AZLはSimcenterを導入して車両開発の早期からシステムを最適化...
AZLは、テストベンチを開発および製造し、車両やシステム、コンポーネントの測定解析や寸法作成機能をすべて1つのソースから提供します。同社の成功は、長期的な投資や一流の試験エンジニアリング、従業員の技術教育のうえに成り立っています。
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1999年から自動車業界向けに音響テストベンチの製造や設計コンサルティングをしているドイツのAZLは、電気自動車 (EV) と自動運転車 (AV) の開発に常に課題が伴うことを認識しています。騒音、振動、ハーシュネス (NVH) の新たな開発ニーズに対処するために、AZLはコンポーネントベースの伝達経路解析 (TPA) やモデルベース・システムテスト (MBST) など革新的な技術を実装してきました。
AZLはこうした技術を駆使して、新たなNVHの課題に対処する特殊なテストベンチを構築して革新的な試験手順を顧客に提供し、開発早期にAVとEVのNVH性能を最適化する方法について知見を見出しています。
AZL-Technology Center GmbH (以下AZL) のマネージングディレクター、Andreas Schilp氏は、AVとEVの開発には主に3つの課題と可能性があると語ります。
まず、EVでは高周波の固体伝搬ノイズがますます重要になりつつあるため、この周波数範囲でブッシュやマウントを適切な剛性特性で開発する必要があり、このニーズに対応できる新しいテストベンチの開発が求められています。
もう1つは、低速走行時に周囲の音を遮蔽するという非常に重要な役割を果たしていた内燃エンジンが姿を消すにつれて、固体伝搬ノイズがより顕著になってきたことです。そのため、高品質のサスペンション装置の開発が最重要課題の1つとなりました。AZLは、ロードノイズに対処するために適切なテストベンチの開発に積極的に取り組んでおり、シミュレーションモデルの実証に必要なデータの取得に努めています。また、車両全体の試験だけでなく、シャーシダイナモ上でフロントまたはリアサスペンション装置だけを個別に試験するなど、サスペンション装置の個別試験も開発しています。
最後にAZLは、コンポーネントやシステムの試験結果を製品デジタル・ツインの一部としてシミュレーション環境に取り込む方法も模索しています。高精度のデジタル・ツインを構築するには、正確なデータをシミュレーションモデルに使用する必要があります。
デジタル・ツインのコンセプトは業界の動きと密接に関わっています。物理試験を完成車両に対して実施するのではなく、もっと早い段階からシステムレベルとコンポーネントレベルで試験します。この方法は、開発プロセスの見直しと革新を迫られるAV/EVメーカーに影響を与え、車両の開発サイクルを大幅に短縮させます。
Schilp氏は次のように話します。「EV開発では、車両レベルの開発を減らしてシステムおよびコンポーネントレベルの開発に力を注ぐように努めています。また、認証プロセスも新しくなったため、開発の最適化でも同じくコンポーネントレベルに移行しています。」
シミュレーションモデルのセットアップから開発をスタートできれば理想的です。AZLは、綿密に定義された境界条件を使ってコンポーネントおよびシステムレベルのNVHを試験できる特別なテストベンチを開発しています。「テストベンチメーカーとして、お客様に明確な指針を示します。」とSchilp氏は話します。
テストベンチのデータを正確に取得するために、AZLはシーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter™ Testlab™ ソフトウェアを、各種センサーやデータインターフェースと互換性のあるSimcenter™ SCADASハードウェアと組み合わせて使用しています。
「Simcenterポートフォリオの独自性は、試験結果とシミュレーション結果を統合して、まったく同じ環境で直接比較できるようにしている点にあります。」Schilp氏はこのように話しています。
システムベースの開発が主流となるなか、コンポーネントベースTPA (伝達経路解析) という新たな技術が生まれました。TPAは、システムの特性評価としてBlocked Force (およびモーメント) の評価を含みます。
Schilp氏は次のように説明します。「Blocked Forceが開発において重要なのは、各システムを相互に切り離せるからです。相互作用するフォースとモーメントの観点からシステムを切り離す必要があります。こうした相互作用力は不変ではなく、アセンブリ全体の構成で変わりますが、Blocked Forceは各システムそれぞれの特性だけを評価します。」
後の統合に依存しないシステムの特性評価ができることで、自動車OEMとサプライヤーの関係にも新たな可能性がでてきます。
Schilp氏は次のように話します。「Blocked Force手法では、コンポーネントを完成車に統合した後、コンポーネントのサプライヤーが完成車に対する責任を負うことはありません。サプライヤーの責任範囲をコンポーネントに限定し、開発したコンポーネントを直接試験してもらっています。」
AZLは、Blocked Forceを正確に特定できる適切なテストベンチを顧客が開発できるように支援します。こうしたすべての取り組みは、車両の仮想組み立て実現という最終目標達成に向けた重要なステップです。
Schilp氏は続けます。「Blocked Forcesから相互作用力を計算できる機能は、車両の仮想組み立て実現に欠かせない重要な要素です。これによって、各システムのBlocked Forceを含むシミュレーション結果または試験結果を取得でき、それらをまとめて仮想車両の性能を予測できるようになります。適切な混合シミュレーションプロセスと信頼性の高い試験結果をシステムレベルで得られれば、ロバストなシステムを最大500ヘルツの低周波数帯で実現できると信じています。それらを統合すれば、高い予測精度の仮想プロトタイプを実現できるでしょう。」
コンポーネントベースのTPAプロセスは、Simcenter Testlabソフトウェアとデータ取得システムSimcenter SCADASで完全にサポートされています。このシステムは、動作データと周波数応答関数 (FRF) データの最適な測定品質を統合したソリューションとワークフロー指向の解析ツールを提供します。これによってBlocked Forceを特定し、それを相互作用力に変換することで、ターゲットの予測を非常に迅速かつ効率的に行うことができます。
コンポーネントベースのTPAデータのような要求の厳格なデータでは、一貫性が非常に重要なため、大量のデータセットを1クリックで解釈できるマトリクスヒートマップなど、生産性を向上させる機能が追加されています。見ただけでデータ品質を瞬時に検証できて、各コンポーネントの振動音響動作に関する深い知見を得ることができます。また、方向エラーや相互性の問題などデータの一貫性に関する問題を検証するための多くの機能が統合されています。
Simcenter Testlabは、コンポーネントベースのTPAとBlocked Forceから相互作用力への変換に完全対応しています。
AZLは、路面の変更が可能なシャーシダイナモをカスタマイズ開発して最適な試験環境を提供します。そのほか、サスペンションとタイヤ力を試験するAZLの試験リグによって、車両全体、フロントおよびリアサスペンション、そしてタイヤとリムの組み合わせを同一の励振力で試験することができます。これにより、再現性の高い環境でV字モデルの開発手法を実現できます。
測定データの最適なデータベースを基に、試験で実証したモデルによって、車両の仮想開発に向けたロバストな環境を実現します。