NX、Fibersim、Simcenterを使用してエンジニアの工数を66%削減し、生産性を向上させたBye Aerospace
Bye Aerospaceは、飛行訓練用の軽飛行機をはじめとする電気飛行機の設計と製造を手掛けています。また、構造システムと機構システムを開発して統合するとともに、設計の空力性能を改善して、大幅なコストメリットとパフォーマンスを強化した製品を開発しています。
George Bye氏が初めて飛行機に乗ったのは、8歳のとき母親に連れられて乗ったパイパー・カブ (Piper Cub) でした。それ以来、飛行機に夢中になっています。最初はアメリカ空軍のパイロットおよびトレーナーとして、次に航空宇宙エンジニアおよび教師として、そして現在はBye Aerospace (Bye) の最高経営責任者 (CEO) 兼創設者として、航空の過去と未来の架け橋になることを目標に前進し続けています。
「電気飛行機に破壊的な変化をもたらし、新たな可能性を開いているのは、推進システムです。10~20年前から現在に至るまでの電気モーターやバッテリーの進化があって初めて、運用コストが低く、CO2を排出せず、騒音のほとんどない、破壊的とも言える画期的な航空機を開発することができるようになりました。あらゆる変革をもたらしているのは推進システムです。」とBye氏は言います。
Bye Aerospaceでは現在、2つの電気飛行機プロジェクトがアメリカ連邦航空局 (FAA) の連邦規則集 (14 CFR Part 23) に基づいて認証プロセスを受けている最中です。このうち最初の1つが最も重要な2人乗りの訓練用飛行機「eFlyer 2」です。この2つのプロジェクトは、それぞれ販売準備の整った段階と、研究開発 (R&D) 段階とにあります。
Bye氏は「FAA認証は品質への入り口であり、安全への入り口です」と言います。チーフエンジニアのTom Bowen氏は次のように話します。「史上で初めて、当社の電気推進の航空機はFAAの認証プロセスを受けています。
いわば認証取得の最先端を行くパイオニア的存在です。当社は、電気飛行機の認証取得を目指す最初の企業ということもあり、FAAとは非常に協力的な関係を築いています。つまり、当社の航空機が連邦航空規則第23部 (FAR Part 23) の認証を受ける最初の電気飛行機です。そのため、FAAも技術について理解し、技術が規則・規制とどのように関連しているか、どのようにコンプライアンスが確保されているかを把握するために当社を頼りにしており、当社の航空機がFAAの規則に準拠していることを証明できるように後押ししています。」
eFlyer 2は、高度な空力性能、最先端技術、最新の航空電子機器を備えた完全複合材の飛行機です。部品点数が少ないうえに堅牢なシステムであるため、耐久性に優れた航空機となっています。
この航空機の魅力の一つは航続距離です。航続距離は重量の影響を直接受けるため、複合材の使用が重要な戦略です。Bye Aerospaceの構造部門は、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのいくつかのソリューション、特にFibersim™とNX™を使用して開発を順調に進めることができました。Fibersimは、複合材の機体の構造健全性を最適化するために使用し、NXは飛行機の外形を開発するのに使用します。Fibersimを使って、複合材の層を外側から内側に形成します。
そのほか、製品データおよびエンドツーエンドの管理にはTeamcenter®、数値流体力学 (CFD) にはSimcenter™ STAR-CCM+™、解析、テスト、認証にはSimcenter 3Dソフトウェア、ワイヤー・ハーネスとレイアウトの設計にはCapital™を使用しています。ソフトウェア、ハードウェア、サービスを包括したSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォームに含まれるこれら5つの製品を使用することで、Bye Aerospaceはエンドツーエンドのシームレスなプロセスを築いています。
シニア・メカニカル・システム・エンジニアのParijaat Malik氏は次のように説明します。「ほかのCADシステムではなくNXを使用する理由は、どの製品よりも設計から解析への移行がシームレスなため、より多くの時間を設計の変更・改善に費やせる点です。いくつかの変更を加えては、その変更に関連する設計のみを解析できるため、必要な変更だけを効率よく実施することができます。また、NXの最大の利点の1つはWAVEリンクです。この機能により、ほかのどのCADソフトウェアよりも強力にアセンブリをパラメーター化することができます。」
Bowen氏は次のように説明します。「eFlyerファミリーの飛行機は、eFlyer 2から始まります。シーメンスのソフトウェアを使ってeFlyer 2を定義するために払ってきた努力はすべて今後の製品の基盤になります。機体モデルを変更する際の典型的な手順は「Tear-up (切り捨て)」フェーズと呼ばれるもので、今後のモデルに合わないものを特定して切り捨ててから設計をやり直すというものです。」
「シーメンスのソフトウェアを使うと、現行の設計を次期設計に、さらにはその先の設計に、ゴムのように柔軟にモーフィング (変形) させることができます。利点は、物理的な変更やモデリングの変更だけではありません。信頼できる唯一の情報源となるモデルに、解析リソースも関連付けられている点です。そのため、モデルを変更すると、機体とともに、関連するすべての要素が同時に変更されます。」
Malik氏は言います。「Bye Aerospaceが設計プロセスを機敏に進めているのは、WAVEリンクのおかげです。トップダウン構造で、1つの単純な形状を作成し、それをいくつかの部位に分解して、それぞれの設計担当者に割り当てることで、細部を追加してもらいます。また、WAVEリンクのおかげで、大勢の会議を開くことなく、設計変更をほかの設計者に簡単に伝達することができます。ほかの担当者の変更に対応するために多くの箇所を変更する必要もなくなります。アセンブリを開けば、そのアセンブリに関連付けられているものが分かり、相手側で加えられた変更が自分の担当する設計にどのように影響するかを一目で確認できます。そのため、必要な変更を加えて、設計全体をそれに合わせて調整できます。」
どの飛行機も概念設計から始まります。どのような飛行機にすべきか、どのような性能を備えるべきか、まずは航空機メーカーが抱いているアイデアを形にします。それに基づいて、機内システムの設計を開始します。
Malik氏は説明します。「シーメンスのソフトウェアは、ここで重要な役割を果たします。当社はNXを使って、単純化した最適な線で航空機の形状を表現しながら概念設計を開始します。これを徐々に詳細化し、使用する複合材と、航空機構造にかかる応力に基づいて、Fibersimでレイアウトを作成します。そこで航空機構造に含める複合材の層や層の順番を細かく定義します。」
「また、FibersimのデータをNXに取り込んで、航空機構造に必要な厚さや、システムを取り付ける適切な面を特定します。」
設計およびエンジニアリング担当ディレクターのJim Forrester氏は次のように話します。「eFlyer 2は、変更を念頭に置いて設計しています。NXのWAVE機能によって可能になったトップダウン型の設計プロセスを用いることで、モデルを更新するだけですべての変更を反映させることができます。eFlyer 2をベースに、eFlyer 4に必要な空力形状に変更することで、eFlyer 2をeFlyer 4にモーフィングできます。これに要する時間は1週間ほどです。桁違いの時間節約になります。」
「より短い時間で同じ回数の設計反復を行うことも、同じ時間でより多く設計反復を行うこともできます。Bye Aerospaceでは、その2つを組み合わせています。製品開発時間を短縮すると同時に、より多くの設計反復を行っています。結果として、適切な航空機をより迅速に市場投入することができます。」
Bowen 氏は話します。「一般的なプログラムでは、設計反復回数は2回がせいぜいです。うまくいけば3回できることもあるでしょう。一方、シーメンスのソリューションを使うと、設計反復を毎週繰り返すことができるため、99%あるいは100%の要件を満たしたソリューションに到達するまで設計反復を続けることができます。これこそシーメンスのソフトウェアがすべて統合されていることによる最大のメリットです。」
「われわれのエンジニアリング・チームは20名です。ほかの企業では50~60名いるでしょう。この人数で対応できるのは、シーメンスのソフトウェアが高度に統合されていて、従来のような分野ごとの専任者が必要ないからです。」(Bowen 氏)
「システム・エンジニアにとって、シーメンスのソフトウェアの最大の利点は、設計のコラボレーションを強化できる点だと感じています。」とParijaat Malik氏は言います。
「現在使用しているNX CADソフトウェアは特に、テクノロジー・イネーブラーだと言えます。そのおかげでBye Aerospaceは常に業界の最先端を走り続けることができます。NX CADのおかげで、航空機設計のあらゆる側面を捉えられるようになりました。シーメンスのソフトウェアは、eFlyer 2のモデルを正確に表現することで、次期モデルへの移行もしやすくしています。」こう話すのはBye氏です。