ユーザー事例

自動車向け産業機械メーカー、Teamcenterを使用してエンジニアリング・サイクルタイムを30%短縮し、設計部品表 (EBOM) と製造部品表 (MBOM) をマッピング

ANGER MACHINING、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのソリューションを使用して、トランスファー・ラインの生産性を改善し、リードタイムを短縮

自動車向け産業機械メーカー、Teamcenterを使用してエンジニアリング・サイクルタイムを30%短縮し、設計部品表 (EBOM) と製造部品表 (MBOM) をマッピング

ANGER MACHINING

ANGER MACHININGは、自動車産業および関連する金属加工企業向けに、高い精度が要求されるシリアル部品の加工を行うトランスファー・センターの開発・製造を専門に行っています。1982年の創業以来、ドイツ、米国、日本に3つの子会社を持ち、数多くの販売サービス・パートナーを抱えて、世界市場での地位を確立することに成功しています。

http://www.anger-machining.com

本社:
トラウン, Austria
製品:
NX, Solid Edge, Teamcenter
業種:
産業機械

共有

シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX CAMをベースにした、加工工程の包括的なシミュレーションにより、お客様の効率性と工程の信頼性を向上させ、当社の競争力を大幅に改善することができました。
Dipl.-Ing.Roland Haas氏, 技術・研究開発責任者, ANGER MACHINING

ライフサイクル・コストを最小化

エンジンやトランスミッションなどの複雑な金属部品は従来、特定の加工工程 (旋盤、フライス、研削など) に特化した機械から次の機械へと、厳格な製造サイクルに沿って工作物を移送するトランスファー・ラインで生産されてきました。こうしたトランスファー・ラインにかかる膨大なコストは、部品に手を加えずに大量生産することで初めて削減することができます。トランスファー・ラインはスペース要件が厳しく、部品はステーション間を移送させるため、機械が出せる精度は制限されます。一方、一般的なマシニング・センターはどうしてもアイドルタイムが存在するため、通常は高い生産性を達成できません。また工具のスピンドルの形状は、さまざまな加工に対応するために妥協したものとなっており、精度が低下する原因の1つです。

ANGER MACHINING GmbH (以下ANGER) のトランスファー・センターは、トランスファー・ラインとマシニング・センターの利点を併せ持っています。1984年にANGERが発明した機械のコンセプトは、「スピンドルが部品へと移動する」のではなく、各作業に最適化されたさまざまな「スピンドルへと部品が移動」します。スピンドルはその部品専用にグループ化されて実装され、複数の加工工程を同時に行うことが可能です。こうして最適化し、1台の機械の中で部品を高速移動させることで、サイクルタイムの大幅な短縮が実現します。スペースを集中的に使えるため、従来のマシニング・センター2~8台をトランスファー・センター1台に置き換えることができ、設置面積や消費電力、メンテナンスの手間を最小限に抑えて、ライフサイクル・コストを削減できます。これが、世界の自動車産業でこの画期的な機械のコンセプトが確立している理由です。

Minimized lifecycle costs

生産性と柔軟性を両立

ANGERのゼネラル・マネージャー、Dietmar Bahn氏は次のように述べています。「イノベーション・サイクルがかつてないほど短くなり、最終製品の個別化が進むと、個々の部品の数が減り、生産ライフサイクルは短くなります。これは、特に自動車産業で新しい機械に投資しようとしている企業にとっては大きな課題です。」

そこでANGERは、中~大量生産に対応する柔軟性の高いトランスファー・センターの新シリーズを設計しました。このANGER HCXトランスファー・センターに、日本のお客様から、バルブボディの加工用として2台の注文が入りました。これらの機械のマルチ・スピンドル・ヘッドやタレット・リボルバー・ヘッドは、機械フレームに直接取り付けるのではなく、交換可能なキャリア・モジュールに取り付けられています。このモジュールと自動ツール・チェンジャー、ゼロポイント・クランプシステムにより、精度や加工速度を犠牲にすることなく、新しい部品に合わせて機械を容易に再構成できるため、成功したトランスファー・センター・テクノロジーと、最大の投資保護の利点の両方を活用することができます。

Productivity and flexibility combined

シミュレーションと現実

ANGERの技術・研究開発責任者、Roland Haas氏は次のように語っています。「2007年に現在のANGER HCXトランスファー・センター・シリーズを市場に投入すると、トランスファーの制御技術でも市場をリードすることができました。最大100個のツールチップから、わずか数ミリしか離れていない場所に稲妻のようなスピードで部品を動かし、大規模に並列加工オペレーションを行う場合、完全な仮想3D加工シミュレーションを実行することが不可欠です。これは衝突防止のためだけではありません。」

Simulation and reality

ソフトウェアを選ぶ決め手はデータの一貫性

仮想生産制御のためのソフトウェアは、単に機械や加工関連のオペレーションを簡素化し、快適で安全なプログラミング環境を提供することが目的でした。ANGERの機械の型破りな構造に適応でき、カスタム・プログラミングなしでコンピューター支援設計 (CAD) データを直接シミュレーションに取り込めるテクノロジーを選ぶ必要がありました。ANGERの機械は、長年にわたり、製品ライフサイクル管理 (PLM) のスペシャリスト、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのSolid Edge®を使用して包括的に設計されています。

Haas氏は次のように振り返ります。「データの完全な一貫性が重要です。当社のような長期投資をベースとする製品のビジネスでは、将来性のあるシステムと、信頼できるメーカーのサポートが決め手となります。他の5つのシステムと比較して、シーメンスのNX CAMソフトウェアを選びました。ソフトウエア・サプライヤーによるサポートは、機械キネマティクスの設計に至るまで、すべて当社の仕様に合わせて提供されました。包括的な生産シミュレーションを実行するために我々が行ったのは、基本の仮想マシンにSolid Edgeから契約の部品を追加することだけでした。」

Data consistency decisive for software choice

リアルタイム・シミュレーションにより、段取り替えと再構成にかかる時間を短縮

生産工程の包括的なシミュレーションを実行することで、効率的な製造工程を開発し、最適化された数値制御 (NC) プログラムと自動衝突検出を生成することができます。NXは、工程エンジニアリングと現場の産業機械のプログラミングの両方に使用できます。また、構想段階に販売部門が、顧客の要求した機能が実現することの根拠を示すために使うこともできます。

3D設計モデルと一貫したワークフロー管理を統合し、製品と工程の両方で、最適な意思決定のベースと、迅速な計画・計算結果を提供します。ANGER HCXシリーズでは、包括的な産業機械シミュレーションを使用することで、設計コストを20%低減し、契約の平均リードタイムを30%改善しました。

Real-time simulation reduces changeover and reconfiguration times

設計から軸までの一貫性

ANGERのエンジニアは、NX CAMを使用して3D設計モデルを入力し、部品を効果的に加工できるNCプログラムをすばやく作成できます。NX CAMを使用した統合型の産業機械シミュレーションにより、製造現場でエラーのない加工が実現します。ANGERの設計エンジニア、Markus Schürz氏は次のように語っています。「NX CAMの高度な産業機械シミュレーションは、段取り替えと工具の交換に革新的な技術を使用するANGER FLXBLマシンを正しくプログラミングするために不可欠です。複雑さを極めるために、マシンにはシーメンスのSINUMERIK 840D sl コントローラーと、SIMOTIONドライブ・テクノロジーが搭載されています。シーメンスのソフトウェアと装置により、設計から個々の軸までの完全なデータの一貫性が保証されます。」

Haas氏は言います。「シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX CAMを使用して加工工程を包括的にシミュレーションすることで、お客様の効率性と工程の信頼性を向上させることができました。NX CAMの導入で、当社の競争力も大幅に改善できました。」

Consistency from the design to the axes

Teamcenter - デジタル・ファクトリーへの重要なステップ

「複雑さを極める」は、同じくシーメンスのTeamcenter®ソフトウェアを全社に導入する原動力となった目標でもあります。Haas氏は次のように述べています。「Teamcenterの導入は、当社にとってデジタル・ファクトリーへの重要なステップとなりました。Teamcenterは、マシンと生産工程のつながりを可視化し、完全なデジタル・バリュー・チェーンを表現するのに役立っています。目に見える複雑さを軽減して、正しい判断をより早く、より確かな土台の上で行えるようにするため、Teamcenterを最も重要なソフトウェア・ツール (ERPシステムからSolid Edge CADソフトウェアまで) とリンクさせています。Teamcenterは、包括的なデジタル・バリュー・チェーンを表現するのに非常に役立っています。」

「例えば、Solid Edgeで作成した部品表を製造工程計画システムに渡し、そこで生産ニーズに合わせてデータを分離して、購買に回すという具合です。カスタム設計と販売注文処理業務が完全にシンクロしています。」とSchürz氏は言います。

約30名のユーザーがTeamcenterを使って、有効性が保証された共通のデータをもとに、提案書や資料の作成、ワークショップの作業を行っています。その結果、文書の検索や検証、増え続ける文書要件への対応に費やしていた労力が、以前よりもはるかに減りました。

Teamcenter – an important step toward the digital factory

Teamcenterで行った最初のプロジェクトは予定より早く完成

Teamcenterは、どの機械にどの部品が使われたかを簡単かつ一貫した方法で追跡できるだけでなく、既存の部品やアセンブリを推奨するため、企業は共通部品の使用を大幅に増やすことができます。

Schürz氏は言います。「Teamcenterを導入したときには、データをレビューして、慣れないやり方で調整し直さなければなりませんでした。しかし、これが大きく奏功し、Teamcenterで行った最初のプロジェクトである、オートマチック・トランスミッション用バルブブロックの複数加工に使用するANGER HCXトランスファー・センターを予定より大幅に早く完成させることができました。

Haas氏は次のようにも述べています。「データの一元管理は、グローバルにネットワーク化された未来のシステムの基礎となります。シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの標準は、自動車業界のお客様からはすでに最先端とみなされているため、シーメンスの標準を広く採用することは、ANGERにとって大きな意味があります。この成功の大きな要因は、ソフトウェアの技術特性もさることながら、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの販売パートナー、ACAM Systemautomation GmbHの問題解決技術と知識にあります。」

複雑さを極めるため、ANGERの機械には、シーメンスのSINUMERIK 840D sl コンピューター数値制御とSIMOTIONドライブ・テクノロジーが搭載されており、プログラムはNX CAMで作成されています。このため、設計から個々の軸までの完全なデータの一貫性が保証されます。
Ing.Markus Schmidt氏 , 設計エンジニア, ANGER MACHINING