションがありました。NX™ソフトウェアとTeamcenter®ソフトウェアです。ドゥカティでは、コンピューター支援設計 (CAD) システムとして、車両アセンブリのデジタルモデリングと管理にNXを使用しています。また、製品ライフサイクル管理 (PLM) ソリューションにはTeamcenterを使用し、社内およびサプライヤーとの安全なデータ共有やデータ配信を実現しています。
「新しいプロジェクトの構想から完了まで、すべての段階でNXを使っています。」とドゥカティの研究開発部 ITマネージャーであるPiero Giusti氏は言います。「ホイール、シャーシ、ボディ、カスタム部品など、エンジンを除くほぼすべてのバイク部品の設計にNXを使用しています。」
ドゥカティには現在50台以上のNXワークステーションがあります。Giusti氏は述べています。「NXの1番の長所は、柔軟性と使い易さです。決まった手法に縛られることなく、さまざまな手法で3Dモデルを作成できるという柔軟性があります。シンクロナス・テクノロジーを搭載したNXは、すべてをパラメーター化しなくても良いハイブリッド手法なので、ユーザーは最終結果を得る手段を自由に選択できます。」
ドゥカティのエンジニアは、NXの3D配線機能を幅広く使用しています。NXを使えば、仮想アセンブリ内でケーブル配線を検証し、下流で発生する恐れのある配線問題も最小限に抑えられます。「次は、配線図を統合して個別のソフトウェアの使用を無くすステップです。個別のソフトウェアを複数使用していたので、更新と参照の問題が発生していました。私たちはフローを体系化し、NXの回路図機能を使って配線図を作成できるようにしました。その後、この配線図をNXの配線アプリケーションに渡し、設計にすべての電気情報を組み込みます。そして最後に、NX電気配線ソリューションを使用して、ケーブルの実装に関する文書を準備します。NXの統合型手法でプロセス全体をカバーできます。」Giusti氏はこう付け加えました。
NXは、社内開発チーム内だけでなく、外部サプライヤー (金型やフォークなどの主要コンポーネントを製造する企業など) との緊密なコラボレーションをサポートします。ドゥカティは、Teamcenterを使用することで、さらに緊密なコラボレーションが可能になると期待しています。Giusti氏はこう説明します。「サプライヤーとモデル データを交換する必要性が高まっています。長期にわたって連携している一部のパートナーが、当社のシステム内の情報に直接アクセスできるようにする方法を模索しています。パートナーと当社の設計者が並行して作業を進められれば、開発時間をさらに短縮できるからです。当社のために技術を生み出してくれる戦略的サプライヤーを、数年以内にすべて統合する予定です。」ドゥカティは、既に一部のサプライヤーとこのプロセスを開始しています。
ドゥカティではTeamcenterが広く使用されています。250の職場がTeamcenterを使用し、エンジニアリング部門の生成した情報にアクセスしています。モデナにあるSaima倉庫もその1つです。一部の組み立て作業、スペアパーツの検証、取り付け誤差の修正などのために、すべてのバイクがこの倉庫を通過します。
倉庫のスタッフは専用回線を通じて、Teamcenterに保存されている情報にアクセスします。完成品の図面、配線図、アセンブリ テーブルなどを表示できます。ここでは通常、ボディ部品やカスタム部品の取り付けといった小規模の組み立て作業を行いますが、時には大きな変更を加えることもあります。その際、倉庫のスタッフが製品文書にアクセスする必要があります。Giusti氏は言います。「Saimaのスタッフは、驚くほど簡単にTeamcenterを使いこなせるようになりました。特別なトレーニングを受けていないにもかかわらず、これほど簡単に習得できたことが、Teamcenterの使い易さと高い直感性を証明しています。」
Giusti氏はさらに続けます。「Teamcenter無しの作業は、もう想像できません。以前のプロセスでは大量の紙が必要でしたが、今では紙やファイリングのキャビネットも不要になりました。Teamcenterを導入したことで、追跡可能なロールベースのアクセス機能と、高度なセキュリティを備えたデジタル情報管理システムを実現できました。」
PLMソリューションのおかげで、ドゥカティの製品開発のペースは劇的に加速しました。エレクトロニクスや関連ソフトウェアの搭載が大幅に増加しているにもかかわらず、新しいモデルを遥かに短時間で開発できるようになりました。今日のバイクには、サスペンション、トランスミッション、ブレーキ、安定性に関連する電子制御ユニット (ECU) が、最大6~7台搭載されています。Giusti氏は次のように述べています。「これらのシステムはすべて相互作用しており、効率的で信頼性の高い手法で管理する必要があります。現在では当社も、自動車や航空宇宙企業と同様の製品構成要件に対応しなければならなくなっています。」
製品が複雑化したにもかかわらず、ドゥカティは新しいバイクの開発サイクルを1年短縮しました。Giusti氏はこうも語っています。「当社の設計開発サイクルは、平均で36~40か月でしたが、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのツールのおかげで、わずか24か月に短縮しました。年に一度の間隔で、既存のモデルをすべて更新できます。従来の設計手法で、こうした結果を達成できるとは思えません。」
ドゥカティは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのPLMスイートを使用して、プロトタイプ、製造、倉庫、スペアパーツ、アクセサリーなど、すべての部門とオペレーションを統合することができました。「すべてのプロセスを統合して並列化することで、バイクと同時にアクセサリーも開発できるようになりました。以前は、アクセサリーの発売までに6~12か月かかっていました。今では、アクセサリーをバイクと同じタイミングで市場に出せるようになり、販売の相乗効果が大きくなっています。」とGiusti氏は述べています。