ユーザー事例

モーダル・サーベイ試験を4日足らずで完了し、宇宙空間に飛び立つ

Simcenter TestLabとSimcenter SCADAS Mobileを使用し、エアバス・ディフェンス・アンド・スペースと共同で有限要素モデルを、ほぼリアルタイムで検証したDLR

モーダル・サーベイ試験を4日足らずで完了し、宇宙空間に飛び立つ

DLR

ドイツ航空宇宙センター (DLR) は、ドイツ政府の開発プログラムを計画・実施し、研究活動や航空プロジェクトを行う宇宙機関です。DLRは科学の卓越性を推進し、技術的専門知識を活用することで、ドイツの宇宙産業の商業化と競争力を高めることを目指しています。

https://www.dlr.de/DE/Home/home_node.html

本社:
ゲッティンゲン, Germany
製品:
Simcenter 3D Solutions, Simcenter Testing Solutions
業種:
航空宇宙 / 防衛

共有

エアバスからの期待は大きかったのですが、適切なツールを利用できたことで、期待に応えられました。
Julian Sinske氏, 構造ダイナミクス試験リーダー, DLR

宇宙分野への展開

ドイツ航空宇宙センター (DLR) は、ドイツの宇宙機関であり、政府の開発プログラムを実行しています。DLRは科学の卓越性を推進し、技術的専門知識を業務に活用することで、ドイツの宇宙産業の商業化と競争力を高めることを目指しています。

DLRの空力弾性研究所は、航空宇宙事業体などの第三者のために専門的な構造ダイナミクス実験や試験を定期的に実施する、主要な研究機関です。ドイツのゲッティンゲンに拠点を置くこの研究所は、これまで航空試験を対象とし、上振動試験 (GVT)、多軸振動励起、非定常信号測定、風洞の試験装置に関する専門知識と設備を有しています。最近では、宇宙産業向けのモーダル・サーベイ試験 (MST) なども実施するように進化しています。

DLRの構造ダイナミクス試験リーダーであるJulian Sinske氏によると、「当社は航空機の研究に関する幅広い経験と実証済みの試験方法を宇宙分野に適用し、信頼性が高く、費用対効果の高い試験を迅速に実施する態勢が整っています。」とのことです。

DLRにとって、短時間で正確なテスト結果を生成できることは、当研究所が誇る高品質の解析とモデリングに不可欠です。そのために、DLRは数年前からシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの試験ソリューションを使用してきました。「われわれはシーメンスの試験用製品を使い慣れており、シーメンス製品を社内の技術やアルゴリズムと統合することによって、大きなメリットを享受しています。」とSinske氏は述べています。

Moving to the space sector

宇宙で存在感を示す

その好例が、国際宇宙ステーション (ISS) の商業利用の可能性を探るエアバス・ディフェンス・アンド・スペースのバルトロメオ・プロジェクトです。DLRは、この試験でソフトウェア、ハードウェア、サービスのビジネス・プラットフォームであるSiemens Xceleratorに含まれている、192チャネルのSimcenter™ SCADAS™ Mobileハードウェアを、バルトロメオ衛星の有限要素 (FE) シミュレーション・モデル・アップデートを目的としたモーダル・サーベイ試験の重要な測定機器として使用しました。これにより、プラットフォームと打ち上げ機の結合方法など、シミュレーションと解析が必須な部分をシミュレーションおよび予測できるようになりました。したがって、信頼性が重要でした。

DLRはそのために、正確な実験データを取得し、FEモデルの忠実度を検証または改善する必要がありました。このSimcenter SCADAS Mobileのセットアップは、メインフレームを2つ備え、信号を192個同時に測定できるものでした。前年に、Simcenter SCADAS 3からSimcenter SCADAS Mobileに切り替えたDLRにとって、これはパワフルでありながらコンパクトで柔軟なハードウェアを使用した、初めての大規模な産業用試験でした。

「われわれの経験では、Simcenter SCADASは常に問題がなく、信頼性が高かったため、更新されたシステムにもまったく不安はありませんでした。」とSinske氏は強調しています。Simcenter SCADAS Mobileに移行することで、さまざまなタイプの試験を柔軟に処理できるようになります。このデータ収集システムは汎用性が高く、モーダル・サーベイ試験やGVT試験などに問題なく使用できます。

Taking up space

柔軟性とスピード

Sinske氏によると、Simcenterのオープンなアーキテクチャは、Simcenter TestLab™ソフトウェアで試験データを構成する際にも活用されました。

「Simcenter TestLabは、機能を柔軟にカスタマイズできる点が、特に今回のような大規模な試験に適しています。」とSinske氏は述べています。例えば、シーメンスのPolyMaxアルゴリズムをバックグラウンドで実行すると同時に、DLR独自のアルゴリズムをSimcenter TestLabに接続して、特定の試験ニーズに適合させることができました。また、DLRチームはユーザー・インターフェース (UI) をカスタマイズし、結果をラボの壁に投影して、試験の進捗状況を把握できるようにしました。設置後1時間未満で最初の測定結果が出たため、このセットアップ全体で試験結果が得られるまでの時間が、同等のテストシナリオよりも大幅に短縮されました。

4日足らずで完了したこの試験は、今までにないスピードで高品質かつ信頼性の高い結果をもたらしました。エアバスはその結果から得られた構造ダイナミクス・データによって、適切なモーダルモデルを決定し、非線形性を特定し、有限要素モデル (FEM) をアップデートできました。実際には、エアバス・ディフェンス・アンド・スペースが測定をまだ実行しているときから、モデルのアップデートが可能でした。Sinske氏は次のように指摘します。「エアバスからの期待は大きかったのですが、適切なツールを利用できたことで、期待に応えられました。最終的な試験レポートに向けて、データの約80%をすぐに解析できたうえに、

テスト全体が計画通りに進みました。求められたデータを迅速に提供するために、作業をできるだけ急ぐ必要がありましたが、Simcenter SCADAS MobileとSimcenter TestLabのおかげで実現できました。」

将来の成功への軌道に乗る

DLRの空力弾性研究所は、試験済みの手法と信頼できるツールを試験機能に適用することで、航空から宇宙へと簡単に移行できる再現可能な試験手法を作成しました。Sinske氏の言葉です。「当社はGVTとMSTの両方とも同じハードウェアとソフトウェアを使用しており、すでに計画を立てています。このようなプロジェクトに参加することで、仕事の進め方や使用しているツールへの信頼感が増しました。」

現在、チームはこの勢いに乗って、人工知能 (AI) や自動化を組み込んだものなど、将来に向けた新しい試験方法とテクノロジーを導入しようとしています。

DLRは、Simcenter SCADAS Mobileの俊敏性とSimcenter TestLabの柔軟性を活用することで、航空宇宙分野で、つまり地球の大気と宇宙空間の境界であるカーマンラインの両側にある構造物について、迅速で効果的、かつ信頼性の高い試験を行うための道筋をつけることに成功しました。

Sinske氏は次のように述べました。「このようなプロジェクトが、今後も多くあることを願っています。しっかりしたプロセスと計画に加え、強力な試験ツールをすぐに利用できるため、ミスが減り、結果がすぐに出ました。」

Simcenter TestLabは、機能を柔軟にカスタマイズできる点が、特に今回のような大規模な試験に適しています。
Julian Sinske氏, 構造ダイナミクス試験リーダー, DLR