シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションで船舶関連機器メーカーのテスト時間を最大20%短縮
Brabant Engineeringは、オランダを代表する船舶用スタビライザー・メーカーであるDMS HollandのMagnus Masterの設計と開発を支援しています。
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リラックスするはずの船旅を台無しにするのは、不安定な船舶です。波が荒いと船だけでなく所持品にも被害が及ぶ可能性があります。釣りやスキューバ・ダイビング、ちょっとした航海など、いずれの場合も安全な海の旅に欠かせないのが船舶の安定性です。そこで重責を果たすのが船舶用スタビライザーです。
経験豊富な船乗りであれば安全な海の旅には海洋の安定が不可欠であることを熟知しています。ただし、すべてのスタビライザー・システムが完璧という訳ではありません。実際、従来のフィン型のスタビライザーでは、低速航行における横揺れの軽減が不十分であるうえ、フィンが突き出ていることが問題となり、ユーザーの評価はあまり良くありませんでした。低速航行での安定性は重要です。また、フィンが突き出ていると浅瀬で破損する可能性があります。新しいスタビライザーを装着して航海に出たとたんに壊れたなど、ユーザーにとっては最悪の事態です。製品の故障を受容するユーザーはほぼいないことを考えると、製品に1度でも何か問題が起きれば、ユーザーはすぐに離れていくと考えるべきです。一貫した品質を出せるスタビライザー・メーカーだけが生き残れるのです。
オランダのセルトーヘンボスを拠点とするDMS Hollandは、最長30メートルのヨットの運動制御を専門とする国際的な企業です。DMS Hollandの目標は、ヨットの横揺れを軽減して、船内の快適さを向上し、船酔いを軽減して安全性を高めることです。DMS Hollandの船舶用スタビライザー・システムが市場において他社と差別化を図っているのは、安定状態を維持するその速度にあります。同社のスタビライザー・システムはマグナス効果を利用しています。マグナス効果とは、回転シリンダーがその主な運動方向から逸れて安定状態に達する現象です。従来のスタビライザーでは、ヨットがかなり高速で航行しなければ安定状態に達しませんでしたが、同社のスタビライザーはわずか速度3~12ノットで安定状態を得られます。デザインが小型化し、低速での横揺れ低減機能がより優れているという点が、従来のフィン型スタビライザー・システムとは異なります。
オランダのベストを拠点とする機械エンジニアリング企業であるBrabant Engineeringは、DMS HollandのMagnus Masterの設計と開発を担っています。Magnus Masterは最新のローター安定化技術を採用しており、破損しにくい格納式のローターが特長です。Brabant Engineeringは、DMS Hollandが描く先進的な製品の開発に必要な設計知識をDMS Hollandに提供しています。
「当社は、船内における最高水準の安定性、快適性、安全性を実現したいと考えていました。全体として、海上でより快適で楽に過ごせるようになることを目指しています。このビジョンを実現するには、Brabant Engineeringのような優秀なパートナーに、当社のスタビライザーの機械エンジニアリングを支援してもらう必要があったのです」と、DMS Hollandのセールスおよびマーケティング・ディレクター、Patrick Noor氏は説明します。
Brabant Engineeringは、シーメンスのSimcenter™ 3Dが提供する画期的な設計アプリケーションを使って、プロジェクトを正確に設計・シミュレーションしています。
Brabant Engineeringのリード・エンジニア、Bertie Tilmans氏は次のように話します。「すべての材料特性がソフトウェア・デザインに組み込まれているため、Simcenter 3Dで製品の挙動や耐久性を解析することが可能です。正確な材料特性が得られ、複数の設計案をシームレスに統合できることで、製品開発における貴重な時間を節約できます」
Brabant Engineeringは、Simcenter 3Dを使ってマグナス効果を正確にシミュレーションした結果、Magnus Masterが毎分1,100回転を達成できることを実証しました。「Simcenter 3Dを7年間使用していますが、汎用性の高さが非常に気に入っています。この汎用性の高さから、製品設計のさまざまな挙動を予測して、最も効果的な解決策を見つけられます」と、Tilmans氏は語ります。
Brabant Engineeringは、シーメンスのCAD (コンピューター支援設計) ソフトウェアであるNX™ ソフトウェアを適切に活用しました。NX CADの強力で柔軟な機能を利用したことで、画期的な製品を設計するためのコストと時間を大幅に削減できました。設計に対応したNX CADと性能予測に対応したSimcenter 3Dを組み合わせることで、製品のより迅速かつ効率的な市場投入が可能です。
製品のサイズにもよりますが、試作品の制作には製品価格よりはるかに高いコストがかかることがあります。しかし、シミュレーションを実施することで、プロジェクトの早い段階で時間とコストを大幅に削減できます。
Brabant Engineeringは、コストのかかる試作をやめてSimcenter 3Dを活用したところ、テストおよび認証にかかる時間を全体的に10~20%ほど短縮できました。テストサイクルを短縮し、結果をすぐに得られるようになりました。
Brabant Engineeringのプロジェクト・リーダー、Rikkert Gerits氏は、Simcenter 3Dを使ったことで試作の回数が劇的に減ったことを認めています。
「3Dシミュレーション・ツールを使うと、試作品を作成する必要がなくなり、相当な時間とコストの節約になります。当社は、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューション・パートナーであるEmixa Industry Solutionsを通じ、SimcenterやNX CAD、Teamcenterなどのシーメンス製品を複数使用しています。ソフトウェアに関する質問は何でもcards PLM Solutionsに問い合わせています。」と話すGerits氏。
CADシステムを使うことで、さまざまな製品コンポーネントをユーザー同士で容易に交換できます。また、CADおよびCAE (コンピューター支援エンジニアリング) システムは、複数の新たな設計案を素早く作成して性能を比較検討するためのツールも備えています。Gerits氏によると、これらのシミュレーション・システムによって迅速な仮想プロトタイピングが可能になるということです。製品をリアルタイムにシミュレーションすることで、特定の条件下における製品の耐久性をより正確に予測することができます。物理的な試作品を設計、製造、テストして、データを記録する方法に比べてコストと時間の大幅な削減になります。
Brabant Engineeringはシミュレーションを活用して不具合の発生を防ぐことで、従来の方法より総コストを約10~15%削減できていると試算しています。
Brabant Engineeringのマネージング・ディレクター、Sjef van de Laak氏は、シーメンスのソリューションが同社のエンジニアリング設計プロセスに不可欠だと話します。「シーメンスは当社が使用しているソフトウェアのサプライヤーです。そして、そのソフトウェアを熟知し、われわれのシミュレーションのニーズを理解してサポートしてくれるEmixa Industry Solutionsの存在も非常に重要です」
Emixa Industry Solutionsとの開かれたコミュニケーションなくして、当社の製品開発は成り立ちません。だからこそ、Brabant EngineeringはEmixa Industry Solutionsと絶えず対話を続けながら作業を進めています。
Magnus Masterは、すでにかなりの注目を集めています。オランダでは2015年の発表以来、Magnus Masterは品質の高さで知られるようになり、DMS Hollandをグローバル企業へと成長させました。
Brabant EngineeringとDMS Holland、そしてシーメンスの力の結集は、協力関係から画期的なイノベーションが生まれることを示した非常に良い例だと言えます。