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ユーザー事例

Simcenter STAR-CCM+の成功事例 - フロント・ウイング開発プロジェクトの納期を遵守できるようにSpark Racing Technologyを支援した革新的な企業

シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションにより、FIAフォーミュラEプロジェクト成功のためにAOTECH社が必要とする空気力学の専門知識を提供

Simcenter STAR-CCM+の成功事例 - フロント・ウイング開発プロジェクトの納期を遵守できるようにSpark Racing Technologyを支援した革新的な企業

AOTECH

AOTECH社は、自動車業界向けにハイテク製品とサービスを提供しています。メーカー、レース・チーム、エンジニア、ドライバーそれぞれの経験、ツール、人材を結集しなければ、野心的なプロジェクトを完遂することはできません。

http://www.aotech.fr
本社:
エソンヌ県テジュリー, France
製品:
Simcenter Products, Simcenter STAR-CCM+
業種:
自動車 / 輸送機器

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チームの連携

モータースポーツは、商用車のハイテク性能を証明する場です。電気自動車は、都市や高速道路におけるパーソナルモビリティの未来になる可能性を秘めており、自動車レースが高性能でハイテクな電気フォーミュラカーに移行するのは自然な流れです。この流れを受けて、国際自動車連盟 (FIA) は2012年にフォーミュラE選手権を設立し、2014年に初開催しました。

フォーミュラEレースの未来的な設計は、電気自動車技術の潜在的な可能性と完璧に合致しています。同時に、電気レーシングカー設計における空力性能は、効率的でありながら、安全性と製造可能性の要件を満たす必要があります。

新しいフォーミュラEのレーシングカーの設計において、製造性、安全性、空力性能のすべてを兼ね備えるという課題に対処するには、どのようなチームと技術が必要でしょうか。おそらく、最先端のツールを備えた各専門分野のスペシャリストが密接な協力関係を築いたチームでしょう。

フロント・ウイングの新しい設計の考案

FIAはモータースポーツの統括組織です。FIAは、「世界中のすべての道路利用者のための安全で持続可能でアクセス可能なモビリティ」に重点を置いています。持続可能なモビリティの鍵となる技術が電気自動車です。事実、電気自動車はパーソナルモビリティの未来かもしれません。そしてFIAは、フォーミュラE選手権の第3シーズンに向けて、この未来の理念を具現化し、レーシングカー設計を刷新したいと考えていました。

フォーミュラEのレーシングカーを設計しているSpark Racing Technology社は、フロント・ウイングの新しい設計案を考案する必要がありました。前世代のレーシングカーに匹敵するか、それを上回る、優れた性能を発揮する未来的な設計を求めていました。しかも、第3シーズンのレース・チームへの納期から逆算すると、設計プロジェクトは2か月で完了させなければなりませんでした。

短納期スケジュールに対応するため、Spark Racing Technology社はAOTECH社の空気力学の専門家に相談しました。AOTECH社とSpark Racing Technology社のメンバーはそれぞれの分野で秀でた専門家集団であり、既に以前のプロジェクトでも密接な協力関係を築いていました。

このスケジュールを考えると、設計の更新、シミュレーション、解析、設計変更のフィードバックを統合的に進める必要がありました。Spark Racing Technology社とAOTECH社のチームは、設計データ、解析結果、変更提案の転送を円滑に進められるようなCAD (コンピューター支援設計)/シミュレーション・プロセスを作り上げました。

レーシング業界の顧客サービス

Christophe Perrin氏はAOTECH社の空力力学マネージャーであり、若い頃からモータースポーツに携わってきました。自動車工学や航空宇宙工学の工学研究で知られるフランスの工科大学ESTACAで空気力学を修めました。2006年にはARTグランプリ・チームの一員となり、フォーミュラ3レーシングカーを設計し、現在はARTグランプリの空力設計を担当しています。

ARTグランプリ・チームは、長年の成功実績を誇ります。フォーミュラ3ユーロ・シリーズでは、ARTグランプリ・チームは2004年から2009年にかけてチームとドライバーのチャンピオンシップで無敗でした。ARTグランプリの空気力学チームは、2008年に数値流体力学 (CFD) ソフトウェアを解析ツールキットに追加しました。

2010年末にAOTECH社が設立されると、Perrin氏はAOTECH社に移籍しました。AOTECH社は、モータースポーツと外部空気力学研究のためのシミュレーターを専門としています。AOTECH社のレーシング・シミュレーターは、ARTグランプリのほかにも、ル・マン24時間レースに初めて参加するドライバーのトレーニング用に使用されています。同社は、商用自動車メーカーやタイヤメーカーをはじめ、レーシング業界の多くの顧客企業と共同で空気力学研究に取り組んでいます。

レーシング業界の顧客サービス

さまざまな目標の達成

AOTECH社は創業以来、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSimcenter STAR-CCM+™ソフトウェアを使用して外部空力解析を行ってきました。Simcenter™ポートフォリオの一部であるSimcenter STAR-CCM+は、AOTECH社の強みの1つである外部CFD解析の円滑なワークフローを提供します。

フォーミュラ3と同様、フォーミュラEの空力設計目標は、フォーミュラ1のものとは違います。F1™レースでは、設計上の最優先事項はダウンフォースです。フォーミュラEの空力設計は、空気抵抗とダウンフォースの比率である空力効率を高めなければなりません。

フォーミュラEレーシングカーの新しい設計では、空力性能が重視されます。ダウンフォースと抗力の両方に対するウィングの性能が非常に重要な問題でした。スタイルの斬新さを求めるあまり、空力性能が低下しないよう注意を払う必要がありました。このプロジェクトで大きな課題は4つありました。

  • 時間: プロジェクトのスケジュールの短縮

  • コラボレーション: 設計と空気力学の分野の専門家同士のチームワーク

  • 設計: 空力性能とスタイルのバランス

  • 製造可能性と安全性: 製造と耐久性の実現

成功の鍵となる3つの柱

これらの課題に直面したことがSpark Racing Technology社とAOTECH社のコラボレーションの出発点となりました。両社は設計作業を円滑化する工程を構築しました。これにより、Spark Racing Technology社の設計者からCADモデリング、Simcenter STAR-CCM+による表面洗浄とメッシュ作成、シミュレーション、そして最後に後処理解析へとシームレスに流れるようになりました。フロント・ウイングのシミュレーションには2億個のセルが含まれており、空力シミュレーションがどうしても複雑化してしまいます。チームがモデルのクリーニング、準備、再メッシュを終えて次のシミュレーションを開始するまで半日を要していました。同社の128コア・クラスターを使用したSimcenter STAR-CCM+シミュレーションは、日を改めて実施されました。STAR-View+の無料スタンドアロンビューアでの後処理と解析に3時間かかりました。その後、両チームがシミュレーション結果を解析し、設計案への影響を評価しました。ワークフローが円滑に回り、高度な技術ツールセットが提供されたことで、設計変更に伴う改版作業に向けた最大の課題であるコラボレーションとコミュニケーションが実現しました。

AOTECHのチームは2015年末まで不眠不休で作業を続け、2016年2月にSpark Racing Technology社の設計案の解析を完了しました。次世代の設計は、製造可能性と安全性の要件に加えて、プロジェクトの審美性と性能の目標も達成しました。チームの専門知識、協力関係、円滑な技術工程が3つの柱であり、成功の土台です。FIAフォーミュラEレース・シリーズの第3シーズンに向けてレーシングカーの生産が開始され、納車に至りました。