ユーザー事例

英国のスタートアップ企業Cox Marine、デジタライゼーションによって船外機業界に革命を起こす準備を完了

Xceleratorポートフォリオでコストを削減し、開発期間を短縮

Cox Marine

英国に拠点を置くCox Powertrainは、世界をリードする革新的なエンジニアリング企業です。全世界向けおよび複数市場向けのディーゼル船外機を開発しています。Cox Powertrainは、高出力、高性能、高耐久性を誇る、船舶用に一から構築した全く新しいディーゼル船外機シリーズを初めて市場に送り出した会社です。販売代理店やディーラーのグローバル・ネットワークを擁し、殻を破って船舶業界をリードする販売およびサポート・サービスを提供します。設立当初から、「象徴的なエンジン・ブランドを創造して、船舶市場に革命をもたらす全く新しいコンセプトのディーゼル・エンジンを提供すること」を使命としてきました。

本社:
ショアハム・バイ・シー, United Kingdom
製品:
NX, Simcenter 3D Solutions, Teamcenter
業種:
造船 / 洋上プラント

共有

私たちは、乗用車のエンジンのように小さくて軽く、同時に大型トラックのエンジンのように強くて頑丈な製品を開発する必要がありました。ソフトウェアは、どのように構造を設計、最適化すればよいかを知るうえで大きな役割を果たします。考慮すべき要素は多数あります。Cox Marineにとってデジタライゼーションは、他社に先駆ける大きなチャンスです。
Joel Reid氏, グローバル・セールス・ディレクター, Cox Marine

船外機市場の流れを変える

高出力、低燃費、クリーンなV8ディーゼル船外機は、市場の流れを変えるほどの大きなメリットをもたらします。これは、ノルウェーのフィヨルドで鮭養殖を営む人々や、ゾディアック・ボートで通勤しているモルディブの島民にも明らかでしょう。Joel Reid氏にとって、このメリットは最重要事項です。

Reid氏は、英国ブライトン近郊のショアハム・バイ・シーに拠点を置く英国のスタートアップ企業、Cox Marineのグローバル・セールス・ディレクターです。真の改善を追求するCox Marineは、ビジネス・チャンスを逃さず捉え、迅速に行動する方法を熟知しています。それにより生まれたのが最初の製品、CXO300船外機です。CXO300船外機は、多彩な機能を備えつつ、業界の他の大半の船外機と比べて25%ほど燃費が良く、クリーンな製品です。

船舶産業向けに設計されたCXO300は、2020年5月下旬に生産を開始しています。CXO300は、市場で最もパワフルな300馬力の高性能ディーゼル船外機の1つであり、同等機種と比べて3倍の寿命を約束します。そして、Cox Marineはさらなるアイデアを用意しています。

Reid氏は言います。「私たちは製品を開発しているのではなくビジネスを開発しているのだ、というのがCEO、Tim Routsisの口癖です。そして、これが私たちが直面している最大の課題です。」

Cox Marineは、船舶専用エンジンだけを提供するつもりはなかったのは明らかです。100か国にわたる、200のディーラーと販売代理店からなるグローバル・サービス・ネットワークも構築しました。加えて「船外機を再発明したのだから、サービスモデルも再発明できるのではないか」と考え、エンジン性能の統計データ、収益の確保、リアルタイムの保守情報、その他の予測診断など、クラウドベースのデータ解析サービスを含むグローバル・サービス/カスタマーケア基準を再定義することを目指しています。

Reid氏は言います。「さらに大規模で包括的な組織を構築し、ディーゼル船外機を製品として開発するだけでなく、グローバルな需要、グローバルなサービスと大量生産を管理できる体制を築くことができました。」

Changing the game for outboard engines

ディーゼルという選択

今の時代にディーゼルを意識して選ぶというのは、不思議に思われるかもしれません。しかし高性能ディーゼルは、船舶コミュニティに数多くのメリットをもたらします。第1に、従来の2ストローク船外機で必要だった「正しい混合比率でエンジンオイルとガソリンを混合する」という、負担が大きく面倒な作業がありません。第2に、ディーゼルはガソリンよりも安価で入手しやすく、燃焼性がはるかに低いという特徴があります。さらにディーゼルは燃費が良いので、時間当たりの使用率が高く価格に敏感なオペレーター (ノルウェーの養殖業者や、毎日作業員を往復輸送するオフショアリグ (移動式海洋掘削装置) など) には、大きなメリットがあります。

Reid氏は次のように述べています。「当社のエンジンは、船内ディーゼル・エンジンの燃費の良さと船外機のリスクの低さを兼ね備えています。」「ダウンタイムは、多くのお客様にとって非常に重要なポイントです。ダウンしている間は利益を上げられません。ディーゼル・エンジンは信頼できるエンジンです。万が一の場合は、船外機やトランスミッションを交換することも可能です。船内機と比べてはるかに修理しやすくなっています。そのため、当社のディーゼル船外機のコンセプトは、幅広い層にアピールできます。300馬力での高速運航が必要な人が、当社の製品を欲しがらないとは思えません。」

The choice for diesel

正しく設計する

商業的な話は別として、船舶市場向けの特注横型V8エンジンを構築するには、エンジニアリングに関しても高いレベルが要求されます。Cox Marineは、全身全霊を注いで技術の卓越性を追求しています。2007年にモータースポーツ・レーシング・エンジニアのDavid Cox氏が、フォーミュラ・ワン® (F1) の技術を使った軽量ディーゼル船外機の開発のアイデアを思いついたのがすべての始まりでした。Charles Good氏が会長として加わり、翌年にこのアイデアはディーゼル船外機市場に展開されました。2010年に最初のコンセプト・エンジンを起動させたとき、Cox Marineはまだ4、5人の非常に小さなチームでした。その後数年にわたり、Ricardoとのパートナーシップのもと、エンジンのアルファ版、ベータ版の開発に取り組みました。2014年には、Cosworthの元幹部で、レースの関係者でもある現CEOのTim Routsis氏が入社し、グローバル・プレイヤーとしてCox Marineを市場に売り出し始めました。

それから5年、船舶、自動車、モーター・スポーツ、航空など、あらゆる分野のエンジニアや専門家がチームに加わりました。皆が共有していたのは「高速エンジンへの情熱」と「Cox Marineは船舶産業をより良い産業へと変えられる、という信念」です。

この情熱と信念を高性能製品へと具現化するには多くの技術的な課題があり、それらに正しく対応することが極めて重要でした。

Reid氏は次のように述べています。「私たちは、乗用車のエンジンのように小さくて軽く、同時に大型トラックのエンジンのように強くて頑丈な製品を開発する必要がありました。ソフトウェアは、どのように構造を設計、最適化すればよいかを知るうえで大きな役割を果たします。考慮すべき要素は多数あります。 Cox Marineにとってデジタライゼーションは、他社に先駆ける大きなチャンスです。」

Designing it right

市場の流れを変える: デジタライゼーション

デジタライゼーションは正に、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのツールが活躍する領域です。具体的にはチームは、エンド・ツー・エンドの統合を実現するTeamcenter®ソフトウェア、シームレスな設計機能を備えたNX™ソフトウェア、包括的なデジタルツインと性能シミュレーションを提供するSimcenter™ソフトウェアなど、Xceleratorポートフォリオのデジタライゼーション・ツールを最大限に活用しています。

Cox MarineのIT責任者、Tony Ferrier氏は次のように説明します。「当社のスタッフの大多数がシーメンスのツールを使っています。Teamcenterの統合フレームワークも使用して、シーメンスのプラットフォームを当社のERPソリューションに統合しています。Teamcenterは、ほとんどの社員が使っており、当社のビジネスの基盤です。設計インフラがすべて入っており、NXシステムとも連携しています。すべてのドキュメント、すべての部品表がTeamcenterで管理されています。この情報が、設計・エンジニアリングから製造工程・生産設備までのあらゆるプロセスを動かしています。」

チャネル・パートナーが参加: OnePLM

プロセス全体を立ち上げることは、一朝一夕にできることではありませんでした。Cox Marineは、適切なツールを適切なタイミングで導入し、デジタル・バックボーンとエコシステムを同社のERPと生産ソリューションへと正しく連携させるため、シーメンスの有力なSmart Expert Partnerでありソリューション・パートナーでもあるEmixa Industry Solutionsに支援を求めました。

Ferrier氏は次のように語っています。「当社のITシステムは、小さなスタートアップ企業にしては非常に複雑ですが、会社の成長に合わせて拡張可能です。インフラに大きな調整を加える必要はありません。将来的に必要であれば、1週間あたりのエンジン生産台数を数十から数千へと増やすことも可能です。」

OnePLMのエキスパートが定期的に現場に入り、「Teamcenter、NX、Simcenterが高速で稼働し、拡大するCox Marineインフラに適応していること」を確認しています。

Enter the channel partner: OnePLM

安定性とシームレスな統合: Cox Marine設計チームのためのTeamcenterとNX

Cox Marineは、ソフトウェアの導入と設計のプロセスを並行して進めることで、成長軌道に乗りました。幸いなことに、主任エンジニアのJulian West氏が率いる設計チームには、F1レース、モーター・スポーツ、航空宇宙などの専門家が揃っています。Cox Marineの誰もがそうであるように、彼らは高速エンジンの設計とエンジニアリングに情熱を傾けています。こうしたチームには、市場の一歩先を行くツールが必要です。チームのほぼ全員がNXを使ったことがありますが、特に設計の分野では、TeamcenterとNXの完全なバックボーンを導入することで、チームの作業の仕方が変わりました。

West氏はいいます。「当社は、部品番号が6,500にも上る大型船外機を扱っています。大きなアセンブリを開いたまま一日中ツールに任せて、クラッシュしたりフリーズしたりすることなく作業できることは、私たちにとって最大のメリットです。」

また、TeamcenterとNXのシームレスな統合も、設計チームから高く評価されています。West氏は言います。「目に見えない、というのがポイントです。チームメンバーは端末を立ち上げてTeamcenterとNXを起動し、必要なデータを開くだけで作業を始められます。」West氏は「シーメンスのツールを使えば部品表を完全かつ正確に維持できる」と評価しています。West氏は言います。

「当社のビジネス史上初めて、部品表のすべてのコンテンツを完全制御できるようになりました。数千もの部品からなる製品を人間のチームが構築する場合、人間は人間ですからミスは避けられません。変更管理などの高性能ツールを使うようになってから、こうしたミスの大半がなくなりました。」

デジタルツインへの信頼

多くのハイエンド・エンジニアリング環境と同様にCox Marineにも、設計チームとエンジニアリング・チームが切磋琢磨する空気があります。長年Simcenter™ Amesim™を愛用するEuan Freeman氏率いる高度エンジニアリング・チームは、CXO300の成功に大きな役割を果たしています。

デジタルツインで実現する可能性

Cox Marineのエンジニアリング・チームは、プロセスの早い段階に、Simcenter Amesimでデジタルツインの作成を開始しました。現在では、これはSimcenter AmesimおよびSimcenter 3Dソフトウェア・パッケージの協調シミュレーション・モデルへと進化しています。この高度なエンジニアリング・モデルが、あらゆる設計判断に欠かせないものとなっています。高度な性能予測により、エンジニアはフィージビリティ・スタディのコンセプトをすばやく試すことができます。部品をモデリングして、最も効果的かどうかを確認します。また、仮想でモデルを微調整して、設計変更が性能基準にどのような影響を及ぼすのかを確認することもできます。プロトタイプの問題のトラブルシューティングで、テストチームをサポートすることも可能です。

Cox Marineのシステム・エンジニアリング/流体解析担当、主任エンジニアであるFreeman氏は次のように述べています。「実物を構築したり3Dモデリングするのではなく、Simcenter Amesimを使ってシミュレーションできるのであれば、そうします。Simcenter Amesimは、解決策をすばやく導き出せる柔軟なツールです。Simcenter Amesimを使えば、数か月ではなく数時間から数日で、最初の解決策を得られます。」

CXO300は非常に複雑なシステムであり、エンジニアリング・チームの中心的な仕事は、エンジン性能、燃費目標、排ガスなどのバランスをとることです。スタートアップ企業にとって、最初のエンジンを市場に投入することは、コストだけでなく時間の課題でもあります。

Freeman氏は言います。「Simcenter Amesimを使えば、初回のビルドで不確実性の大半を取り除くことができます。初期段階に多くの作業を終わらせます。エンジンのバリエーションが24種類あっても、構築するのは1台だけで済みます。初期段階に作業を行うことで、数十万ポンドもの節約になります。当社にとって、これは開発期間を数か月短縮することと同等の価値があります。」

次の段階

設計者とエンジニアが次の製品のリリースに向けて作業を開始し、テストチームが水上で最終性能を微調整するなか、Cox Marineの誰もが、ショアハム・バイ・シーの新工場から最初のCXO300船外機が出荷されたことに胸を躍らせました。

Reid氏は次のように語っています。「高性能で燃費の良いディーゼル船外機こそが未来の船外機である、と納得していただけると思います。私たち全員がこの目標に向かって突き進みます。私たちは長期的な視野に立ち、市場を変革しようとしています。単一の製品で市場を変革するのではありません。「何十年も続くサービス」へとコミットすることで、市場を変えていきます。それが当社のユニークなところです。」

Simcenter Amesimを使えば、初回のビルドで不確実性の大半を取り除くことができます。初期段階に多くの作業を終わらせます。エンジンのバリエーションが24種類あっても、構築するのは1台だけで済みます。初期段階に作業を行うことで、数十万ポンドもの節約になります。当社にとって、これは開発期間を数か月短縮することと同等の価値があります。
Euan Freeman氏, システム・エンジニアリング/流体解析担当、主席エンジニア, Cox Marine