ユーザー事例

TeamcenterとNXを活用して、コンセプトから生産に至るまでのエンジニアリング・プロセス全体のデジタル・トランスフォーメーションを実現

AERALIS、シーメンスのソリューションを使用して、信頼できる単一ソースを確保し、エンドツーエンドのデジタル・エンジニアリングを実行

AERALIS

AERALISは、軍用軽量ジェット機を開発している英国の企業であり、軍事訓練用航空機の設計、開発、納入プロセスを変革することを目指しています。世界各国の空軍の個別ニーズに合わせてカスタマイズ可能な、モジュール式システムを採用した独自の航空機設計アプローチを提供することで、パイロットの訓練方法に変革をもたらそうとしています。

https://aeralis.com/

本社:
ブリストル, United Kingdom
製品:
NX, Teamcenter
業種:
航空宇宙 / 防衛

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AERALISは、信頼できる単一ソースを備えたデジタル・スレッドという、シーメンスの目標と完全に一致する強力なビジョンを掲げています。そして、そのビジョンの実現に向けてシーメンスと協力を続けていきます。
Charlie Jones氏, デジタル・プログラム担当マネージャー, AERALIS

モジュール式航空機アプローチの採用

航空宇宙・防衛 (A&D) 業界におけるパイロットの訓練は、異なるメーカーが製造したさまざまなプラットフォームを準備しなければならず、非常に長い時間と費用がかかるプロセスです。これらのプラットフォームを具現化した航空機は、高速化、大型化、高コスト化の一途を辿っています。メンテナンス・プロセス、メーカー、サプライチェーン、ツールなどは、航空機ごとに異なります。これは運用上の大きな負担につながるため、航空機の設計と調達においては、より適応性の高い先進的なアプローチがますます求められるようになってきました。

英国の軍用軽量ジェット機を開発しているAERALISは、特定のミッション要件に合わせてカスタマイズ可能な航空機を開発することで、航空機開発を変革しようとしています。同社は現在、「Phoenix」と名付けられた世界初のモジュール式軍用ジェット機の開発に取り組んでおり、これにより軽量ジェット機と訓練用ジェット機の調達コストを削減できると考えています。同社は、共通コア胴体 (CCF) コンセプトを基にモジュール式ジェット機を構築する予定です。このコンセプトでは、さまざまなエンジンと翼の取り付けが可能であり、ミッション要件に応じて異なる性能特性を実現できるように調整することができます。

AERALISの画期的な製品は、AERSYSTEMと名付けられ、3つのコア・コンポーネントで構成されています。1つ目は、AERALISのSmart Integrated Digital Enterprise (AERSIDE) です。これは、航空機のライフサイクル全体にわたってデータを一元管理して活用し、設計から運用までを通して、よりシームレスなコラボレーションと最適化を促進します。AERSIDEは、包括的なデジタルツインに重点を置いており、世界中の空軍や防衛組織向けに、訓練効果、運用能力、コスト効率を向上させるソリューションを提供しています。AERALIS Open Systems Avionics (AEROSA) は、システム全体を再認証することなく、ソフトウェアのシステム・コンポーネントの交換を可能にします。それにより、センサー・ロードアウトをモジュール化できるため、将来的に新しい技術を導入しやすくなります。AERCOREは、共通のコア胴体システムと数々のモジュール・スイートを組み合わせて、役割固有の航空機構成を作成するAERSYSTEMの最後のコンポーネントです。

AERALISのもうひとつの製品はAERFLEXです。これは、柔軟な軍用ジェット機であり「サービスとしての航空機」です。AERFLEXは軽量防衛航空機支援サービスであり、AERSYSTEMと併用することで、信頼できるサービス・パートナーと連携し、必要に応じて再構成可能な航空機のフリートを提供します。「AERFLEXのサービスは、Red Air、Surrogacy、Display Teamの派生機まで拡張可能なため、柔軟性とコスト削減という大きなメリットをもたらします」と、AERALISのデジタル・プログラム担当マネージャーであるCharlie Jones氏は述べています。

AERALISは、最初の派生機としてAdvanced Jet Trainerの詳細設計に着手しています。この数年間、Phoenix開発に向けて各種ソリューションに取り組んできた中で、AERALISチームは、デジタル化により、航空機の開発を加速させ、航空機の使用を最適化するというビジネス・チャンスがあることに気付きました。AERALISは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアと提携して、Teamcenter®ソフトウェアNX™ソフトウェアなどのさまざまなソリューションを活用して、目標を達成しています。TeamcenterとNXは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスのビジネス・プラットフォームであるSiemens Xceleratorに含まれています。

現在、A&D業界では、多くのメンテナンスが複数の手作業によって行われ、フリートの最適化は多くの場合、オペレーター自身が手掛けています。その結果、大量のデータがあちこちに分散しています。またプロセスの最適化にデータが活用されることもありません。デジタルツールの導入と習得が進みつつあるA&D業界であっても、大手企業の多くが依然としてレガシー・システムを使用したまま足踏みしているという状況に、AERALISはチャンスを見出しました。「当社はスタートアップ企業であり、グリーンフィールド・サイトの企業だったのです。初日からデジタル・プロセスを導入することができました」とJones氏は述べています。AERALISは、プロセスの初期段階から包括的なデジタルツインを構築し、顧客にデジタルツインを提供することで、コストを削減するとともに、高い性能の航空機を納入しています。そのためAERALISは、プログラム全体で真のエンドツーエンドのデジタル・エンジニアリングを備えた、完全にデジタル化されたエンジニアリングを実現するというAERALISのビジョンを具体化できる、デジタルに精通したパートナーを探していました。「NXとTeamcenterの統合により、AERALISは設計の初期段階からコラボレーション可能なアプローチを導入することができました。現在当社では、MBSE、安全性、設計の最適化を中心とした、有望な新製品をいくつか導入することを検討し始めています」とJones氏は述べています。

AERALISは自社プロセスのデジタル・トランスフォーメーションを実現してきましたが、提携パートナーやサプライヤーのデジタル・トランスフォーメーション・プロセスにおいては、まだそこまで進んでいない可能性があることを認識しています。例えば、AERALISは、顧客にフライトデータを渡して、メンテナンスが必要な時期をアドバイスすることはできます。しかし、顧客はその技術を導入する準備がすでにできているのでしょうか?デジタル化に対するこのような躊躇に対処するために、Jones氏は次のように述べています。「シーメンスと緊密に連携することで、世界中の規制当局や通信事業者には馴染み深いプロセスを構築することができました。同時に、世界トップクラスのデジタル・エンジニアリングを使用して、最初からデジタルモデルを作成することで、すでにあるデジタル化の機会を活用することができました」

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AERALISのPhoenix航空機上空の気流のシミュレーション。画像提供: AERALIS

Teamcenterを活用してデジタル・エンタープライズを拡張

AERALISは、シーメンスのさまざまなソリューションを使用してデジタル・エンタープライズを拡張しています。具体的にはTeamcenterをデジタル・スレッドのバックボーンとして活用しています。AERALISは、モジュール式ジェット機の派生機の設計、開発、製造、認証を効率的かつ迅速に行えるデジタル・エンタープライズを構築しています。そのデジタル・エンタープライズは、各航空システムのオペレーションを監視し、生命維持を支援し、継続的な耐空性を確保するエコシステムでなければなりません。AERALISは、Teamcenterがツールセットだけでなく、AERSIDEと完全に統合し、製品ライフサイクル管理 (PLM) をデジタル・スレッドのバックボーンとして確立するための野心的な機能と専門性も備えていることに気付きました。同社は、製品バリエーションの管理を含め、設計とエンジニアリングの部品表 (BOM) の管理にTeamcenterを活用することを計画しています。

AERALISのPLMおよび設計ツール・リード・エンジニアであるCallum Watson氏は次のように述べています。「シーメンスには、効率的にコラボレーションを行い、AERSIDEの取り組みを効果的に促進したいという明確な動機がありました。これは、当社の要件に合わせてTeamcenterを継続的にサポート、構成し、デジタル・スレッドを柔軟に調整してくれたことで、十分に分かりました」現在、AERALISには複数の主要サプライヤー、委託先、設計パートナーがおり、TeamcenterとNXを使用してAERALISのエンジニアと連携し、航空機のライブ設計を行っています。その一社であるHamble Aerostructuresはこの共通のビジョンを理解し、AERALISの作業において競合他社の製品の代わりとしてNXを採用しました。「NXを使用することで、複数のパートナーと協力して、航空機のさまざまな要素を同時に設計することができ、効率性が向上しました」とJones氏は述べています。

Hamble Aerostructuresとの共同設計作業に着手するには、コストがかかり複雑になる可能性のある既存のコンピューター支援設計 (CAD) セットアップとTeamcenterを統合するか、まったく新しいアプローチを採用するかのいずれかを選択する必要がありました。AERALISは、小規模でアジャイルな設計チームでNXを試し、NXとその機能を検討してみることにしました。約5か月間で、AERALISはTeamcenterの使い方を習得するだけでなく、チームが設計パートナーとコラボレーションを行い、要件を効率的に共有できる環境を構築できるようになりました。

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AERALISのモジュール式ツインエンジンのバリアント。画像提供: AERALIS

NXを使用してCADプロセスを合理化

AERALISチームは、NXの他の機能もいくつか使用して、CADエンジニアリング・プロセスを効率化しています。

Watson氏は次のように述べています。「NXは、航空宇宙分野ですでに確立された実証済みのCADツールですが、航空宇宙産業の要件に合わせてNXをより適切にカスタマイズするためのロードマップにさらに力を入れています。PLM管理のエコシステムでCADを活用できるようになったことで、国内外の設計パートナーとのコラボレーションが可能な設計環境を構築することができ、同時に構成管理や商用ルールベースのアクセスに関する優れたプラクティスを維持することができました。さらに、この統合により、部品、アセンブリ、部品表が、要件やシステムモデルなどの要素とともに、デジタル・スレッドに組み込まれます」

また、AERALISは、NXを活用して航空機構造、フレーム、リブ、スパーのモデリングを簡素化し、コラボレーションによる設計作業をサポートしています。さらにWAVE Geometry Linkerを使用して、設計パートナー間で共有されるジオメトリ・インターフェースを制御し、信頼できる単一ソースを確保して、重複のないLH/RH部品管理を促進しています。

AERALISが活用するもうひとつの重要なツールはアセンブリ・アレンジメントです。これは、複数の構成、複数のバリエーションがある製品を設計するときに非常に便利な機能です。このツールにより、AERALISのCADエンジニアは、多数の設計案を組み立て、アセンブリ・ナビゲーターで複数の設計案を素早く切り替えることができます。異なる動力装置ソリューションとその構造、シングルかツインか、さらには着陸装置の異なる圧縮重量であっても、AERALISチームは同じ空間でアイデアを素早くモデル化し、分析することができます。

CheckMateは、設計パートナー全体にモデリング標準を適用し、確認作業を自動化し、人的リソースをより高いレベルのタスクに割り当てる上でも役立っています。抽出パスにより、システムの設置とメンテナンスのアクセシビリティをより深く理解できるようになりました。これは、ユーザーフレンドリーな製品の設計に欠かせません。人体モデリング機能は、シミュレーションとテスト・パイロットのインプット用に人体測定学的にリンクされたモデルを提供することで、コックピットの設計を支援し、設計の反復効率を高めます。HD3Dツールは、特に視覚的なレポートの作成と要件の検証において、設計仕様の分析と検証を容易にします。NXのもうひとつのツールであるクリアランス解析は、システム設計において安全距離を評価し、AERALISチームに安全基準を提供します。NXの結合/PMI機能は、下流プロセスをサポートし、製造とコラボレーション型設計作業の効率を高めます。これらの機能により、AERALISは設計ワークフローを最適化し、効果的にコラボレーションしながら標準に準拠した高精度の設計案を完成させています。

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AERALISのAdvanced Jet Trainer。画像提供: AERALIS

持続可能性とデジタル・アプローチを見据えて

オープン・システムの航空電子工学アーキテクチャを推進するために、AERALISは、合理化されたプロセスと持続可能性におけるメリットを理由に、シーメンスのソリューションを使用してきましたし、今後も使用し続ける予定です。Jones氏は次のように述べています。「航空機を最初からオープン・システム・アーキテクチャで構築しているため、最新技術や、新しいハードウェアとソフトウェアを速やかに導入できます。ソフトウェアのアップデートや新しいハードウェアの導入が必要な場合でも、迅速に実行でき、飛行全般における環境への影響を大幅に削減できます」

AERALISは、Phoenixや今後の製品の開発にもSiemens Xceleratorソリューションを引き続き使用する予定です。将来的な展望として、AERALISが提供する航空機は最終的に有人航空機と無人航空機の全範囲が対象となるでしょう。同社は、Opcenter、HEEDS、その他のシーメンス・ソリューションなど、デジタル バックボーンの推進に役立つさまざまなソリューションをSiemens Xceleratorビジネス・プラットフォーム内で引き続き活用していきます。「AERALISは、信頼できる単一ソースを備えたデジタル・スレッドというシーメンスの目標と一致する強力なビジョンを掲げています。そして、そのビジョンの実現に向けてシーメンスと協力を続けていきます。」とJones氏は述べています。

シーメンスには、効率的にコラボレーションを行い、AERSIDEの取り組みを効果的に促進したいという明確な動機がありました。これは、当社の要件に合わせてTeamcenterを継続的にサポート、構成し、デジタル・スレッドを柔軟に調整してくれたことで、十分に分かりました
Callum Watson氏, PLM/設計ツール・リード・エンジニア, AERALIS